【完結】LOST GENERATION ―NARUTO THE MOVIE― 作:春風駘蕩
1.シンマとレンヤ
―――かつて繁栄を誇った鏡の国は、その痕跡を遠く深い山中に残している。
崩れた廃墟の山には、人どころか獣すらも寄り付かず、膨大な忍術に関する情報が当時の
まま残されているという。
木々の間を飛び、ナルトは綱手の言葉を思い出していた。
背後を振り返り、今回のキーパーソンであるアケビがしっかりとついてきているか確認する。
―――今回の任務は、その跡地に赴き、奴らについての情報をできる限り集めることだ。
相手の実力、勢力が不明な以上、極力戦闘行為は避けるように。
前方を先導して跳ぶカカシ、シンマ、レンヤの三名。そして、ナルトとアケビを追うように駆けるヤマト、サクラ、サイの第七班が、今回のメンバー。
―――みんな、心してかかれ!!
目指す目的地は、まだ遠い。
その夜、ナルトたちは森の中で野営を取っていた。
焚き火を燃やし、パチパチと火花が弾ける周りを囲んで、少し遅い夕飯にする。
ナルトとアケビは、ずるずるとカップ麺をすすり、まったく同じタイミングで息をついた。
「あー、
「ん。おいしい」
空になったカップを置き、感想を述べるナルトとアケビ。
そんな二人に、携帯食を口にしていたシンマとレンヤが呆れた表情を向けた。
「ほんとにラーメンばっか食ってんな、お前……。嬢ちゃんまで」
「……噂通りだな」
「んぁ?」
間の抜けた声を漏らすナルトに、シンマは「…もういい」と手を振る。
「しっかし、そうやって並んでるとお前ら、兄妹みてーだよな」
「そうか?」
「ああ…。髪の色といい、目の色といい、ラーメン好きなところといい……本当は生き別れの兄妹なんじゃねーの?」
「よしてくれってばよ。俺ってば、ずっと一人だったんだぞ?」
ナルトは笑いながら、二人に手を振った。だが口で否定しても、ナルト自身もそんな風に感じていた。初めて出会って、顔も知らなかったはずなのに、なぜか他人のような気がしなかった。目に見えぬ繋がりのようなものが、確かに感じられていたのだ。
その時、ポスッとアケビの頭がナルトの肩によりかかった。
振り向くと、アケビは青の瞳を閉じて、すぅすぅと小さな寝息を立てていた。
「……お疲れのようだな」
「……ああ」
幼子のようなアケビに、シンマとレンヤは頬を緩ませた。見た目と中身のちぐはぐさが、どうにも保護欲を掻き立てる。二人としては、さっさと任務を終わらせてわが子と触れ合いたい、そういう気持ちを強くさせていた。
ナルトはやれやれとため息をつくと、アケビのもたれかかってくる体を抱き、焚き火の近くに横たえさせた。すやすやと心地よさそうに寝息を立てるアケビに毛布をかけてやり、ナルトは食べ終わったカップを片付け始めた。
それを見て、シンマは笑う。
「……前言撤回。やっぱお前ら兄妹ってより
「ぐっ……、俺ってば、この年で子持ちかよ」
苦虫を噛み潰したような顔になったナルトに、シンマとレンヤは声を殺しながら笑う。ナルトも「へへっ…」と照れ臭そうに笑うと、気になったことを尋ねた。
「あのさ、シンマのおっちゃんもレンヤのおっちゃんも、結婚して子供いんだよな?」
「お? 聞いてくれるか、俺の話を!!」
ナルトの問いに、シンマは急にテンションを上げた。「へ?」と固まるナルトに、レンヤは呆れたように頭を抱えた。
「いやー、もう俺の娘が可愛くってかわいくってさぁ!! こないだも俺が任務行こうとしたら『パパ行っちゃヤダー!!』ぬぁんて言ってくれちゃってさぁ!! その前なんか帰ってきたら天使みてーな笑顔で『パパおかえりー』って言って抱き着いてきて離れてくんなかったり……ああ、俺も話さなかったんだけどな!! あとなあとな……」
「…あ、いや、もう結構ッス」
ナルトのやんわりとした制止も聞こえないのか、シンマの親バカモードは止まらなかった。それどころか嫁の自慢まで始まり、彼女のいないナルトはげんなりし始めた。唯一レンヤだけが、クールに我関せずを貫いている。
ナルトがいまだ続く惚気話をどうしようかと考え始めたその時、シンマの口が唐突にピタッと止まった。
「……時に、ナルト。お前に一つ頼みがある」
「ん?」
ナルトにまっすぐ向き直ったシンマは、しばらく震えると深く頭を下げた。ガバッと風が起きるほどの勢いの礼に、ナルトはギョッと目をむいた。
「頼む! うちの子に一度会ってやってはくれんだろうか!! 大ファンなんだよ、お前の!!」
「……はぁ!?」
神妙な顔で出されたトン妙な頼みごとに、ナルトは目を丸くした。シンマは顔を挙げ、下からナルトを見上げながらまた懇願する。
「ペインから里を救った英雄に会いたい〰ってずっと言ってるんだ!! 任務に支障が出ない日でいいから!! この通り!!」
「え……、え〰っと……」
「…その辺にしておけ、シンマ」
困惑するナルトを放って暴走するシンマを制し、レンヤが言った。レンヤがポンポンと宥めるように肩をたたき、深くため息をつく。
「…ナルトにはナルトの都合があるんだ。無理を言って困らせてやるな。……都合が空いたらうちの子も頼む」
「アンタもかい!!」
大真面目な顔でそうのたまったレンヤに、ナルトのツッコミが飛んだ。
「……みんな楽しそうだねぇ」
見張り役として離れていたカカシは、焚き火の近くの川辺でそうつぶやいた。
「緊張感がなさすぎなのよ。どっちも」
「あいつら、いっつもあんな感じだからね」
苦笑しながら、カカシはサクラに返す。
と、そこへサイが川上から戻ってきた。一足先に、偵察に行ってきたのだ。
「ただいま戻りました」
「お疲れさん。……どうだった?」
急に真剣な表情に戻ったカカシに、サイは報告を返す。
「周囲に人は見かけられませんでしたが、……雰囲気は異常でした」
「…そうか」
「いよいよ、なんですね」
サクラのつぶやきに、カカシは川面に移る月を見つめながら「ああ…」と短く答えた。
任務の目的地。
「もうじき、鏡の国の跡地だ」
水面の月が、風に揺れた。
お久しぶりです。
投稿再開します。
楽しみにしていた方、お気に入りに入れてくださっていた方、大変失礼いたしました。