英雄伝説 魔の軌跡   作:閃の細道

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初めまして、『閃の細道』と申します。

先日、閃の軌跡を購入しⅠ&Ⅱと連続でプレイしてドハマりしてしまい、そのテンションに身を任せこちらのサイトを知って、読者としてだけではなく執筆したという、直球かつ行き当たりばったりな作品です。

ボキャブラリーもなく駄文かもしれませんが、その時はお許し下さいませ……

何分投稿作品というもの自体が初めてですので至らない部分が多いと思いますが、お付き合い頂ければ幸いです。

※2015.08.08 修正


序章
始まりの日


 あの日の事は、今でも鮮明に覚えている。

 居場所を無くした出来事。否、自分から居場所を無くしたと言ってもいいのかもしれない。

 どうしてあんな言葉をかけたのか。

 

 どうしてあんなものを得てしまったのか。

 意識が完全に途切れたその後に聞こえた二人の声。凛とした声と、その後に続く艶やかな声。

 

『力が欲しいのですか』

 

 ああ。

 

『何故力を求めるのですか』

 

 今の俺では何も出来ない。だから、せめて守れる力が欲しい。

 

『何を守りたいのかしら』

 

 空っぽだった俺に、生きる意味を教えてくれた場所。そして、守りたい人がいる。

 

『そう……力を授ける代わりに対価を頂いてもいいのかしら』

 

 それでも構わない。なんだってくれてやる。元々そんな大層なものは持ってない。

『いいでしょう。では、力を与える代わりに、人としてとってもとっても辛い対価を頂くわ、呪いにも似た対価をね』

 言葉の意味なんて考えず、その時はただ鵜呑みにしていた。元々記憶が無い自分に居場所を与えてくれた人々。その人達を守れるのであれば、代償なんてクソ食らえだ。自分の守りたい人をたった一度だけしか守れず死ぬくらいなら、そんな業は背負ってやる。そう思っていた。

 

 

 

 しかし、目が覚めた時に得たそれは、度が過ぎた、自分には有り余るものだった。正にそれは人外、異形の力。

 守りたいと思い、得たいと思った力はこんなものではない。そう思った途端、怖くなった。居場所がなくなるのではないか。そう思ってしまい逃げ出した。

 

 一体何故、こんなものを与えたのだろうか?

 そもそもあれは誰だったのだ?

 

 そして、逃げ出した事への激しい自己嫌悪。

 

 その問いの答えを探すため、懺悔の念を押し殺す為、居場所を求めずただひたすら放浪した。大陸全土を放浪すれば、何かの答えが見つかると思った。

 放浪し数々の戦いを経て分かった事は、自分の得たものは、人の身に余る、否、人が持ってはいけないかの様な、絶大な力である事。そして、その異形の力を得た代償の呪いについての情報だけだった。

 そして、自分一人では自分の求める答えは見つからなかったという結果。

 

 

 だからこそ、この場所に身を寄せているのだが、それが正しい事なのかは分からない。しかし、この場所にいる事で、自分の感情が大きく変わっていったのもまた事実。

 

 逃げ出してしまった自己嫌悪は、これ以上逃げ出さない強さに。

 この力と呪いについては、自身の一部と割り切る事に。

 

 そう思う事で、あの時の出来事を思い出す事はあっても後悔をする事はなくなったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

―――*―――*―――

 

 

「――くん。スレインくん、聞こえているかい?」

 

「ん、あぁ、全く聞いてなかった」

 窓から見える雲ひとつ無い青空を見ながら、後味の悪い物思いにふけってしまった事を後悔して、目の前にいる人物の方へ向き直った。

 互いに高級な刺繍が施されたソファーの上に座り、どこから見ても高そうな装飾の机の上には数枚の資料が置かれている。目の前には鮮やかな金髪を首筋辺りで一つに纏め、その身を国の象徴たる紅色で装った男性。そして、ゼムリア大陸の有名人でもある彼はニヤニヤしながらこちらを見ている。

《放蕩皇子》―――オリヴァルト・ライゼ・アルノール

 

