トカゲ娘が幻想入り   作:ごぼう大臣

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財産と、ごめんなさい。

 

 

「うーん。うーん。」

 

人里のお団子屋。あれから二週間と更に一日が過ぎても、私は悩んでは団子を食べてやきもきするばかりであった。

 

未だに霊夢さんに知らせる決心もつかず、かといって物申す気にもなれず、ついにはご飯も喉を通らなくなった。神社の神様にはダイエットと誤魔化しておいたが、その内に悩む度に食べてしまうこのお団子のせいで本当に必要になりかねない。

あ、でも頼んだ分はたべちゃおう。固くなっちゃうし。

 

「早苗?」

 

「ん?」

 

お団子を口に運ぼうとした瞬間に名前を呼ばれ、ふと前を見るとそこにはいつの間にか女の子が立っていた。私より少し背の低い、水色のショートヘアに赤と青のオッドアイ、素足に下駄を履いて、とんでもなく大きく紫色の、くっついた目玉と舌を出して口をニヤつかせた茄子みたいな傘を背負っている。加えて、胸には誰のか知らないけど赤ちゃんを抱いている。

 

「子傘・・・さん?」

 

「やっと気づいた。上の空でどうかしたの?」

 

多々良 子傘(たたら こがさ)。捨てられた傘が、人を脅かしてイタズラする付喪神と化した、ぶっちゃけ妖怪。私も一戦交えた事があるが、実際性格は穏やかで里の子供にもなつかれたりしている。最近では今みたいに子守りもしているようで私の印象も変わり、気安く話せる程度には仲も良好になった。

 

「いえ・・・なんでも・・・」

 

「そう?このお団子屋でいつも難しい顔してるって聞いたけど。」

 

子傘さんはキョトンと首を傾げる。心配してくれるのは嬉しいが、打ち明けても何にもならないと自信をもって言える。

なんせ人を脅かす方法に日がな思い悩み、墓場では上手く行くと縄張りを主張すればぽっと出のキョンシーに追い出され、その癖子供らの相手をして満更でも無いような子だ。スケールの大きな相談をしてもアテにはなるまい。

 

「子傘さんは、子守りですか?」

 

話題を逸らしてみると、子傘さんは赤ちゃんに目を移してからエヘン、と胸を張る。

 

「うん。このお団子屋さんのね。今ちょっと忙しいんだって。」

 

「ああ、なるほど。」

 

あっさり話を変えられた事に拍子抜けしながらも相づちを打つ。その時、フンスとしている子傘さんの手の中の赤ちゃんの顔が、ふと崩れる。

 

「ふむ?」

 

それを気取ってか子傘さんが赤ちゃんに視線を移した、次の瞬間。

 

「ふぎゃあああああぁん!!」

 

「ひゃんっ!?」

 

「きゃっ!」

 

火のついたような泣き声が鳴り響く。目の前の私はもとより、往来にいる人々も揃って此方に注目しだした。

 

「わわ、ほーら、べろべろばー。」

 

「えええぇん、うああ。」

 

子傘さんは必死であやそうとするが、赤ちゃんは泣き止んでくれない。私も思わず駆け寄った。

 

「よーしよしよし。泣かないでぇ。」

 

「いないいなーい・・・

\ /

 

" ▽ "

ばぁっ!!」

 

「・・・うぅ、」

 

「あ、ちょっとおさまった!」

 

赤ちゃんが私に注目しだしたのを見て、子傘さんが期待と焦りの入り交じった目を向けてくる。

 

「早苗、お願い!」

 

「は、はい!いないいない・・・

\ /

;◎ ◎

" ◇ "

ばあーっ!!」

 

「きゃ、あぶ〜・・・」

 

「あと一息!」

 

赤ちゃんの表情は笑いに傾きかけている。しかし油断は禁物だ。赤子とて同じパターンには飽きてくるもの。ここが最後の一撃の考えどころだ。だめ押しの、何か・・・!

 

「いないいなーい・・・

 

 

 

\バァーーーーン/」

 

【挿絵表示】

 

 

 

「きゃきゃきゃっ。」

 

「あはははっ!」

 

やった!なんとかなった!子傘さんまで笑っているけど、とにかく良し!

