英雄伝説 魔の軌跡   作:閃の細道

7 / 34
ケルディック編にやっと入りました。

なるべく原作を崩さずにいこうと思っているのですが、記憶違いとかもあったりして崩れているかもしれないです。
ファンの皆さん申し訳ありません……

では、第7話、始まります。

※2015.08.10 修正


初めての特別実習

 4月24日。

 特別授業出発の日の朝。といっても、夜が明けたばかりの時間。支度を済ませて実習A班が待つ第三学生寮の玄関に向かうと、オリエンテーリング時に起きた初対面の男女のいざこざがやっと終結した事を悟る。

 玄関前で憑き物が取れた様な表情でリィンとアリサが話している光景に、「やっとか」という呟きと共に安堵の表情をして一同が揃うまで待つ。数分の差で揃うと、各々がリィンとアリサの関係修復に安堵の声を上げていた。これでA班の問題はなさそうだと安心した一同は、足早にトリスタ駅へ向かったのでった。

 リィン、アリサ、エリオット、ラウラ、スレインの組み合わせとなった実習A班は、先に到着していた実習B班に振り分けられていた面々の重たい雰囲気に目を向ける。その視線の先にいるのは、例のごとく仲の悪さをこれでもかと見せつけている、金髪と緑髪の二人組が不機嫌な顔で背中を見せてる所だ。

 だが、これは学院長も公認してしまった正式な課外授業である。今更その内容にも班分けにも文句を言えるはずもない。ましてやその当日。後の祭りなんだからいい加減に腹をくくれと思うものの、2人以外のメンバーも不安しかないといった表情で青ざめている。せめて実習前のエールをと思い、B班の所まで足を運ぶ。

 

「とりあえず、無理に何かをする必要はないから、なるべく穏便に済ませる事だけを考えろよ? 最悪のケースになったらガイウスが止めるだろうし、解決ではなく最善を目指せ」

 

 正義感の強そうなⅦ組の委員長エマにそう言って肩をポンと叩く。ガイウスはリィンと何やら話しているが、この状況であれば同じような事だろう。

 その後、リィンとアリサの仲直りに気づいたエマはその話で現実逃避、もとい会話を弾ませる。ひと通り話が終えたタイミングで、始発列車到着予定のアナウンスが流れる。B班は始発に乗る予定になっているので、若干2名を除いて盛り上がっていた場はようやく動き始めた。

 B班が向かう実習先の紡績町パルムは、帝国領土の中でも最南端に位置する場所である。道中も帝都を経由して乗り継ぎをしなくてはならず、始発の列車に乗っても到着するのは恐らく夕方頃だろうとエマは言っていた。それを考えれば、A班の実習地であるケルディックはトリスタと同じ帝国東部。クロスベル行きの旅客列車に揺られて1時間程のところである。距離的には充分に恵まれているとも言えた。

 

「よし、それじゃあ俺たちも行くか」

 

 リィンのその言葉に従って、A班の面々もホームへと向かい、到着した列車に乗り込んでケルディックへと向かう事となった。列車が整備されて帝国の移動手段が劇的に変化したこの時代、こうやって座っているだけで目的地に着くというのは本当に有り難い。

 席に座れる人数の関係上、リィンらの座る四人掛けの座席ではなく、通路を挟んだ隣の座席に一人で座っている。リィンが先日手に入れた『ブレード』と呼ばれるカードゲームで遊びながら、和気藹々と過ごしているメンバーを見て物思いにふける。通路を挟んで盛り上がるのは、一般的に見れば行儀が悪い。道中を楽しんでいる一同に席の交代を申し出る事も無粋であるので尚更であった。

 

「なーに、感傷に浸ってんのよ」

 

 その声に驚く素振りも動く事もせずにスレインは言葉を出す。

 

「いんや、若いっていいなぁと」

 

「あんたが言っても嫌味にしか聞こえないわよ?」

 

「あ? あぁ、精神年齢って事にしとけ」

 

「また、なま言っちゃって」

 

