GOD EATER〜Dual sniper〜 作:CiAn.
こちらを挑発するように優雅に浮遊してみせるサリエルに向かって俺は神機を振るう。しかし渾身の一撃は足をかすめただけで起死回生とはいかなかった。
「ウロチョロしやがって……!」
『蒼葉、そっちの状況は?』
無線からジーナさんの声届き、俺はサリエルから放たれた光線を装甲で防ぎながら現状を確認した。
「敵の数は3体、うち1体が堕天種です」
『あとどれくらい対処できるかしら?』
「5分、耐えます」
それ以上は確実に無理だ。新型といえど経験は浅い。乱闘になった時はどうすればいいかまだ分からない。
『頼もしいわね。私もコイツを倒してそちらの救援に向かうわ』
「はい。では、ご武運を」
通信を切って滑空してくるサリエルを避け、その背中にショートブレードを刺して慣性に逆らって進行方向の逆に振り切る。かなり腕に負荷がかかり、咄嗟に足に力を入れて踏ん張った。返り血が頬に付いて気持ちが悪い。
(落ち着け、俺。呼吸だ、ジーナさんに教わったことを忘れるな)
ステップで後方へと下がると元いた場所に降り注ぐように光線が落ちてきた、地面に小さな穴が無数に空き、身震いをした。生身で受ければひとたまりもないだろう。
小さく呻く声が聞こえる。風を切る音が近づきステップで左に移動する。真横を通ったサリエルの羽が頬をかすめてうっすらと切れた。
「なんでこんなに群れたがるんだ、アラガミって奴は」
距離を取ることもできず銃身は封印されたも同然だ。アサルトやブラストなら至近距離でも使えるがあいにく俺が持っているのはスナイパーだった。
「ヒバリさん!増援はまだですか!?」
『それが……』
何か困ったような声音に違和感を覚えていると後ろから足音が聞こえた。隠密性もクソもない、愚直でうるさい足音だった。
「たった1人で平和のために戦う君の勇姿、しかと見た!まさしく騎士道精神だ!」
なんだコイツは……?まさかとは思うがこれが増援か?そんな馬鹿な。
見た目も金髪をワケの分からない形にセットしていて服装はどこかのパーティでも行くような正装だ。ドレスコードには引っかからないが、俺個人としてはゴッドイーターであるこいつを今すぐ取り払いたい。
「何しに来たかは知らないが、危険だ。ここから離れろ」
「そう強がらなくていい。僕もそうだった。自分に課せられた使命は自分でやると、強がっていた」
「そうかよ。口より手を動かしてくれ」
今でもサリエルが攻撃を仕掛けてきてるのに呑気なやつだ。
「だが、今はこの僕の力を借りてみるんだ。共に平和を掴み取ろうではないか!」
「ああ、頼む。じゃあサリエル1体はお前に任せる」
一方的に言いつけて俺は通常種と堕天種を相手取る。
「頭部破壊されている2体は俺がやる。お前は残りをやってくれ」
「任せてくれたまえ、期待に応えるのもノブレス・オブリージュだ!」
もうこの際無視だ。早いとこ任務を終わらせてコイツとおさらばしよう。
『こちらエリナ!聞こえますか、応答願います!』
エリナ?聞いたことのない名前だ。だが、通信越しの声はしっかりとしていていかにも責任感が強そうだ。
「ああ、どこの誰かは知らないが聞こえている。だが、今は取り込み中だからそちらに加勢はできないぞ」
ショートブレード特有の空中ステップを活かしてサリエルに肉迫し、光線が放たれるまえに頭部の眼昌を破壊する。反撃が来るまえにグライディングでいったん離れて離脱した。
『蒼葉、聞こえるかしら?』
「はい。ジーナさん、そちらの戦況は?」
『新人の加勢で予定より早く倒せたからそっちに向かうわ』
「了解です」
スタングレネードを敵の眼前に投げて動きを一旦制限する。ガラ空きになったサリエルを捕食してアラガミバレットとバーストモードを得る。
さらに早くなったスピードで敵の側面に移動し、斬りつけた。
おそらく先ほどまで1人で戦っていたためジーナさんの残弾は尽きかけているだろう。合流後にリンクバーストできるように捕食は欠かせない。
「くっ……、平和を乱す蛮族め!僕のポラーシュターンで倒してーーふべっ!!」
「戦闘中に喋ってるからやられるんだ。ていうか動きの無駄が多すぎだ」
「僕も実戦は初めてでね……。だがこの程度の困難を乗り越えてこそ騎士道だ!」
ああ、新人か。道理で動きが危なっかしいわけだ。いや、俺もそこまで長くはないが。
武器はハンマーか。にしてもこいつはなんで銃身を使ってないんだ?