 

「あ、子傘ちゃん。早苗ちゃんも。」

 

「ふゃ?」

 

すると背後から女の人の声が。慌てて顔を直して振り返ると、そこにはお団子屋の奥さん。

 

「二人ともありがとねぇ。もう大丈夫。ごめんなさいね。」

 

子傘さんから赤ちゃんを受けとる奥さん。すでに安らいだ顔で甘えてくるのを見て、子傘さんに向き直る。

 

「何かお礼が出来たら良いんだけど・・・」

 

「そんな、気にしないで下さい。私が好きでやってるんです。」

 

「けどね・・・。嫌な時は断っちゃってね。全然構わないから。」

 

奥さんはそう言ってお店へと引っ込んでいった。沿道に二人きりになって、何となく話しかけてみる。

 

「随分と信頼されてますね。」

 

「へへ、ここまでくるの大変だったんだよ。」

 

子傘さんはそう言って笑うと、今までの頑張りを聞いてもいないのにしみじみと語り出した。

 

「はじめは子供を脅かしてたんだけど、それだけじゃ単なる変な人だって言われて、赤ちゃんの面倒を頑張ろうと思ったの。」

 

「それだけっていうか、子供にチョッカイはどうしても変な人では。」

 

「む、それはやっぱ妖怪だし・・・」

 

私の相づちに子傘さんは不満顔。しかし実際その妖怪の性をそのままに信頼を勝ち取ったのだ。

 

「最初は大変だったよー。そもそも預けたいって人がいないし、ひょんな切っ掛けで頼まれても、泣き声もスゴいし、ウンチもしちゃうし。」

 

たはは、と苦笑いする子傘さん。考えてみればさっきのようなギャン泣きのみならず、色んな世話をいつもするのだ。笑顔ではいるがとんでもない事だと嘆息が漏れる。

 

「そっから少しずつ信用されていったの。思い出すとすごかったなあ。」

 

「ははあ・・・苦労したんですね。」

 

本人はうんうんと朗らかな口調だったが、その笑顔が無理しているようにも見えてきて、ふと水を差してしまいたくなった。

 

「・・・やめたくなっちゃったり、しません?」

 

冗談めかして聞いてみるが、子傘さんは「ううん」と首を横に振る。

 

「そりゃ今でも楽じゃないけど、他の人に鞍替えされるのも、なんか癪でさ。」

 

「癪・・・ですか?」

 

意外な言葉が出てきた。子傘さんは頷く。

 

「私が苦労したから、て訳じゃ無いけど、赤ちゃん達が私の顔覚えてくれるようになったのよ。」

 

飾り気のない嬉しそうな顔だった。ただの偶然なのかもしれないけど、見ていると本当に思えてくる。

 

「やっと覚えられるまでになったんだもん。簡単にやめようなんて思わないよ。」

 

「・・・健気ですねえ。」

 

もはや人間と価値観が違うのか、とすら思えてくる。いや妖怪だから当たり前なんだけど、本音にしてはあんまりにも純粋すぎる。お金と社会に縛られないとはかくも素晴らしいものか。

 

「・・・私の言ってるの、なんか変?」

 

「え。」

 

子傘さんは遠慮がちにそう尋ねた。しまった、内心ある意味呆れていたとはいえ、顔にまで出すとは流石に失礼過ぎる。慌てて言い訳しようとすると子傘さんはちょっと怒った顔でこう言った。

 

「早苗だってあるでしょ。友達になれたら接点持っていたいとかさ。」

 

「でも、赤ちゃんの話でしょう?」

 

私が首を傾げると、子傘さんは「そうじゃなくてさ」と言って話し出した。

 

「顔を覚えて、仲良く出来るって、誰だって嬉しいじゃない。」

 

「・・・貴方に、会えてー。」

 

「本当に」

 

「良かった・・・」

 

「嬉しくて」

 

「嬉しくて」

 

「言葉に、」

 

「出来ないー」

 

「いや、この歌真に受けるわけじゃないけどさ。」

 

なんだかんで安生命風の茶々に付き合ってくれた。ちょっと照れてるのが面白い。

 

「ただで誰とでも仲良くなれる訳じゃないでしょ?

