英雄伝説 魔の軌跡   作:閃の細道

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お待たせしました。
今回から再び本編に戻ります。

そして、残念ながらスレイン君は空気です……(笑)

申し訳ございません……


それでは、第27話、始まります。


真実への道標

 時刻は少し巻き戻して、スレインがレクターと共に共和国基地前でキリカに出会った頃。

 リィンら実習A班は、襲撃の被害を受けたノルド高原南西部にある監視塔まで足を運んでいた。

 

「あちこちが砲弾で破壊されているな……。想像していたよりも酷い状態みたいだ」

 

 リィンの言葉に頷く一同。

 爆撃の炎は鎮火されているものの、未だに黒煙が出ている箇所もある。外壁は破壊され、破片が辺りに飛散していた。

 兵士たちは右往左往しており、緊急事態であるという事を再び認識させるには十分な光景であった。

 

「実際に人も亡くなっているのよね……。まさか、こんな場面に出くわす事になるなんて……」

 

「士官学院に入った以上、遭遇し得るかもしれなかった状況ではあるがな。その一つ目が、共和国との戦の火種に関わるものとは流石に思わなかったが」

 

 アリサの言葉に遠回しな表現で返答したユーシス。

 しかし、自身でもこの現実は想定していなかったのだろう。その口調はどこか悲壮感が混じっている。

 

「学生の私たちには荷が重いかもしれませんが……」

 

「……いや、これまでだって何度も悪い状況に出くわしてきた。今回だって諦めなければ、きっと何とか出来るはずだ」

 

 エマの弱気な発言を遮る様に、激励の言葉を口にする。

 その言葉で士気が高まった一同は責任者から許可を取ると、手分けして調査を開始するのであった。

 

 

 

 

 

 

 

「さて……ひと通りの場所は調べ終わったようだ」

 

「ああ、ここらで情報を整理してみるとしよう」

 

 監視塔屋上での調査を終えた一同は隅の方で合流する。

 ガイウスの言葉に返答すると、聞き込みから現場検証までの結果報告を開始する。

 

「まず、事件当時の状況をはっきりさせておきたいな」

 

「ええ、大事な事よね。まずは、この監視塔が砲撃を受けた時刻。確か、昨晩の3時よね?」

 

 リィンを主軸に情報整理が始まると、アリサが得た情報を述べていく。

 見張りを担当していたザッツによると、丁度交代の時刻で警戒心の薄れる時に、夜闇に紛れて砲撃が行われたという事だった。

 

「ええ、守備隊の方がそう証言していました。そしてその時、殆ど同じ時刻に不自然な事が起きていました」

 

「ああ。共和国軍基地への攻撃、だな。中将によれば、被害の規模は監視塔より大きかったようだが」

 

 共和国方面を確認していた兵士から聞いた情報を基に話すエマ。

 その言葉を補填する様に、ガイウスがゼンダー門でゼクスから聞いた情報も含めて答える。

 

「そうなってくると、やっぱり共和国軍の工作という線は考えから外すべきかしら。でも、帝国軍側から攻撃を行った事実も確認出来てないのよね」

 

「砲撃は確かにあって、帝国軍も共和国軍も被害を被っている。更にそれを行ったのがどちらなのか、という疑問は宙に浮いたままなんですよね」

 

 アリサとエマが今の話を整理して、まだ不明確な点を洗い出していく。

 

「だとしたら、考えられるもっとも高い可能性は……どちらでもない勢力、か」

 

 ユーシスの言葉に一同は、「可能性として考慮しているが言葉に出せなかった」事に対して動揺の顔色を見せる。

 そして、それを代表した様にリィンが答える。

 

「……裏で、何者かが暗躍している可能性があるという事か」

 

「帝国と共和国の間には、常に一定の緊張状態がある。だが、このノルド高原には、他の政治的な意味を持つ場所に比べれば平和な方だ。その均衡を、昨晩になって崩すと理由はなかったはずだ」