 王位継承権はないものの、このエレボニア帝国における皇族の一人にして、最近社交界に進出してきた人物。

「外を見て黄昏れるのは結構だが、聞いてないなら仕方がない。君の為なら何度でも言おうじゃないか」

「いや、それはそれで困る。一回で結構だ」

「フッ、それは勿論、言葉の綾というものさ。つれないな〜スレインくんは。では、もう一度だけ言おうではないか」

 いちいちツッコミを入れていても全く話が進まないので、ここはもう沈黙を決め込む。そもそも、この人の話をまともに聞こうとする方が間違っているのかもしれない。

「スレイン・リーヴス君。春からここに入学してくれないか」

 そう言いながら机に置いてある封筒をこちらに差し出す。その封筒にはでかでかとこう記載してあった。

 

 

『トールズ士官学院 入学特別推薦書』

 

 

「……は!? 俺が? 皇子、それは仕事(・・)としてか?」

 

 自分とは限りなく無関係な単語と内容につい声を大にするが、目の前の人物からは至って冷静な回答を受ける。

 

「いや、仕事は関係なし。普通に生徒としての入学さ。先日の件で一段落しているだろうから、そのまま休業にしてくれて構わない」

 

「……内偵業務は不要って事か?」

 

「それは違うよ、スレインくん。僕はこの学院の理事長をやっていてね、その立場から推薦しているのだよ。純粋に君に学院生活を送ってもらいたいんだ」

 

 そう言うと目の前の男性はテーブルに置いてある紅茶を飲み、こちらに笑みを浮かべる。

 

「……本気で言ってるのか?」

 

 士官学院と言えば、軍事養成の学校である。そんな所に行く必要のない人間である事を知っているのに、今更何を学べと言うのだろうか。

「あぁ、勿論本気さ。君にはその必要があると思ってね」

 

 彼はそう言うとその封筒とは別に何枚かの資料を取り出す。と言っても、殆どが学院についての資料の様で、あまり見る気にはならない。

 そもそも、自分の様な輩を入学させるには些か問題があると思う。そのような教育機関に属する者として相応しい経歴ではない。どうやったらそんな輩を入学させようと思うのだろうか。しかし、そんな事を言った所ではぐらかされるのがオチである。

「……わざわざ手元の人材を使わなくても他に推薦する人材はいるだろ。拾われた身で言うのもあれだが、俺よりも入学するべき人間はいるんじゃないか?」

 仕事関係なしで入学しろと言われて、それをいきなり肯定するには事は出来ない内容である。遠回しに断るつもりで真意を聞き出そうと、それっぽい言葉を並べていく。

 すると、先程までの談話の雰囲気が一変し、真剣なものへと移り変わる。個人対個人の雰囲気ではなくなり、個人対皇族としての真剣な内容となった事を表していた。

「謙遜する事はないさ。君の功績は過去から現在まで素晴らしいものだ。直接関わっている僕にとって、君ほどの逸材はいないと僕は思っているよ」

「……俺のような輩が学院に入学なんかしてみろよ。学生さんには悪影響を与えるどころか、毒だぜ、毒」

 自嘲気味な笑みをしながらそう呟く。実際問題、自分は純粋に士官学院に入学する若者とは真逆の人生を歩んでいる。最初こそ物珍しく扱われるだろうが、次第とその違いに畏怖を感じるに違いない。

 それに、軍属ではないものの、ある程度の事柄は身についている。再度思うが、何を学べと言うのだろうか。

 

「そんな事はないさ。何をするにしても多少の刺激(スパイス)は必要だよ。そして僕はそういう若者を歓迎している」

 確かに、俺の様な輩を拾っている時点でそれは本音なのであろう。

「流石に刺激が強すぎだと思うけどな。何が目的だ?」

「理由は単純だよ。新しい風を吹かせる為さ。未来の帝国を担う若者を育成する。理事長として携わっているのだから、それくらい考えていて当然だろう?」

 

「それを俺が作れって事か? たかだか士官学院の生徒に何をさせようとしてんだよ」

 

 今の言葉でおおよそ検討が付いた。しかし、それを一介の学生にさせるにはしては、些か乱暴というか……少しばかり同情してしまう。

 

「いや、スレインくんが作る訳ではない。そこにいてくれればいいんだ。青春を謳歌しながら新しい風を当たる事で、君も新しい何かを見られるかもしれない」

 

「(新しい何か……ね)」

 

 心の中でそう呟く。実際にそれを求めている事は、自分がよく分かっていた。確かに皇族直属の内偵として動いてきて、大切なものは得られたのだが、核心に迫る様なものは殆ど得られなかった。雇い主として、この皇子はそれさえも見透かしていたのだろう。どちらにせよ、こういった状況で繰り出されるこの人物との会話で、結果を覆した経験はない。

