GOD EATER〜Dual sniper〜   作:CiAn.

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ここに書こうと思ってたすっごくカッチョいい言葉思いついたんですけど忘れました。


浸蝕

「それじゃあ、行ってきます」

「そう心配しなくていい。僕が極東の代表としてしっかりと任務に勤めよう」

「いや、いつも通りでいいから、頼むから普通にしといてくれ……」

エミールの宣誓を困り顔で聞くコウタ先輩の隣で俺は落ち着きなく視線を彷徨わせて立っていた。

理由は簡単、最近エリナと妙に関係がギクシャクしてしまっていたからだ。大体の理由は俺にあるわけだが解決策が分からない。ただ謝ってだけでどうにかなるとも思えないしいったいどうしたものか……。

「それじゃあ、またな」

結局言えたのはその一言だけだった。ゴッドイーターにとって生と死は隣り合わせだ。また会うというのはいわゆる死なないためのゲン担ぎのようなものだ。

「うん……。また」

エリナもまたその言葉を紡ぐが、どこか上の空といった感じだ。黒蛛病の伝染があるとは言え、少しキツイ言い方だったようだ。

「頑張ってこいよ、2人とも。ムツミちゃんにお願いしてご馳走用意してもらっておくからさ」

そんな俺たちの様子を見かねたのか、コウタ先輩は努めて明るい声でそう言った。こんなところでも助けてもらっていてはダメだな、俺は。

2人は護送用のヘリに乗り込み極東支部から遠ざかっていった。と言ってもブラッドのメンバーもこちらでの情報収集があるとかで極東に向かっているらしく、そう長い移動距離ではないらしい。

ヘリの音が聞こえなくなり、コウタ先輩が伸びをしながらアナグラに戻っていく。さて、俺も出撃の準備をしなくてはならない。まだ黒蛛病のことは伝えてないので任務はしっかり入ってくる。

ジーナさんはここ最近は忙しいのか一緒に出撃する機会が減っていた。代わり、というのもなんだが新型の先輩との同行が増えた。学べることも多いのでしっかりと戦い方を見せてもらっている。もちろん接触がないように細心の注意を払っている。

そして今日もその人との任務だ。

 

 

 

 

「……ぐっ!なんて馬鹿力だよ」

間合いに入りそいつ喉を斬り払った俺を待ち受けていたのは最高のタイミングのカウンターだった。もちろん俺からしたら最悪だ。

タワーシールドを展開するのが遅かったらかなり痛い思いをしていたことだろう。

「早く離れて!」

小気味いい音が響きアリサ先輩が俺の方に向かってくる。その手には銃形態に切り替えられた神機が握られている。アリサ先輩はスライディングの要領で今回の討伐対象、ディアウス・ピターの腹に弾丸を浴びせる。その隙に俺は相手から距離を取る。

「すみません、助かりました……」

「あまり無茶はしないでくださいね。相手はそう一筋縄ではいきませんから」

ターゲットをアリサ先輩に切り替えたディアウス・ピターが振り下ろした前脚を躱し、インパルス・エッジでのカウンターは洗礼されている動きだった。圧倒的なキャリアを前に俺は身震いする。この人が同じ新型とは恐ろしい。

しかし感心している場合ではない。俺は即座に神機を銃形態に切り替えてディアウス・ピターに向けて放つ。このような場合も考えてスコープを覗かずとも当てられるホーミングレーザーを持ってきたのは正解だった。4本の光がディアウス・ピターを貫き虚空に消えていく。それを合図に俺は始めより幾分重くなった体に鞭を打って駆ける。

黒蛛病は俺の体を蝕んではいるが幸いまだ症状は軽い。無理をすれば多少は……

「いい援護ですね」

「腕が悪いとジーナさんに顔向けできませんからね」

軽口を叩いて目の前の敵を睨む。コイツに負けてられるほど俺は暇じゃない。この世界に怠惰という感情を与えてアイツを生き返らせる。その為にアラガミには死んでもらわなくてはならない。

「いくぞ犬っころ」

切っ先を地面に向けて走る。神の怒りとでも言うように放たれる雷を右へ左へと蛇行してしのぐ。後ろにはアリサ先輩が右から大きく回って接近している。狙うのは同時攻撃、正面を突破する俺と側面から叩くアリサ先輩。ブリーフィングで話し合った必中だけを考えた連携。

あとは全力でブッタ斬る。

「くたばれ……」

邪念は捨てる。余計なことは考えずに己の剣を振るう。無防備な相手の顔を斜めにーー

そう企んでいた俺は己の目を疑った。先ほどまでマントのようにその身を包んでいたディアウス・ピターの部位が俺の剣を寸前で受け止めていた。いや、正確には挟み込んでいると言うべきだろうか。その証拠にどんなに力を込めてもビクともしない。

その状況を危機的に感じたアリサ先輩が手薄になったディアウス・ピターの体を何度も切り込むが、全くもって動じていない。そいつの目はマントの隙間から俺だけを見ている。直感的に感じ取った死はまばたきをする暇なく実行へと移された。鋭利なディアウス・ピターの爪が服を切り裂き腹を抉り骨を砕いた。

「……畜生が」

朦朧とする視界に強烈な光が満ちる。覚えがある、これはスタングレネードだ。

「立てますか!?」

そう言って手を伸ばしてくるアリサ先輩を拒絶しようと口を開ける前にその手は止まった。同時に彼女の表情が血が引いたように青くなっていく。

「嘘……、これって黒蛛病……」

その言葉に俺の意識が覚醒する。自分の体を確認すると、破れた服の隙間から黒いアザが見てとれた。さながらそれは蜘蛛のようないびつな形をしている。

いったい何が起こっているんだ?つい数刻前まで黒蛛病はほとんど進行していなかった。せいぜい初期症状が稀に訪れる程度だ。

それが何でこんなに急速に悪化したんだ?頭の中がごちゃごちゃして考えがまとまらない。そうこうしている間にディアウス・ピターのスタン効果が切れたようだ。再びその目が獰猛な獣のそれに変わる。

