トカゲ娘が幻想入り   作:ごぼう大臣

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復活しました。不安定ですがどうかよろしく。


紅魔館を出よう。・・あれ?

 

「ん・・ふぁ?どこだここ。」

 

目覚めた場所は図書館のソファの上だった。何でこんな所にいるんだっけ。

 

・・そういや、あれからどうしたんだろう。昨夜、フランにボコられてから記憶がない。死んでいない所をみると、他の連中に助けて貰えたんだろうか。

 

「・・・・」

 

ゆっくりと上体を起こす。服はボロボロだが、不思議と痛みも、傷跡も無い。尻尾も元に戻っていた。

あれから何があったんだろう。フランがレーヴァテインを掲げて、打つ手が無くなって、そして・・・・

 

「・・・・・・・・」

 

記憶を探っても、答えは出なかった。あれから先がまだ書き込まれていないノートみたいに真っ白で、手がかりもなく眉間に手を当ててしかめっ面で固まるばかり。

 

「目が覚めた?」

 

「!?」

 

不意に声をかけられ振り返る。そこには本を片手に見下ろすパチュリーがいた。

 

「よ、よう・・・・」

 

「・・ボンヤリしているけど、私が誰だか分かる?」

 

眉ひとつ動かさずに首だけ傾げながら尋ねてくるパチュリー。あれだけズタボロにされたので、記憶まで飛んでやしまいか、と考えているのだろうが、もう少し心配している風を装って欲しいものだ。

 

「パチュリー、だよな?」

 

「正解。記憶に支障は無い?」

 

無愛想に次の質問を投げ掛けるパチュリー。見下ろしているせいか高圧的にも見えてくる。少しばかりムッとしたが、介抱してくれたのは多分彼女達だろうと思い直し、素直に答える。

 

「・・強いて言えば、昨日の夜にフランに襲われた途中から、覚えていない。」

「・・・やっぱりね。」

 

パチュリーはフウ、とため息をつく。正直ため息をつきたいのは怪我をさせられたオレの方なのだが、それを口に出す前にパチュリーは平坦な口調でこう言った。

 

「貴女、レーヴァテインを喰らって倒れたのよ。フランを止めなきゃ危なかったわ。」

 

「えぇ?」

 

パチュリーに眉を潜めながら向き直る。確かに記憶が途切れるのはレーヴァテインをみた直後だったが、それにしてはおかしいのだ。

 

「待てよ。見ろ、体が全然痛まねえぞ。アレを貰って倒れて、一晩でこうなるかよ・・ってふわっ!」

 

パチュリーに向けて大袈裟に体を広げて見せる。その途端、破れていた服がペロンと下にめくれた。危うく胸が露になりかけ、慌てて腕で隠す。

 

 

「・・・・フフっ。」

 

パチュリーが微かに頬を緩めた。初めて見る笑顔がこんな形とは残念だが、そんな事どうでもいい。幸いパチュリーもすぐ真顔に戻って質問に答えてくれた。

 

「私が魔法で治しといたわ。治療は専門外なんだけどね・・・・」

 

「へえ・・」

 

相変わらず表情は動かず、得意げにもならない。一夜にして結構すごい事していると思うんだが。

 

「んじゃ、早く着替えて。皆待っているわよ。」

 

「へ?」

 

オレが元々着ていた黒の衣服を押し付けられる。洗濯してあるのかフワリといい香りがした。

 

「待ってるって・・何が?」

 

「朝御飯に決まってるじゃない。もう大分遅いわよ。」

 

パチュリーが呆れたような視線を送る。もうそんな時間だったのか。地下だから日の光も無くて分からなかった。咄嗟にボロくなった寝巻きに手をかけ、ふと顔を上げる。

 

「・・見るなよ。」

 

「あら、ごめんあそばせ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そういや、今さらだがあんまし腹減らねえなぁ・・」

 

パチュリーと食堂に向かう道中、腹をさすりながら一言。

 

「変温動物の特徴ね。食べ物は少なくて良いけれど、代りに体温調節がきかない。」

 

「体温調節?」

 

「朝方とか寒い時間、体が怠かったりしない?そういうのよ。」

 

「あー・・」

 

