トカゲ娘が幻想入り   作:ごぼう大臣

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今回で感づいちゃう人、いるかな・・?


ルーミア見っけ、あなたが主人?

 

「全く・・バカな真似をしたわね。咲夜。」

 

「・・申し訳ございません。」

 

私は深く頭を下げる。その相手は一見幼く可愛らしい、しかし大いなる力を秘めた方。そして私の、この館の主。

 

あの女との戦いで気を失った私は、柔らかいベットの上で目覚めた。

 

それは、館の主、お嬢様のベッドだった。辺りを見回すと、そのお嬢様が椅子に座って私を見守っていた。

レミリア・スカーレット。高貴なる"吸血鬼"のご令嬢。白い帽子とドレスを身に纏い、これまた白い肌を輝かせている。黒く小さな翼は彼女のチャームポイントだ。

 

今まで私はこのお嬢様に忠誠を誓い、何事も意のままに手足となって働いてきた。しかし、今回は違う。

 

「・・私に危害が及ぶと恐れたのね?」

 

「・・はい。」

 

今日、私はお嬢様の命に始めて逆らった。"あの女"を刺激するなと言われたにも関わらず、独断で始末しようとした。

 

「出すぎた真似を致しました。」

 

「・・そうね。私達は念のため事実を知らされただけ。手を下すのはアイツらよ。」

 

アイツらというのは、真相を知っている彼女達だろう。此方に知らせてくれたのも彼女達だ。

力量からして十分信用できたはずだ。紅魔館に近づいて来たからといって、私が手を出すべきでは無かった。

 

「・・暫く、部屋で謹慎を命じるわ。明日の朝まで仕事は休みなさい。」

 

「・・かしこまりました。」

 

それしか言えずに黙りこんでしまう。すると、お嬢様は戸惑うように眉をしかめ、ため息をついた。完璧主義で、深刻になりやすい。以前も何度か言われた気がする。そのままバツが悪そうに窓の外に目を向け、呟いた。

 

「・・向こうも、そろそろ目覚めるかしら。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その場所は、何と呼んでいただろうか。

 

淀んだ空気。辺りにある沼、草木、あらゆる物から腐臭が立ち込め、清らかな者は一匹たりとも存在しない。かわりに地から這い出たような生を感じさせない奴等、白い骨とガランドウだけの木偶人形、あるいは腐れた虫と菌に喰われて溶けた土色の肉の、いやもはや泥のような連中が光が差さないその世界の中で狂喜乱舞している。

私はそんな中で何かを貪り食っていた。思い出せない。到底全てを視界に収めるなど出来やしない、それこそ"世界を跨ぐ"程に途方もなく大きかった何か。

 

天の、その巨大な何かが下から突き刺さる遠い世界の奴等とは、何度も顔を合わせた気がする。

 

もはや憎しみを呼び起こす引き金となっても、その名前を奴等は性懲りもなく囁くのだ。

 

「――・・・」

 

・・・・それが終わったのは、いつだったろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・

 

「――・・・ん・・・」

 

名前を呼ぶ誰かの声。さっきとは違う。

誰だったか・・・・

 

「・・・・さん・・」

 

違う。これは私の、名前じゃない。

 

・・いや、オレの名前だ。聞き覚えのあるこの声。確か・・

 

「リザさん!」

 

「うお!?」

 

大声で叫ばれて跳ね起きる。下には、ソファの柔らかい感触。そして目の前には、心配そうに見つめる美鈴の顔があった。

 

「・・大丈夫ですか?酷くうなされていましたよ?」

 

「あ、ああ・・」

 

曖昧な返事をして体を起こす。頭がずきずきと痛み、髪が汗に濡れて額に張り付いている。どうやらうなされていたのは本当らしい。

 

「美鈴・・ここは?」

 

「応接間ですよ。リザさんが倒れてから、ここに寝かせたんです。」

 

「・・そうか、あの時・・」

 

咲夜と戦い、美鈴の目の前で倒れてから、オレの記憶はない。どうやら気を失い、美鈴の世話になってしまったようだ。

 

「悪い。手数かけちまって・・」

 

「気にしないでください。二人くらいどーって事ないですよ。」

 

手をヒラヒラさせながら笑う美鈴。二人と言うからには咲夜も運んだのだろう。それをやってのけて笑顔で言い切る姿には頭が下がる。

 

「・・・・っ!」

 

しかし、重大な事を思い出す。今すぐにでも確認しなくては。

 

「美鈴!ルーミアは!?」

 

「ひゃっ!」

 

身を乗り出して食い入るように尋ねる。美鈴は目を丸くしながら手で制止して答える。

 

「心配しないでください。地下にいますよ。何もしちゃいません。」

 

「そ、そうか?」

 

言葉の歯切れが悪くなる。口で大丈夫と言われても実際に確かめなければ、体がウズウズしっぱなしだ。

 

