英雄伝説 魔の軌跡   作:閃の細道

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今回は帝国から遠出します。

Ⅶ組の面々は一度お休みになるので、暫くはオリジナル展開を楽しんで頂ければ幸いです。

それでは、第19話、始まります。


予想外の復帰

 

 6月20日

 

 本日は自由行動日である。のであったのだが、スレインは現在半ば強引にサラに連れられてクロスベル行きの列車に揺られている。

 

「サラさん、俺は遊撃士に復帰してませんけど。何故拉致られるのでしょうか?」

 

 朝っぱらから叩き起こされ「ちょっと来て」と言われ、何事かと思いながらも同行すると到着場所はトリスタ駅。あれよあれよと自身の乗車券まで購入されてしまい、気付くとクロスベル行きの電車に乗っているという訳である。

 乗車してから聞いた話だと、遊撃士協会クロスベル支部から応援要請を受けたトヴァルからの増援という事らしい。

 クロスベル方面では『DG教団』という組織が薬物実験をして大暴れしていたらしいのだが、先日クロスベル警察によって解決したとの情報は得ている。文字通り風の噂(・・・)で、だが。そして、その概要と共に、今回の応援要請が『その残党の後始末』という事を先程聞いた上で、サラにこの質問を投げかけたのである。

 

「拉致じゃないわよ。そもそもあんたもあたしも退職処理されてないんだから」

 

「は!? サラはまだ分かるけどどうして俺まで?」

 

 普段あまり顔に出ないスレインだが、ぶっきらぼうに答えるサラの言葉には、流石に驚いた表情をする。

 

 そもそも、遊撃士協会は例外を除いて半年以上仕事を受けていない場合は除籍扱いになる。その例外というのも、そもそも依頼がない場合や負傷などの長期離脱が証明出来る場合のみ。

 二年前に去って以来、遊撃士との共闘は何回かあったがそれは全て協会を通していない。ましてや、どの国でも協会には一度も足を運んでいないので、依頼どころか転属手続きすらしていないのだ。通常であれば間違いなく除籍されているハズだ。

 

「あんたが遊撃士(ウチ)と共闘した場合の戦果はこっちでも処理してあったの。ちなみに今は支部が少ないから正遊撃士に昇格してるわよ。あちこちツテ使って頑張ったんだから感謝しなさい?」

 

「いや、それでも半年の制約は無理だろ。仮に他国の方も処理出来たとしても、その場に遊撃士がいた状況なんて殆どなかったぞ?」

 

 各国に支部を置く遊撃士協会は、活動拠点として支部が存在するだけであって、有事の際や人員不足の場合は国外で活動する場合もある。ましてやサラの様にA級遊撃士にもなれば、国外を転々とする事も多く、他国の遊撃士に知り合いがいても不思議ではない。

 しかし、元々遊撃士が絡んでいる方が稀であったスレインの行動では、いくら他国の遊撃士を動かしても些か無理が生じる。

 

「勿論、遊撃士(ウチら)だけでは無理よ。あんたの場合、大体が隠密行動でしょ? だからこそのツテ(・・)って訳よ」

 

 元々嫌な予感はしていた。まず今の言葉で確信を持ってしまったその予想に頭を抱えて無言でため息をつく。

 遊撃士に知り合いが多く、自身の隠密行動の内容と結果を良く知る人物。そのレベルで限定していくと、心当たりは一人しかいない。一年程前のリベール異変で活躍した遊撃士達や王族に交えて、一人だけ身分を偽ってその中にいた帝国の皇族(・・・・・)がいる。

 

「あのオリヴァルト(クソ皇子)が……何が『内偵』だよ。これじゃただの専属の遊撃士じゃねぇか」

 

 その答えを待っていたかの様にサラは微笑む。「どうでしょ?偉い?」って顔に書いてなければ文句なしの笑顔だったのだが、言及するのは止めておいた。

 

「……いつからそんな話になってたんだ?」

 

「あんたが内偵になってすぐよ。皇子殿下自らご指名で遊撃士協会に依頼を出していたみたいだから。まぁ、バレない様に殆どが事後報告だったみたいだけど」

 

「なるほどね。サラはいつから知ってたんだよ」

 

「あたしもつい最近知ったわ。殿下自ら学院に電話して聞かされたのよ」

 

「……あの時か。それで、今になってバラした理由は何だって?」

 

 今まで一年近くも秘匿扱いで遊撃士をさせていたのにも関わらず、この時点で種明かしをする理由が見当たらない。

 