 

「確かにそうですね……むしろ、今の状況を考えるとデメリットの方が多い様な気がします。クロスベル方面だったら、また事情が違うんでしょうけど」

 

 ユーシスとエマの説明は真理である。元々、ノルドの地は帝国領でもなければ、共和国と同盟を結んでいる訳でもない。あくまで中立的意味合いを持つ地である。

 エマが言った通り、現在進行形で主導権争いをしているクロスベルであれば、こういった事件が起こる動機は容易に現れてくる。しかし、それをノルドで行うには、百害あって一利無しとも言えるのだ。

 

「そういえば、監視塔が受けた砲撃自体にも不自然な点があったわ」

 

 現在の情報からではそれ以上の議論が難しいと判断したアリサは、別の情報を口にした。それは、アリサだったからこそ、手に入れる事が出来た知識である。

 

「砲撃に使われていた兵器……『導力迫撃砲』の事だな?」

 

「ええ、その通りよ。砲撃に使われたのは、RF社製の可能性が高いんだけど……あれが共和国軍に配備されているのは、どうしても考えられないのよね」

 

「共和国軍にはRF社にも劣らない大規模な導力メーカー『ヴェルヌ社』があるからな」

 

「ええ、共和国軍の装備は基本的にヴェルヌ社製よ。それに、使われた兵器は、今は帝国軍にも支給されていない旧式の物だと想う。一部の傭兵なんかが横流し品を手に入れて使っているらしいけど……」

 

 ユーシスとアリサが自身の知識を織り込みながら、交互に情報を纏め上げる。

 アリサは、屋上に落ちていた砲撃弾がラインフォルト社製である事を見抜き、更に型式が古いという事まで割り出していた。

 これはラインフォルト家の息女だから出来る芸当ではなく、しっかりと自身の家族が作り上げた企業に対して勉強した結果なのだろう。

 

「そうすると、どちらかの軍による工作の可能性は低そうですね」

 

「ああ、だが、現時点では、それよりも重要な問題がもう一つ残っている」

 

 エマの言葉を制する様にユーシスが言葉を重ねる。

 偽装工作の線は、先程で既に手詰まりになっている。だからこそ、解くべき謎を先に提示する。

 

「そうか。どこから砲撃が行われたたか(・・・・・・・・・・・・・)、だな?」

 

「うーん……流石にそれを割り出すのは難しそうだけど……」

 

「だが、それを示さない限りは今までの推理は意味を成さない。とても戦争を止める口実にはならないだろう」

 

 リィンの発言に難色を示すアリサ。しかし、ユーシスから放たれた言葉には同意せざるを得ない。

 推論はあくまで推論。事実ではないからである。

 

(ん? 今、何か感じた様な……)

 

 一同が議論している最中に、エマは何かに呼ばれた様な気配を感じ取った。

 それも、自身にだけ分かる気配(・・・・・・・・・・)

 その正体を探るべく、会話から意識を逸らして、それに対して集中していく。

 

(……これは……スレインさん?)

 

 一言で言うと、どこからか魔力を含んだ風が吹いている。否、魔力が風に乗って運ばれている。

 そして、その魔力は今まで側で感じてきた、自身のそれとは似て非なるもの。だからこそ、普段と違う感じ方をした為に敏感に反応したのだろう。

 エマは更に感じ取った魔力に意識を集中させて、その真意を探っていく。

 

(これは……場所の知らせ……?)