 そう言い放つと同時にスレインの隣、窓側の席に腰をかける女性。スレインは全く持って無反応だったのだが、他のメンバーにとっては予想外の来訪だったらしい。

 

「「「「サラ教官!?」」」」

 

 通路を挟んだ席に座るクラスメイトは、揃って驚きの声を上げる。それもそのはず、前日には「私は行かないから頑張ってね〜♪」なんて事を、ビールを飲みながら言っていたのだから。

 

「初回サービスだろ? ろくに説明してないんだから、最初はガイド役がいるのが普通だろ」

 

 スレインは欠伸をしながら、さも当たり前かの様に淡々とそう話す。

 それはそのはず、特別実習には実地場所の記載はあったが、内容は一切書かれていない。それは前日になっても開示されず、サラからの話もなかったのだ。そんな状態なのであれば、当日に顔を出すのは当然であろう。

 

「ま、そんなトコよ。宿にチェックインするまでは君たちの面倒を見てあげるわ」

 

「あの、俺たちよりもB班の方に行った方がいいんじゃ……」

 

 サラの言葉に被せるように、この場の全員が懸念する内容をリィンが代表して口に出す。A班よりもB班の方が問題だ。というより、到着するまでの間ですら、何が起きるかも分からないB班の様子を見た方がいい。

 リィンはそう思ったのだろうが、サラがこちらに来た理由なんて容易に想像出来ると思ったのだが。

 

「えー、だってメンド臭そうだし。まぁ、どうにもならないくらい険悪になったらフォローしに行くつもりよ」

 

 そのサラの何気ない一言に、通路を挟んだ席にいる全員が唖然としている。分かっているけど、こんなにもあっさり、そして素直に言ってしまうとは。

 

「ま、早めにパルムにも行けよ。初実習で1人欠けるとか、お前の教官人生にも左右されるぞ」

 

 そう言ってスレインは目を閉じる。どうせこの後の展開は分かっている。自分も動かずに済む体勢でいた方が都合がいい。

 

「そんな事分かってるわよ。じゃ、あたし徹夜続きで眠いから寝るわ」

 

 そう言ってサラは自身の肩に頭を乗せる。その数秒後には寝息が聞こえるんだから、寝付きが良いなんてレベルではない。スレインは皆に「もう寝てるからとりあえずこっちは気にするな」とだけ伝えて、自分の列車の揺れに身を任せながら、眠りの誘いに心を委ねるのであった。

 勿論、この時横目でチラチラ見られながら、あらぬ憶測を言われている事を2人は知る由もない。否、気にしていないから知ろうともしないであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

―――*―――*―――

 

 

 

 交易地ケルディック。

 帝国東部クロイツェン州に属するその町は、その名の通り、古くから交易が盛んな地として栄えてきた。近郊に広がる肥沃な大地と温暖な気候が農作物の実りを豊かにし、それらが直接卸される事で商売が盛んになったという歴史もあるが、最も重要なのはこの地が各大都市との中継地点となっている事だろう。帝都ヘイムダルと、東部の大都市バリアハート。更には貿易都市クロスベルへの直行便も用意されている事からも、この地の産業的価値の高さが窺える。

 そんな土地だからこそ、東部近郊は元より、国外からの輸入品も集まりやすくなる。そしてそれらが売品として一堂に会するのが、ケルディックで一年を通して開催されている『大市』だ。その一年間の総売上高は帝都の高級デパートのそれを上回るとされている事からも、その繁盛っぷりが窺い知ることができる。

 近年は益々、ここでの商いを求めてやってくる商人や、大市狙いの観光客なども増え、賑わいも増しているという。故に、観光を名目として訪れるのならば特に問題もなく楽しむ事もできたのだ。

 

 と、在り来りの回想をしてみたものの、今回は観光目的ではないので、最後の一行はいらなかった。と、よく分からない感想を考えていたら、自分に向けられた質問の内容で我に返る。

 

「スレインとサラ教官の関係って……一体どうなのよ?」

 

