トカゲ娘が幻想入り   作:ごぼう大臣

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巨人対決!リトーvsゴリアテ!!

 

 

「リトー・・・?」

 

夕日を背にマントを羽織り、大剣を携えた大男。彼は相変わらず顎に蓄えた髭を弄りながら値踏みするようにこちらを見下ろしてくる。

 

「聞いた事があるわ。」

 

アリスが人形を周囲に展開しながら言う。人形を魔理沙やルーミアを庇うようにジリジリ散らせる様子と同じく、かなり警戒しているようだ。

 

「昔、幾人もの領主や王族をねじ伏せて、あのアーサー王とも戦った巨人。ただ者じゃないわ。」

 

アリスがリトーを睨み付ける。が、対するリトーは動じることなく、寧ろ満足げに頷き、自身への評価に愉悦を感じているようだった。それが気に食わなかったのか、魔理沙は「へっ」と吐き捨ててリトーに箒を突きつける。

 

「アーサーなんざそもそも作り物の主人公だろ。お前も偽物だ。ファーヴニルと同じな!」

 

魔理沙の言葉にリトーはしばし目をパチクリさせる。しかしすぐに笑顔になるとガッハッハと大声で笑って、また髭を撫でながら口を開く。

 

 

「そうかそうか。貴様らあの大トカゲ・・じゃない。兄上を倒したか。コイツは楽しみじゃわい。」

 

「兄上?って・・お兄さん?」

 

ルーミアが首を傾げた。大方外見のせいで言い方に違和感があるのだろう。しかし、頭の中の予想が思った通りなら、それも理屈の上ではその通りなのだ。

 

「へぇ、つまり親・・いや、作り主が同じって訳か。是非とも会ってみたいねえ。」

 

いやらしく上目遣いに、という仕草が似合う口調でいい放ったつもりだったが、如何せん相手が自分の四、五倍ある巨人ゆえに聞こえるように思い切り声を張り上げた。はいそうですか、なんて返事はハナから期待しちゃいない。案の定リトーはニヤリと笑って腰にさした剣に手をかける。

 

「来てくれるのなら大歓迎しゃが・・・そうもいかんのだろう?」

 

此方の返事は待ってはくれなかった。瞬間、物凄い風圧と重みのある風切り音が肌を叩く。直ぐ様飛び退いた刹那、岩を砕くような音をたててオレの身長の二倍ほどある剣が地面に食い込んだ。ビシビシと割れ目が走り、小さな石のツブテや砂が飛んでくる。

 

「うわっ!」

 

幸い全員がかわせたらしく、オレの近くに三人が同時に降り立つ。

 

「ほう、速い。そう来なくては・・・」

 

リトーは剣の腹で首筋をトントンと叩きながら、その場から近づくでもなく此方をジロジロ見つめてくる。アリスが忌々しそうに舌打ちした。

 

「あのデカイの、思いっきり見下してやがるわね・・・」

 

身長からして仕方ないだろう、という冗談はさておき、楽観視できないのは確かだ。数で勝っても大きさが違いすぎる。アリスの人形が全員でチクチク攻撃しようとも効きそうには見えない。ガリヴァーは寝ている間に縛られたのだ。あの髭のみならず筋肉までむさ苦しい大男に決定打を与える手段は、果たしてあるか・・。

 

「どけ!私のマスタースパークで・・・」

 

「駄目。」

 

魔理沙が飛び出そうとしたのをアリスがにべもなく制止する。

 

「何で止めるんだよ!?」

 

「今の剣の動き見たでしょう。あの反射神経なら、アンタの技なんて当たりゃしないわよ。」

 

対照的なアリスの冷静な、いや寧ろ辛辣な台詞を受け、魔理沙は「う、」と言葉に詰まる。

 

「でもどうすんのさ?」

 

横からルーミアが割り込む。アリスは幾分穏やかな声で「心配しないで。」と胸を叩く。

 

「どうした?かかってこんのか?」

 

