トカゲ娘が幻想入り   作:ごぼう大臣

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なんか物語の盛り上がりや区切りがイマイチ・・

すいません。


夕飯はなぁに、この服は?

 

「お嬢様、いきなり夕飯をつくるにしてもメニューはどうなさるおつもりで?」

 

私は子供エプロンをバッチリ着込んだお嬢様に尋ねる。

夕飯をつくると意気込んで台所に来たまでは良かったが、実際に何をつくるのか不安だった。客人には粗末なモノは出したがらないだろうし、かといって無理して豪華なモノを出そうとしたらコケるのは必至だ。なんせこのお嬢様、咲夜さんに今まで家事を任せきりで、包丁もろくに持ったことは無いのだ。

 

「ウムム・・」

 

お嬢様は俯いて考え込む。やはりというか、考えていなかったようだ。この人、出迎えの時もそうだが兎に角格上に見られたがる、見栄っ張りなところがあるので心配だ。頼むから満漢全席とか言い出さないで欲しい。

 

「・・決めた!」

 

お嬢様は手のひらをパァン!と大袈裟に打つ。何がくる!?と私はエプロン姿で平静を装いながら身構える。

 

「カレーにしましょう!ルウもあるし簡単に出来るでしょ!」

 

思ったより現実的な提案に私は胸を撫で下ろす。確かにカレーはお嬢様の好物でルウも常備してあるはずだ。面倒な仕込みもないし好判断だろう。

 

「いいですね!それにしましょう!美味しいですよねカレー!」

 

「ふふふ、そうでしょ?名案でしょ?」

 

私がなるべく大袈裟にはしゃぐと、お嬢様は嬉しそうに胸を張った。とにかく今は乗り気でいてもらわないと。

そして早速お嬢様は材料を用意しだす。人参、ジャガイモ、玉ねぎ、鶏肉、ついでにブロッコリー、そしてルウも戸棚から取り出す。

ところがその時。

 

「・・これは・・」

 

「?」

 

急いで磨いだお米を念のため早炊きモードでセットした私の背後で、お嬢様が沈んだ声をあげた。振り返ると、カレールウのパッケージを見つめたまましゃがみこんでいる。

 

「どうかしましたか?」

 

私が尋ねると、お嬢様はキッとした目付きで振り返るやパッケージを私の目の前に突き付けて言った。

 

「これ、どれもこれも甘口じゃない!」

 

「・・あー・・」

 

私は薄目で生返事をしながら、心の中で納得した。今まで咲夜さんが今まで作っていたのは甘口で、お嬢様も好んで食べていたのだろうが、おそらく甘口であるという事をお嬢様は知らなかったのだろう。自分や周囲のプライドを大事にするこの人の事、今改めて子供扱いされたような気になりご立腹というわけだ。箱を背伸びしながらぐいぐい見せつけ、上目使いで訴える姿が象徴的に見えて、私は思わず吹き出しそうになった。

 

「全く、バカにしてるの!?私を子供扱いして!」

 

むくれるお嬢様は可愛らしく、撫でてやりたい衝動にかられたが、主人と部下の関係ゆえそんな事はできない。なんとか顔を立てながら事を上手く運ばなければ。

 

「まあまあお嬢様。有るもので何とかするのも能力の内です。今のお嬢様の務めは、まず料理をつくる事。目先に捕らわれて目的を見失ってはいけません。」

 

「・・・・」

 

あ、眉がピクリと動いた。

お嬢様はこういう大仰な言葉遣いに弱いのだ。ここが踏ん張りどころだ。頑張れ私。

 

「大丈夫です。心を込めてお出しすれば失礼には当たりません。お嬢様なら出来ますよ。」

 

「・・・・」

 

全くのお世辞、というわけではないが幾らか無理して作り笑いをしていたのは確かだ。しかし、それが幸いしたのかお嬢様は無言で足を踏み出すと料理に戻りだした。

 

(ほっ・・・・)

 

こっそり安堵のため息をつき、隣でサポートに回る。

流石は吸血鬼というべき(?)か、その気になればポツリポツリのアドバイスであっという間にお肉と野菜を煮込み、ルウも溶かしてほぼ完成までこぎ着けた。

ここまではよかった。ここまでは。

 

「やりましたねお嬢様!後は盛り付けをしたら完成・・・・」

 

そう言いかけ、振り向いた時だ。

 

「いよ・・っとっと・・!」

 

「・・・・?」

 