 

 監視塔に向かって糸の様に細い魔力が風と共に流れている。この魔力を辿って、自身の位置を教えたいのだろうか。

 しかし、それであればギリギリで感知出来る様な細さではなく、もっと分かりやすくするはず。それにARCUSで通信する手段もあるのにどうして。

 その時、エマの中でカチリと、パズルのピースがはまる音がした。

 この魔力はスレインの位置を教えるものではない。特定の場所(・・・・・)を知らせる為のものだ。わざわざ感知されにくい細さにしたのも、第三者からの感知を避ける為の可能性がある。

 そして、このタイミングで感知したという事は、”人”ではなく”場所”を伝えたいからだ。

 

「? 委員長? どうしたんだ?」

 

「あ、いえ、もしかしたら、砲撃の位置を特定出来るかもしれません」

 

 リィンの言葉で我に返ったエマは、状況に合わせた言葉を述べる。

 自身の推論が正しいものかを証明する為にも、一度しっかりと調べてみたいからである。

 

「それは本当か?」

 

 ユーシスが「どうやって?」という表情をしながら言葉を出す。勿論、一同が同じ表情だ。

 

「ええ……ガイウスさん、風の流れをお聞きしたいのですが、お手伝いをお願いしてもいいですか?」

 

「ああ、もちろんだ」

 

「アリサさん、迫撃砲の飛距離などは分かりますか?」

 

「ええ、ある程度なら」

 

 エマの発言に不思議そうな顔をして答えるガイウスとアリサ。

 風と砲撃の距離だけで、場所を特定するなど聞いた事がない。ましてやこの広い高原なら尚更である。

 

(……スレインさん、信じますよ……)

 

 心の中でそう呟きながら、目を瞑り意識を風に集中していく。

 正直、ガイウスとアリサに協力を頼んだのは、自身の“魔の力”はまだ悟られたくないからである。スレインと違って、表立って言える程の自信もないし、自身の立場は隠す通す必要があるからである。

 意識を再び集中させていくと、瞼の裏には広いノルドの地が広がっている。実際と違うのは、モノクロの世界であるという事。その中には極細の碧い糸が見える。先程感じたスレインの魔力だ。

 その魔力の糸を辿っていき、監視塔を抜けて高原に出る。更に南部へと進む。そうすると、ちょっとした崖の様な場所に到着する。糸はそこの地面から出ていた。

 情報であればそれだけで十分。後は直接行って確かめればいい。

 深層世界まで入り込んだ意識を徐々に引き上げて瞼を開ける。

 

「……リィンさん、地図を貸して頂けますか?」

 

 リィンは無言で頷いて地図を取り出し、その場に広げる。

 エマは先程自身の意識が辿り着いた所を探すと、指を指して一同に教える。

 

「……ここ、ですね。確信はないですが、確かめる価値はあると思います」

 

「これだけの情報でそこまで……レーグニッツが執着するのが滑稽に見えるな」

 

「そんな事まで分かるなんて、委員長。さすがだな」

 

 ユーシス、リィンは本当に驚いた様な表情をしている。

 しかし、エマからするとそれは的外れの意見でもあるので、つい苦笑を溢す。

 

「あははっ。そんな事はないですよ。何というか……スレインさんの気配が感じ取れた様な気がして」

 

「え? スレインって……エマ、あなたまさか?」

 

「い、いえ、そういう訳じゃないですよ!? 何となくです」

 

 アリサが急にジト目になると、自身の言葉に語弊があった事に気づく。

 慌てて頭を横に振って否定するが、少女の表情は変わらない。確かにそう捉えられてもおかしくはない発言で、「本当に?」と追い打ちをかけてくる。

 しかし、詳しく説明する訳でにいかず、男子達に助けを求める様に視線を送る。

 

「コホン、とりあえず、委員長が言った場所に行ってみよう」

 

「ああ、そうだな。とにかく今は時間が惜しい」

 

 咳払いをしてから発言するリィンと、それに賛同するガイウス。

 現状を理解したアリサも直ぐに表情が戻り、何とかこの場の難を逃れた。

 そうして一同は監視塔を後にして、エマが探し当てた場所へと急行するのであった。

 

 

 

 

 

「ザイル? 当たりみたいだな」

 

「ええ、そうね。エマのお手柄ね」

 

