GOD EATER〜Dual sniper〜 作:CiAn.
とある少年は気ままで自由人な神との邂逅を通してどう変わるのか……
という重い感じはなしにして明るさ多めで書きたいと思います!シリアスは控えめだからこそシリアスなのだ(持論)
いつまで経っても誰も来ない。塵1つさえ存在を許されないほどの真っ白な世界に俺だけが取り残されているのに気づいてから、体感時間ですでに1時間ほど経過していた。
視線を彷徨わせても白。首を回して辺りを見ても白。俯いたって寝転がったって白ばかり。気を抜けば俺もその一部になってしまうのではと危惧してしまう。
『おーい、そこの人間。生きてるかー』
聞いているだけでこちらまで脱力してしまいそうな気の抜けた声が響いた。既に眠気すら受け入れ始めた体を半ば無理矢理起こしてそちらに向かうと、白い世界が崩れた。
徐々にではなく爆発で一点が吹き飛ばされたのを皮切りに落下するみたいに崩れた白い世界は濁りのない、いっそ怖いほど綺麗な泉に変わっていた。その中心に人影が見える。
わずかに生まれた躊躇いを押しのけて人影の方に向かうにつれ、対象は椅子に座っていることが分かってきた。いや、あれは玉座といった方がいいだろうか。妙に仰々しいデザインで凝り固まっている。
その姿は金色の髪に純白のドレスを着た見目麗しい女性だった。どこか眠たそうにも見える。
「よう人間、よく来たな。私は歩くのが嫌いだからお前が来なかったら裁いてたぞー」
「貴女は誰だ。見たところ初対面だが」
警戒しながら声をかけるとその女性は玉座の肘掛けに首を預けて俺を見据えた。その様はまるで標的を決めた蛇だ。とぐろを巻いて気怠く構え、毒牙を光らせる野生の静かな悪魔。怖気から後ずさると水がかき分けられて音を立てた。
「そうだなー、私に名前はないから名乗ることはできない。だが、通り名なら教えよう。私は倦怠神」
「倦怠神?随分と関わりが薄そうな神だな」
「ああ、私は人の怠慢が尽きるまで存在する。ゆえに人間と関わりはないが関係はある」
今度はその倦怠神が気まぐれで動かした足が小さく水音を立てた。とうの本人は満足げに微笑んでその波紋を足の親指でなぞった。
「私は全てが面倒だ。だから普通の神なら許さないその言葉使いも指摘しない。叱りつけることもまた倦怠感を感じずにはいられないんだー」
「とりあえず懐が深い神だってことは分かったよ。それで俺はどうしてここにいるんだ」
倦怠神は話すのも面倒だ、と言いたげな視線をこちらに向けて短く息を吐いた。
「俺は死んだ。そうだろ」
「ああ、それは理解してるのかー。んじゃあ言うけどさぁ、お前私の賭け馬になってくれ」
「別に構わない。死んだ後も仕事に困らないのは嬉しいな」
死んだら終わりと思っていた身分にとってはこんなだだっ広い世界で何もせず生きるのは正直苦痛だ。生きてる心地がしない。
「実はなー、神にも馬鹿はいるんだよ。私を不必要と考える、人に幸福だけ与える神さ」
「神は複数いるのか?」
「説明するのか、面倒くさいなー。神だっていろいろいるんだ。一番上には創造神、下には私みたいにその存在を人間にすら知られない神だ」
神ってのも楽じゃなさそうだ。背もたれを指で突き始めたこの倦怠神もまた、そういった面倒事を嫌って生きているのだろうか。
「話を戻そうー。まぁその馬鹿な神が私を排除するために試練を出したわけだ。その試練が二つの世界で悔いのない死に方をした、幸せ者を作ることだー」
「勘違いしているようなら言うが俺は未練がなかったわけではない。生きるに値する活力が無かっただけだ」
「そーそー、その目だよー。私はその倦怠を気に入ったんだ」
そんな理由で自分の存在を左右する選択をしたのか。馬鹿らしい。
「だけどなー、次にお前に行ってもらう世界は結構足掻かないと生きられないぞー」
「どういう世界だ?」
「人間が考えた神の名前と同じ化け物を殺して何とか生き延びる。そんな泥臭い世界だ。私ならパスだなー」
罰当たりな世界もあったものだ。そのうち祟られるんじゃないか?