美鈴はそんなオレの胸中を察してか、「もう」と一言呟いて立ち上がった。

 

「元から案内するつもりですよ。付いてきてください。」

 

美鈴が扉へと歩き出す。オレは慌ててその後を追った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――

 

「さて、ここですよ。」

 

美鈴は大きな扉の前で立ち止まった。長い廊下をずいぶん歩いて薄暗い階段を下り、そこからまた伸びる廊下の先。その扉は一際威圧感を放ち、ノブや装飾などそこかしこに高級感を放っている。

 

しかしそんな事は構いやしない。無造作に取っ手に手をかけ、一気に手前に引く。一刻も早くアイツの無事を確認しなきゃ気がすまない。

 

「あ、それ押して開けてください。」

 

「アッハイ」

 

道理で随分重たいと思った。改めて扉を押すと、ぐ、やっぱし重い。しかしヘコたれてはいられん。両手のタイミングを合わせて一気に開け放つ。

 

「ルーミア!」

 

バンッ!という大きな音と一緒に叫ぶ。その時、視界にルーミアの姿があった。

 

「『おれは さんびきヤギの がらがらどんだー!』」

 

「おおー!」

 

「・・・・へ?」

 

そこは図書館だろうか。周囲は身の丈を遥かに越える巨大な本棚が幾つも並び、その中には数えきれないほどの書物がギッシリと詰め込まれている。

部屋の中央には、本を読むための長机があり、そこでは黒いベストとスカートに赤いロングヘアの少女がルーミアと並んで座り、絵本を読み聞かせていた。

 

「『いちばん うえの にいさんは そういうと トロルの』・・ておや?」

 

「んー?」

 

ボンヤリと立ちんぼうするオレに、揃って視線を送るルーミアと赤髪の少女。やばい。目があった。この状況、割りと恥ずかしい。何を一人でいきんでいるんだオレは。

 

「・・ふふっ。」

 

視界の端で美鈴が笑う。こいつ、今度はコブラツイストでもかけてやろうか。

 

「リザー!」

 

赤面するオレの気持ちを知ってか知らずか、ルーミアがパタパタと駆け寄り、抱きついてきた。満面の笑みを浮かべている所をみると、拍子抜けだが何もされていないのは本当らしい。安堵の息が漏れた。

 

しかし、ルーミアの顔はすぐに不満を露にする。

 

「もー、遅いよ!この部屋に入ってからずっと待ってたのに!」

 

「あ、ああ。すまん。」

 

ルーミアが上目遣いでむくれる。しかし不味いな。ここで館の連中に襲われたとは言えないし、どう誤魔化したものか・・

 

「ごめんなさい。格闘ができると聞いて、私が手合わせを申し込んだら、やり過ぎちゃって・・」

 

美鈴が急に割り込んで釈明し出した。オレからすれば全くのウソっぱちなのだが、それをいう前にルーミアが声をあげる。

 

「え〜!?何してるのよ!リザに乱暴して!」

 

「いやあ、ごめんなさい反省してます。」

 

美鈴が深々と頭を下げる。多分オレを追い込んだ咲夜を庇っているんだろう。こちらとしては本来の顛末を隠された上に疑問も残るのだが、今は黙っておいた。ルーミアを宥めようと何度も謝る美鈴を見ていると、その苦労人加減がうかがい知れる。

 

「・・あ、あの、はじめまして、ですよね。」

 

「お?」

 

ルーミアを眺めているとおずおずと呼ぶ声が一人。振り向くとルーミアに絵本を読んでいた赤髪の少女がペコリとお辞儀した。

 

「この図書館でお手伝いをしています。小悪魔です。」

 

「ああ。リザだ。」

 

この館で三度目の自己紹介を済まし、差し出された手を握る。今度は喧嘩の必要は無さそうだ。

 

「ここには、普段お前一人か?」

 

他にそれらしい人影は見えない。もしこの図書館に一人だけなら大変そうなモノだが・・

 

「いえ、主人はいるんですが・・あ〜、ちょっと待ってくださいね。」

 

そう言うと、小悪魔は小走りで本棚の影まで走っていった。程なく誰かを連れて・・いや、腕を掴んで半ば無理矢理引っ張っている。

 

「今ダイバダッタが教団から分裂したところ・・」

 

「それは今は良いですから、挨拶を済ませて下さい・・・・!」

 

何やら言い争いながら小悪魔が連れてきた少女。薄い紫のゆったりしたドレスを纏い、変なドアノブカバーみたいな帽子をつけ、本を片手にボヤいている。長い紫の髪はあまり手入れしていないらしく、体にまた引っ張られるようにパサパサと揺れる。

 

「んー・・」

 

本を持った少女がこちらに気づいた。近寄ろうとするとボンヤリとした目付きのままボソリと声を漏らす。

 