 先程、深層世界で見た所に到着して馬を下りて、辺りを捜索し始めたリィンとアリサが声を上げた。

 丁度、崖の付け根の部分にザイルが垂れ下がっているので、砲撃のポイントである事は間違いなさそうである。

 一同は順番にザイルから崖の上に登ると、そこには今までの可能性を確証に変える光景が広がっていた。

 

「これは……あの砲弾を打った迫撃砲に間違いないわね。最近使われた形跡がある」

 

 アリサは辺りに並んだ3台の迫撃砲を調べて声を出す。

 

「ふむ。周囲からは完全に死界になっているな。闇に紛れて砲弾を発射し、そのまま放置して逃げた……そんな所か」

 

「だが……戦争を回避するには、これだけでは不十分だな」

 

 情況証拠を鑑みてガイウスが推論をするが、ユーシスの言う通り「戦争を回避する材料」には程遠い。

 

「そうだな。もう少し手掛かりが欲しいけど……」

 

(ん? これって……)

 

 リィンの言葉を聞きながら再び周囲を調べていたアリサは、迫撃砲の下部にメモ用紙が挟まっている事に気づく。

 台座の車輪に上手く隠れる様に挟まれている紙を取り出して、中身を確認する。

 

『犯人は北方にいる可能性がある。時間があるなら協力者を見つけろ。―――スレイン』

 

 エマの事を小馬鹿にしていた自分が、ちょっとだけ恥ずかしくなった。

 まさか、本当に彼が関わっているとは。エマが感じた気配というのはあながち間違っていなかったという事である。

 

「アリサ、何か見つかったのか?」

 

「えぇ、これ。ちょっと見てくれないかしら」

 

 リィンに声をかけられて思考が戻ると、手に持つメモを一同に見せた。

 

「スレインはここに来ていたのか」

 

「そうみたいだな。それに、俺達が来る事も予想してたみたいだ」

 

「しかし、この『協力者を見つけろ』というのはどういう事だ?」

 

 ガイウスとリィンの言葉に同意しつつも、不可解な点を指摘するユーシス。

 しかし、言ってしまえばゼクス中将が協力者でもあるので、あまり気にしないでも良さそうな点でもある。

 

「とにかく一度ゼンダー門まで戻って中将に報告しよう」

 

 その疑問は一度保留にして、ゼンダー門に報告へ行く事を決める。

 犯行に使用された兵器と犯行場所。これだけでも十分な収穫であるので、その報告をする事が先決という流れである。

 

「あ……!?」「あいつは……!?」

 

 ザイルを下りて空を見上げると、リィンとユーシスは同時に声を上げる。

 頭上には、空色の短髪の少女が、銀色の飛行物体に乗って北へ飛翔する姿が見える。

 

「あれは、バリアハートの時も見かけた……!?」

 

「ああ、間違いあるまい」

 

「このタイミングで現れるなんて、流石に無関係とは思えない! 追いかけるぞ!」

 

 エマ、ユーシスが以前見かけた記憶と照合して同一であると結論付ける。

 そして、それはリィンも同じ。犯人かどうかは不明であるが、貴重な手掛かりの可能性が非常に高い。

 空を飛んでいる以上は、直ぐに追いかけなければ見失ってしまう。一同は馬を巧みに操りながら、追跡を開始した。

 北西に進み、『巨石文明』時代の遺跡の石柱群の群れが聳える丘の辺りで降下する姿を確認する。

 迂回しながら到着すると、確かな人の気配を感じた。どうやら見失う事なく間に合ったらしい。

 

「待て! そこを動くな!」

 

 一同は一気に丘の上まで駆け上がると、リィンの声がその場に広がる。

 すると、腕を組みながら一人佇む少女は、こちらを見た瞬間に笑顔になる。

 

「あ、シカンガクインの人だー!」

 

「俺たちの事を……?」

 

「ど、どうして知ってるの!?」

 