「そろそろ隠す必要が無くなるって言ってたわよ。あたしもあの人の事をそんなに知ってる訳じゃないけど、あちこち関与するだけあって何か企んでるみたいね」

 

「ふむ……。まぁ、内偵って役目も限界だったんじゃねぇか? あちこちで顔が割れている以上、遊撃士の方が融通も利くし」

 

 本当の所はサラが言う通り何かを企んでいる可能性が高い。しかし、それであっても自身もそれが一体何なのかが分からないで、在り来りな発言だけをしておく。

 

「確かにそうかもね。遊撃士としてもそこそこ名が上がってきたら(・・・・・・・・・・・・・)嫌でもバレるし、いいタイミングじゃないかしら?」

 

「ん? ……サラ、さっき正遊撃士になってるって言ったよな。そしたら俺、今何級なんだ?」

 

 サラの発言に違和感を覚えて疑問が上がった。

 正遊撃士はその腕前に応じて階級が上がる。GからSまで(正式にはA)階級があり、依頼の達成状況によって階級が上がる方式である。しかし、腕前と言っても戦闘技術だけが評価基準ではない。達成した依頼の数は勿論、達成の質や内容における総合的な判断力も関係してくる。そして階級が高ければ高い程、難易度の高い依頼や国際的な内容のものまで受注出来る仕組みである。

 

 ここまで事を踏まえるとスレインが内偵時に受けた依頼(オーダー)を遊撃士に当てはめると、その全てが高ランク者用に依頼レベルになっている。国内外に問わず諜報活動がメインで、場合によっては抗争に介入して中立的立場で争いを穏便に終結させる様な案件ばかり。正確に言うと、活動中に巻き込まれた場合の方が多いのだが、それはこの際考慮しないでおこう。

 

「あんたはもうB級よ。あのレベルの内容をこなしてる時点で、それ以下には出来ないでしょ」

 

「はっ、そういう事か。それなら大陸中に名前が出るし、二つ名が付いてもおかしくない。それなら納得だわ」

 

 呆れ気味にそう言うと共に、不敵な笑みをしているサラから視界を窓の外へと切り替える。冷静さを取り繕っているものの、先程から突き付けられている事実をそう簡単に飲み込む事が出来ないからである。

 

 何のためにあの場を去ったのか。何のために内偵になったのか。そしてオリヴァルトは何の理由でこんな回りくどい事をするのか。その全てを聞くまでは、心の底から喜ぶ事は出来ないであろう。

 

「……そもそも、あんたが辞める理由なんてないわよ」

 

 今までの雰囲気とは違いい、どこか切なげにサラは聞こえるギリギリの声量でポツリと呟いたが、その憂いを帯びた言葉に何かを言える事もなく窓の外をぼんやりと眺める。

 

「あんたがどう思っても、帰ってくる場所はあそこよ。7年前にあんたが来たあの時から、あたしもトヴァルも他の皆もそう思ってるわ」

 

「臭いセリフだな……まったく、リィンじゃあるまいし、そう言う事を言うな」

 

 視線を変えずに一言だけサラにそう言ってから瞼を閉じる。それはどちらかと言うと、思い出したくない過去を思い出してしまうから。

 

 スレインが遊撃士協会を訪れたのは今から7年前。しかし、何故遊撃士協会に行ったのかは覚えてない。否、それ以前の記憶がないのだ。

 自身の名前以外で一番古い記憶は、遊撃士になる必要があったという意志。これが何を示しているのかは7年経った今でも分からない。そして、自身の過去にまつわる情報は何一つ見つかっていない。当時の遊撃士協会の面々にも手伝ってもらったのだが、どこで生まれ10歳までどこにいたのかすらも分からない。本当の意味で出自が不明だったのだ。だからこそ幼い自分は遊撃士協会が居場所だと思っていた。それを壊してしまったのがあの事件であった。

 

 ここまで回想したところで、一旦思考を停止する。これ以上同じ回想をした所で気持ちはブルーになるだけだ。クロスベル到着までの時間を睡眠に費やす事を決めて、列車の揺れを感じながら心を無心にするのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あら、サラちゃん、久しぶりね。それにスレインも数ヶ月振りね」

 

「どうも、ミシェルさん。お久しぶりですね〜」

 

「ミシェルさん、ご無沙汰してます」

 

 遊撃士協会クロスベル支部に到着すると、ここの受付をしている赤毛の長髪を束ねた女性の様な男性、いや、男性の様な女性?(一言で言うなればオカマという種類である)のミシェルが出迎える。

 

「スレイン、いきなりそういう事は言わないで!」 

 