リトーは退屈そうに首を鳴らして剣の切っ先を向ける。そこでアリスはオレ達の前に背を向けて立ち、懐から小さな人形を出して言った。

 

「相手が巨人なら、巨人で相手してあげる。」

 

そう言って、アリスが人形を放り投げる。

 

「出なさい、"ゴリアテ"!!」

 

アリスが叫んだ瞬間、人形からボワンッ!と大きく煙が上がり、その煙が晴れた頃、アリスの視界を覆うほどの巨大な人形が二本の鋭い剣を両手に持ち、リトーと向き合っていた。アリスが指を操ると、その人形は人間のような滑らかな動きで剣を振り上げ、リトーへと走り出す。

 

「ぬぅん!」

 

リトーもうなり声をあげ、ゴリアテと剣を撃ち合わせる。重たい鉄を力任せに叩く音が何度も響いた。

 

「アリス、頑張れ!」

 

「話しかけないで、気が散る!」

 

魔理沙の応援は呆気なく撥ね付けられた。魔理沙がガクリと肩を落とす。

しかし、アリスも実際両手剣で攻めているにも関わらず、決して優勢には見えなかった。未だにリトーには一つの傷もつかず、剣が弾かれる音が絶えず響き、アリスの指は幽霊のようにつき出した腕の先で明らかに不公平に思える程忙しなく動いている。

 

「っしゃあ!」

 

「っ!」

 

リトーが低い姿勢から剣を振り上げ、ゴリアテのガードを打ち上げる。アリスが慌てて距離を取らせ、地響きが鳴った。

 

「まだまだ温いぞ!」

 

リトーが間髪入れずに突っ込む。ゴリアテも受け止めたが、リトーは何度も剣を振り下ろす。リトーが攻めに、ゴリアテが守りに転じ始めた。

 

「おい、このままじゃ不味くないか?」

 

魔理沙が囁いてくる。確かに優勢とは言い難い。何かサポートが出来たなら・・・

 

「・・・・・・」

 

視界にルーミアが入る。じっと見つめていると不思議そうな顔で見返された。

 

「どしたの?」

 

ルーミアがキョトンとして見つめ返してくる。その手を取って脇の方に駆け出す。

 

「おい、どうした!?」

 

魔理沙が怪訝な顔で尋ねてくる。面倒なので顔だけ振り返って答える。

 

「魔理沙、アリスを頼む!・・ちょいとした作戦だ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふん、そりゃ、足りぬ、足りぬぞ!」

 

「くっ・・!」

 

脇道をこっそり忍び足で回り、リトーの背中が遠くに見える位置まで来た。ゴリアテはさっきにも増して追い詰められており、時折ゴリアテの陰からアリスが苦しそうな声をあげるのが聞こえる。

 

「・・ルーミア、さっき言った事、覚えているな?」

 

「うん。」

 

ルーミアは軽い調子で頷いた。リトーの背後に回りながら伝えた策が、上手くいくと良いが・・

伝えたのは以下の通り。ルーミアが後ろからリトーの首筋に取りつき、闇を展開する。リトーの視界さえ真っ暗にしてしまえばゴリアテが容易く斬ることが出来る、という訳だ。

 

「じゃ、行くぞ。」

 

ルーミアと共にリトーへと近付く。幸い相手はゴリアテとの勝負に夢中で、気づいていない。

あと数メートル。このまま行けば・・

 

「おわ、何これ!?」

 

リトーの動きに合わせて揺れるマントがはっきり見える程の場所で、ルーミアが声をあげた。げ、と声が出て、リトーも首を回して振り返る。

 

「「離れろ!!」」

 

リトーの怒声と剣撃が振るわれるのと、オレが叫んでルーミアの腕を引っ張ったのは、ほぼ同時だった。かろうじてルーミアは服を大きく切り裂かれただけで済み、オレの胸の中に収まる。

 

「隙あり!」

 

アリスが叫び、ゴリアテが剣を振るう。しかしすんでの所でリトーは体を捻って避ける。ちい、という舌打ちがやけに大きく響いた。

 

