トカゲ娘が幻想入り   作:ごぼう大臣

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知り合いのケモナーは耳と尻尾だけのタイプは認めないそうで。


はじめまして。え?生えてるか・・って?

「「・・・・は?」」

 

チルノとオレは、同時に間の抜けた声を出す。オレが口から炎を吹き出した瞬間、オレに向かっていた弾幕は全て消え失せ、炎が消えた後にはギリギリで食らわなかったらしいチルノが、前髪を焦がしながらポカンとした顔で宙に浮かんでいた。

 

「今の・・リザがやったんだよね?」

 

「すっげえ・・」

 

ルーミア達が呟くのが聞こえる。本当に・・?あの視界を覆うような物凄い火は、オレが出したんだろうか?

 

「・・・・フッ」

 

小さく息をはいた。松明ほどの火が、眼前に広がる。

 

「うお、あっち!」

 

自分で出しといて仰け反ってしまう。確かにオレが火を吹いたらしい。あの時吐き出した、体の中で蠢くような感覚はオレ自身の妖力だったんだろうか。

 

「すごいよリザ!また一歩前進だね!」

 

「わっ!」

 

気がつくとルーミア達がすぐ近くに来ていた。さっきまで戸惑っていたが三人がニコニコしながら見上げてくると、段々と誇らしげな気分になる。

 

「おう、以外と才能あるのかもな。そのうちにスゲー強くなったりして!」

 

いや、なれるよー。とか、まだまだ強敵がいますよ?とか色んな声が聞こえる。正直チルノみたいに「最強」にこだわるつもりもないが、気持ちは何となく分かる気がする。

 

思わず胸を張ろうとした、その時。

 

ド ク ン

 

「・・む?」

 

何か、妙な感覚があった。心臓から、気持ち悪い、苦しい、痒い、痛い、何とも言い表せないような、しかし強烈な違和感。

 

・・いや、この感覚・・

 

 

「こらー!」

 

「おぉ?」

 

突然誰かが叫んできた。顔を向けると、チルノが怒った顔でこちらに飛んでくる。少し後ろを困り顔で追いかけるのは大妖精だ。

 

「アンタ攻撃出来るんじゃない!卑怯よ!最初にちゃんと言いなさいよ!」

 

「あー・・えっと・・」

 

確かに少し驚かしてしまったかもしれない。そしてチルノのチリチリになった前髪と顔についた煤は、ともすれば大ダメージを与えていたかも知れない事をうかがわせる。それはすまないと思う、しかし、煙突に突っ込んだようなその顔は、そんな思いも凌駕し笑いを誘ってくる。

 

「わ・・わりい、なんせいきなりだったもんで加減が分からなくて・・」

 

頭を下げるが、機嫌が治っていない事は雰囲気で感じられた。大妖精が横から助け船を出してくれる。

 

「リザさんだって、ワザとじゃないよ。それに、攻撃しちゃったから勝負はチルノちゃんの勝ちじゃない?」

 

「む・・・」

 

そうなのだ。最初に決めたルールからすればオレの負け。にも関わらずチルノは相変わらず不満そうに頬を膨らませている。

 

「だって・・なんか、なんか納得いかない!あんなスゴい事して、勝負は終わりなんて、ずるいよ!もっかい勝負しなさい!」

 

「えぇ・・」

 

・・なーるほど。試合に勝って勝負に負けた、みたいな感覚か。しかし気持ちは分かるが相手してやる気はない。正直チルノみたいに小さい子供に攻撃して打ち負かすような真似はしたかあない。ましてや、威力は目の当たりにしているのだ。

 

「いや、断る。もう良いだろ勝ったんだから。

 

「やーだー!勝負しろー!」

 

「ちょ、おま近寄んな。寒い・・!」

 

チルノは腕を振り上げてこちらに飛び込んできた。強烈な冷気を感じ、慌てて手で頭をグイと押して引き離す。

 

(うひゃっ・・!つめてえ!)

