トカゲ娘が幻想入り   作:ごぼう大臣

7 / 51
蛇やトカゲは舌を出し入れして空気の湿度や諸々を感知するとかなんとか。


この力はなんだ?ってあっち!

チルノとオレは、空中で30メートル程の距離で対峙する。チルノの後ろには弱った顔で見つめる大妖精、オレの後ろには面白半分な様子で見つめるルーミア、リグル、みすちーの三人が遠巻きに見守っている。

 

「じゃ、いくわよ!アタイの使うカードは三枚!かわしてみなさい!」

 

「おうよ!」

 

チルノは威勢よく手を振りかざす。とはいえいきなりカードは使わない。先ずは弾幕を放つつもりだろう。手元が光る瞬間、身構える。

 

「そらあっ!!」

 

途端に放たれる氷の塊。予想以上の勢いと大きさ、そして数。まるで石のツブテをばら蒔かれたみたいで、一つでも当たれば頭の一つや二つ簡単にカチ割れそうだ。

 

「ッ!うおっと!」

 

「まだまだぁ!!」

 

仰け反りながらもギリギリで避ける。チルノはそんなオレに容赦なく弾幕を放ち、たちまち周囲を煌めく氷の弾で埋め尽くす。なんだこの威力、これが一人の力か!?

 

「リザ〜!」

 

右斜め遠くからルーミアが叫んでいる。周囲の弾幕に注意しながら、目線をそちらに移す。

 

「チルノって、妖精じゃかなり強いんだよ!油断したら負けちゃうよ!?」

 

「・・マジか!?」

 

顔スレスレで避けながら、冷や汗を払う。ちょいと不味かったかもしれない。チルノの力はルーミア達三人分・・とまではいかなくとも、それぞれの力量は見たところ軽く凌駕している。加えて・・

 

「・・ヘッキシッ!」

 

くしゃみが出た。その一瞬で近づいた攻撃を、体を翻してかわす。

 

さっきから寒さがどんどん増している。氷の妖精であるチルノが力を振るっているせいだろう。突き刺すような冷たい風。それにつれてオレの身体は怠さを増していく。チルノは今は気づいていないようだが、それでも不利なことは感覚で思い知らされる。

 

「参ったね、こりゃ・・」

 

薄ら笑いが漏れる。この攻めが勢いをつければ危ないかもな、と思った矢先、チルノがカードをかざした。案の定だ。チクショウが。

「氷符『アイシクルフォールeasy』!!」

 

チルノの両手から何本も鋭いツララが現れ、それが左右から挟み込むように迫ってきた。

 

「くっ!」

 

傍に来たツララをなんとかかわし続けるが、ツララは相変わらずの調子で飛んでくる。こちらは一発当たれば敗けだ。どうにもヤバイ。

 

「・・ぬおりゃっ!」

 

一か八か、前へと飛び出す。ツララの隙間を潜り抜け、視線の先には、同じように弾を撃ち続けているチルノ。

 

「ふふ、早くもヤケになったの!?ショボいわね!」

 

チルノが一層ツララを沢山放ちながら言い放つ。半分は正解だ。だが両手を広げて放つその姿からの判断が、正しければ・・!

 

「・・っとお!」

 

滑り込んだ場所は、チルノの目の前。チルノは眉をしかめて弾幕を撃ち続けているが、何故か当たらない。

 

「なんでー!?」

 

悔しがるチルノを見ながら、オレは一息つく。

チルノの"アイシクルフォールeasy"とかいう技は、まず左右に広がって飛んでいったツララが、途中で方向転換して挟み込むように飛んでくる、というものだ。至近距離なら、広がって方角を変えるまでの隙間が出来る。半ば勘での判断だったが、幸い正解だったようだ。

 

(さて・・)

 

改めて前方を見据える。チルノはムッとしながらも同じ技を続けている。制限時間があるといったが、逆に言えばそれまでは技を止められないのだろう。

 

(・・退屈だ。)

 

戦いの途中にあるまじき考えが浮かんだ。安全地帯、といえばそうだが、何もしないで向かい合っているのも味気ない。

 

こちらを膨れっ面で睨むチルノ。デコピンでもしてやろうか、いや、攻撃はしない約束だし・・

 

「・・・・」

 

おもむろに右手の人差し指を立てる。チルノが眉をひそめる。

 

その指を目元にもっていく。チルノの眉のシワが深まる。

 