・・・そう考えるとさ、友達とか財産なんじゃないかなーって。」

 

「・・・!」

 

フッと、頭に人影が浮かぶ。無理に眠らせて引き離そうとしたあの子、永琳さんの世話になってたみたいだけど、どうなったんだろう。

 

「・・・財産て、大袈裟な。」

 

「そうでもないでしょ?十年でも一ヵ月でも、多可には代えらんないよ。だから長く続く事があるんだよ。」

 

目の前で話すのは年下にしか見えない少女。言う事もピュアな綺麗事、と片付けるのは簡単だったろう。しかし、今の私には重く響く言葉だった。ついさっき大袈裟だと言ったのを、あの人達の前で言えば、どうなるんだろう。もしかしたら、何年先も一緒だったかも知れないのに。

 

「子傘さん。」

 

手にお金を押し付け、脇目も振らずに走り出す。

 

「え、早苗!?」

 

「お勘定しておいて下さい!」

 

後ろで呼び止める声がした気がするけど、構ってはいられなかった。謝らなきゃ。あれからもう一度も見ていない。果たして間に合うだろうか。

 

 

 

 

「・・・うう、お腹痛い・・・」

 

お団子を食べたばかりで全速力で飛ぶのは無茶が過ぎた。竹林の中に一旦降りてトボトボと永遠亭に向かう。入り口が見えてきた所で首筋に汗が滲んだ。中ではルーミアちゃんはどうなっているんだろう。もう元気なのか、まだ大変なのか、それとももう・・・

 

「・・・どんな顔してればいいんだろう。」

 

足取りが少し、また少しと重くなる。もう走ればすぐの距離にも関わらず、近づけている気がしない。

やっぱり引き返してしまおうか。それならきっとすぐに済む。もし治療の峠だったら邪魔にしかならないし・・・

 

頭の中に言い訳がぐるぐると螺旋を描く。今や足が勝手に永遠亭に向けて歩いている状態だった。とその時。

 

「あははー!」

 

「おい待て!病み上がりなんだから大人しくしてろ!」

 

「だってつまんないもーん。」

 

永遠亭の戸口からルーミアさんが飛び出す。そして楽しそうに跳ね回るその子を捕まえようと、リザさんが追いかけている。

 

「こら、すばしっこいな!」

 

「・・・なんか心配してたのが嘘みたいね。」

 

「いやぁ、天狗社会に馴染むと切なくなりますね。朗らかな風景。」

 

「アンタは割りと跳ねっ返りじゃないかい?」

 

「お前ら!話してないで手伝ってくれ!」

 

続けて影狼さん、文さん、勇儀さんが出てきて、くるくると追いかけっこする二人を見守っている。皆穏やかな表情。和やかな風景だ。何かの小説の一節にあったっけ。

"見よ、前方に平和の図がある。"

まさにそんな感じ。

 

見ているとますます決心が鈍ってきた。ルーミアちゃんの無事に安堵するより、自分が入り込む余地が無くなったような、胸を締め付ける苦しみが広がっていく。

彼女らは既に乗り越えたのだ。私が間接的にでも荷担した危機を。もう私と対峙する事も躊躇はしないだろう。振り出しに戻ったのだから。私や霊夢さん達は彼女らにとっては、ハナから敵なのだ。

 

「・・私は・・」

 

早く来ていれば良かった。そう呟きそうになって一瞬で呑み込んだ。喉の奥に苦い味が広がる。

今の後悔は、昨日までのグズクズしていた自分への後悔とはまるで違っていた。"元気になる前に、苦しんでいる内に来ていれば。そう思ったのだ。

落ち込んでいる所に居合わせて、謝罪をして、ルーミアちゃんが目を覚ました時に一緒に喜ぶ事が出来ていたら、こんな風に自責に囚われずに済んだかもしれない。そんな都合の良い考えが浮かんだのだ。己の呑気さに呆れた。寧ろ逆上されたかも知れないのに。

いや、それならいっそ敵に回ろうと諦めもついたかもしれない。しかし実際、私は一歩も踏み出せず一人で塞ぎこんでいただけだ。

情けない。一瞬浮かんだ誠意のようなものも、余計なお世話だと感じただけでこの有り様だ。

 

「・・・帰ろう。」

 

そうだ。帰ってしまおう。このままここにいても仕方ないじゃないか。

 

「・・・っ!」

 

俯いた顔をあげ、そこで。

ルーミアちゃんと、いつの間にか目があった。他の人には気づかれていないみたいだけど、確かにルーミアちゃんはこちらに向けて、近づこうとしている。

 

(やばい!)