 

触れた手のひらから腕にかけて痛いほどの冷たさが駆け巡る。思わずつぶった目を薄く開くと、チルノはオレの心中など知らないとばかりに届かない腕をブンブン振り回している。

 

(・・ったく。)

 

ため息をついて意識を集中させる。体を力が巡るのを感じながら、腕、そして手のひらに。

 

じんわりと冷たさが引いていく。妖力がチルノの力を緩和させているのだ。

 

「・・ぅん?なんか・・温かい?」

 

チルノが不思議そうに目線をあげる。慣れてきたところでワシワシと撫でてやると、またくすぐったそうに目をつむった。

 

「わ!や、やめろーぅ!」

 

「ふはは、ホレホレ。」

 

なんだかおかしくて、さらに激しくしてやる。チリチリになってた髪がスゴい事になっているが、まあ、今はいいか。

 

「ねー、リザ。」

 

「ん?」

 

なにやら下から声がした。振り向くと、ルーミアが上目使いにこちらを見ている。

 

「私にもやってー。」

 

「・・あー、はいはい。」

 

見ていて羨ましくでもなったんだろうか。空いている方の腕でルーミアも撫でてやると、満足そうにニパッと笑う。

 

しばらく両手でワシワシと続けていた。片や恥ずかしそうにうつむき、片や目を閉じて嬉しそうにしている。

 

うーん、非常に癒される光景ではあるんだが、何してんだろうね。オレ。

 

「ほら、もう良いだろ?それよりチルノ。この際下の湖でも良いから、髪直して顔洗えよ。酷い事になってんぞ?」

 

パッと手を離しておどけると、チルノは一瞬離れたオレの手を見て戸惑うような表情を浮かべたあと、ムッとしながらも下へとそそくさと降りていった。やれやれ、と追いかけるのに、ルーミアその他皆が続く。

 

「ああもう、クシャクシャ・・!」

 

水面に顔を映したチルノはぶつくさ言いながらパシャパシャと顔と髪をゆすぐ。女の子なのに悪いことしたかなあ、と少しばかり罪悪感を感じた。

 

「あら、チルノちゃんじゃない。」

 

「ん。」

 

ぱしゃり、と水音がして知らないやつの声と人影。チルノは水を拭っているため見えていないが、青い髪と、いくらか洋風の要素を取り入れた和服のようなモノを来た女性が、水から上半身を出しているのが分かる。

 

「わかさぎ姫さん!」

 

大妖精が声をかける。女性はこちらを振り向くと、微笑みかけた。

 

「大ちゃんも。今日は一杯お友達がいるのね。」

 

女性は湖を泳いで近づいてきた。周囲の反応をみるに、警戒する必要は無さそうだ。ルーミア、みすちー、リグル、駆け寄ってきたチルノも頭を下げるなり手を振ったりして挨拶している。しかし。

 

(わかさぎ姫・・かぁ・・)

 

頭の中で少し考える。彼女は一体何故水中などから出てきたのだろう。わかさぎ、という名前と何か関係あるのだろうか。シットリと濡れた髪から覗いたとがった耳のお陰で辛うじて妖怪と分かるが、どこに水と縁があるのか分からない。

 

「うーん・・」

 

じっと見つめていると、わかさぎ姫はこちらを見て首をかしげた。ヤバイ、不審に思われたか、慌てて咳払いして向き直る。

 

「えっと、リザだ。・・です。・・よろしく。」

 

ペコリと頭を下げる。わかさぎ姫はまたニッコリと笑うと、挨拶を返してくれる。

 

「はじめまして。わかさぎ姫です。以後お見知り置きください。」

 

口調からして気品が伝わってきた。何も自分を卑下する気はないが、この丁寧なオーラに限っては逆立ちしても敵わなさそうな気がする。

 

・・ん?気品・・丁寧・・?