「何やってんだお前は!」

 

ルーミアの肩を掴んで揺する。よりによって不意をつく寸前にあんな大声をあげるとは。

 

「だ、だって・・」

 

ルーミアはばつが悪そうに目をそらす。その様子に暫しオレが戸惑った後に、ルーミアは顔をあげて答えた。

 

「マントになんか、毛みたいなのがモサモサ生えてんだもん。気味悪くって・・・」

 

「毛ぇ?」

 

目を凝らしてよく見ると、なるほど。模様のように見える灰色の何か。確かに毛の房がくっついている。しかし、何なのだろう。

 

「くぅっ!」

 

アリスの呻きに、慌ててリトーとゴリアテに視線を移す。鍔迫り合いを弾き、両者が睨みあった。

 

「流石ね・・・。倒した者の髭を縫い付けたマントは、嘘じゃない、ってか・・・」

 

ハアハアと息を切らしながらアリスが空笑いする。対してリトーは「ん?」と戸惑った声をあげた後、ガッハッハと大笑いした。

 

「成る程。そんな逸話が元じゃったか・・・生まれた時からこうじゃったから、ずっと奇妙じゃったわ。」

 

リトーはマントを口許に手繰り寄せて毛の部分を嗅ぎながら、愉快そうに喋る。そしてマントから手を離すと、これから戦に行く武将のように意気揚々と、高らかな声でこう言った。

 

「ようし!貴様らを倒した暁には、髭の代わりに髪を剃り落として持ち帰るとしよう!母上もお喜びになろう!」

 

高笑いに合わせ、口、胸筋、腹筋が躍動する。強がりで無いのは一目瞭然、アリスとの余裕の違いは歴然だった。その様子が癪に触ったのか、アリスは怒声と共にゴリアテを急発進させる。

 

「舐めんじゃないわよ!」

 

ゴリアテが二本の剣を突き出す。しかしリトーは体を横にそらし、下から近い側の剣を打ち上げる。

 

「せいっ!」

 

「・・あっ・・!」

 

甲高い金属音を響かせ、ゴリアテの剣の一本が宙に舞う。アリスと隣の魔理沙の視線が空中の剣に向いた一瞬、リトーはゴリアテに突進する。

 

「とどめ!」

 

不味い、そう思った刹那、いつの間にかルーミアが傍らから居なくなっていたのに気づいた。

 

「ぬおぉ!?」

 

リトーの焦った声。その方向を見ると、リトーの首から上が真っ黒な闇の球体にすっぽり覆われている。ルーミアが間一髪リトーに掴みかかったのだ。その隙を見てゴリアテが残った片方の剣で、リトーの腹を鎧ごと貫く。

 

「ぐっ・・ぬ・・あぁ・・!」

 

闇に覆われたリトーの顔からくぐもった悲鳴が漏れる。そのまま膝が崩れ落ちそうになった、が。

 

「があああぁ!!」

 

「わーっ!」

 

リトーが吠えてよろめきながらも剣を振り回す。体ごと回転したようなその一撃は、ルーミアを振り落とし、油断していたゴリアテの胴を抉って吹き飛ばした。

 

「危ない!」

 

「きゃああ!」

 

魔理沙がアリスを引っ張って飛び退く。あわや二人を潰すかという勢いでボロボロのゴリアテが轟音をたてて倒れこんだ。

 

「うわっと!」

 

地面に叩きつけられる寸前でルーミアをスライディングキャッチ。ルーミアは「うーん・・」と目を回して呻いているものの外傷は見当たらなかった。

一番の手札だったゴリアテがやられたが、リトーもそれが限界だったようだ。剣を取り落としてガクンと膝をつき、カハッ、とかすれた息と共に地面に血の模様が刻まれる。もう殆ど暗くなっていたせいか余計にどす黒く見えた。そして頭から音をたてて倒れこむ。

 

「終わり・・か?」

 