 

咄嗟に足が跳ね、駆け出していた。背中を見せずに、横にあった藪の方へ。

すると、足元が抜ける感覚。

 

「ひょ?」

 

体が軽くなる気がして、次の瞬間にはドスンという音をたててお尻を打っていた。

 

「・・・いったあ〜・・・」

 

チカチカする目の前。二、三度かぶりを振って顔をあげると、そこには土の壁。

 

「え?」

 

周囲を見渡すと、私が蹲れる程度のスペースで四方は土に囲まれている。上には円形に切り取られたような空があった。

 

「あー、これは・・・」

 

すぐに分かった。竹林の名物、テイさんの落とし穴。悪戯っ子のあの人はそこかしこにこんなのを掘っているのだ。普段は飛んでいたので気にしていなかったが、こんな時に限ってなんて事だ、とお煎餅みたいな青空を仰ぐ。

すると、上に空いた穴の向こうから声が聞こえてきた。

 

「本当にいたのか?」

 

「ホントだって!こっちこっち!」

 

「今更来るだなんて・・・。なんのつもりやら。」

 

「文、そういきり立つなよ。」

 

うわ、来てる。ぞろぞろ来てる。どうしよう。そのまま気付かないで下さい。今の私、色々とすごく格好悪い。

 

「・・・嘘ではないみたい。誰かの匂いが続いてる。」

 

ぎゃあ、影狼さんの声だ。

 

「ねえ、誰かお団子とか今日食べた?」

 

あ、逃れる余地が・・・

 

「・・・食べてないわよね。」

 

無かった。

 

やがて、見上げた空に、ひょっこりと影が浮かぶ。

 

「早苗!」

 

ルーミアちゃんだ。続いて他の三人が次々と覗き込んでくる。

 

「お前は・・・」

 

リザさんは顎に手を当てて見つめてくる。ああ、そう言えば名乗った事は無かったっけ。

 

「リザさん!この人はルーミアさんを連れ出した人ですよ!」

 

「え、ええ!?」

 

「地底からいなくなったの、覚えていませんか!?」

 

文さんが捲し立てると、リザさんは戸惑った表情を浮かべてからルーミアちゃんの方に尋ねる。

 

「ルーミア・・本当か?」

 

「う、うん。霊夢達と一緒だった・・・。」

 

「その後に倒れていたとか聞いたけど・・・」

 

「・・・よく覚えてない。逃げ出したような気がするけど・・・」

 

二人は私を交互に見ながら話を確かめあっている。文さんはピリピリした顔で、他は怪訝な、或いは遠慮がちな表情で私を見下ろしてくる。

思わず目を伏せた。まるで罪人だ。上から投げかけられる言葉が怖くて、小さく縮こまった。

 

「・・・・・・」

 

怖い。今どんな表情で見られているんだろう。不信感の一杯な顔を見合わせているか、怒りをぶつけられるのか。身内がどうなっていたか知れない。その不安をもたらしたのは私なんだ。

 

「早苗。」

 

上からルーミアちゃんの声。唾を呑んで一拍置き、震えながら顔をあげる。子供、被害にあった張本人だ。遠慮なしに気持ちをぶつけられるかも知れない。何を言われても仕方あるまい、と考えながら顔を上げ切る、と。

 

差し伸べられた、手があった。

 

「・・・え?」

 

数回瞬きして、少し目線を上に上げる。見間違いじゃ、ない。

ルーミアちゃんは私に手を出して、笑っていた。満面の笑み、ではないけど、飾り気のない穏やかな笑顔を、確かに。

 

「ルーミアさん?」

 

文が眉をひそめる。けれど手は引っ込まれる事は無かった。代わりにこんな言葉をかけられる。

 

「とりあえず出てきなよ。ほら、手ぇ貸すからさ。」

 

ルーミアちゃんは身を乗り出して手をヒラヒラさせる。おそるおそる立ち上がって掴むと、きゅ、と握り返された。

 

「ふむっ・・・」

 

ルーミアちゃんが引き上げようと力む。が、いかに妖怪と言えど子供の短い腕では、どうにも引っ張りにくい様子だった。数秒間、うんうんと唸る状況が続き、申し訳ないけど飛んでしまおうか、等と思った矢先。

 

「よ・・・っ!」

 

