【完結】LOST GENERATION ―NARUTO THE MOVIE―   作:春風駘蕩

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最終章 いつか、また逢う日まで
1.新たな炎


 紅蓮の炎が舞い、少女の周りで踊る。

 黒いマフラーがはためき、火の粉が蛍のように自由に飛び交う。

 レンは、少女の―――アケビの背中を呆然と見つめていた。

「……アケビ、なのか?」

 剣を手に、アビスを止めていたアケビは、口元にやさしい笑みを浮かべて振り向いた。

「うん、そうだよ?」

「貴様っ……何故だ!? なぜ……どうやってあの呪縛を破った!?」

 刃を押し付けたままのアビスが吠え、唾を吐きながらアケビを凝視する。

 アケビは一瞬で表情を消すと、怒りを全開にした目でアビスを睨みつけた。

「うるさいよ……!!」

 剣を押し付けたまま、チャクラを一点に集中させる。火へと変換させた力を刃に集束させ、渾身の力で剣を振り抜く。

「うおりゃあああああ!!」

「ぐああああああ!!」

 真正面から強烈な炎の一撃を食らい、たまらずアビスが吹っ飛んだ。

 ドボンと水飛沫を立てて沈むアビスを睨みつけながら、アケビは剣を払って炎を四散させる。

 その背中を、レンはなおも信じられない気持ちで見つめていた。

「アケビ。お前、……どうして……?」

「説明は後」

 背を向けたまま、アケビは簡潔に答える。目はまだ、アビスに向けられたままだ。

「……先生、レンのことを頼みます」

「!! お、おい待て!!」

 ナルトに向かって告げられた言葉に、レンが反抗してもがいた。

 激痛が走っているであろう身体を無理に動かしている友達に笑いかけ、アケビはビッと親指を立てて見せた。その姿を、レンと、その体を抱き起すナルトが凝視する。

「大丈夫……。今度はちゃんと戻るから」

 そう告げると、アケビは数歩前に進み、異形たちとの距離を詰める。

 警戒を露にする騎士たちを前にし、アケビは無言で足を進める。ギリギリと剣の柄を握る手に力がこもり、怒りが全身からチャクラを漏れ出させる。

 少女の一歩一歩が、まるで地震のように水面を震わせる。

 騎士たちのちょうど中心辺りに立ち、アケビはギン、と両目に力を込める。

「千倍にして、返す!!」

 ただ、思いの丈を込めた一言。

 それが、開戦の合図だった。

「ほざけ小娘が!!」

 激高したアビスが、剣を振り上げて迫る。同時に、包囲網を狭めながら騎士達も得物を振り上げて突進し始めた。

 水飛沫を上げて水面を走ってくる騎士達を睥睨し、アケビは静かに両手で十字の印を結び、チャクラを練り上げると、叫ぶ。

「多重影分身の術!!」

 アケビの声が響くと同時に、彼女の周囲でボボボボボンと無数の煙が立ち上った。

「何!?」

 思わず足を止めたアビスをよそに、煙はなおも数を増やし、逆に彼らを取り囲んでいく。騎士達も、そして木ノ葉の面々も目を瞠り、その光景に驚愕した。

 そしてやがて、煙が晴れた中から何体ものアケビの影分身が現れた。

「……まじかよ!?」

 木ノ葉を代表して、キバが声を漏らした。