警戒しながら忍び足で近づく。すると魔理沙が臆する事なく、リトーの頭にマスタースパークの為の武器を突きつける。

 

「観念しろ、テメエの命運、今尽きた!」

 

決め台詞のように胸を張る魔理沙。しかしまたもやアリスが横から割って入る。

「何だよ、とどめ位やらせろよ。」

 

「だからアンタは馬鹿だってのよ。」

 

口を尖らせる魔理沙に対し、アリスは溜め息をつく。そして如何にも仕方なし、と言った風に話し出す。

 

「こんな風に抵抗出来ない相手には、出来るだけ情報を引き出すのが定石でしょう。」

 

成る程、と心の中でハッとなった。付け狙う奴等の正体を掴む、格好の機会だ。リトーの頭の側に回り込み、話しかける。

 

「・・おい、口は利けるか?」

 

「・・なん・・じゃ。」

 

多少弱々しく濁っていたが、聞き取れないことは無い。早い内に気になる事を聞いてしまおう。

 

「お前の言った"母上"ってのは、誰の事だ?」

 

「・・・」

 

リトーは答えない。地面に視線を落としたまま、ヒュウヒュウと息を漏らす。

 

「・・・紫か?」

 

心当たりのある人物だったが、肯定どころかピクリとも反応しなかった。どうにも違うらしい。

 

「・・そいつは、何処にいる?」

 

質問を変えてみる。これにもリトーは黙ったままだ。少しばかり苛立ちが募り出した所で、何かボソリと聞こえた気がした。

 

「・・・ぬ。」

 

「・・・・・?」

 

殆ど聞こえず、屈んで聞き耳をたてる。ブツブツと血生臭い臭いをさせながらなにやら呟いている。ハッキリ喋れ、と痺れを切らしそうになった、その時。

 

「言わぬっ!言って堪るかあ!」

 

急に勢い良く顔をあげ、リトーは怒鳴り声をあげた。思わず腰を抜かす。リトーはゼエゼエと荒い息を吐きながら此方を睨み付ける。抵抗する力など残っているようには思えないが、その青白い顔はまるで般若のようで思わず気圧されてしまう。

 

「貴様らに・・・一片たりとも、・・話すかぁ!」

 

肺が破れるのでは無いかと思うほどの渇いて濁った、迫力のある叫びが響き渡った。

 

周囲に緊張が走る。暫し無言で睨みあう時間が続いたが、恐れを引っ込め、一歩前に進み出る。

 

「強がりはよせ。もう立つ事も出来ないじゃねえか。」

 

語気を強めて言ったつもりだったが、リトーはニヤリと笑う。この期に及んで何かする気か、と身構えた時、リトーは訥々と話し出した。

 

「・・なぁに、貴様らに話す事はあり得ん。すぐに分かる・・」

 

そして、上体を鞭打つように起こすと、腹に刺さった剣に手をかけた。何をする気かがその時になって分かり、弾かれるように体が動いた。

 

「馬鹿!それを抜いたら・・!」

 

「貴様は逃げられん、覚えておけ!」

 

リトーはそう叫ぶや、腹の剣を一気に引き抜いた。前に立っていたオレ達に向けて血の雨が降り注ぎ、鼻につく鉄の臭いが充満した。

 

「うわっ!」

 

「きゃああ!」

 

ぬるつく液体を全身に浴びてアリス達が悲鳴をあげる。その陰でリトーは力なく地面に倒れ伏した。

 

「・・・・・」

 

日も沈み寒くなった野原で、血濡れのまましばらく体を竦ませたままでいた。敵を倒した安心感も、情報を逃した悔しさもなく、ただ誰も言葉を発する事なく佇んでいた。

 

いつまでそうしていただろうか。

 

「あらあら、凄い事になっているわねえ。」

 

「!」

 

その場に似合わない、変な陽気な声が背中を指す。とっさに振り返ると、緑の髪に長いリボンをつけ、妙に凝った服に身を包んだ少女が、ニッコリ佇んでいた。




リザさん今回何もしてない・・・
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