因みにフラン好きな人は閲覧注意かも。
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「レーヴァテイン・・・・?奴の使った炎剣か?
温い・・温すぎるぞ・・!」
私のレーヴァテインを"片手"で掴んだリザが言った。
「・・え?」
目の前の光景を頭が理解するまで、数秒。
―まさか、今の今まで、リザは逃げ惑っていたはずだ。スペカを私に一度も当てることができず、デコピン一発にあしらわれ、レーヴァテインで止めを刺される筈だった。なのに。
何故彼女は軽々と受け止め、笑っていられる?
「・・フン!」
リザが受け止めていた手を振り抜く。するとレーヴァテインは握られた部分から呆気なく折れ、ボロ炭のように霧散した。
「・・・・!」
反射的にその場を飛び退く。背筋が凍り、膝がワナワナと震える。対してリザはジットリとした目付きで私を睨み付けている。まるで蛇と蛙。さっきまでとは正反対だ。
「・・・・・・嘘だ。」
こんな事があってたまるか。今まで、こんな事ありはしなかった。レーヴァテインが正面から受け止められ、しかもあんな飴細工か何かみたいにへし折られるなんて。
リザが長い舌で舌なめずりをする。その仕草に言い知れぬ恐怖を感じ、弾かれるように右手を向ける。
「このっ・・!」
右手の力で細切れにしてやる。そう思った、が。
「・・ひっ!?」
思いがけず悲鳴が漏れ、体が竦んだ。
全ての物体に存在する、最も脆い部分、『目』。それを右の掌に移動させて握り潰す。それが私の力の秘密だ。
当然リザにも存在する筈だった。しかし、
それが何かに覆い隠される。背後から全身を包み立ち上るどす黒いモノ達。
「・・あれ・・は・・」
よく見るとそれは骸骨や腐ったゾンビの様なものが口を開け、ゴウゴウと気味の悪い慟哭をあげていた。亡者達の嘲笑とも怒りともとれない顔が浮かんでは消える。まるで地獄の釜を覗き込むみたいに。
「・・ぐ、うぅ・・っ!」
リザが俯いて唸り出す。細かく体が震えだし、何事かと狼狽えた瞬間、リザは跳ね上がるように天を仰ぎ、吠えた。
「がああああぁぁっ!!」
すると、ブシュリ、という生々しい音と共に尻尾が再生する。それだけでなく背中からメキメキと骨が軋むような音を立て、何かが広がりだし、シルエットが大きくなっていく。壊れた壁から漏れる月明かりが照らすそれは、バサッ、と風を切って広がるのを止めた。
それは翼だった。お姉様のように体の何倍も大きい、コウモリの翼。それらがユラリと揺らめき、尻尾が床にパシりとからかうように打ち付けられる。
その威容は、最早トカゲではなかった。これでは、まるで・・
「・・貴女、な」
何、と尋ねようとした、その瞬間。
ドスン、という重い衝撃がお腹に届く。それが何か分からないうちに熱い何かが体に拡がっていく。
「う・・あ・・」
声が震え、口からゴボリとヌメヌメした液体が流れ出す。鉄の味と臭い。
視線をお腹に向ける。リザの鱗に覆われた腕が、私のお腹を貫いていた。血が流れ内蔵がはみ出た其所を見て、涙が溢れ、今まで気づかなかった痛みが一斉に脳に届く。
「い・・たい・・」
顔をしかめながら弱々しく正面に向き直る。そこには私を見据えるリザの瞳があった。敵をなぶる時の、愉悦の籠った瞳。
直後、何かに強く振り回され、放り出される感覚。そして後頭部に固いものがぶつかりながらも体は飛び、何かを突き破る。
視界に突然満月が浮かぶ夜空と、上から見た紅魔館の庭が映った。ああ、放り投げられて壁を壊したのか。と理解する間もなく、
「グオアアァ!」
眼前にリザが躍り出る。腕を伸ばし、私の頭を髪ごと乱暴に鷲掴みにする。そしてそのまま外壁に叩きつけた。
「きゃ・・!」
そのまま横向きに顔を引き摺られる。歯が折れる感覚に、額は削れ、目を開けるのもままならなくなる。目の前はひたすらに赤い。
「くっ・・・そがあ!」
がむしゃらに弾幕を放ち、リザを引き剥がす。削られてぼやけた視界の中、翼を羽ばたかせながら睨むソイツにスペカを発動する。
「禁忌『フォーオブアカインド』!!」
召喚される私の三人の分身。私が引き下がると同時に三人がリザに弾幕をお見舞いする。
「グゥッ・・・・」
リザが怯む。しめた、いくら強くとも三人相手ならただじゃ済まないだろう。弱ったところでじっくり料理してやる。
って・・・・え?
「がぁっ!」
リザが尻尾で分身たちを薙ぎ払った。その瞬間。
三人が"消え"、そばの外壁までが大きく抉れる。遠く離れた私にまで風が届いた。
「・・・・冗談でしょ?」
分身がやられた。一瞬もしないうちに、尻尾の一振りで。
リザの眼が私を捉える。獲物は、私だけ・・・・
「うわああああぁぁぁッ!!」
スペカなんてもう関係ない。なりふり構わずありったけの魔力を込めてレーザーを打ち出す。大きさだけなら人一人を軽く呑み込むそれを前に、リザは体を丸め、翼で覆う。
(防御する気・・?せめて逃げられる程度にダメージを受けて・・!)