 

リグルがいった言葉を思い出す。

 

『おしとやかな人かなあ。リザさんとは全然違う・・』

 

お淑やか、"同族"だという人の特徴として挙げられたそれは、目の前の女性にピッタリ当てはまっていた。しかし、見た目は殆ど人間だ。

 

・・もしやと思ったが、単なる偶然か・・

 

「ねえリザ。」

 

「ん?」

 

「この人だよ。似てるって言ったの。」

 

「はえ!?」

 

ルーミアの言葉に目が丸くなる。コイツのどこが?

 

「嘘だろ?妖怪なのは分かるが、見た目ほぼ人間じゃねえか。」

 

「「「「「「・・・・」」」」」」

 

オレがそういうと、ルーミア達とわかさぎ姫はしばし顔を見合せ、やがてクスクスと笑い出した。・・何だ?なんか変なこと言ったか?

 

「・・ふふ。そうねえ。確かに水から上がった姿は見せてないわね。」

 

「・・何の話だよ。」

 

弱ってわかさぎ姫に問いかける。彼女が体を捻ると、すぐ近くの水中からバシャッと何かが飛び出した。

 

「・・!」

 

それは、魚の尻尾だった。わかさぎ姫の体の流れを見るに明らかに彼女の下半身がその魚なのだが、しかし、本当に?

 

「・・そ、それ・・」

 

「『人魚』ですよ。」

 

リグルが教えてくれた。確かにその尾の青みがかった銀色は、生々しい生き物のモノだった。

 

「へえ・・だから水に・・」

今までいかにも人外な見た目をした妖怪には会っていなかったせいで、ついマジマジと見つめてしまう。するとわかさぎ姫は軽く飛沫をあげて尻尾を水に沈める。

 

「わぷっ!?」

 

数滴が顔にかかり、思わず顔を覆う。ケラケラとチルノが笑う声がした。

 

「もう、あんまり見ないで下さいな。」

 

「す、すまん・・」

 

おどけて言うわかさぎ姫。横からルーミアが顔を出した。

 

「ねーワカサギ、尻尾食べちゃダメ?」

 

「やめんか!」

 

すかさず手で制す。オレみたいに再生する訳でもないのに、どんだけ食いたいんじゃ。

 

「えーでもー」

 

「デモもダッテもない!」

 

オレがルーミアをしかる様子を、わかさぎ姫は微笑ましい様子で眺めていたが、彼女はふと思い出したようにこう言った。

 

「あ、そうだリザさん。もうすぐ私の友達が来るから、よければ挨拶して下さいな。」

 

「え?友達?」

 

言った途端に、どこかから足音が聞こえた。見ると、一人の女性が佇んでいる。

 

「あ、影狼さん。」

 

みすちーが女性に駆け寄る。影狼と呼ばれた女性は、ふっと顔を上げる。頭から狼のような耳と尻尾が生え、長くサラリとした黒髪をもち、灰色のローブに身を包んでいる。

 

「こんにちわー。今日も綺麗な髪の毛ですねー。」

 

「ええ・・」

 

「もふもふー」

 

「・・くすぐったい。」

 

ちびっこ達が影狼にじゃれつく。影狼も邪見にせず相手をしていて、きっと穏やかでなつかれているのだなあ、と初見にも伺わせる。

しかし、どうして。影狼の称える雰囲気はなんだかドンヨリと暗かった。

 

「・・あら?」

 

影狼がこちらに気づいた。

 

挨拶しようとすると、わかさぎ姫が代わりに口を開く。

 

「こちら、リザさん。さっき会ったのよ。」

 

影狼がふぅん、と素っ気なく答える。

 

「・・今泉 影狼。よろしく」

 

わかさぎ姫の気軽な口調からして、影狼が件の友達だろう。しかし・・

 

「かげろー、なんか元気ないね。」

 

ルーミアが首をかしげる。また台詞を取られた。すると、影狼は一瞬ぐっと固まったかと思うと、ガックリと肩を落とし、項垂れた。

 

「ど、どうしたんですか!?」

 

「どうした!?お腹痛いのか!?」

 

髪と尻尾を弄っていた大妖精とチルノが慌て出す。右耳をふにふにしていたみすちーは落ちた肩、頭に引っ張られて危うく耳を引っ張りそうになり、左耳をクイクイしていたリグルはパッと手を離し、遠くから眺めていたわかさぎ姫と同じように『あちゃー』という顔をした。

 

(・・そんなに深刻なのか?)

