軌跡シリーズをやっていると、いつも2章くらいまでは難易度が高く感じてしまい、駆け足で進めているので、
正直、ケルディック編はあまり記憶にないのです……
重ね重ね、申し訳ございません……
という訳で、第8話、始まります。
※2015.08.10 修正
「どうやら、君たちには面倒をかけてしまったようじゃな。スレイン君には何度目だろうか。本当に申し訳ない」
時刻は黄昏時。とある一件の影響でケルディックの重心、大市の元締めであるオットー氏の自宅に招かれたⅦ組A班一行は、その一言と共に頭を下げられた。思いがけない人物からのその態度に若干たじろぎながらも、後半の言葉に引っかかり、困惑の表情を浮かべるリィンたちとは別に、スレインは今回の一件に対して疑問点を浮かべていた。
時間は十分ほど前に遡る。
東ケルディック街道の手配魔獣に完勝して、ケルディックに戻ってきたスレインたち。すると、大市の方からのざわめきと怒声が聞こえて、リィンの提案で直ぐに向かう事になった。駆けつけた先にいたのは、市の中央部、最も客足が良さそうな位置にある店の前で、胸ぐらを掴み合って罵詈雑言を浴びせる二人の男性。
正に一触即発のムードを懸念したスレインとリィンは、顔を見合わせアイコンタクトを取ると同時に、喧嘩をしていた二人に割って入り暴行事件の発生を阻止したのだ。その後、騒ぎを聞きつけて駆けつけた元締めのオットー氏によって事態は一時収まりを見せ、ひとまずは市に平和が訪れた。
二人の商人が殴り合いの直前まで発展した理由は、大市における店舗の位置。不思議な事に、二人ともが同じ場所の店舗の設置許可証を持ち、それがどちらも本物である。これは手違いというのも些か疑問が残る内容であるのだが、このままでは平行線を辿るばかり。元締めが”同じ店舗の場所を時間で区切って交互に使用する”という結論を出し、これ以上騒ぎを大きくしては売り上げにも響くと考えた二人は素直に従った。
その後、騒ぎを始めに収束させてくれたスレインたちに礼をしたいという事で、オットー氏が自宅へ招待したのである。
「オットーさん、俺の知る限り、先程のような騒ぎは今までなかったと思うんですけど、最近は結構あるんですか? 商人同士が揉める事もそうですけど、場所が重複する事そのものが稀だと思うんですが……」
「うむ。大市の出店場所を決める許可証を発行しておるのは公爵家なのじゃが、些か問題が起こっておっての」
「問題……税金関係ですか?」
オットーは小さく頷く。リィンたちも声を出さずに、真剣に耳を傾けていた。
曰く、最近になってクロイツェン州を収めるアルバレア公爵家が、大幅な売上税の引き上げを敢行。前年度に比べて、収める税の割合が格段に跳ね上がってしまったのだ。儲けの割合が少なくなると分かれば、当然商人達は売り上げを伸ばそうと躍起になる。そう言った雰囲気というかストレスや緊張感が蔓延し、先程のような騒動が時々起きるようになってしまったらしい。
商売人の観点からすれば、増税のリスクは死活問題だ。売上が伸び悩み純利益が少なくなる。そんな時に外部から大市に出店して元が取れないと分かれば、感情的になってしまう理由も分からないでもない。だからと言って、暴力沙汰はモラルを疑う所ではある。
しかし、オットーも元締めとしてただその状況を黙して見ていたわけではなかった。
本日の外出がそうであったように、オットーは頻繁にバリアハートのアルバレア公爵家まで赴いて何度も陳情を行っているらしいが、その都度門前払いを食らっているらしい。その期間は2ヶ月。仮にも土地を収める大貴族にしては些か冷遇に過ぎる対応だ。
「ふむ……オットーさん、確か大市で何かあった時は領邦軍が動きますよね? 最近はどうなんですか?」
「そうだが、近頃は動く気配すら見せなくなってしまったのう」
「なるほど」と呟いたスレインの表情は何かを理解したかの様な表情に変わっていく。他のメンバーも何かに気づいたのか、憤りや同情から不思議そうなそれへと変わっていた。