レーザーが当たる寸前、体力の限界を感じながら心の中で祈る。しかし、
リザの行動は予想外だった。体を翼で覆ったまま、レーザーに真っ直ぐ突っ込んで来たのだ。
「なっ!?」
リザはまともに喰らう。しかし、翼でガードしているせいか効いている風もなくレーザーの中をぐんぐん近付いてくる。
「くっ・・・!」
ついに至近距離までリザが迫る。もう他に望みは無い。必死で魔力を放つ手に力を込める。
が。
まさに目の前まで来たとき、リザが翼を勢いよく広げる。魔力は呆気なく吹き散らされ、風に舞う火花になって私にまでぶつかった。
「うっ・・」
思わず顔を覆う。その刹那、片翼が迫るのが視界に入った。
「ぐあっ!?」
脇腹を鋭く薙ぐ感覚。そして激しい痛みと共に、血が吹き出した。見ると、横に一直線、大きな切り傷。翼で切り裂かれたんだ。
「この・・!」
慌てて振り返ろうとして、肩にもう一発。続いて背中、脚、至るところに翼で斬られた跡が刻まれる。
「ッ・・・ああ!」
為す術もなく体を固くする。その瞬間、首に物凄い衝撃がした。グルグル回る視界のなかで、辛うじて尻尾が当たったのだと理解した。
「アガアッ!」
顔から地面にめり込む。精一杯目だけを動かしてリザの姿を捉えようとした時、背中に岩でも落とされたような重く鈍い痛み。
膝だ。背骨がミシミシ音をたてる。視界のはしのリザは暗闇の中で眼だけが爛々と光っている。
背中でバキンと嫌な音がした。最早立ち上がる事もできない。リザはユラリと脚を振り上げた。踏み潰す気だ。
「ッ!!」
体を小さなコウモリに変化させる。もう逃げるしかない。あんな化け物に構っていられるか・・!
チラリと背後を確認する。この姿なら打撃は当てるのは難しい。だが逃がしてはくれなかった。
炎。虫になって火に飛び込んだかと思う程の、盛大な炎だった。そいつはまるで津波のように、揺ったりと、大きく私を呑み込む。
ダメだ。間に合わない―
「水符『ベリーインレイク』」
聞き覚えのある声と言葉。同時に私の周囲に流水が吹き荒れ、私を球形に包んだ。
いつもならそれは、私が暴れるのを止めるためにパチュリーが使う魔法の1つだった。流水を嫌う吸血鬼の弱点を突き、私を包んで身動きを封じる術。
しかし今回ばかりは、私を守ってくれた。水は私を呑み込む炎を辛うじて防ぎ、私は少しの火傷と勢いに撥ね飛ばされるだけですんだ。
「きゃあっ!」
地面に倒れ、肘を擦りむく。リザを見やると、彼女は怒りを湛えた目で横を睨み付ける。その視線の先には。
「そこまでよ!」
魔導書を持ったパチェがいた。周りにはお姉様、小悪魔、咲夜、美鈴が揃ってリザと対峙する。
「だめ・・にげて・・!」
かすれた声で叫ぶ。コイツには敵わない。全員が束になっても・・
「グルル・・」
リザが一歩、パチェに近付く。まずい。そう思った瞬間。パチェからリザに向けて、花の薫りに似た魔力がフワリと流れ出す。
「グッ・・!?」
リザが虚をつかれたように顔をあげる。バリ、と歯軋りをしながら歩を進めようとするが、その足取りは次第にフラフラとよろめき始めた。
「眠りなさい。」
パチェの言葉が止めになったかのように、リザはバタリと倒れ込む。ポカンとした私や美鈴を他所に、リザは翼をまたパキパキと音を立ててもとに戻すと、スヤスヤと寝息をたて始めた。
「流石パチェ。搦め手はお手のものね。」
「人をトリックスターみたいに言わないで。」
お姉様の軽口に、パチェはさりげなくRPG職業を貶しながら魔導書を閉じ、ため息をつく。
「・・それにしても、不完全な"目覚め"だったから良かったわ。万が一完全に開放されたら、手に負えなかったでしょうね。」
・・・・なんの話をしているのだろう。血が流れすぎて薄ぼんやりする頭で考えていると、何人かの足音が耳に入る。
「妹様!」 「フラン様!」「ご無事ですか!?」
美鈴に咲夜、そして小悪魔だ。返事もままならない私に彼女らは腕をとり、体を起こそうとしてくる。
「あだっ・・!」
背骨がズキリと痛む。自己再生できる吸血鬼の体とはいえ、いささか酷くやられ過ぎたみたいだ。オロオロする三人。そこをお姉様が割って入る。
「フラン。」
お姉様は丁寧に私を抱え込んで、抱き締めてくれる。それでも多少は痛んだが、それ以上にお姉様の温もりは優しく、暖かだった。
「お姉様・・・・」
「全く、馬鹿なことをしたものね。・・でも、無事で良かったわ。」
やんわり叱りながらも、頭を撫でてくれる。安心した途端に、目から涙が溢れだした。
「うっ・・こわかっ・・たよぉ・・」
「・・今は気にしなくていいわ。安心しなさい。ほら・・」
しゃくりあげながらお姉様の胸に顔を埋める。音だけが耳に届くなか、お姉様とパチェが話すのが聞こえる。
「・・レミィ、どうするの?今回は何とかなったけど・・」
「・・・・館を出るまでは何とかごまかすわ。・・どうせ暴走した記憶は残らないでしょうし。
・・始末はアイツラがつけてくれるでしょう。」
声色は真剣だったが、会話の意味までは分からなかった。しかしお姉様が背中を撫でてくれるるうちに、私はいつしか一人、眠りに落ちていった。
今回のリザの姿は、個人的に仮面ライダーオーズのプトティラフォームのイメージです。
暴走態はロマン!