お嬢様はなにやら沢山の小瓶を一生懸命ふらつきながら抱え、鍋の隣にガチャガチャと並べ出した。

 

「・・何です?これ・・」

 

尋ねながら屈み、瓶を幾つか手に取ってみる。

 

チリ、ターメリック、ナツメグ、コリアンダー・・・

 

どうやら全て香辛料のようだ。私が顔を上げてお嬢様と目が合うと、お嬢様はフンと鼻を鳴らした。

 

「客人に甘口なんてヌルイものを出せないわ。ここはワンポイント工夫させてもらう。私がそんなの好みだなんて思われたくないわ。」

 

お嬢様はツラツラと平坦な口調でそう言った。心なしか表情もぎこちない気がする。まずい。まだ根に持ってたみたいだ。私がそう思う間にお嬢様はチリの瓶を高々と掲げていた。その大袈裟な動作に私は嫌な予感がして止めに入る。

 

「ち、ちょっとお嬢様!あんまりムキになって入れたら駄目ですよ!?」

 

「案ずる事はないわ。少し調整するだけ・・

あ、でもどの位にしたら良いかしら。中辛レベルが良いかしら。でもそれじゃかえって普通過ぎるかしら。いっそ辛すぎるくらいがベスト・・・・」

 

駄目だ。お嬢様の目が浮わついてる。そして私の言葉など意に介さずお嬢様は瓶を降り下ろす。

 

―その時、勢いの為か、瓶の中蓋、粉を振るいにかけ小出しにするための部分が、

 

パカンと、外れた。

 

「「あ」」

 

声が出たのは同時だった。そしてその声が消えるまでの一瞬の間に・・・・

 

せき止めるモノが無くなったチリが、為す術もなく鍋に投入される。

 

「あーっ!」

 

覆水盆に返らず。時すでにお寿司、じゃない遅し。

カレーの真ん中にこんもりと盛られたチリの山が崩れる間、私とお嬢様は鍋の前で立ち尽くしていた。

 

「・・どうしよう・・」

 

お嬢様の呟きで我に返る。しかし正直こちらも同じ気持ちだ。というのもこのカレー、急ごしらえ故にお客二人に足りる程度にしかつくっていないのだ。つまりはかき混ぜたりしたところで誤魔化すのは難しいわけで。

 

「・・相当辛いですよねこれ・・牛乳でも混ぜます?牛乳味が混ざっちゃいますけど・・」

 

弱りながらお嬢様へと目を向ける。すると。

 

「・・お嬢様?」

 

お嬢様はなにやら真剣な面持ちで他のスパイスの瓶を手にしていた。眉をひそめる私に気づき、お嬢様は口を開く。

 

「・・このままじゃ"辛いだけ"になるわ・・。他のスパイスでバランスを取るのよ。」

 

そう来たか。しかし味の足し算だけでどうにかなるものだろうか。

 

「お嬢様。ちなみに何をどのくらい入れるかは・・」

 

私は恐る恐る聞いてみる。お嬢様はパラパラと香辛料を振りかけながら答える。

 

「カンよ。」

 

・・アカン。

 

恐らくインドばりのスパイシーカレーになるだろう。お腹を壊さないよう祈るばかりである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「ぷはーーっ!」」

 

風呂上がり、バスタオルを巻いた状態で二人同時に牛乳を飲み干す。確かに熱さに火照った体には丁度いい。

 

「美味しいね。リザ。」

 

「ああ・・ルーミア。口にヒゲついてるぞ。」

 

「え、本当?」

 

ルーミアは慌てて口を拭い、照れ笑いを浮かべた。やれやれとこちらも笑みを浮かべながら瓶を片付ける。

 

「んじゃ、とっとと着替えるか。」

 

そういいながら頭に手をかけ、ルーミアが湯船に入りやすいようにとアップにまとめてくれた髪をほどく。

 

「あーあ、可愛かったのに・・・・」

 

ルーミアが残念そうにいう。上がったから仕方ないと思いつつも、苦笑いが漏れた。

 

「そう言うなって。髪もすぐ乾かさにゃならんし。」

 

「んー、ま、そうだね。」

 

実のところ、交互に洗いっこしたのに加えてオレの髪が長いのもあって、湯船に入って上がる頃にはかなりの時間が経過していたのだ。人様の風呂にあんまり長くいるのもまずい。

 

「えーと、服は・・・・」

 

脱衣かごへと歩く。そこには入る前に脱いだ衣服が入っている、筈であった。しかし。

 