『領邦軍』―――帝国政府が抱える正規軍とは違い、これは『四大名門』と言われる帝国でも最大の四つの貴族が有する私設軍の俗称である。領地内の治安を維持するという名目で各地に常備軍として展開していて、当然ケルディックにも駐屯していた。
ただし今回の件、並びにここ2ヶ月の過去の騒動において領邦軍は一切動こうともしていない。
今までの疑問点を全て線に繋げれば、それが指す意味は単純だ。
「領邦軍が動かないのは増税に対する陳情を取り消したいから。それが行われない限りはケルディック……いや、大市に対しての”嫌がらせ”を続けるという事ですか」
「「ちょ、ちょっとスレイン!?」」
今までの疑問点と事象から組み立てた仮説は、的を得ていながらもストレート過ぎるその表現にエリオットとアリサが慌てる。
しかし、オブラートに包む必要は全くない。このケルディックで現在起きている紛れもない真実であり、それを簡潔に表現したに過ぎない。
「さすがスレイン君じゃな。その柔軟な考え方と推理力、そして隠すという事をしない物言い。何故今になって学生なのか不思議に思ってしまうわい」
「まぁ、それはそれって事で。仕事上……いや、経験で得たものですから。幸いな事に先輩方に恵まれたんで、そういった技能は勝手に身についたんです」
「いっその事、商人になってみてはどうじゃ? ベッキーといい勝負が出来るぞ?」
「いやいや、あの子には負けますわ。トールズに入学したって聞いたんで時々食材とかを頼んでますけど、生粋の商売人には勝てませんね」
完全に2人の世界に入ってしまっているスレインとオットー。物腰が柔らかといっても、倍以上の年が離れ、かつ、大市という帝国有数の市場を取り仕切る人物といつもと変わらない物言いで対応しているスレイン。その光景を見ながら一同は、会話に入る事もなく、ただただ唖然としていたのだった。
スレインはひと通り話し終えると、この場を長く留める事も意味のない行為である事を察知して、テーブルの上にあった紅茶に口を付ける。それが合図になったのか、オットーも満足した表情を見せて、再びリィンたちへと視線を向ける。
「君たちが思い悩む必要などない。これはワシら”商人”の問題じゃ。君たちは気にせずに、”特別実習”に専念しなさい」
その言葉が終わりの合図だった。紅茶を御馳走になったことに各々は礼を述べてオットー氏の自宅を出る。
外はすっかり日が沈みかけ、町並みは夕焼けに染まっていた。
終始無言の一同。今の話を聞いて何も思わない程薄情な人間はA班にはいなかった。各々が何かを考え、この問題に真摯に捉える。
しかし、それと同様に、自分たちの身分が”学生”である事も忘れてはいなかった。このまま大市の問題に関わったとしても、それは特別実習の枠を越えている。学生が大人の話に首を突っ込むという行為は無謀である。下手をすれば、元締めであるオットー氏に迷惑を蒙らせる危険すら出て来るのだ。
身の程を弁えて引き下がるか。はたまた多少無茶をしてでも自分たちにできる最大限の行動をするべきか。
そんな事を広場で立ち止まり考えていると、一同の前にサラが突然現れた。どうやらB班の状況が思った以上に芳しくないらしく、これから列車に乗ってパルムへと向かうらしい。その旨を伝えて駅へと向かうサラを見送るA班一同。
「とりあえず、夕食にしてレポートやって、やる事やろうぜ」
スレインの提案にリィンたちは納得して、張り巡らせていた思考一時停止してから宿へと足を運ぶのだった。
―――*―――*―――
「本当、僕たちⅦ組ってどうして集められたんだろうね?」
夕食後の食休みを取っていた一同を前にして、その何気ない一言を口にしたのはエリオットだった。
何故、自分が”特科クラス”と言う場所に選ばれたのか。サラは「『
ならば、どういう基準で自分たちを選んだのか。一同が思考を巡らせる中、リィンがポツリと呟いた。
「士官学院を志望した理由が基準と言う訳じゃないだろうしな……」
当たり前であるが、この広い帝国には数多くの教育機関が存在する。中には、トールズと肩を並べる様な由緒正しい学校も幾つかあるものの、何故敢えて”士官学院”を選択したのか。
