【完結】LOST GENERATION ―NARUTO THE MOVIE―   作:春風駘蕩

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『だがいつかは……、
 人が本当の意味で理解しあえる時代が来るとワシは信じとる!!
 答えが見つからんかった時は、
 その答えをお前に託すとしようかのぅ』

               ―――自来也


第三章 黒龍、来る
1.ナルト先生


 バシッ、パンッと小気味良い打撃音が、森の中に響く。

 三本の丸太が立てられた空き地で、少年と少女が拳や蹴りを打ち合っていた。

 パンッと放たれたパンチを払い、少年は反撃の回し蹴りを放つ。

 少女は軽くその場で跳んで、少年の足の上に片手で乗る。そして手を軸に、自らも少年に蹴りを放った。

「ぬわっ!?」

 少年は大きく仰け反ってバランスを崩し、その隙に少女は降りて足払いをかける。

「くっ…」

 少年は顔を歪めると、無理矢理空中で体勢を変え、地面に手を付ける。後転の要領で起き上がると、すぐさま拳で反撃に出る。

 少女は繰り返し放たれる拳をそらしつつ、少年の目をじっと見つめ、じりじりと後退する。そして、少年のまっすぐな目を見返していた少女の体が、唐突に沈んだ。

「え!? ……おわっ!」

 呆気にとられた少年のマフラーがいきなり引っ張られ、抵抗する間もなく体が浮かんで一回転し、少年は地面に叩き付けられた。

 痛みに顔をしかめる少年の目前に、ビュンと少女の拳が向かう。

「!」

 ピタリと止められた拳を前に、少年は観念したように、深いため息をついた。

 

 