 目の前にいる少女の予想外の発言に、一同は動揺の色を隠し切れず、リィンとアリサが声を上げる。

 そして、その動揺を大きくする原因はもう一つ。先程まで少女が乗っていて、今も横で静かに浮遊している銀色の飛行物体。

 間近で見るのは初めてだが、その存在は実技テストで利用している『戦術殻』にどことなく似ている。

 

「君は一体何者だ? 監視塔と共和国軍基地への攻撃に関係しているのか?」

 

「無用な疑いはかけたくない。この場にいる理由と名前くらい教えてくれないか?」

 

 リィンとガイウスは言葉を選んで、冷静に質問をしていく。

 

「むう、なんかロコツに疑われちゃってるなぁ……やっぱりスレインの言う通りにしよう!」

 

「な!? スレインを知っているのか!?」

 

 予想外の発言に驚き、リィンは再び声を上げる。

 この少女は一体何者なのだろう。少女が着ているどこか近未来的なスキニースーツも見たことがない。

 今回の襲撃の犯人ではない様にも感じるが、それと同時に重要な何かに関わっている様にも思える。

 更に、スレインの事を知っているというのも、その口調からすると、妬み嫉みの類いではなさそうだ。そうなると、少なくとも「敵」ではないのかもしれない。

 そこまで考えた所で少女の言葉に思考は遮られた。

 

「うん。襲い掛かってくるから、ウデダメシしてみろって言われんだー」

 

 同時に少女は腕を交差させて、凄みのある笑みを浮かべて臨戦態勢となる。

 Ⅶ組もやるしかないという事を悟り、それぞれ得物を構えて同じく臨戦態勢となっていく。

 

「ボクはミリアム。ミリアム・オライオンだよ。こっちは“ガーちゃん”。正式名称は『アガートラム』。それじゃ、いくよー!」

 

「Ж・VkeәΓ」

 

 銀色の飛行物体も機械的な音声を出力した瞬間、戦いの火蓋が切って落とされた。

 

 

 

 

 

 

 

 

―――*―――*―――

 

 

 

 少女の戦い方は少し予想外であった。

 アガートラムが前衛、ミリアムが後衛という隊列は予想していた。

 しかし、ミリアムは基本的にアーツのみ。前線に出る時は、アガートラムを変形(・・)させて攻撃に出るという、不思議な戦闘スタイルであった。

 双方の動きに困惑はしたものの、こちらもそれなりに修羅場を潜っている。人数的にも分があったⅦ組は、苦戦はしたものの致命傷を受ける事なく勝利を収めた。

 

「わわっ、キミたち、スレインの言った通り結構すごいな〜。これなら確かに大丈夫そうかも」

 

 戦闘終了と言わんばかりに、ミリアムは後方へ飛び退いた。

 

「くっ、貴様……一体どういう事なのか説明してもらおうか」

 

「ああ、話せる限りで構わない。スレインの事も悪く言ってない様だし、君が知っている情報を教えてくれないか?」

 

 ユーシスとリィンの言葉に観念した様な顔つきになったミリアムは、直ぐに無邪気な笑みを浮かばせて口を開き始める。

 

「手伝って欲しいのは、監視塔と共和国軍の基地を砲撃した連中……数名くらいの武装集団の確保だよ」

 

「っ……!?」

 

「な、なんですって!?」

 

 ガイウスは声にならない呻きを、アリサは声を上げて驚く。

 

「あの迫撃砲を見たでしょ? あれと同じものが共和国軍の基地から少し離れた場所に隠してあったんだ。ま、同じ連中が仕掛けたんだろうね」

 

 飄々と話すミリアムとその内容が噛み合わず、一同は驚きを隠し切れない。

 

「ちょ、ちょっと待て……」

 

「その武装集団というのは一体……」

 

「詳しくは知らないけど……。猟兵崩れっぽいから、高額なミラで雇われたんじゃないかな〜。ま、それはこれから確かめに行こうと思ったんだけど」

 

 ユーシスとエマの発言に答えると同時に、自身の今後の行動指針も告げたミリアム。

 しかし、現状の会話の中で、まだ判明されていない点がある。

 