ラウラの場合は、「目標としている人物に近づくため」
アリサの場合は、「実家を出て”自立”がしたかったから」
エリオットの場合は、「元々違う進路を希望していたものの、成り行きで」
そしてリィンの場合は―――「”自分”を見つけるため」
全員が肝心な部分を隠しているが、その”理由”を一人ずつ話していた。
「それでスレインはどうなの?」
アリサが「最後なんだからちゃんと白状しなさいよ」と顔に書きながら、こちらに問いかける。
「んー、理由……ねぇ」
そう言って悩んでいる様な素振りをする。一瞬の間を置いて、目線は何を見るわけでもなく虚空を彷徨う。
「強いていうなれば、成り行きで生きてきた自分から、本当の自分を取り戻したい……か。はっ、何言ってんだ俺」
自分の言葉に嘲笑しながらそう言い放つスレイン。その表情は、どこか寂しげで何かを後悔する様にも見えた。
「ま、俺の場合はそんな大層な理由があって学院に入った訳じゃないから、人生の目標って事にしといてくれや」
「余計スケールが大きくなってますけど」なんて事をアリサは言っていたが、そこは敢えて気にしないでおいた。
そろそろレポートを書かないと、睡眠時間に障害が出てしまう。テーブルに出ている紅茶を飲み干し、一同が部屋に向かおうとしたその時だった。
「―――待て、リィン」
ラウラが有無を言わせぬ強い口調でリィンを呼び止める。
ラウラの声を聞きながら、足が止まってしまった2人。しかしラウラの口調から察すると、怒りを露わにしている訳ではなさそうだ。そうなると、単なるいざこざだろう。
面倒事は御免被りたいが為に、スレインは一足先に部屋へと戻っていった。
―――*―――*―――
無音の闇を月明かりが照らす夜更け時。1人の少年が教会前のベンチに腰掛け、何やら怪しげな言葉を発していた。
「契約に従い我に従え。風の精霊よ、我が呼びかけに応え具現せよ」
その言葉の後に少年の元に風が吹く。
「…………あぁ、それでいい。こっちが後手に回った場合だけで構わないと伝えてくれ。頼んだぞ」
今度はそう呟くと、少年の前で再び風が吹き上がる。
「ふぅ、やっぱ使い魔と契約した方がいいかなぁ……あ、そろそろ出てきていいぞー。眠れないのか?リィン」
少年がそう呟くと同時。物陰で隠れていたリィンは不思議な顔をして現れるのであった。
「独り言……じゃないよな?」
リィンは目の前で見ていた光景を思い出しながら、1人で言葉を発していた張本人に問いかける。
「あぁ、精霊と話していた。隠すつもりもないから言うが、これが俺の特殊能力ってやつだな」
「精霊?」
「そう、地水火風時空幻の精霊と俺は対話できて使役したり攻撃行使も出来る。ま、アーツみたいなもんだな」
飄々と話している彼の内容は、リィンに取っては未知の領域で、はっきり言うと理解し難い内容であったので終始無言でいた。
「ま、理解しろなんて言わないけどさ。俺も何でこんな事が出来るか分からないだよ。
これ以上の謎を増やすと話が全く進まないと感じ、彼がこんな時間に外に出てきた理由を問いかける。
「あぁ、痛い所を付かれたよ」
そう言ってリィンは数時間前の出来事と、自身の感情を話し始める。
————『リィン。そなた―――どうして本気を出さない?』———
夕食後、部屋へと移動しようとした矢先に呼び止められたリィンは、ラウラからそう言われた。
《八葉一刀流》―――リィンが教えを乞い、太刀から繰り出す剣技の名であった。《剣仙》の異名を取る大陸随一の武人、ユン・カーファイが興した、東方剣術の集大成として知られる剣術。
その継承者は大陸各地に存在し、その多くが武人として数々の名を上げている事でも知られ、剣の道に通じる者であれば、必ず一度は耳にする流派である。更にその皆伝者は”理”に通じる最上級の剣士として、《剣聖》の異名で知られる事にもなる。
無論リィンはその域には達していない。彼は―――”初伝”の段階で師であるユン老師から修行を打ち切られた身であった。
故に彼は、本気を”出さない”のではなく、”出せない”のだ。元よりないものを気合でどうにかできる程、才能があるわけでもない。
