GOD EATER〜Dual sniper〜 作:CiAn.
予想:一桁ではすまない
「いい?相手の目を見るの。でも、目を合わせちゃ駄目よ」
「はい」
ジーナさんに言われた通りスコープ越しにアラガミの目を見る。敵は特に強くはないオウガテイルだが、油断は禁物、とのことだ。気を抜いたところに食いつかれて死んだ者もいるらしい。そう聞くとなかなか侮れない敵だ。
「いい調子よ。次はアラガミと呼吸を合わせるの」
「呼吸、ですか…?」
アラガミにも呼吸器官はあると聞いてはいるが、それを合わせるのか?
「呼吸は相手の行動そのものよ。緊張、ストレス、高揚、精神状態はまず呼吸に表れるわ」
よく見ればオウガテイルの頭が若干下がってる。もしかして疲れているのか?だとしたら今が叩くチャンスだ。
「もう撃ってもいいんですか?」
「ええ、初撃は任せるわ」
スナイパーに相応しい細身の銃身から撃ち出される弾が受ける空気抵抗を考えて頭の少し上に狙いを定める。
引き金を引くと一発の弾丸が撃ち出された。それはオウガテイルのこめかみに当たると赤い血の飛沫を作った。同時にオウガテイルの意識がこちらに向く。
「怯まないで。次弾、続けて」
「はい」
そこまで強くない個体だからかすぐにオウガテイルは倒れた。初めての戦闘だったので緊張が未だに抜けない。
「どうかしら?」
「なんていうか……命を奪うってこんな感じなんですね」
「そう。命のやり取り、言わば私たちとアラガミの交流。その連鎖によって私たちは生きているの」
交流、か。相手を倒すだけじゃなく自分たちが生きるために武器を持ち運命に抗う。それがゴッドイーターとアラガミの交流なのだろうか?
「おかしいでしょ?あまり共感されないけど、私はそういうものだと考えてるわ」
「すみません。全部理解するのは難しいです」
「気にしないでいいわ。これは私の数少ないこだわりだから。それじゃあ今日はこのくらいにして帰投しましょ」
「はい」
今まさに帰ろうとしている時に、かすかにアラガミの咆哮が聞こえた。距離は離れているからこちらには気付いていないだろうとは思うが、放ってもおけない。
「おそらくコンゴウね。耳がいいから私たちの銃声が聞こえたのかも」
「……どうしますか?」
「今やらなくてもまた任務として発注されるでしょうね。早く終わらせましょう」
そう言ってジーナさんは狙撃ポイントを変えるために移動を始めた。後を追うように俺もその後ろを走った。その背中はなんだか気分が高揚しているようにも見えた。
「一旦止まって、あなたは近接武器に切り替えて」
「はい」
小気味いい音と共に銃形態から近接武器形態に切り替える。種類はショートで盾はタワーシールドだ。
いろいろと試してみて素早い斬撃と確実な防御、狙撃による奇襲の組み合わせが一番しっくりきた。なのでスナイパーの練習も兼ねてジーナさんに同行してもらったわけだ。
「私がコンゴウを撃ち抜いたらあなたは接近戦を仕掛けてちょうだい。……そうね、ついでに捕食形態の練習もしましょう」
そう言ってジーナさんはスコープを覗き込んだ。眼を凝らせば離れたところにコンゴウの姿が見えた。どうやら作戦はすでに始まっているらしい。
「それじゃあ、始めましょうか」
貫通性のレーザーがコンゴウを撃ち抜いたのを皮切りに俺はその距離を詰めていく。事前訓練で習得したアドバンスド・ステップを駆使して短い間に俺の間合いにコンゴウを収めた。
「そこだ!」
コンゴウの顔を真一文字に斬る。即座に反撃に移ってくるが遅い。そこに俺はすでにいないし、次の攻撃が控えている。
「まだ血飛沫が足りないわぁ……!」
弱点であるコンゴウの顔を集中して撃ち抜くその技術は経験に裏付けられたものだった。伊達に何年も極東支部を守ってはいないということだ。俺自身はあったのは最近だが。
痛みからか顔を抑えてうずくまるコンゴウは絶好の捕食の機会と言えた。
集中して剣先を向けるとまるで生き物のような黒い物体が現れる。それをコンゴウに向けて突き出すと、黒い物体は標的の体を食い千切り神機のどこかへと消えた。
同時に俺の体が軽くなり力が溢れてくるのを感じる。いわゆるバーストモードというやつらしい。アラガミの血肉を己の力へと変えて戦う、これがゴッドイーターだ。
「ジーナさん!」
コンゴウを捕食したことで神機が形成したアラガミバレットをジーナさんに向けて射出する。これはアラガミからオラクル細胞を抜き取り、打ち出せることができる新型神機に限られた機能、リンクバーストだ。
「あら、ありがと。これでもっと撃てるわ」