 アケビがニッと笑うと、影分身たちが全員それぞれに剣を構え、構えた。

「ッシャア!! 行くよ!!」

 鼻をピンと弾き、オリジナルのアケビが吠える。

「「「オオオオオオオオオオ!!」」」

 影分身たちも雄叫びを挙げ、騎士達に向かっていく。

 剣を掲げ、無数の異形たちに振り下ろし、時に掴みかかって殴りつける。まるでそれは、あの男の戦法によく似ていた。

「ウオラァァァ!!」

「シャァァァ―――!!」

 剣を振り上げた王蛇が、ベノスネーカーに指揮し、アケビの方へ向かわせる。ベノスネーカーは喉の奥に毒液を溜め込み、首で勢いをつけて吐き出した。

 粘性の酸が降る前で、アケビがパンッと両掌を合わせ、身構える。そして、火遁を全身に纏わせながら高速回転を始めた。

「我流……火遁・回天!!」

 途端に炎の渦が球体となり、降り注ぐ酸を呑み込んで無効化してしまった。

「なっ……!? 回天だと!?」

 蜘蛛の異形を相対していたネジが目を見開く。

 その傍で、別のアケビの分身が二人そろって走り出す。左右で呼吸を合わせ、走りながら跳躍すると、全身に業火を纏って捻るように回転し始めた。

「火遁・牙龍牙!!」

 爆炎の螺旋と化した二人のアケビの分身が、白虎と蟹の怪物の腹に向かって突っ込んでいく。直撃を食らった二体は仰向けに倒れ、水の中に沈む。

 水面に着地したアケビの分身は、そのままボンッと音を立てて消えた。

 別の場所では、白鳥の騎士ファムの刺突や斬撃を、徒手空拳で受け流しているアケビの分身がいた。目にも止まらぬ猛攻を、アケビは必要最低限の動作で見切り、躱し続けている。

 別の分身が横から攻撃して隙をつくとアケビは跳躍し、距離をとったアケビは、両拳を握りしめると脇を占めて構える。そして、両手にチャクラの炎が発生し、龍の顔を発現させた。

「柔歩・双龍拳!!」

 顎を開いた龍の首を備え、アケビが突進する。迎え撃つファムの薙刀をかいくぐったアケビの拳が、ファムの胴に炸裂した。

「きゃああああ!!」

 至近距離での強烈な一撃に、ファムもたまらず吹き飛ばされる。

「あれって……私の術……」

「まさかアレ牙通牙か!? つーか俺らのよりカッコよくね!?」

「クゥーン……」

 ネジと同じく目を瞠るヒナタとキバ、そして赤丸。若干一名と一匹は、パクられた挙句オリジナルよりもイケていたことにショックを受けていた。

 その横で、シノがサングラスの奥の目を細める。

「どういうことだ……? さっきとはまるで別人だぞ?」

 アケビの、以前との印象との差に、驚愕を隠せない。表情も雰囲気もまるで異なり、別人としか思えない変化だった。

 ヒナタは白眼を発動させ、次いで眉を寄せる。

「…でも、チャクラはちゃんとアケビちゃんのだし…………え?」

 突如ヒナタの白い眼が、大きく見開かれた。

(……なに、このチャクラ。アケビちゃんの中に……もう一つ大きなチャクラが……!?)

 ヒナタは、封じられているもう一つのチャクラの存在を感知し、それの意味に戦慄する。

 体内に存在する二つのチャクラ。それが表す意味に。

(アケビちゃんも……ナルト君と同じっ……!!)