 アリサはジト目でこちらを見ながら質問している。どんな答えが返ってくるか、ワクワクした様な表情を隠しきれていない。

 

「……言わなきゃダメか?」

 

 スレインのその問いには全員が首を縦に振る。ケルディックに向かう道中の流れから、おおよそ在り来りであり得ない回答を期待している一同を前にしているスレイン。観念した表情をしながら食休みと称してベンチで話す事を伝えて、町中まで向かって歩いて行った。

 

 この会話の流れになるまでの経緯を説明しておくと、ケルディックに到着してサラに案内された一夜を過ごす宿『風見亭』へと辿り着いた一行。待っていたのは、五つのベッドが並んだ宿場の一室。そして、女将から譲り受けた”特別実習”の詳細が書かれた紙の入った一枚の封筒だった。

 男女共に同じ部屋(ベッドは男女別で一応離れて設置されていた)で一夜を過ごす事に、当初強い抵抗感を示したのはアリサだった。普通に考えれば、年頃の男女が部屋を同じくして寝るなど有り得ないのでそれは当然の反応である。

 だが、その訴えに苦言を呈したのは、意外にも同性のラウラだった。「”軍”とは昔から、男女を問わず浸食を共にする環境」。彼女が真剣な表情と共に言ったその言葉に、アリサは口を噤んだ。卒業後に軍人の道を進む事が絶対ではないものの、今の立場は士官学院生である。そこに籍を置いている以上、自分の訴えがワガママである事を理解し、男子一同に威嚇をして話は本題へと移り変わった。

 ”特別実習”の内容―――そう称して女将であるマゴットがリィンに渡した封筒の中の紙に記されていたのは、『ケルディック周辺200セルジュ以内で執り行う事』という注意書きと共に連なっていた、三つの実習内容だった。

 『薬の材料調達』 『壊れた街灯の交換』『東ケルディック街道の手配魔獣』―――お使いじみたものから雑用、果ては魔獣討伐まで、良く言えば広範囲に用意された依頼、悪く言えば何でも屋と言った風なその内容にエリオットやアリサなどは落胆したような感情を漏らしたが、リィンやラウラはそれを真摯に受け止めていた。

 「こうした実習内容からどのようなものを得るのか、それを考えるのも含めての”実習”」。早々にその考えに至ったリィンには、少しばかり敬意を表した。その考え方が正解であり、サラも意味ありげな微笑を浮かべたまま何も言わなかったが、宿に到着して早々に地ビールを堪能していたので、教官からの言及はこれ以上ないと判断して一同は宿屋を後にした。

 その後は、アリサらも実習内容に際して文句を言う事もなく、気合を入れて依頼の遂行に臨んでいた。そのお陰か、礼拝堂の教区長からの依頼であった薬の調達や、武器工房からの街灯の交換依頼も早々に片づける事ができ、『風見亭』で昼食を摂った後に、最後の依頼【手配魔獣の討伐】に向かう事になったタイミングであった。

 

閑話休題(それはさておき)

 

「さて、と。先に言うけど、勿体ぶった割には大した話じゃないからな。特にアリサ。お前さんが思っている様な浮ついた話ではないから」

 

 ベンチに座って一息付いた後に、大市で買った飲み物を一口飲んでから話し始める。

 

「ちょ、ちょっと、私は別にそんな風には言ってないわよ? あれよ! 私達は入学式の時がサラ教官と初めて会ったけど、あなたはそうじゃない感じだったじゃない?」

 

 自身の考えが悟られていた事に驚きながら、それとは違う理由で頬をほんのりと染めながらアリサは、うまく質問の切り口を変えていく。

 

「確かにそうだな。そなたは元々サラ教官と面識があったのか?」

 

 その点においては同じ疑問を全員が感じていたのだろう。皆が頷くと同時に、代表してラウラが続く。

 

「ああ、面識ってか、前の前の職場が同じだったんだよ。先輩後輩ってやつ?」

 

 サラが遊撃士稼業をしていた事をⅦ組メンバーには話していない様なので、わざわざ自分の方でもオブラートに包んむ様に言葉を濁して答える。

 