「それに面倒見の良い君の事だ。何かあったら率先して解決してくれるだろう? そんな君に感化される若者だっているハズだよ」

 

「それはそれで困るんだがな……」

 

 そう言ってオリヴァルトから目を逸らして、目線を再び窓から見える景色に向けて口を閉ざす。

 

 オリヴァルトの言っている事は分かっているのだが、自分が交じる事での、若者達の影響が気になってしまう。

 清水の中に、濁った水が一滴でも混入した場合、それはもう清水ではなくなってしまうだ。その結果を考えると、百歩譲って足を踏み入れたとしても、純粋な学生達に絡んでいく事さえも間違いではないのかと思ってしまう。

「……スレイン君。この1年君といて分かったのだが、君は焦りすぎだ。もう少し歳相応というものを覚えた方がいい」

 

 ここでオリヴァルト皇子のお目付け役であり、この場にいる三人目、エレボニア帝国が誇る機甲師団の軍服を纏っているその人物が口を開く。

エレボニア帝国正規軍第七機甲師団所属

ミュラー・ヴァンダール少佐

 帝国において『ヴァンダール家』は、代々帝国皇室を守護する名門中の名門。

 更に言えば彼はオリヴァルト皇子とは幼馴染であり、加えて親友の間柄でもある彼は更に言葉を続ける。

「君の本来の目的は知っている。しかし、1人で足掻いても見つからぬものは見つからない。そんな時は焦る必要も無ければ、悩む必要もない。ただ目の前の事を行うだけでいいのだ。それに、学生というのは人生の中でもそう多くはない。せめて今は若者として目の前の事を行ってみたらどうだ?」

 

 普段、こんな事を話す人だった覚えはないのだが、その珍しい言葉に反論の隙を見失ってしまう。

「そう、親友の言う通りだよ。学生でいられるのは、人生の中で限られた期間だけだ。囲っている私が言うのもなんだが、君はもっと楽しいと感じる事が必要だよ。学院に通って歳相応の青春を謳歌してもいいのではないかい?」

 

「かといって、こいつの様にふざけ過ぎるのは問題だがな」

 

「何を言うか親友! 私は常に真面目だっだではないか」

 

 難しい顔をしていたのだろうか、それともあれこれ考えている事が分かったのだろうか。オリヴァルトとミュラーはいつもの様に漫才の様な会話を続ける。

 この2人にはかなわない。オリヴァルトには勿論のこと、時々手合わせをしてもらっていたミュラーにも自身の迷いがバレていたのだろう。そんな事を考えた途端、何かが吹っ切れた。もう言い逃れも出来ないし、これ以上はただの言い訳になってしまう。ミュラーの言葉通り、目の前の事をただ行う。これが現状の正解なのかもしれない。

 

「……分かった。トールズ士官学院、入学してやる。問題児が増えても知らんけどな」

「問題児は増やさないで欲しいけど、決心してくれた様で良かったよ。では必要事項を書いておいてくれたまえ。あ、そうそう、思わぬ再会が多いから楽しみにしていてくれ♪」

 

 封筒の中身を出しながら書類を確認していると、いきなり思わせぶりの発言をする皇子。

「思わぬ再会? まぁ、この住所を見る限りトリスタって書いてあるんで、昔使ってた店とかはありますが…」

 

 この都市には以前何度か足を運んだ事があるので、確かに顔見知りは何人かいる。暫く行ってないから、相手からすれば『思わぬ再会』になるのかもしれない。しかし、ニヤけ顔から戻ってこない目の前の人物からすると、そういう意味ではないのであろう。

 

「それはまだ秘密さ♪ あと、仕事の方は何もなければ、しばらく頼まないつもりだ。学院生活を楽しんでくれて構わないよ」

 

「ああ、何もない事を祈るよ。では、失礼します」

 

これ以上話してもどうせ何も教えてくれないので、書類の記入を手短に済ませてここで会話を終える事にした。そして2人に一礼をしてから退室する。

 

 

 

 

 

こうして、皇族直属の内偵スレイン・リーヴスは、トールズ士官学院の学生として、新たな生活を開始するのであった。

 

 

 

 




という訳で、こちらの序章は入学式からおおよそ1ヶ月前のお話です。

オリヴァルトやミュラーって口調の再現が難しいです……
ファンの皆様、申し訳ありません。


次回から本編に突入していきますので、
読んでいただければ幸いです。


お読み頂きありがとうございました。
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