「ああもう!エミールは下がってて!」
この声はつい先ほど聞いたものだ。気が強そうで責任感のある声。肉声だと若干幼さを感じる。
「加勢か、助かった。ならジーナさんも来てるな」
飛び上がってサリエル2体の体を横に同時に薙ぐ。敵が体制を崩して視界が開けるとそこにはジーナさんの姿があった。着地後すぐに銃形態に切り替える。
「ジーナさん!」
先ほど捕食で得たアラガミバレットをジーナさんに向けて撃ちリンクバーストが成功した。
「あら、ありがと」
「礼には及びません。援護射撃の方、お願いします」
「ええ、任せてちょうだい」
その言葉を皮切りに俺とジーナさんはいつもと同じようにスナイパーを構える。スコープを覗く時間は最低限にして、敵を捉えたら躊躇わず引き金を引く。当たったらすぐに肉眼で敵との距離を目測して、場所を移動する。これが俺たちのスタイルだ。
アラガミとの交流はスコープを覗いて行う一方的なものと、睨み合って行う相互的なもので分類されると最近知った。これにより現状を上手く把握できるのでジーナさんは狙撃手ということも加えてリンクエイドをされることがかなり少ない。
「すごい……これが極東支部のゴッドイーター……」
加勢に来た少女がそんな声をもらす。別にそこまですごくはない。俺はただジーナさんの教えを受けてその通りに動いているだけだ。誰でもできることだ。
「これで最後ね……」
ジーナさんが放ったレーザーがサリエルの額を撃ち抜き、俺は単独になったサリエルに近づき刀身に切り替えて斬りつける。
俺たちと同じ赤い血を撒き散らしながら2体のサリエルは地面に伏した。手っ取り早く捕食を終わらせて残りのサリエル2体を相手取る加勢に来た2人を見る。
それから4人で目標を殲滅したのは10分後だった。
「お疲れ様です、先輩!」
「ああ、さっきの任務のーー名前なんだっけ?」
フロアにある自販機の前で2人分の飲み物を買っていると後ろから声をかけられた。ついさっき任務で共闘した少女だ。
「エリナです。エリナ・デア=フォーゲルヴァイデ」
「そうか。ようこそエリナ、極東支部へ」
新人が来るという話はどうやら先ほどの変な金髪とエリナのことだったらしい。配属初日に実戦とはなんとも運がない。
「今回の戦いで先輩の立ち回りを見てて、自分の実力不足を痛感しました。その……よろしければ私に戦い方を教えてくれませんか?」
「飲み物、何がいい?」
「へ?いや、何でも……」
無難に人気どころのカフェオレブラストを選ぶ。支持される理由は濃い目の味と量だ。長話をする時には丁度いい。
「まず俺の配属日はエリナとそこまで変わらない。先輩ってほど経験もない。普通に呼んでくれ」
「そうなんですか?ええっと……」
「山吹蒼葉だ。まあ慣れてからでもいいか」
そう言って俺は自分用に買ったバスターレモンを一口飲む。
……酷い味だ。酸っぱすぎてとてもすぐに飲みきれない。どうやら今回の買い物は失敗だったようだ。
「立ち回りに関しても俺はショートでエリナはチャージスピアだ。根本から求められていることは違う。強いて言うとしたら盾は使った方がいい。死にたくないなら」
「盾ですか……」
そう言うと不安そうにエリナは視線を落とした。どうかしたか、と声をかけるとやっと重い口を開いた。
「こんなこと素人っぽくて言いたくないんですけど、1度防御姿勢をとるとまた攻撃に戻るタイミングが分からなくて」
「そうだな、例えば今回戦ったサリエルだとあいつらの上から降ってくる光線はエリナがやっていたようなステップ回避も俺みたいなシールドでの防御もできる。けどホーミングレーザーだったりだと寸前で避けないと逃げた先に追尾してくるわけだ」