成る程。朝に弱かったりチルノが来たときのアレは体の仕組みだったのか。感覚的に察するばかりじゃこの先危ないかもな。

 

「・・どうやら仕掛けは効いているようね。」

 

「? 何か言ったか?」

 

「いえ、トカゲの癖に乳房が何であるのかなって。ソレ詰め物じゃないの?」

 

「なっ!?」

 

ボソリと呟いた言葉が気になったが、パチュリーはオレを無視してスタスタと先を歩き出した。その真顔で言うのをやめろっちゅーに。

 

「着いたわよ。」

 

「あ、ああ。」

 

パチュリーがバタンと食堂の扉を開ける。テーブルには既にルーミア、レミリアが席についており、傍らに咲夜と小悪魔が立っている。美鈴は門番だからか、姿は見えない。

 

「あ。」

 

扉の音に気づき、ルーミア以下部屋の全員が目を向けてきた。遅れてすまん、と謝ろうとした時、ガタンと乱暴な音を立ててルーミアが駆け寄ってきた。

 

「もー!遅ーい!お腹ペコペコだよ!」

 

「わ、悪い・・」

 

膨れっ面のルーミアを宥める。その時、ふとある事が気になった。

 

「なあルーミア、昨日はその・・眠れたか?」

 

昨日フランが暴れたにしては随分能天気な表情だった。ルーミアはキョトンとこちらを見つめる。

 

「え・・朝までグッスリ寝てたけど?」

 

「ああ・・そう。」

 

呑気なものだ。此方は危うく死ぬところだったってのに・・。そういえば食堂にフランの姿が見えない。波風が立つのを恐れたんだろうか。

 

「何ボーッとしているの。早く座りなさいな。」

 

「っと、すまん。」

 

レミリアが素っ気ない口調で促す。それを聞いたルーミアに引っ張られ、隣の席に座る。

 

テーブルにはパンと紅茶にスープ、キャベツとベーコンのソテー、目玉焼き等が並べられていた。とりあえず手を合わせ、『いただきます』とあいさつする。

 

「いただきます!」

 

余程待ちくたびれていたのか、パンを口一杯に頬張るルーミアを横目に、こちらもパンを一口かじる。その時にルーミアがこちらを見上げてこう尋ねてきた。

 

「ねえリザ!朝御飯食べたらどこか行かない?」

 

「何処かって?」

 

「妖怪の山とか、三途の川とか、とにかく何処でも!」

 

「・・名前だけ聞くと楽しい場所に聞こえんな・・」

 

口許にパンくずをつけながら捲し立てるルーミアを見て苦笑する。この分だとそこまで危ない場所って訳じゃないんだろうが。

 

「つぅか、オレは幻想郷知らんし、何処でもと言われても・・」

 

パンを一旦皿に置いて天井を見つめる。正直ルーミアみたいに行きたい、行きたくないとか言える気がしない。今だ手探りで探検するような覚悟で行く方が妥当じゃ無いかと思うのだ。なんせルーミアは知らないが昨日は死にかけた。

 

「お前は何処行きたい?」

 

「え?私?」

 

それとなくルーミアに振ってみる。ルーミアは腕組みしてうーん、と考えたあと、コロリとした笑顔で言った。

 

「何処でも良いよ。リザと一緒なら。」

 

「なんだそりゃ。」

 

オレは思わず笑ったが、その瞬間視線を感じて振り返る。その方向にはレミリアがいた。

 

「・・・・」

 

オレの視線に気付くとレミリアはすぐに目を逸らし、優雅に紅茶を口に含む。その表情は全く他意を感じさせない。少なくとも見ただけでは。しかし、オレの胸中には一抹の不安が浮かぶ。

レミリアは何かを隠していた。フランはともかく、美鈴と咲夜の襲撃の裏にはオレの知らない何かがあるに違いなかった。レミリアが直接的な手段に出ることは無かったから精々居心地が悪いだけで済んでいた・・・・が、館の外ではどうなんだろうか。更に強硬的な連中に出くわしたら、そんな考えがよぎる。

 

「リザ?」

 

ルーミアが不思議そうな顔で覗き込んでくる。慌てて取り繕った。

 

「すまん、何でもない。」

 

「まだ眠いの?」

 

