トカゲ娘が幻想入り   作:ごぼう大臣

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妖精ってなあに?勝負しなさい!

「なあ、まだかかるのか?」

 

「もうちょっとだよー。」

 

人が小さく見える程度の上空で、オレの前を飛ぶルーミアが振り返って答えた。両隣にはみすちーとリグルがいる。オレは飛ぶのに不馴れなせいで自然と最後尾だ。

 

「飛んだらすぐですよ。便利なものでしょ?」

 

「ちと寒いがな。」

 

「『熱くなれ ~♪憧れ〜♪ 燃え上がれ〜♪♪』」

 

リグルの問いかけに、チロリと舌を出して答える。みすちーは周りに聞こえる声で気分良さそうに歌を歌っている。

 

ところで、そもオレ達がどこに向かっているかというと・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――

 

『同族?』

 

『ええ、ちょっと似てる・・・・』

 

教えてくれたみすちー曰く、体の一部だけだがオレにそっくりな奴がいるらしい。ルーミアとリグルも知っているようだ。

せっかくだし、その同族っぽい奴に会いに行こう、と提案された訳だ。

 

「なあ、ソイツはどんな奴なんだ?」

 

「優しい人だよー。心配ないない。」

 

「歌も好きなのよね。私と好みは違うけど。」

 

「おしとやかな人かなあ。リザさんとは全然違う・・おっと。」

 

リグルがわざとらしくこちらを振り向き、口に手を当てる。こいつめ。

 

「リザはカッコいいから良いの!」

 

ルーミアがリグルの頭を軽くはたく。・・フォローは嬉しいが、なんか違う気が・・。まあ、子供は素直なもんだわな。

 

しかし、穏やかな人らしくて助かった。ルーミア達が居るとはいえ、オレは弾幕なんて扱えない。もし好戦的な奴だったら考えものだ。

 

「・・・・ん?」

 

そんな考えに耽っていた時、肌に違和感を感じた。周囲にはいつの間にか霧が立ち込めている。そのせいだろうか、心なしか寒い。いや、空の上だから元から肌寒いのだが、ここに来て急に冷たさが増した気がする。

 

「なあ、この辺妙に寒くないか?」

 

「え?あー・・」

 

ルーミアが他の二人と顔を見合わす。リグル、みすちーも「あの子か〜」とか言いながら苦笑いしている。

 

あの子・・一体何の事だ?オレが首を傾げていると、ルーミアが振り返る。

 

「リザ、周りから何か飛んできたりしないか、気をつけて!」

 

「は?何の話・・」

 

そう言いかけた時。

 

下から何かが迫ってくる気配がした。

 

「っ!?」

 

咄嗟に体をのけぞらせると、髪を掠めて何か煌めくものが上に飛んでいった。冷たい感触が髪に残る。

 

「何だぁ!?」

 

下の地平へと目をやる。霧に覆われて見えづらいが、大きな湖が広がっている。そのほとりから誰かが飛んできている。近づいて来ると小さな子供だと分かる。

 

「アタイの攻撃を避けるなんて、中々やるじゃない!」

 

「・・・・?」

 

その子供はオレの目の前で止まるや、指を指しながら言いはなった。

水色のショートカットに青いリボン。白いワイシャツに青いワンピース、胸元にはルーミアとはまた違った形の赤いリボン。背中には六枚の氷の羽がついている。

 

「・・・・誰?」

 

いまだ指先を向けたまま小憎らしい笑みを浮かべている少女。オレが眉をひそめていると、ルーミア達が周囲に集まってきた。

 

「チルノー!いきなり何すんのよ!」

 

「あ、ルーミア。見かけない奴がいたから勝負を挑むのよ!アタイはサイキョーだから、みんな倒せないといけないの!」

 

「・・・・」

 

このチルノとかいう奴、何を考えてるんだ。サイキョーなんていって他人にいきなり攻撃してくるなんて・・・・

 

「チルノちゃ〜ん!」

 

また別の少女が飛んできた。緑のサイドテールにワンピース。二枚の白く薄い羽を持っている。

 

「また知らない人にケンカふっかけてるの?」

 

「あ、大ちゃん!こいつ結構勘が良いわ!油断ならない!」

 

大ちゃんと呼ばれた少女は、困り顔でため息をついた。対してチルノは意に介さずオレへの印象を語っている。若干置いてきぼりに

なっているオレを察してか、ルーミアが二人を指して言う。

 

「リザ、青い髪が氷の妖精のチルノ。もう一人は大ちゃんだよ。」

 

「妖精・・・」

 

オレが振り向くと、大ちゃんがペコンと頭を下げた。

 

「お友だちがご迷惑をかけました。私、大妖精といいます。大ちゃんって呼ばれています。」

 

「あ、ああ。よろしく。」

 

妖精というと、妖怪とはまた違うんだろうか。見たところルーミア達と仲は悪くないみたいだが・・・・

 

「とにかく!アタイと勝負しなさい!トカゲっぽいの!!」

 