「・・・・ん?なんだこりゃ?」

 

かごの中にあるのは着ていた物ではなく、かわりに知らない服と何かの書き置きが入っていた。

 

「・・かご、間違えてないよな?誰かが入れ替えたのか?」

 

「こっちも違うの入ってるよ?」

 

隣でルーミアが言った。どうやら元の衣服は二人とも別のものにされたみたいだ。

 

「・・ふむ。」

 

書き置きを手に取る。そこにはこう書かれていた。

 

 

――リザさん、ルーミアちゃんへ

 

誠に勝手ながら衣服を洗濯させて頂きました。

明日にはお渡しできると思うので、それまではレミリアお嬢様と私の服をお貸ししますのでどうかお使いくださいませ。

 

――紅 美鈴。

 

「あらら。」

 

お節介なものだ。わざわざ貸し出してくれるのか。

 

「ルーミア。それレミリアのらしいけど、着ていいらしい。」

 

「え〜?レミリアの?」

 

ルーミアはなにやら困った顔をし、畳んである衣服を見つめる。そして暫くして、思いきったようにエイヤッ、とそれを広げた。

 

「へえ、洒落てるじゃんか。」

 

それは、黒を基調としたヨーロッパ風の子供服だった。派手では無いがシンプルな可愛らしさがあり、ルーミアにも似合いそうだ。

こちらがそう思ったとき、ルーミアも嬉しそうな、同時にホッとしたような表情を浮かべた。

 

「あー良かった・・レミリア、こういうの着るんだ。」

 

「どんなのだと思ってたんだよ。」

 

いささか大袈裟にルーミアが安堵したので、思わず聞いてしまう。するとルーミアは笑いながらこちらを向いて言った。

 

「だって、なんか変なの着てそうなんだもん!この前なんて革ジャンに指出しグローブ着て見せびらかして来たんだよ?」

 

「何だそりゃ・・」

 

想像して思わず苦笑いした。まあそういうのが格好いいと思う年頃なんだろうか。大きくなったら恥ずかしくなったりして。

 

「ま、安心したなら早く着替えな。いい加減風邪引いて・・っへきし!」

 

自分で言っててくしゃみが出た。ルーミアを見るとすでにウキウキとした表情で服を着込んでいる。こちらもかごに手を伸ばし、服を広げた。

 

「・・これは・・」

 

黒い服。詰襟に体全体をピッチリ覆うような形で、腰の辺りから深くスリットが入っている。

 

「・・チャイナドレス?」

 

美鈴の物らしいので納得といえば納得だが、それはよりにもよってズボンの無いタイプだった。脚が露になる、しかも正装。なんだか着るのに躊躇してしまう。

 

「何してんの?」

 

先に着替え終わったルーミアが覗き込んでくる。今まで見ていた服と違うせいで雰囲気まで違って見える。オレもそんな風にルーミアには見えるんだろうか。しかしオレの場合・・

 

「・・うぅ・・」

 

いつまでも悩んではいられない。そろそろ寒気までしてきた。どの道着るしかないのだ。

 

(・・えぇい、ままよ!)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・に、似合う・・か?」

 

「まだ言ってる!可愛いよ。本当に。」

 

 

洗面台の椅子に座るオレの髪にドライヤーを当てながら、ルーミアが笑った。しかしこちらは鏡に写る自分を見てもなんだか別人を見ているようで、気恥ずかしくなってしまう。

椅子に座ると足の間に裾の布が滑り込み、嫌でも太ももが露になる。思わず手で裾を引っ張る。それをみたルーミアはからかうようにこう言った。

「前はおへそとか出してたのに、恥ずかしいの?

 

「るせえ、それとこれは別だ!」

 

大人げなく口を尖らせるオレにまたクスリと笑い、ルーミアはドライヤーを止めた。

 

「じゃ、もう行こ。お腹すいたよ。」

 

「・・おう。」

 

オレが椅子から立ち上がるのも待たずに、ルーミアは駆け出す。慌てて髪を結びながら追いかけた。

 

「あ、カレーの匂い!」

 

嬉しそうにはしゃぐルーミアの後ろを駆けながら、この格好で走って行儀悪くは無いか、などと柄にも無いことをオレは考えていた。

 

 

【挿絵表示】

 




チャイナとアオザイ(ベトナムの民族衣装)で死ぬほど迷ったのは内緒。

次回辺り展開が動くはずです。

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