「かもな。」

 

しかし、どの道ここにずっといる訳にもいかない。とにかくルーミアの前では心配を表には出せないが、移動しなきゃいけないのは確かだった。

 

「じゃ、妖怪の山とやらに案内して貰うかな。」

 

「へへ、良いよ!今の時期紅葉が綺麗だから楽しみにしてて!」

 

ルーミアはそう言ってはにかむと、食事を再開した。話すときも食べるときも楽しそうなやっちゃな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・しばらくして、紅魔館の門前。

 

「じゃ、忘れ物はない?」

 

「手ぶらで来たから大丈夫だよ。」

 

「あ、お土産忘れたかも。」

 

「あげないわよそんなもん。」

 

レミリアにたしなめられたルーミアがひゃ、とオレの背中に隠れた。こちらを見上げたルーミアの額をコツンと小突いてやると舌をチロリと出して笑った。

 

「またね!」

 

ルーミアは空へと浮かび上がる。それを追いかけて飛び立つ、その直後、門前にいたレミリア達を見ると、みな笑顔で見送るような風ではなく、沈んだ顔をしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・行ったわね。」

 

「お疲れさまです。お嬢様。」

 

美鈴が労いの言葉をくれる。だからという訳でもないが、ため息が口をついて出た。

 

「フランにもアイツラにも、気の毒な事をしたわ。せめて昨日の夜に油断しなければ・・」

 

「あまり思い詰めないで下さいませ。今日の内に結局始末はつくでしょう。」

 

咲夜もそう言う。私は気を落ち着けようと大袈裟に肩を竦める。

 

「しかし、リザとかいう奴も単純ね。記憶が無いとはいえ、パチェの言葉をアッサリ信じるなんて。」

 

「根がそんなタイプなんでしょうね。いざって時には良いようにされますよ。ああいうのは。」

 

咲夜が珍しく憎まれ口を叩く。戦いで勝てなかったのを根に持っているんだろうか。間違っているとは言わないが、たしなめる意も込めて付け加えてやる。

 

「でも、頑固に歯向かう場合もあるわよ。

 

・・うまく行くと良いけど。」

 

私は、最早豆粒ほどになった二人を見つめながら、これから対面するであろうもの達の事を考えた。

 

そして直後、空に開いたのは大きな"隙間"―

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・なんだここ。」

 

目の前の光景を何度も確かめる。

 

オレとルーミアは真っ直ぐ山に向けて飛んでいたはずだ。それが・・

 

一面の赤。彼岸花、だろうか。赤い花が気味の悪いくらいに無数に広がっている。周囲は冷たく乾いた風が吹き、心なしか薄ら寒い雰囲気を漂わせている。

 

あの時起こった事を思い出す。山に向けて他愛もない話をしながら飛んでいた、その時・・

 

「そうだ!ルーミア!」

 

慌てて周りをキョロキョロ探し回る。すぐ見つかった。花に埋もれるようにしてスヤスヤとルーミアが眠っている。

 

「おいルーミア!起きろ!」

 

頬をペチペチ叩いてやるとうーん、と嫌そうに顔をしかめた。とりあえず意識はあるみたいだ。

 

「んー。なに、りざ・・」

 

「ボケッとすんな!見ろよ周りを!」

 

「うわ、なにこれ!」

 

ルーミアまで目を丸くして飛び起きる。コイツも分からないのかと一瞬落胆しかけたが、不安そうにこちらに目を向けてきたので慌てて表情を作り直し、状況を整理しようとする。

 

「オレにもさっぱり・・空を飛んでたと思ったら、いつの間にか・・」

 

戸惑いながら言いかけた、その時。

 

ザワザワ、と草を掻き分けながら近づいて来る音がした。弾かれたように振り向くと、

 

「・・ルーミアまでくっついて来たのね。アンタが下手くそなせいよ。」

 

「もうどうしようもないわよ。機嫌直して?」

 

二人の少女がこちらを見つめながら歩いてくる。睨んで身構えると一人が口を開いた。

 

「貴女とは初めてね。トカゲのお嬢さん。

 

・・私は、八雲 紫(やくも ゆかり)。こっちは博麗 霊夢(はくれい れいむ)。」

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