だからリィンは偽りなく答えた。「これが俺の限界だ」―――と。
《八葉》の名を穢している脆弱者。まだ見ぬ兄弟子たちに出会った時に、そう罵られる事を重々承知の上で言ったその言葉に、ラウラは特に反応を示す事はなかった。言ったのは、リィンに背を向けて、漏らしたように呟いた一言だけ。
「……良い稽古相手が見つかったと思ったのだがな」
同じく”剣”を志す者を失望させてしまったという罪悪感と、その後自分の胸中に残った寂寥感。それらの蟠りが、リィンの心を蝕んでいた。
その事があったからなのか、睡眠が浅く、目が冴えてしまって夜風を浴びに来た所だったらしい。
「なるほどな。んじゃ、行きますか」
「へ? こんな時間に一体何処に?」
予想外の言葉を聞いて声が裏返ってしまうリィン。
「バカか? 得物持ってきている時点で剣振って雑念取る気なんだろ? 相手してやるよ」
そう言うと、スレインはベンチから腰を上げ『東ケルティック街道』へと歩を進める。自分の思っている事をいとも簡単に見破られ、苦笑してしまったリィンはその後をついていく。
正直言うと、この少年の底が分からない。
見た目は自分と同じ程度の身長であり、顔立ちにしても歳相応の少年。しかし、入学してからその言動というか、人となりの全てが歳相応に思えない。
戦術オーブメントを開発する知識。自分が3人がかりで倒せた戦術殻をたった1人で3体を瞬殺する腕前。そして先程の未知な話。更に言えば、サラやオットー氏との繋がり。
しかし、自分はこの少年に疑問と同時に好意を抱いてる。さり気なくリーダーシップを自分に譲る傾向があるが、気が合う様な感じもするし、他のクラスメイトにもしっかりと気遣いをしている所を見ると人が良い事は歴然である。
そして何より、強い。迷う素振りもない真っ直ぐな行動。そして先程の大市での揉め事や、オットー氏との会話で見て取れた物怖じしない態度。
彼こそ自分が追い求めている姿なのかもしれない。
そんな事さえも感じる。
今、自分より前を歩いている少年がとても遠くに、見えているその背中がとても大きく感じるのであった。
月明かりが照らす街道を歩き、東ケルディック街道の一角に存在する風車小屋の前で2人は停止する。僅かばかりに広場のようになっているその場所で、彼は振り向いた。
「さて、話を聞いて俺が言いたい事は1つだけだ。リィン。何に悩んでんだか知らないけどよ、お前さん1人が闇に怯えてると思うなよ? 限界という言葉を口にして現実から逃げるな」
「っ……」
心を読まれたかの様な言葉に、言葉に詰まるリィン。しかし、リィンの言葉を待たずに次の言葉が放たれる。
「お前さんの剣技は何回か見てきた。俺は八葉の剣士ともやりあった事もあるが、それ以前にお前さんの剣には芯がない。怯えた剣だ。そんな剣ではこの先死ぬぞ?」
そう言い放つスレインには、リィンに向けて紛れも無い殺気が放たれていた。
「精霊の使役を見られたついでだ。俺の能力の一片を見せてやる」
そう言うとスレインの手には何も持っていなかったはずなのに、の
「いつの間に……? いや、さっきまで……」
何が起こったか分からず、現実を理解しようとしても出来ない困惑の表情を浮かべる。
「世の中にはな、理解出来ない様な摩訶不思議ってのは沢山あるんだぜ? 俺の得物は本来はこうやって出すんだよ。ま、正確に言うと違うんだけどな。さて、行くぞ!」
そう言い残すと、スレインの姿が視界から消える。それと同時に右側に気配を感じ、リィンはとっさに刀を構える。剣戟がぶつかり合う音が宵闇に響く。
再びスレインの姿が消える。それと同時に次は後方から向かってくる気配に、とっさに刀を構えガードする。
「この程度で見えないなら次は手足が無くなるぞ?」
スレインは一言だけを残して再び視界から消え、次は右側から1撃を浴びせようとする。
あれからどのくらい時間が経ったのだろう。実際には五分程度しか経っていないハズなのだが、一時間以上は立ち会っている気がする。