「はい」
熱心に聞いているエリナは純粋に強くなりたいと願う目をしていた。
こうまでやる気に溢れている人を見ると逆にやる気のないやつの顔が思い浮かぶ。全くもって対照的だ。
「それと堕天種だと光の膜を円筒状に作って膨張させる攻撃もあったな。よほど離れていないならあれは防御がいい。銃撃は無効化されるからな。こんな感じで最初は手の内が分かっている相手で練習した方がタイミングはつかめる」
「先ぱーー蒼葉ってサリエルとどれくらい戦ったの?」
「回数は多くない。ただ戦う前にデータベースで調べておいた。今回戦ったサリエルはあまり連続で攻撃してこないから防御したらすぐに攻撃に転じてもいいだろうな」
ちびちびと飲み物を飲んでいく。こいつは時間をかけて戦うとしよう。舌がもたない。
「それと、最後に1つ。あまり動きが大きいと見えるぞ」
「え?」
ああ、やっぱり気づいてないか。結構がむしゃらに戦ってたし仕方はないか。
ただ変に気にして動きが小さくなっても問題だ。ここはあえて言わないでおこう。
「エミールよりも狙われてたからな。動きが大きいとアラガミの注意も引きやすい。スマートさもたまには必要だぞ」
そう言って俺はバスターレモンを一気に飲む。口の中が酸っぱさで狂いそうだが残すわけにはいかなかったので我慢する。
「あ、ありがとうございました!」
「時間が合ったら訓練にでも付き合うさ。それと、敬語はなしだ。キャリアはそんなにないって言っただろ?」
「はい、じゃなくて……うん。ありがと、蒼葉」
「それじゃ、もしかしたら任務で一緒になるかもな。そん時はよろしく」
別れる前にバレットピーチを買う。話の途中で温くなってしまったから、追加だ。
エレベーターの前に立つとジーナさんが静かな動きで隣に立った。
「面倒見がいいわね」
「未来有望な新人に手塩をかけたがるのは人として当然ですよ」
「ええ。私があなたにしたようにね」
さらっと褒められて気恥ずかしくなる。まさかジーナさんに期待されていたとは思わなかった。
「そういえば、憩の体調が少し悪いそうよ。前も咳き込んでたし」
「憩が?全然そんなこと言ってなかったのに」
「大事になる前に治した方がいいわ。衛生環境はさほどいいとは言えないし、ゴッドイーターならまだしも一般人は伝染病にかかりやすいから」
「分かりました。ありがとうございます。知らせてくれて」
「ついでだから気にしなくていいわ。それじゃ」
軽く手を振ってジーナさんは俺から離れていった。心配なので病室に向かうとベッドに横たわる憩がいた。
「体調の方はどうだ?」
「調べるのは面倒だ」
憩の額に手を当てると少し熱かった。顔も火照っているので風邪の初期段階だろうか?
「ほらよ、見舞いの品だ。あと、こういうのは早めに言わないと悪化するぞ」
「……ああ、知ってるさ。ところで最近どうだー?足掻いてるかー?」
いつもの調子で喋り始めた憩は何かを隠すようにうつ伏せになった。
「ああ、大変だよ。倦怠や怠惰なんて考えられないくらいに」
その行動の裏にあるものに気付けず、俺はそう返したのだった。
お久しぶりです!夏休みの課題は進んでますか?社会人の皆さん、実家の親には顔を見せましたか?
そんなこんなで全然恋に発展しないジーナさんヒロインのこの二次創作ですが、いつも読んでくれる皆さんありがとうございます!ヾ(@⌒ー⌒@)ノ
そんなこんなで憩も体調不良で出番が減ってます。皆さんも気を付けないといろいろ減りますよw
ではまた次回に会いましょう。感想も待ってます!何話のでも構いませんよ( ´ ▽ ` )ノシ