そして、口を開き・・・・

 

「・・あっかんべー・・」

 

わざとらしい擬音と共に舌を出す。場の空気が一瞬凍った気がした、が。

 

「・・!」

 

チルノは本気で馬鹿にされたと思ったらしく、眉をつり上げる。それで締まった顔になれば良いが、その顔は悲しいかな『子供が一生懸命仁王さんの顔真似をする』みたいな表現がピッタリ似合っていた。

 

(・・ふふ。)

 

ルーミアにしろチルノにしろ、ガキんちょの表情はコロコロ変わって面白い。やり過ぎてはいけないが、からかってみたくもなるというものだ。

 

そう思いながら、舌を収めようとした、その時。

 

(・・・・!?)

 

舌先に妙な感覚があった。

上手く言えないが、ざわつくような・・チルノから盛れ出ているであろう冷気とは別に、なんとも言えない不快感のようなモノが引っ掛かった。

 

「・・・・おっと!」

 

気づけば技は止んでいた。オレが急いで距離をとると、チルノはさっきの事を根に持ってか、ムキになって攻撃を仕掛けてきた。

 

「コンニャロー!」

 

「のわあっ!」

 

今度はばら蒔かれたアラレに混じってレーザーが放たれる。最初こそビビったが、それが自分を狙うがゆえ、少しだけズレれば避けられる事に気づく。

 

(・・避けるのには慣れてきた・・しかし・・)

 

気になるのはあの舌の感覚だ。また何度か舌を出し入れするが、あの不快感は消えない。それどころか益々確かな感触になっていく。

 

「さっきから何度もベーってしおってー!食らえ!」

 

どうやらチルノには馬鹿にしているように見えたらしい。確かに端から見りゃ意味不明だよな。

 

「凍符『パーフェクトフリーズ』!!」

 

チルノが叫ぶ、その瞬間。

 

「っぐぬ!?」

 

不快感が一気に増す。どうやら力を振るう量に応じて舌の感覚が強烈になるようだ。しかし頭でそう理解しないうちに、弾幕が襲いかかる。

 

今度は数の多いバラ弾だった。近くに来たのを難なく避ける。しかしその時。

 

「・・!?」

 

その弾が、いや、見れば周囲の弾幕が全て動きを止めていた。そのさまは、空間全体が"凍った"かのようだった。

 

「・・くっ!」

 

急いで振り返ると、チルノが素早い弾を放つ。それをかわそうとし、一瞬ギクリと躊躇する。

 

先程動きを止めた弾。それら一発一発がどれ程邪魔な存在か、避ける段になって思い知らされる。

 

「ちっ!」

 

舌打ちと共に体を折り曲げる。弾は頭上を飛び去るが、腰布が焼け擦れるような感覚がした。だが今は気にしちゃいられない。

 

また弾幕がばら蒔かれる。同時に止まっていた弾が一斉に動き出した。

 

「・・くぁ!」

 

手足を折り畳んで縮こまり、ギリギリで回避した。チルノを見ると、勝ち誇ったような笑みをこちらに向けている。

 

「これは流石にキツいでしょ!?今のうちに降参したら!?」

 

チルノの声が聞こえる。確かにコイツは強力だ。だが潔く敗けを・・なんてのも腹が立つ。

 

「・・へっ!」

 

再び舌を出して挑発する。なんら事態は好転しないが、こういう性分なんだろう。

 

 

「むっ・・!これならどうよ!雪符『ダイヤモンドブリザード』!!」

 

途端に吹雪のような密度の濃い弾幕が迫る。同時にまた舌に不快感が襲った。

 

「ぐああっ!」

 

今度は二度目にも増して鮮烈だった。舌先のみならず、体全体に電流のようなモノが走り、ザワザワと身体中を駆け巡る。それはまるで、舌先で感じたチルノの力に反発しているかのように感じられた。

 

「・・!」

 

その感覚に気をとられた一瞬、弾幕が目の前まで迫っていた。

 

その時、体が勝手に動いた。理屈でどうしてそうしたかは分からない。

 

深く息を吸い、体の中で暴れるざわつきを吐き出すように、

 

大きく、大きく息をはいた。

 

「・・!」

 

その瞬間、自分で目を見開いてしまった。

 

口から、大きな炎、爆炎と言っても良いような化け物みたいな火が、一瞬で目の前に広がる弾幕を呑み込んだ。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。