「アリサ先輩、逃げてください……」

「何を言ってるんですか!?アラグラに退却して黒蛛病の治療を始めましょう!そうすればーー」

「……違うんですよ」

これは黒蛛病なんてものじゃない。この内側から汚染されるような感じは、そんなものではない。

それが正解だと言わんばかりに抉れた腹部から異質な何が生えた。一言で言うなら鎌だが、それは妙におどろおどろしい。そこで俺は確信した。

「これは、アラガミ化です。それも、もう止めることすらできない」

アリサ先輩が俺の右肩を切り落とした。その傷口は即座に何かが生えて人ならざるものへと俺を変えていく。

「さすが、歴戦のゴッドイーターとなれば覚悟はできてますね。でも、すみません……、俺がもう少し早く気付いていれば」

「そんな……」

「それと、ジーナさんに伝えてください。約束、守れなくてすみませんって。押し付けてばかりですみません……。アリサ先輩、逃ゲテくださイ」

言いたいことは全部言った。あとは俺が人であるうちにディアウス・ピターを倒して、アリサ先輩が逃げてくれれば終わりだ。

できれば、誰にも見られたくない。こんな醜いアラガミ同士の戦いは。

 

 

 

 

「ディキンソン君が集めてくれた赤い雨を解析して分かったよ。この雨は液体に見えて実はオラクル細胞に似ている、言わば生きた雨だ」

「それは随分恐ろしいわね」

話の内容とは裏腹にサカキ支部長は嬉々と話している。だがこっちからすると気持ち悪いとしか思えない。

「この雨はまるで選定者だね。この生物が付着した人間は黒蛛病にかかる。しかし、稀に症状の進行が遅い者もいる。例えば山吹君のようにね」

「……知っていたの?」

「医療室にいる女の子がね、教えてくれたんだよ。彼が頭を撫でてくれたってね」

また迂闊な行動をとっているな、と呆れる。黒蛛病が進行する可能性だってあるかもしれないのに。

「ただね、倦怠神である彼女が眠っているあの医療室にいる患者は黒蛛病が回復傾向にあるんだ」

「でも、黒蛛病の治療法はないはずでしょう?」

「そこが問題だ。推測の域を出ないけど、彼には黒蛛病を緩和または取り込むことができるんじゃないかな」

そんなことができるとしたら彼は人類の救世主だろう。だが事実として患者の容体が良くなったということなら関連がないとは言い切れない。

「彼はおそらく雨に選ばれた者なのだと思うよ。ただ、そうだとしてその先に何があるのかは分からない」

「赤い雨からの情報からでは分からないのかしら?」

「どうだろうね。どこかで見た細胞組織ではあるんだけど、どうも思い出せないんだ……」

こめかみに指を当てて呻くサカキ支部長が完全に自分の中に入ってしまったので帰ろうと思い振り返ると、ちょうどそのタイミングでラボの扉が開いた。

「あら、アリサ。どうかしたの?」

黒蛛病研究に私が関わっていることは秘匿情報だから他の人に知られてはならない。

だけどアリサの顔はそんなことなど聞いてないかのように焦燥に駆られていた。その剣幕があまりにもすごくて私は違和感を覚えた。

「何かあったのね……」

「……蒼葉さんが、アラガミ化しました」

心臓を掴まれたような緊張感が私を襲った。私が彼のために黒蛛病を調べている間にアラガミ化した?彼を救うために動いている間に彼を救うことができずに最悪の事態が訪れた。まったく笑えない冗談だ。冗談なら、本当に。

「それで、蒼葉は……?」

「ディアウス・ピターと交戦中です……」

「そう。分かったわ」

「……ごめんなさい。私にはどうすることもできなくて」

アラガミ化したゴッドイーターを絶命させる方法は本人が使用していた神機を用いて倒すこと。しかし、確実に倒すことを目的としない場合は他の方法もある。

例えば凍結処理。その手順はオラクル細胞の活動を阻害するバレットを撃ち込み、活動を一時的な休止状態にする。その後に氷結系のバレットで凍らせ一片も残さずに捕食することだ。確実ではあるが難易度は高く、そのために揃える頭数も多くなる。

でも、それしか方法はないだろう。今から蒼葉の神機に適合できる人材を探すのは不可能だ。

「アリサ、帰って早々申し訳ないけど手伝ってもらえる?」

「はい……」

事態は一刻を争う。急いで準備をしなくては。

「タツミとブレンダンにも協力してもらいましょうか……」

 

 

 

 

まだ、意識は残っている。しかし体はもうアラガミだった。

近い形状で言うならツクヨミあたりだろうか。決定的に違う部分は大きな鎌にも似た鋭利な肋骨が獲物を待ち望むように蠢いていることだ。

(ディアウス・ピターと戦ううちにアラガミ化がずいぶんと進んでしまったな……)

今は戦闘も終わり俺は休息をとっている。アリサ先輩はちゃんと離脱できたようだった。後はおれが迷惑をかけないように自我があるうちに遠くに移動するだけだ。

(さようなら、極東のみなさん。ジーナさん、エリナ……)

心の中でそう呟き、俺は長い海を宛てもなく彷徨い始めた。




読んでくれてありがとうございます!
2や2RBやった人ならもしかしたらこの先の展開も予想がつくかもしれませんね。
それではまた次回!次からはジーナさん視点に変わりますよ!!
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