 こちらの思惑が何故かバレてしまったので片言の謝罪だけを済ませて、早速二階の会議室に向かう。情報収集に出している数名が戻ってきていないとの事だったので、それまでは寛いでいろとの事であった。

 

「あー! スレイン!久しぶりじゃない!」

 

「スレイン、久しぶり。元気だったかい? サラさんもお久しぶりです」

 

 二階に上がった途端に若い男女の出迎えの声が聞こえた。

 

「ブライトカップル、久しぶりだな。一年振りくらいか?」

 

「なんかその言い方はちょっと……」

 

 オレンジ色の長髪を左右で結い、女性らしさが漂う軽装の防具に身を包んだ少女が太陽の様なほほ笑みで呟く。

 

「ははっ、その呼び方はやっぱり照れくさいね」

 

 それと同時に、セミミドル程度の漆黒の髪をした中性的な面持ちをしたクールな少年が笑いかける。

 

 出迎えてきたのは、リベールの英雄こと、声を聞いた順にエステル・ブライトとヨシュア・ブライトである。どちらも、一年程前に起きた『リベール異変』を解決した張本人たち。

 エステルは、S級遊撃士や『剣聖』で名を馳せた現リベール王国軍准将カシウス・ブライトの娘である。

 ヨシュアは元結社の執行者「漆黒の牙」であり、幼少期にカシウスに引き取られた、いわば養子である。そういった血縁関係のないこの二人は姉弟というよりカップルである。これは誰もが認めている事実なので、一々ツッコミを入れない方が良いだろう。

 そして、スレインがこの二人に出会ったのは約一年前。まだ内偵業務をする前、たまたまリベールに滞在していたのだが、王都グランセルが襲撃を受けた際に、個人的に介入し王都を死守した事がある。その事がきっかけで事件解決時にグランセル城で行われた晩餐会に出席した折に出会っているのだ。ちなみに、オリビエに目を付けられて内偵業務になったという経緯の原因もこの時である。

 

「でも、まさか遊撃士だったなんて驚いたよ」

 

 こちらが椅子に腰を掛けると同時にヨシュアが話す。

 

「いや、俺も今日知った所で驚いてるよ。除籍になったと思ったんだがな」

 

「そうそう、しかもアタシ達と同じB級なんでしょ? すごいじゃない!」

 

 屈託のない笑みでそう話すエステル。この二人もB級遊撃士なのである。

 

「急に言われても実感が湧かないよ。そう言えば、お前さんたちの方はどうなんだよ? 確かここにいるんだろ?」

 

「うん、そっちは何とか。今は準備があるみたいだから依頼に応じたんだ」

 

「あ、スレインにも会いたいって言ってたわよ? 前回の続きって言ってたけど、何かあったの?」

 

「前回って言ってもあいつが家出する前の話だからな? 気にしないでくれ」

 

 この二人がクロスベルに来た本当の理由は、結社の元執行者『レン・ヘイワース』を家族として迎え入れる為なのである。

 リベール異変の際に、執行者としてエステル達に相対したのだが、潜入時にエステル達と共にいる事で、今まで失っていた感情が蘇ると共に、そのギャップに困惑してエステル達を受け入れる事が出来なかったそうだ。それを執拗に追い掛け回した(言葉の綾なので本人達には言えないが)結果、レンの心の闇を晴らして晴れて家族となったとの説明を端的に聞いた。

 ちなみに、レンがエステルに言った「前回」とは、執行者時代のレンとやり合っているので、その続きだと思う。それでさえ一年以上前の話であるので、今更続きと言われても困るのも仕方がないだろう。

 

「あんた達……良かったわね」

 

「ええ、帝国方面を行ってくれたサラさんにも感謝しています」

 

「サラさんのおかげでクロスベルにつきっきりで入れたから本当に助かりました!」

 

 サラの言葉に二人とも感謝の言葉を述べる。どうも、帝国方面の依頼は全てサラが行っていたらしい。道理で時々寮を抜けだしていた訳だ。

 

「しかしまぁ、こんな形で再び遊撃士協会に足を踏み入れるとはなぁ……」

 

「除籍にならなかった事が不服か?スレイン」

 

 そう言いながら階下から現れた男性はこちらを見て微笑む。と言っても、よく見れば分かる程度であるが。

 

「アリオスさん、ご無沙汰してます。そう言う訳ではないですけど、どうも出し抜かれた感じがして納得がいかないんですよ」

 

 青の長髪をストレートに下ろし、脇に太刀を携えた長身の男性。『風の剣聖』ことアリオス・マクレインに声をかける。

 アリオスは、リィンと同じ流派『八葉一刀流』弐の型皆伝者を持ち、『剣聖』カシウス・ブライトと並ぶ腕前を持つっている。S級遊撃士への打診を受けているも、断り続けているクロスベル屈指のA級遊撃士なのだ。