「そうなると同僚って事なのかな。でも、同じ職場ってどんな仕事をしてたの?」

 

 今度はエリオットが質問を投げかける。おっとりしているようでも気になる事は気になるらしい。

 

「んー。それはサラに聞いてみれば? アイツが自分の事を言ってない以上、俺からアイツに関わる情報は言えないな。プライバシーってやつだ」

 

 自身の事だけなら言っても構わないんだが、他人があえて言ってない事が絡んでくると『プライバシー』で通せる辺りが言葉というものは便利である。

 

「でも、なんかそう聞くとまるで……」

 

 今まで黙っていたリィンが口を出す。質問というより、自身への問いかけの様な口調で周りがギリギリ聞こえる様な声でそう呟く。

 

「あー、リィンくん? それ以上言ったらシメるよ?」

 

 そう言ったスレインの目は冷ややかで全く笑っていなく、目線だけでリィンの言葉と思考を凍らせていく。一同はそのスレインの殺意とも思える目線と威圧感に負けて、喉を鳴らしてしまったのは言うまでもない。

 

「第一、そんな平和的な付き合いじゃないんだよね。そっちの方が何倍もマシだったさ」

 

 嘲る様な、それでいて寂しそうな表情を微かにしながら目線を遠くに向ける。それと同時に一呼吸置き、本日最後の依頼を済ませようと全員に移動を促すのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「スケイリーダイナか……エリオットがメインの布陣だな」

 

 町の東側のゲートを潜った先に広がる穀倉地帯『東ケルディック街道』。季節は春であるため、まだ一面には土しか見えないその景色だが、心地よく吹く風にはどこか自然というものを感じさせてくれる。

 そんな街道を時々出現する魔獣を蹴散らしながら進んでいく最中。最後尾を歩いていたスレインが呟く。

 

「え、そうなの!?」

 

 少しばかり緊張と不安がはっきりと伝わるエリオットの表情には、スレインの言葉を理解出来ないでいる。

 

「あぁ、アレは水属性にめっぽう弱いからな。アーツの方がダメージが通る。んでもって、アーツも使ってくるからリィンやアリサはアーツの妨害を優先した方がいいな。範囲攻撃はラウラが陽動に回り位置取りをズラすと安定すると思うぞ」

 

 今回の手配魔獣、スケイリーダイナは恐竜型の魔獣である。サイズは中型。その見た目とは裏腹に、範囲攻撃やアーツまで利用するという厄介な点はあるものの、そこまで知能がない為に人数がいれば比較的苦戦する相手ではない。

 

「ええ、分かったわ」

 

「承知した」

 

 アリサとラウラは緊張の様子を見せるものの、自分のポジションが明確になった事で、少し安堵の表情を見せる。

 

「スレインはどうするんだ?」

 

 リィンは、この少年が前衛なのか後衛なのか、未だに判断が出来ない為に、率直な疑問をぶつける。

 

「あぁ、どっちでも構わないんだが……そうだな、今回は後衛で全員の動きを見ておくよ」

 

 実際の所は前衛に出てしまうと、一人で何でも沈黙させてしまう恐れがある為、今回は自粛して全体の経験値を上げるというのが本音である。

 

「あそこだな。じゃぁ、指示系統は任せるぜ、リーダー」

 

「あぁ、スレインもよろしく頼むよ」

 

 

 

———手配魔獣との戦闘は、本当にあっさりと終わってしまった。

 初めての大型魔獣との戦闘であったにも関わらず、スレインが予め出しておいた各々のポジションが的を得ていたという点。そして、それぞれが期待以上の動きと戦術リンクを駆使した事によって、大怪我をする者もいなく大成功に終わったのであった。

 

 

 




書き終わって思ったのですが、特別実習の依頼をもっと細かく書いていった方が面白いのかなーと悩んでいます。

かなり端折っている感が出てきているとも思いますが、私も頑張ってレベル上げをしていきますので、お付き合い頂ければ幸いです。

では、今回もお読み頂きありがとうございました。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。