「何でだよ。」

 

チルノは余程戦いが好きらしい。ルーミア達は「相変わらずだね」とかなんとかボヤいている。いつもこんなふうなのか、コイツ。

 

「というか、何かお前が現れてから妙にくそ寒いんだが・・気のせいか?」

 

実際、オレの身体は段々と怠くまでなり始めた。今朝といい、オレは寒さに弱いみたいだ。

 

「何よあんた。アタイら妖精の事知らないの?」

 

「知らん。昨日こっちに来たばっかりだかんな。」

 

大妖精が「そうなんですか?」と意外そうな顔をする。ルーミアが代わりに「うん」と答えてくれた。

 

「ふふん、ならアタイが教えてあげる!妖精ってのは・・えーと・・・・」

 

チルノは鼻を鳴らして偉そうに胸を張る。そして数秒間、無言。

 

「・・大ちゃん!」

 

チルノは大妖精にヘルプを要求した。大妖精が「もう」と困ったように笑う。

 

「妖精は、『自然の具現』なんです。木とか、水とか、そういうモノが存在する限り私達は消えません。チルノちゃんは氷の妖精なので、その性質が強くなっています。」

 

「ほーん・・・・」

 

何となくだが、イメージは分かった。例えば木の精、水の精とかいうのが無数にいる感じか。二人ともやはり人間や妖怪とは別なようだ。しかし二人を見る限り、性格はそれぞれ個性があるようだ。

 

「そういう事よ!だから勝負しなさい!」

 

「だから何でだよ。」

 

口調が少しぶっきらぼうになってしまう。こいつはどんだけ勝負が好きなんだ。

「チルノ、リザはまだ弾幕使えないんだから勘弁してよ。」

 

「え?そーなの?」

 

チルノはキョトンとしてこちらを見上げてくる。飛ぶ事と同様に当たり前のように使う力なんだろうが、いかんせん頷く間眉をしかめてしまう。

 

「えー?大人なのに?かっこ悪〜!」

 

「・・・・」

 

「ち、ちょっとチルノ・・・・」

 

みすちーが慌ててたしなめるいる。チルノからすれば来たばかりだろうが(見た目的に?)年長者のオレが力を使えないのが意外なんだろう。頭では分かっているが・・・・

 

「・・なあ、ルーミア。」

 

「ん?何?」

 

ルーミアが首をかしげる。どうやら今までの会話は軽く聞き流していたみたいだ。オレもそうするのが正直正解なんだろうが・・

 

「"弾幕"を使えなくとも勝負する方法って、あるか・・?」

 

「え?」

 

意外そうな顔をするルーミア。しかしオレが真面目な顔をしているのが分かると、苦笑いする。

 

「もしかして意地になってんの?気にしないでやってよ。前からああなんだから。」

 

「いや、別に・・」

 

目を逸らすと、チルノの顔が目に入った。相変わらずの小生意気な笑顔。

 

「・・・・しょうがないな〜。」

 

ルーミアが見透かしたような目付きで笑う。オレにはごまかしの才能までないらしい。

 

「あのさ、私達カードを使ったの覚えてる?

アレを枚数決めてぶつけ合って、当たった方が負けっ・・・・てのが『スペルカードルール』なんだけど。」

 

「ほうほう。」

 

「カードで技を出す時間に制限があってね。カードを全部使う間一発も当たらなければ『勝ち』だよ。滅多にやらないけど。」

 

「・・ふむ。」

 

説明を聞いてチルノに向き直ると、周囲で聞いていたリグル、みすちーがこちらを見上げて尋ねてきた。

 

「まさか、時間切れ狙いですか?」

 

「無理だと思うな〜。」

 

二人は口々にそういうが、方法があるのに今さら引き下がる気はない。オレは三人に向けて大きく啖呵を切って見せた。

 

「さっきお前ら三人相手にしたんだぜ?楽勝、楽勝!」

 

「「「・・・・」」」

 

三人は何故か知らんが困ったような顔を見合わせた。何かあるか?・・まあいいや。放っといてチルノに向き直る。

 

「おいチルノ!決まりだ。オレは攻撃しないでお前のカード、全部避けてやる!」

 

チルノは、一瞬戸惑うような表情を浮かべ、笑いながらこう言い放つ。

 

「何よ、そんなの出来るつもり!?」

 

「生憎直接ぶん殴るのは気が引けるからな。どうだ?やってみるか?」

 

指先を動かして挑発してみる。そのハッタリが可笑しかったのか、ルーミア達がやれやれ、と言っているのが聞こえる。大妖精はチルノの傍らで一人おろおろしている。当のチルノは、ムカつきが半分、闘志が半分、ってな顔つきだ。

 

「ふん!良い度胸ね。吠え面かくんじゃ無いわよ!」

 

「おう!いつでも来い!」

 

オレとチルノが言い合った直後、他のみんなが一斉に離れた。

初めての一対一の勝負が、今始まった。

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