 二人の勝負の決着を見て、ナルトは前に出た。

「うっし、そこまで!!」

 腰に手を当てて近づくナルトに、アケビは拳を引いて直立することで応えた。

 一方の木ノ葉丸は、悔しさに顔を歪めた。

「クソ〰〰っ、また妹弟子に負けたぞコレ!!」

「本っ当に強いわね、アケビ」

 丸太の上に座り、サクラが感心したような、呆れたような口調で言った。

 そこで、起き上がった木ノ葉丸が、アケビに向かってビシッと人差し指を突き出した。

「もう一回すんぞコレ! 負けっぱなしじゃ面子がたたねェ!!」

「ん、やる」

 アケビも拳を握り、シュッシュッとファイティングポーズをとる。

「またやんのかい……この脳筋どもは」

「よーし、じゃあ俺も参加するってばよ!!」

 呆れるサクラの隣で、ナルトも袖をまくって腕を回す。その言葉に「アンタもか…」と頭を抱えるのを余所に、ナルトの審判の下、アケビと木ノ葉丸の組手がまた始まる。

 バシッ、バシッとまた小気味良い音が響く中、サクラはぼんやりとアケビを見つめていた。

 ―――……体術も剣術も優秀。

    言動は幼いけど、知識自体は低くない。……その点ではナルトも木ノ葉丸も

    超えてるように思えるけど……。

 組手の方では、木ノ葉丸の方が早くも優位に立っていた。アケビよりも小柄な体格を生かし、アケビの攻めを躱し、反撃していく。

 また、サクラはため息をつく。

 ―――ホント、どこから来たのかしらねー……。

    この子……。

 ドタッ、と音がして、決着がついた。

 襟首を掴まれた木ノ葉丸が、仰向けで組み伏せられていた。

「そこまで!」

「また負けたぞコレェェ―――!!」

 木ノ葉丸は、その場でバタバタと手足を振り回して暴れる。悔しそうに顔を歪めるその姿は、ただの子供でしかなかった。

 ナルトはそれを見て、腹を抱えて笑っていた。

「ッははは……!! こりゃ、体術じゃゲジマユとやりあえるのも近いかもな……」

「くっそー絶対追いついてやっからなコレ!!」

「うん、わかってる」

 アケビがふんわりと、微笑みながら答えると、木ノ葉丸の勢いがガクッとそがれる。どうにもこの少女のふわふわ具合には勝てる気がしない。

 掴みどころが無く、それでいて嫌な気がしないのだ。

 何よりも、尊敬するナルトに懐いているのだ。嫌いではないはずだ。

「…いつか俺ともやろうぜ、アケビ!」

「うん、やる。……ナルト先生」

「え?」

 思わず、ナルトとサクラ、木ノ葉丸の声が重なる。〝先生〟と呼ばれるようになるまで、何かをした記憶も、それを見た記憶もないのだ。

 対してアケビは、きょとんとした表情でナルトを見つめていた。

「……いろんなこと、教えてくれたから、先生」

 次いで、その顔が悲しそうに歪む。

「……だめ?」

 うるうるとした目で見つめられて、今度はナルトが慌てた。

「えっ……いやいやいや! いいってばよ!? ただ、あれ……いきなりだったからびっくりしただけだってば……」

(……この子素でやってんのかしら。だとしたら恐ろしい子だわ)

 慌てるナルトの後ろから、別の理由で戦慄したサクラがアケビを凝視した。この仕種を自覚したら、恐ろしい武器になるだろう。女として。

 木ノ葉丸は木ノ葉丸で、ナルトを羨ましそうに睨んでいた。

「いいなぁ、ナルト兄ちゃん。俺もそんな風に呼ばれてーぞコレ」

 それを聞いて、アケビは一時、顎に手を当てて考え込んだ。

「ん、じゃあ……先輩」

「!!」

 ポツリと呟かれた言葉に、木ノ葉丸は固まった。

「…せ、先輩……!!」

 木の葉丸は、思わず口にし、身を震わせる。

〝先輩〟……なんと甘美な響きだろうか。その者よりも先を行き、導いていく者。その背中を見つめ続け、追いかけて、いずれ自分も追われていく存在となる、不思議な言葉。

 キラキラと目を輝かせ、木ノ葉丸は感動で打ち震える。

 それを見ながら、サクラはまた思った。

(チョロいわね、コイツら……)

「よっしゃ―!! じゃあ後輩にオレの得意忍術見せてやるぞコレ!!」

「おお!」

「ん!」

 調子に乗った木ノ葉丸が、意気揚々と印を結ぶ。ナルトとアケビは、わくわくと期待の眼差しでそれを見守る。

 そこで、サクラは「ん?」と目ざとく、得意忍術という言葉に引っかかった。

「忍法……!」

 ボフンッ、と木の葉丸の体が煙に包まれ、見えなくなる。

 そして、やがて晴れ始めた煙の中から現れたのは。

「―――お色気の術!!」

 大事な所はかろうじて煙で隠れたナイスバディを引っさげた、全裸の黒髪美少女だった。艶やかで張りのある肌と、輝く髪、サクラの逆鱗に触れるような変化の術の応用が、お披露目された。

「おお!!」

「うむ、見事ォ!!」

 キラン、とアケビの目が輝く。若干表情の変化に乏しい彼女にしては珍しく、星が浮かんだ瞳をこれでもかと木ノ葉丸に釘付けにしていた。最近分かったことだが、アケビは派手な術が好きらしい。ナルトの螺旋丸やサイの超獣戯画といった目立つ忍術に対しては、非常に強く興味を示していた。

 一方ナルトもまた、愛弟子の成長に腕を組みながら頷く。だが。

「―――ってやっぱりかい!!」

 ドゴンッ!!

 と強烈な打撃音とともに、木ノ葉丸は一瞬で頭から地面に沈んだ。

「…………」

 ボフンッと煙を上げて、元の姿に戻った木ノ葉丸を見下ろしながら、ナルトとアケビは無言で顔を青く染めた。

 そしてその目前で、サクラはブチ切れた。

「女の子になんつー忍術見せてんのよアンタはぁ!! バカじゃないの!?」

「さっ……サクラ姉ちゃ…ギブ……」

 サクラは沈黙していた木ノ葉丸の上に馬乗りになり、マフラーを掴んでガクガクと前後に揺さぶる。意識を取り戻した木ノ葉丸が弱々しく言うも、怒り狂ったサクラは止まらなかった。

 そしてそんな中、木ノ葉丸の師匠と妹弟子はというと。

(…アケビの前でふざけんのやめよ……。よかったぁ〰〰〰、やんなくて……)

(……サクラ、コワイ)

 弟子の犠牲の上で、心の底から安心していた。

 そしてアケビは、ガクガクと揺さぶられる兄弟子を見ながら、ずっと涙目で震えていた。

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