旧型神機の遠距離型はオラクルをアラガミから補給することができない。なので本来は近接型の旧型神機使いと共に行動することが前提となるが、このように新型神機のようにリンクバーストでオラクルポイントの枯渇を避ける方法もある。
一方的な銃撃と斬撃を相手にコンゴウはその大木のような腕を振るい払いのけようとするが俺が手を出さなければジーナさんが、ジーナさんに向けて遠距離攻撃を放とうとすれば俺が攻撃を仕掛け、なす術もなく活動を停止した。
オラクル細胞が分解され散り散りになってしまう前に捕食をしてコアを抜き取る。こういった地味なことをゴッドイーターは何年とも分からず続けているのだとか。それでもまだアラガミが存在するのは、生命力の高さゆえかはたまた死というものが元からないのか。
「もっと撃ちたかったわ……」
「ジーナさんの援護のおかげで思うように戦えました。ありがとうございます」
「気にしなくてもいいわ。それよりもそろそろ帰りましょう。あなたの連れも待っているはずよ」
「あぁ、そういえばそろそろ憩が空腹で騒ぐ頃ですね」
自分では動かないくせに食うものは食うしベッドのシーツが歪んでいれば直せと言う。まるで手のかかる子供を持ったみたいだ。
「あなたも苦労するわね」
「ジーナさんこそ、防衛班のあの2人と一緒だと大変そうですけどね」
戦果を稼ぐことに躍起になるシュナイダーさんと小川さんとの任務だ。俺なら何をしてでも避けたい。問題行動があれば連帯責任でこっちまで罰を与えられる。
「慣れればそうでもないし、結構強いアラガミの任務も持ってくるから以外と楽しいわよ」
嘘ではなく心の底からそう思っているように微笑むジーナさんを見ているとデキる人だと思う。俺の部屋に住み着く神様とはえらい違いだ。
「憩にも見習ってほしい……」
「あの子もあの子で魅力的よ?」
独り言のつもりで言ったが聞かれていたようだ。ただ、会話を途切れさせるのも雰囲気が悪くなるので嫌だ。
「そうですかね?俺からするとわがままな奴にしか思えませんけど」
正直同じ部屋で暮らしているのが不思議なくらいだ。というか疲れている人間がソファで寝ているのはおかしくないか?
「神様と暮らすのも大変そうね」
「まったくですよ……」
本当に楽しそうに笑っているジーナさんを見ていると、別にいいかと思えてくる。
「あら、赤乱雲まで……。今日は忙しいわね」
『ジーナさん、蒼葉さん。高周波の偏食場パルスを確認しました!大至急帰投してください!』
「「了解」」
赤乱雲は以前にサカキ支部長に教わった。あの雲から降る赤い雨に当たってしまうと高確率で黒蛛病になってしまうそうだ。致死率は100%。未だに有効な解決方法が見つかっていない。
ちなみに黒蛛病というのは発症した際皮膚に蜘蛛のような黒いアザが浮かび上がることからそう名付けられたそうだ。
つまりは長居は無用、というわけだ。早々に立ち去らねばならない。
まったく……ここに来てからというもの、かなり忙しいな。
「おー、遅いぞー。私はもう空腹で野垂れ死にそうだー」
「そんなに簡単に死ぬわけないだろ。というか神が死ぬのか?」
「死ぬ時は死ぬさ。コロッとなー」
そんなことを茶目っ気混じりで言うから本当かどうかさえ怪しくなる。まぁ、神話でもそういう話は聞くし憩も死ぬのだろうか……。にわかには信じられないが。
「そんなことより今日のご飯はなんだー?」
「ムツミさんに作ってもらったレバニラ定食だ」
「おぉ、美味しそうだなー」
そう言うと憩は手を合わせてから食事を始めた。何となく見てると目があった。
「食べるか?」
「まるで別人みたいだな」
「だろぅ?気が変わらないうちに食べるといい」
「遠慮しておく」
裏がありそうなので断ると憩はおもむろに箸で白米を掴むと俺の顔に近づけた。どうやら無理矢理にでも食べさせる気らしい。いや、だったらレバニラの方にしろよ……。
「神からの恵みを断るとは、罰当たりなー」
「何を企んでいるのか正直に言えば考えるさ」
「働き者に褒美を与えるだけがそんなに怪しいのかー……」
少し沈んだ顔をしている憩を見ると罪悪感が生まれる。
「分かったよ」
「そうだそうだー。ありがたく受け取れ」
「俺の分も取ってくる。一人で食うのが嫌なら最初から言え」
「ばーか……」
頰に押し付けられた白米は炊きたてなのかかなり熱かった。こら、食べ物は貴重なんだから粗末にするな。
終わり方がすっごく雑ですがこれはアレです。倦怠神が取り憑いたんですねきっと。そうに違いないですね。
それではまた次回!