スレインの動きは全く見えない。1撃が放たれると瞬時に消えて、殺気を纏ってあらぬ方向から攻撃を受ける。
幸いな事に、気配を感じ取れるからギリギリのタイミングで反応出来る。それにしても、この体捌きに既視感を覚える。
「お前さんもそろそろ気づいたんじゃないか?」
スレインは呼吸も乱れず、汗1つかかず涼しげな顔で問いかける。
「……まさか、疾風の……?」
「正解だ。体捌きをそのまま利用しているから分かりやすかったかな?」
自分が感じていた既視感は間違っていなかった。なにせ自分も教わった体捌きである。八葉一刀流『弐の型 疾風』。疾さに重点を置いた剣技であり、その剣速は八葉の中でも随一である。
その体捌きを会得していて寸分違わず利用している事に違和感と疑問が行き来する。
「まぁ、俺の事はどうでもいいがな。いい加減に反撃の余地を示したらどうだ? 今のお前さんの剣には難しいかもしれんが」
その言葉に無言で剣を構える。しかし、八葉を初伝で止まっているリィンには、完璧な疾風に対応出来る速さも技術もない。それを知ってか知らずか、お互いに動かず静けさが辺りを包み込む。
「リィン、剣を初めて握った時、どういう目的があった?」
沈黙を破ったのは間合いから僅かに離れた状態でスレインだった。その言葉が今までの会話と違うもので一瞬たじろぐも、冷静になって答える。
「俺は……守りたいものがあった」
自分が何者かも分からないのに、温かく迎え入れてくれた家族。そして、あの事件を通じて、何よりも守りたいと思った妹。
家族を守る為に、
「んじゃ、もう一度聞こうか。お前さんは今、どういう目的で剣を握っているんだ?」
スレインの言葉に目を見開く。正に青天の霹靂だった。
今の自分は
八葉の師事を受けるキッカケ。心の奥底に眠る自身の本当の意志。それをいつの間にか、捻じ曲げて理由を履き違えていた。ラウラにあのような事を言われても仕方がない。自分自身が自分から逃げていた。
「ありがとう、スレイン。取り戻せた気がするよ。今も目的は変わらない。守りたいものがあるからだ!」
そう言ったリィンには、曇りのない目をして迷いを振りきった澄んだ剣先が見えていた。
「はっ、いいねぇ。その目、その剣。それでこそ八葉だ」
「あぁ、せっかくだから一太刀は入れてみせる。ラウラには謝るとして、スレインにはそれで報いるよ」
「なま言ってんじゃねーよ。それなら最後に大サービスだ。ついでにもう一つ見せてやる」
そう言ったスレインの手には先程の双剣ではなく、
「種明かしはしないけどよ、裏ワザ使ってやるよ」
そう言ってスレインは
その光景に様々な憶測が浮かぶが、今は関係ない。この相手に一太刀入れるまでが勝負。邪念を消して神経を研ぎ澄ませるだけだ。
「「弐の型 疾風!!」」
剣戟の音と共に、二人の間に旋風が巻き起こる。瞬間、轟音と共に無に帰り、夜の静けさが舞い戻る。リィンが大の字に倒れたのはそれと同時であった。
「はぁはぁ……まさか同じ技だとは思わなかったよ。スレインも八葉を?」
「んな訳ないだろ。一昔前に立ち合っただけだよ。言ったろ? 種明かしはまだ先だ。奥の手ってのはそう簡単に見せるもんじゃねぇの」
「はは、なんかここまで来ると何でもアリだな」
「間違ってはないと思うけど、今回は俺の勝ちだからな。敢えて言わないでおくよ」
そう言って手を伸ばし、リィンが手を取り立ち上がる。「貸し1な」という無邪気な笑みを浮かべリィンに告げると苦笑いをしていたが、すぐに迷いを捨てた表情に戻り前を向く。
「(これで恐らくは面倒事になるだろうな。一応、布石は打ってあるが……ま、そん時は頼んだぜ、クレア)」
スレインは辺りを照らす月を見ながら、そう心で呟き、自分たちの宿までの帰路につく。
様々な感情が入り乱れる、特別実習1日目はこうして終わるのであった。
スレイン君が『疾風』を使える理由は、まだまだ教えてくれません。
ある意味、彼のジョーカーなのです。
そろそろ、シナリオブックの購入を検討しております。
話や流れの相違があった場合はご容赦下さい。
それでは、今回もお読み頂き、ありがとうございました。