 

「遊撃士としてお前程の腕を持つ男は除籍になど出来んだろう。ましてや国際的な依頼ばかり。誰が手放すと考える?」

 

「いや、その全てが半ば強制的に受けてますからね? 俺の実力なのかも怪しくなる」

 

 アリオスの評価を受けるには当たり前の結果になるのは分かるのだが、どうしても納得がいかない。結果はどうあれ、自身の行動が遊撃士としての行動とは言い切れない場面もあったから尚更である。

 

「謙遜するな。お前の腕前はここにいる全員が保証している。今後は表立って遊撃士を名乗れるのだ。これからの事を考えればいい」

 

 どうやらこちらの思惑もお見通しらしい。自嘲気味の笑いを浮かべながら「そうします」と一言だけ返す。アリオスの言葉に強く頷く者しかいなかったからである。

 

「ねえねえ、スレイン。久しぶりに会ったんだから後で手合わせでもしない?」

 

「確かにスレインとは一回もしてないよね。僕も是非一度手合わせしたいな」

 

 エステルの興味津々な笑顔に相槌を打ちながら間髪入れずに波状攻撃を繰り出すヨシュア。似た者同士というか何というか、この場が同窓会だと思っているのだろうかの発言である。こちらが断りの言葉を口にしようとした時、階下から階段を登る音が聞こえた。

 

「これから本腰入れてやり合うって時に、随分呑気な話してるな〜」

 

 そう言って現れたのはトヴァルであった。どうやら情報収集は終わったらく、その後ろからクロスベル支部の遊撃士が数名登ってくる。

 

「トヴァルさん、お帰りなさーい。だってこういう時じゃないとお願い出来ないんだもん」

 

 エステルのこの場に合わない言葉と共にヨシュアが全員に労いの言葉を掛けると、それぞれが挨拶を交わして全員が席についた。

 

 情報収集を行っていたのはトヴァルの他に2名。レミフェリア公国出身で医師免許も持つ異例の遊撃士エオリアと、泰斗流の免許皆伝という実力派リン。そしてそれと同タイミングで依頼を終えてきたのが、銃使いのスコットと帝国出身のヴェンツェルだ。

 この日何度目かの再会の挨拶を交わして、一同は本題へと入っていく。

 

「―――という訳で、三組に分かれてそれぞれ同時に突入。無力化・拘束をする流れだ。異論はあるか?」

 

 トヴァルの説明によると、今回はDG教団残党が潜伏していると思しき複数の拠点をそれぞれ同時に襲撃し、連絡させる間もなく無力化させるとの事。潜伏場所は太陽の砦、月の僧院、星見の塔の三箇所。どこも距離が離れていて、内部構造もそこそこ複雑な為に、人員を割くのではなく増やす事になって自分とサラが呼ばれた事も説明された。

 

「なぁ。そんな詳細な情報、どこから仕入れたんだ?」

 

 そこまで正確な情報があるにも関わらず、遊撃士が動くまでどこも関与していないというのは気になる所である。

 

黒月(ヘイユエ)って言う共和国系のマフィアよ。この情報は警察も知らないらしいわ」

 

 トヴァルに変わってエオリアが答える。どうやら仕入れてきたのはクロスベル組らしい。

 黒月(ヘイユエ)とは、カルバート共和国を軸に活動している闇組織、所謂マフィアである。一年ほど前に共和国内で猟兵団『赤い星座』と抗争があり損害を受けたのだが、同年にクロスベルに支社を建てたという、不明確な情報の多い組織である。そして、この組織には『白蘭竜』と呼ばれる切れ者が存在している。

 

黒月(ヘイユエ)? 何故、彼らが僕らに情報を流すんですか?」

 

「確かにそうよね。彼らだったらロイド君とかに流しそうな気がするけど……」

 

 ヨシュア、エステルとそれぞれ不思議そうな表情で言葉を口にする。確かにマフィアが遊撃士に情報を与えるというのは若干おかしな話である。その『ロイド』とい人物が警察関係の人物であるというくらいの知識は得ているが、それよりも優先するというのは間違いなくお気に入り(スレイン)の情報が入ったからだろう。

 

「エオリアさん。それって大元の情報提供者はツァオですか?」

 

「え? ええ、そうよ。そう言えば、スレインくんの事も聞かれたんだけど……もしかして知り合いなの?」

 