もう一つの手に、不意に強く掴まれた。ハッとなって、その手を伸ばした誰かを見やる。

リザさんだ。複雑な顔で一瞬私を見て、一気に私を引っ張り上げる。

 

「・・・とぉっ!」

 

「きゃっ!」

 

リザさんが後ろに転がり、その上からドスンと転がり込む。目の前の顔と目があった。やれやれ、といった調子にため息をつくリザさん。辺りを見渡すとルーミアちゃんは呑気に「上がった〜」などと呟き、勇儀さんと影狼さんは無言で見つめるのみ。そして一番警戒していた文さんがリザさんへと詰め寄る。

 

「リザさん、手を貸して良かったんですか。この人は・・・」

 

文さんが再び口にするであろう事実に、私は何も言わずに口をつぐんだ。内心はこの人も怒っているに違いないのだ。

しかし、リザさんはその言葉を遮る。

 

「・・・オレもバカをやった。ルーミアが手を貸したんだ。いいじゃねえか。」

 

怒られなかった。居たたまれない気持ちに苛まれる。ルーミアちゃんを見るとキョトンと首を傾げる。要求をされた訳ではない。だのに、言わなきゃいけないと、胸を内から突くような衝動。

 

「ちょ、早苗?」

 

気付くと私は地面に三つ指をついていた。勇儀さんが驚きの声をあげるが構いやしない。今言わずして自分にこうする勇気があるようには、思えなかった。頭を深く下げ、言葉を絞り出す。

 

「・・・ルーミアちゃん、リザさん、申し訳ございません。

私はお二人の気持ちを考えずに、浮わついた気持ちで取り返しのつかない事をする所でした。今後一切危害は加えません。

許して欲しいとは申しません。ただ一度、こうして謝罪をお許しください。」

 

一言口にすると堰を切ったように台詞が流れ出した。相手も戸惑っているみたいだ。でも良いんだ。このまま立ち去ろう。そして霊夢さんと紫さんに和解を勧めよう。それが一番良い。

 

「なあ。」

 

「へ。」

 

一人で勝手に先の事を思案していると、リザさんの声がした。慌てて向き直ると、神妙な顔で此方を見つめてくる。

 

「・・・早苗、だよな。」

 

「はい。」

 

固くなって返事をすると、リザさんは一拍置き、話し出した。

 

「・・・とりあえず、謝罪は受け取っておく。そして、答えられたらで良いんだが・・・」

 

言いかけて、キッと鋭い目付きになる。

 

「教えてくれないか?オレとルーミアの間に、何があるんだ?」

 

「・・・!」

 

周囲の雰囲気が険しくなる。さっきまで柔らかかったルーミアちゃんの表情もにわかに真剣なものになる。

 

「・・・それは。」

 

一旦言葉を切る。これを話せば今度こそ霊夢さん達への裏切りになる。本人達に却ってカードにされる危険性もあるのだ。しかし。

 

「分かりました。話します。」

 

「・・・早苗、良いの?」

 

影狼さんが気遣ってくれるが、黙って頷く。もうこの人達に不誠実を突き通したくは無かった。

 

「・・・驚かないで聞いて下さい。

あなた達は、実は・・・」

 

いよいよ、というその時。

 

「きゃあ!」

 

突如、私の背中から、だろうか。白い御札らしき物が視界に現れたかと思うと、一瞬で目の前の二人に吸い込まれたようにして、瞬く間に消えた。

 

「・・・え?」

 

「な、なに今の?」

 

リザさん、ルーミアちゃんが怪訝な顔で自身を叩いたりつねったりしている。痛みなどは無いようだが、それが不気味だった。文さん達も呆気に取られており、私の見間違いというのは、まずあり得ない。

 

「・・・・・・」

 

背筋に冷たいものが走った。私の考えは甘かったのかも知れない。霊夢さん達が私の知らない手を打っていたとしたら・・・

 

「・・・私は、近づかない方が、良いかも知れません。」

 

ほとんど呟くような声になった。背を向けて一目散に走り出す。

 

「おい、早苗!?」

 

リザさんが呼び止める声。しかし離れなきゃ、としか今は考えなかった。

 

霊夢さん達の底知れなさが、敵に回ろうと決心した途端、少しだけ見えた気がした。




早苗さんはなんだかぶれやすいイメージ。

それと安田命のCMで泣きそうになる私は変でしょうか。
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