「とりあえず行ってくれるってことでいいかー?」
「問題ない。貴女の存在を保障できるかは知らないけどな」
「構わないさー。私は倦怠神だ、生きるために足掻くこともまた面倒くさい」
まるっきり生に無関心なその神を俺は自分自身と重ねた。生きてた頃の俺とどこかが似ていた。だからだろうか、
「なら、足掻いてやる。その意味不明な世界で」
「おう、任せたぞー」
再び白い世界が構築され、俺は決して染められることのない泉に体を沈めた。
目を開けると俺はなんだか錆臭い場所にいた。その臭いの正体は建造物から剥き出しになった鉄骨から発せられたものだった。
「ここがあいつが言ってた世界か?」
「ああ、そうだぞー。でもちょっと臭いなー」
「!?なんで貴女までいるんだよ!」
「そりゃあお前が私の今後を左右すると言っても私のことなんだから同行するのは当たり前だろう。あー、歩くの面倒くさい、運んでくれー」
そう言うと倦怠神は横たわっていた俺に絡みついて早く立てと急かした。鬱陶しくてしょうがないが我慢して倦怠神を背負った。
「見た目の割には軽いな。神ってのはみんなこうなのか?」
「それは違うぞー。私が面倒だと思うものを全部取っ払っただけだ。限界はあるからこれ以上は無理だがなー」
倦怠神らしい理由だな。だが、それならなんで胸はしっかり付けてるんだ。無駄じゃないのか?
「男は馬鹿だからなー。神だって変わらないくらいだ。色気はあると面倒事を避けられる。お前も私を運んでくれる代わりに脚とか触っていいぞー」
「興味がない。自分で歩いてくれた方が嬉しい」
「釣れないなー。もしかして女か?」
「そんなわけないだろ。ただ貴女を恋愛対象として見れないだけだ」
だいたい神を見惚れてどうなるんだ。恋仲が発展するわけでもなし、子孫を残すことができるとも限らない。まぁ俺たちの間に生まれてきた子どもとかロクな人間にならないな絶対。
「てか、化け物がいるって言ったよな?こんなところ歩いてて大丈夫なのか?」
「危ないだろねー。いつ変なのが来てもおかしくないなー」
言ったそばからけたたましい咆哮が響いた。鼓膜が裂けるかと思うくらいの大音量に反射的に耳を塞いだ。
「バカヤロー、いきなり手を離すなよー」
「あんなの聞いたら塞ぐに決まってんだろ。貴女は平気だったのか?」
「面倒くさいから塞がなかったんだー」
さすがは倦怠神……。しかも意地でも立ちたくないのかしっかり首を掴んでいるので気道が締まる。やめろ苦しい。
「逃げるぞ、降りて走れ」
「私は神だぞー。しかもそんなに重くないんだから我慢しろー」
「この非常事態に!覚えてろよ……!」
倦怠神を背負い直して全力で走る。咆哮は虎のような一体の化け物のものだった。
気付かれたのかこちらに向かってくる化け物は速く、これではすぐに追いつかれてしまう。
「くそっ!」
駄目だ、このままでは死ぬ。どうなるかは分からないがあいつの前足で遊ばれただけでも命に関わるだろう。
『あら、生存者か……』
先ほどの化け物のものとは違う静かで落ち着いた声が聞こえた。
そちらに目を向けると銀色の髪に眼帯、大きな銃器を持った女性が高所に立っていた。
躊躇いなく引き金を引いてその女性は化け物を淡々と打ち抜いていった。化け物の注意が向こうに向いた瞬間にその女性は懐に手を入れた。
『目を瞑りなさい』
言われた通りまぶたを閉じると小気味のいい破裂音が響いた。
「今のうちに逃げるわ」
高所から飛び降りたとは思えない平気な顔をしてその女性は俺の傍に走り寄った。
「すまない、迷惑をかけた。あなたは?」
「しがない旧型の神器使いよ。彼女、怪我でもしてるのかしら?」
「いや、歩くのが面倒なだけだ」
辟易しつつ倦怠神を見ると少し涙目になっていた。
「どうしたんだ?」
「光が、いきなり光が……」
「スタングレネードの使用時は目を開けちゃ駄目よ。下手したら失明するから」
「気にしなくていい。なにせ私は倦怠神だー。失明なんて面倒なことはしない」
いいのか?自分の正体を明かしても、と思ったが助けてくれた女性は笑って流してくれた。
「面白い彼女さんね。この時代では珍しい……」
「いや、彼女じゃない。今日会ったばかりだしな」
「そう。じゃあ詳しい話の続きはアナグラに帰ってからにしましょう」
無骨なゲートをくぐった先には大きな建物が佇んでいた。不気味な風が吹きつけるここはーー
「ようこそ、極東支部へ。私はジーナ・ディキンソンよ。よろしく」
勢いで書いた転生ものですので、転生のイロハも分からない有様です。感想などでご意見なども添えてくださると助かります。批判もオーケーですよーww