 思わぬ所からの声と、エオリアのその会話の内容で一斉に全員の視線が注がれる。

 

「スレイン、どういう事か説明してくれるわよね?」

 

「何故スレインがツァオの事を知っているんだ?」

 

 ほぼ同時にサラとアリオスが自分に問いただす。口にはしていないものの、この場にいる全員が同じ事を言い出しそうな表情をしている。

 

「……去年、共和国内であった『赤い星座』と『黒月(ヘイユエ)』の抗争があったろ。あの時にたまたま共和国にいて巻き込まれたんだ。中立を通したんだけど、結果的に黒月(ヘイユエ)側に近い形でな。あいつとはその時に。曰く『一番のお気に入り』なんだとよ」

 

「て事は……『東方人街の英雄』ってお前さんの事だったのか。でも公表されたのって確か違う名だった思うんだが……」

 

「ああ、とある人物に情報操作をしてもらってね。俺の方は偽名にしてもらった。で、後からアリオスさんに残党処理を任せたって所かな」

 

 一年前、共和国の東方人街で起きた抗争。表向きには鎮圧したのはアリオス・マクレインになっているが、裏では色々と複雑になっている。

 ここでは言えないのだが、『黒月(ヘイユエ)』が雇っていた伝説の凶手と一悶着あったり、『赤い星座』は元々とある隊長さんの脱退の援助をしていたせいで因縁を吹っ掛けられてりと、表立って話すとかなり深い内容である。

 その時に、リベールで知り合った(・・・・・・・・・・)共和国の諜報機関の女性にもみ消してもらって、後から来る予定のアリオスに後始末を押し付けたのだ。

 しかし、東方人街全域で起こったこの抗争をもみ消すと言っても、現地住民全ての口裏を合わせる事は難しいので、軍には顔が割れてしまうが偽名を使って勲章を授与される事にして架空の英雄をでっち上げたのだ。それが『東方人街の英雄』の姿である。

 

 とまぁ、その全てを説明するには非常に面倒だったので、端折って説明するだけに留めた。

 

「やはりお前だったのか。現地の人から聞いた話の流れで想像はついていたが……」

 

「一応、軍の方には顔バレしてますけどね。俺は完全に巻き込まれた側なんで、英雄なんて事言われても困りますけどね」

 

 一言で言うと「やれやれ」のポーズをしながら自嘲気味にため息をつく。すると、今まで顎に手を乗せて何かを考えていたサラが話題を転換させる。

 

「でも、なんでこのタイミングでスレインの事を聞くのかしら? まるで遊撃士として来ている事を知っているみたいじゃない」

 

「サラさん。ツァオは遊撃士と言ってませんでしたが、貴方と一緒にクロスベル入りをする事を知っていました。恐らくそれから推測したのだと思います」

 

 エオリアがツァオの言葉を思い出しながら説明すると、一同は「それならあり得る」と言った様な表情で頷いていた。

 

「あいつの事だから意外と知ってたのかもな」

 

 ツァオという男は、正直言って不明確過ぎる男である。どこで情報を仕入れるのかも不明であれば、自身がどの様な人間なのかも不明なのだ。詮索するだけ野暮であるし、こっちが知らない情報を持っていても不思議ではない。今回渡した情報が既にそれなのだから、細かい事を気にしても時間の無駄である。

 

「とにかく雑談は終わりにしよう。時間が惜しい」

 

 同じ結論に至ったのか、スレインと違って言葉に出したアリオス。一同は同時に我に返って、話を当初の議題に戻していく。

 

「それが妥当な組み合わせじゃない?」

 

「そうだね。戦力的なバランスは十分だと思う」

 

 トヴァルが提案した突入班の組み合わせにエステルとヨシュアが声を上げて納得する。勿論、この場の全員が同意見である。

 アリオス・エオリア・リンが太陽の砦。エステル・ヨシュア・スコット・ヴェンツェルが月の僧院。そして、スレイン・サラ・トヴァルが星見の塔という半ば当然ではあるが、一番バランスの取れているチーム分けになった。

 

「では、現在から二時間後丁度に突入。各自、健闘を祈る」

 

 アリオスの言葉に一同は気合の入った同意を口にして解散し、足早に現地に向かっていくのであった。

 

 

 




最初に深く謝罪します。
大変申し訳ありません……

だらだらと書いてしまいました。

クロスベル支部の面々がかなりの脇役になってしまいました。
零・碧とプレイはしているのですが、どうも記憶に残っていなくて……

という訳で、次回は突入編となります。
もう少し細かく書ける様に頑張ります。

今回もお読み頂き、ありがとうございました。
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