「・・・・パチュリー・ノーレッジ。」

 

その少女、パチュリーはそれだけ言うと、クルリと背を向けて元の場所に戻ろうとする。小悪魔が慌てて引き止めた。

 

「ちょ、ちょっと!もっとちゃんと挨拶して下さいよ!」

 

「面倒臭い。」

 

「うわ、言い切った!」

 

「・・・・」

 

どうやら、このパチュリーとやらオレにはあまり関心は無さそうだ。ならば、ズルズル引きずる必要ないし切り上げてもいいだろう。

「なあ。これで全員か?」

 

小悪魔に向けて声をかける。小悪魔はパチュリーのドレスの長い裾を踏んづけながら振り返った。

 

「あ!待ってください。まだ肝心な・・・・」

 

小悪魔がそう言いかけた時。

図書館の扉が開く音がした。

 

「・・・・?」

 

そこには、白いドレスに白い帽子と黒い翼を生やした、小さな少女が立っていた。そいつはひとしきり室内を見渡すと、こちらをじっと見据えてくる。

 

「えーと・・・・」

 

「ああ、ご紹介しますね。」

 

ルーミアの相手をしてくれていた美鈴が、翼の少女の隣に立つ。改めて見ると、その少女がルーミアとそう変わらない身長なのだと分かる。ここの娘か何かだろうか・・・・

 

「こちら、この館の主。レミリア・スカーレットお嬢様です。」

 

「・・・・え?」

 

今なんつった?この館の・・主人?

 

「・・今なんか、チビとか思わなかった?」

 

「ご、誤解だ。」

 

ムッとして睨むレミリアに、思わず目を逸らす。レミリアはため息をつき、オレに向き直る。そして優雅な仕草で話し出した。

 

「・・紅魔館へようこそ。部下の非礼をお詫びするわ。どうかお許し頂きたい。」

 

「部下の・・・・?」

 

曖昧な言い方だ。美鈴か、咲夜か。頭の中で引っ掛かりを覚えた時、ルーミアが視界に入った。

 

「・・・・」

 

警戒心など全くなく済ましている彼女。アイツの中ではオレは美鈴一人にぶっ飛ばされた事になっている。

 

「どうか、今回のトラブルは忘れて欲しい。代わりにと言ってはなんだけど、今宵はできる限りおもてなしを致しましょう。」

 

・・トラブル、また曖昧な言葉。流石に勘づいてきた。オレが抱いている館の連中の態度への疑問。それを内密にしてかつ詮索しないでくれ、と暗に示しているのだ。・・おそらく、オレがルーミアの前できな臭い話をしたがらない事も見越して。

 

「・・・・」

 

不信感に何も答えられずにいた、その時。

 

グ・・・・

 

気の抜けた音が図書館に響き渡った。音のした方角を見ると、ルーミアがお腹を押さえて笑っている。

 

「・・夕御飯、食べたいな」

 

・・・・マイペースな奴。それにしてももうそんな時間か。レミリアがまた優雅な笑みを作りながら語りかける。

 

「ふふっ。折角だから沢山食べて行くといいわ。中々ここの味は味わえないわよ?」

 

滔々と言葉を紡ぐレミリア。全くの演技、等とは言わないが隠し事をしたまま良いようにされているようであまりいい気はしない。

すると。

 

「咲夜の腕は絶品だからねえ。咲夜を・・・・」

 

言いかけてレミリアが固まる。ルーミアが首をかしげると、急に手と翼をパタパタさせてこう捲し立てた。

 

「そ、そうだ!その前にお風呂入りなさい!外にいたんじゃろくに水浴びも出来ないでしょ!」

 

失礼な。そう言いかけ、ふと自分の匂いを嗅いでみる。

 

・・・・う・・・・

 

考えて見れば、昨日ノータッチなのは仕方無いにしろ、紅魔館に来てからも、

 

美鈴と戦って汗。

 

咲夜と燃える火の中での汗。

 

悪夢にうなされての冷や汗。

 

・・・・うん。

 

くさい(確信)

 

一応の女としてショックに苛まれていると、ルーミアがいつの間にか下から見上げていた。

 

「リザ、一緒にお風呂行こうよ。」

 

「ご案内します。」

 

「お、おう!」

 

美鈴とルーミアが先を行くのを慌てて追いかける。ややこしい考え事は後だ。今は風呂に入らなければ。

 

「ねえリザ。咲夜の腕って美味しいのかな?」

 

「・・・・多分意味が違う。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・とりあえずお風呂行かせたけど、どうしよう。このままじゃにっちもさっちも行かない。

 

「・・どうしました?お嬢様。」

 

小悪魔が尋ねてくる。私は心なしか声を潜めて答えた。

 

 

「・・夕飯を作るやつが・・いない!」

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