 

眉を潜める。わかさぎ姫が掘り下げないということは、何かしらのタブーなのかも知れない。

 

「・・・ね、ねえ!そういえばリザって何の妖怪なの!?」

 

「え?」

 

唐突にわかさぎ姫が尋ねてくる。恐らく空気を変えるためだろうが、こちらとしても答えに窮してしまう。

 

「あー、トカゲ・・だな。尻尾が生えてたんだけど、千切れちまった。」

 

そう言ってあとは笑って誤魔化す。なるべく余計なことは言わなかったはず・・あれ?

 

「・・生えてた・・生えて・・」

 

影狼が肩を震わせ出した。何事か、といぶかしんでいると、ガクンと膝をつき、フルフルと手で顔を覆う。

 

「お、おい・・!」

 

流石にただ事では無いと思い、駆け寄ろうとする。しかしその瞬間、影狼がバッと天を仰ぐ。

 

「・・!」

 

思わず身構える。親友が触れないタブー。これ程までに元気を削り追い込む問題。果たして美しい娘影狼の口からどんな重い一言が発せられるか・・・・!

 

「・・毛深いっていわれた・・」

 

「・・・・は?」

 

思わず声につまる。なんというか斜め上の発言だ。わかさぎ姫を見るとやれやれ、とため息をついている。え?じゃあこれで予想通りなの?元気ない原因って?

 

戸惑うオレを余所に、影狼は何やらブチブチと文句を言い出した。

 

「いいなー、子供は悩まないし・・

 

姫は元々ないし・・」

 

「いやだって、私の下半身魚類だし・・・・」

 

毛深い・・・・子供・・・・下半身・・・・魚類・・・・

 

ああ、そういうことか。

合点が行き、一人頷く。因みにオレもトカゲ、もとい爬虫類の妖怪だからか髪の毛以外は、勿論"アレ"もない。獣の妖怪との違いというわけか。

 

しっかし、ここまで悩むとは相当だな。オレには実感は出来ないがやはり励ますくらいはすべきだろう。

 

そんな思考の末影狼に振り向いた。その時。

 

「・・・・!」

 

あかん。こちらを睨んでいる。穴が空くんじゃないかって位。

どう話を切り出すべきか戸惑っていた時、影狼がポツリと呟いた。

 

「ねえ。」

 

「な、何だ?」

 

愛想笑いしようにも口がひきつる。妙に抑揚のない声。

 

「貴女は・・・・生えてる?」

 

うおぅ、なんて事を聞きやがる。こんな人のいる場所で答えたくはないが、はぐらかしは聞きそうにない。今の影狼なら呪いの力を持つ犬神と言われたら信じてしまいそうだ。

 

「いや、オレトカゲだし・・・・」

 

なんとか察してもらおうと言葉を紡ごうとするが、影狼は表情を変えない。

 

「・・・・確かめさせてよ。」

 

「いやいやいや」

 

マジだ、こいつマジだ。一歩こちらに近づく。オレは動けない。

 

「私も見せるから。」

 

「いや結構。」

 

そういう問題じゃない。いや仕方ないんだって。体の構造が・・・・

 

「隠すなあぁっ!!」

 

「わあああぁっ!!」

 

影狼が飛びかかってきた。抵抗する間もなく押さえ込まれ、彼女の手が振りかざされる。

 

「お、なんだプロレス!?」

 

「リザがんば!」

 

「おーほっほ。元気だ。(^ω^)」

 

ルーミア達が囃し立ててくる。ふざけんな。どこの世界に下着を剥ぎ取るレスリングが・・・・

 

 

・・・・え?あるの?

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