 気づいたヒナタの目の前で、オリジナルのアケビが剣を振るい、アビスを相手にしていた。

 牙の並んだ剣を構えるアビスに、アケビは炎の刃で対決する。刃が激突するたびに、辺りは火花と火の粉で昼間のように照らされ、水面に反射する。

 火花が星のように散る中で、アケビはまるで舞うように剣を翻す。

「くっ……!!」

 美しい剣舞に、アビスも押され始める。

 剣を受け、躱し、アビスは悔しさに歯を食い縛る。

 次第にアビスからは初めの余裕が失われていった。正体のよくわからない不安に苛立ち、怒り、そして激しく憎悪の感情が湧き上がる。

「舐めるなぁぁぁ―――――!!」

 大気が震えるほどの怒りの咆哮が轟く。怒りがアビスのチャクラと同調し、激しい波飛沫となって全身から迸る。

「!?」

 目を見開いたアケビを押しやり、アビスは術を発動させる。アビスの足元に大量の水が噴き出し、アケビに向かって殺到したのだ。

「水遁・波浪鯨砲!!」

 忍術の激流が巨大な鯨の形を作り出し、刃を構えたアケビに直撃した。

 鯨は一匹だけではなく、何体にも分かれて放射状に泳ぎだす。分身のアケビだけでなく、味方の騎士達や木ノ葉の忍達、そしてナルトとレンに襲い掛かった。

「ぐああああああ!!」

「うわあああ!!」

 強烈な水鯨の一撃をまともに喰らい、アケビの分身がボンッ、ボンッと次々に煙となって消滅する。騎士と忍達も激流に押し流され、大きな負傷を負った。

 足元から波が引くのを激痛に呻きながらアケビは見下ろし、必死に体を起こす。

「くっ……」

 手をついて体を起こすアケビは、キッとアビスを睨みつける。

「身の程を知れ、小娘……!!」

 アビスが再び剣を構え、ゆっくりとアケビの方へと歩み寄ってくる。

 アケビは立ち上がろうともがくも、予想以上のダメージで身動きが取れずにいた。

「ウオオオオ―――!!」

 雄叫びを挙げ、アビスが剣を振り上げる。

 確実にアケビを両断しようと振り上げられた剣。その前に、二つの影が躍り出た。

「螺旋丸!!」

「風遁・風刃!!」

 ナルトの螺旋丸と、レンの剣が立ち塞がり、アビスを吹き飛ばした。

「ぐぁぁ!?」

 衝撃でアビスの手から剣が離れ、湖中にザブンと沈む。

 よろめいたアビスが、鎧に手を当てながら、キッとナルトとレン、アケビを睨みつける。

 起き上がったアケビが二人を見上げた。

「先生……レン……」

「…お前にばかり、良いカッコをさせてたまるか」

 息の荒いレンが、細剣を手に言うと、アケビはニッと笑みを浮かべた。

「ここからは、一緒だ。相棒」

 チャキン、と刃を鳴らしてレンが親友を激励する。

 アケビはダメージの残る体に叱咤し、全身に力を滾らせて立ち上がる。

「分かったよ、レン!!」

 金髪を払い、アケビが答える。

 その前で、ナルトは急にホロホロと涙を流し始めた。

「くぅぅ……あの舌っ足らずだったアケビが急に立派になっちまって……。なんなんだってばよ、この嬉しいような寂しいようなこの感じ」

「…先生、恥ずかしいんでやめてください」

 なぜか急に父性に目覚めたナルトに、アケビが顔を赤らめ、レンは呆れた目を向ける。

 シリアスが台無しになっていた。

 だが、それはアビスには関係なかった。

「……おのれ……おのれ……どこまでも邪魔しやがって……ガキどもがァ……!!」

 呪詛のように呟きながら、アビスはゆっくりと立ち上がる。

 すると、その体を急に小刻みに震わせ始めた。

「……ク、ククク……ククククク」

 震えながら、アビスは仮面の下で嗤い続ける。

 何かが、切れる音がした。

「もういい……面倒だ。支配などどうでもいい。貴様らが邪魔で手に入らないのならいっそ……」

 そう小さく呟いて、アビスは自身のベルトに手をかける。

 そして、一枚のカードを取り出した。

「!?」

「あのカードは……!!」

 アケビとレンが、目を見開く。

 アビスがそのカードを、金色の鳳凰の姿が描かれたそれを掲げ、一拍の後にグローブの鮫の口の中に押し込んだ。

「フン!!」

 途端にグローブの眼が怪しく輝き、低い声が響いた。

SURVIVE(サバイブ)

 その直後だった。

 ドクン!!

 心臓の鼓動のような波動が、アビスから放たれた。

「ぐ……おぉ……」

 アビスはぶるぶると震え始め、ガッと胸を掴む。

 するとゴゴゴ……と周囲の大気も震え始め、水面に波紋が生じ始めた。

 そして。

 

「ウオオオオオオオオオオオオオオオオ―――――――――――――――――――!!」

 

 天を仰ぎ、アビスが吠える。

 その直後、金色の衝撃波がナルトたちに襲い掛かり、全てを吹き飛ばした。

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