「ミリアムと言ったな。スレインとはどういう関係なんだ?」

 

「んー、敵じゃないよ。……オトモダチって感じかな? 昨日の夜に会って、今回襲われたら手伝わせろって言ってたんだ」

 

 その純真な笑みには悪意も敵意も感じられない。どうやら言っている事は本当らしい。

 スレインが何処に居るのか聞きたかった所だったが、こちらも時間があまりない事に気付いて、無用な詮索はここで終了した。

 ミリアムの話によると、先程見つけたスレインの置き手紙と同じ内容であり、北方の『石切り場』という所に潜伏しているという情報だった。

 一同が手短に挨拶を済ませると、ミリアムはアガートラムを文字通り消した(・・・)

 それは、自身らが知っている『戦術殻』と酷似している現象であり、アリサやユーシスが言及しようとしたが、上手くミリアムに濁されてしまうのであった。

 

 とにかく、時間がない今、無用な詮索をする余裕がない。ゼンダー門で待機しているゼクス中将に報告を入れる為に、一度集落に戻る一行。

 既に集落付近まで共和国の軍用飛行艇が威力偵察を行っており、刻一刻と状況が悪化している様に感じ取れた。

 集落に到着すると、避難の為に移動の準備が始まっていた。

 急ぎ長老の家にある旧式の通信機で、ゼクス中将に今まで得た情報を手短に説明する。

 

『―――では、その武装集団は高原北側に潜伏しているのだな?』

 

「ええ、間違いなさそうです」

 

「これから自分たちが出向いて押さえるつもりだ」

 

 リィンとユーシスがゼクスの問いに答える。通信機の奥から聞こえる声は、どことなく苦渋の決断を差し迫っている様な重々しい声色だった。

 

『……この状況では仕方ないか。15:00までの行動を許可する。くれぐれも気をつけるのだぞ』

 

 ゼクスの決断に返事をしてから、通信機を切る。

 しかし、その会話を横で聞いていた者達は不安そうな表情をしていた。

 

「猟兵崩れの武装集団か……」

 

「猟兵……噂には聞いた事がある」

 

「ふむ、厄介な連中が入り込んだものじゃな」

 

 ラカン、イヴン長老、グエンと年配者が一様に声を上げるが、そこまで分かっていて動かない訳にはいかない。

 心配にしている3人に決意の意志を伝えて、長老に家を後にする。

 今も姿を現さないスレインも、きっと何処かでこの状況を食い止めているはずだ。

 だからこそ、自分たちは出来る事を最大限に行う必要がある。きっと彼がいたらそうやって激励するだろう。

 

「さて、ミリアム。敵の潜伏場所は北側のどの辺りなんだ?」

 

 スレインの置き手紙にも、ミリアムの言葉にも『北側』というだけで詳しい場所は知らない。

 だからこそミリアムに問いかけたのである。

 

「ん〜、多分みんな知ってるんじゃないかな〜。ここから北に向かうとでっかい巨神像が見えるよね? あれの裏手にどーんとある、なんか薄暗い遺跡なんだけど」

 

「『石切り場』か……」

 

 ミリアムの解説にガイウスが答えると、一同は顔をしかめる。

 昨日、ガイウスに案内をされて入口まで足を運んだのだが、どこか不思議な雰囲気を醸し出している遺跡であった。

 入口付近にはほんのりと涼しげな空気が流れており、学院の旧校舎ともまた違う、異質な感じがした場所。

 場所も相手も油断できないと再認識して、気を引き締めて『石切り場』まで進んでいくのであった。

 

 

 




幕間って感じになってしまいましたね……

申し訳ありません。
ただ、この話を入れておかないと、今後の流れにどうしても問題が生じてしまうので……


という訳なので、ノルド編の最終章も合わせて投稿致します。
どうかご容赦を……

という訳で、今回もお読み頂き、ありがとうございました。
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