東方想拾記   作:puc119

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第10話~そんな関係~

 

 

 結局、レミリアの記憶も戻ってくれなかったらしい。それは寂しいことではあるが、仕方が無いこと。アレだけ色々な話を一緒にしたのになぁ……

 

 そうやって愚痴を落としたところで、ため息を溢したところで何かが変わるということはない。

 全ての課題をクリアし、一度消え、また戻ってきてからもう百年近くになるだろう。けれども俺の身体が老いることはないし、変わらず不死身らしい。

 あのペッタンコ天使から何の説明もないせいで、正確なことはわからない。

 

 でも――

 

 俺って、あと何年生きていられるんだろうね?

 

 もしかしたら、のんびり生きていて良いほど時間はないのかもしれない。そもそも、どうして帰って来ることができたのかもわからないのだ。

 説明くらいして欲しかったよ。気付いた時にはもう遅い。俺の人生、そんなことばかりだ。

 今回ばかりはそうならなきゃ良いんだけどなぁ。

 

 

「ただいま」

 

 戻ってきたよー。

 

「早かったね」

 

 まぁ、そんなに話すことはなかったからな。

 さて、これからフランドールに帰るってことを伝えなきゃいけないんだが……素直に帰してもらえるだろうか? いつかのこいしちゃんみたいなことにならなきゃ良いけど。

 

「なぁ、フランドール」

「なあに?」

 

 フランドールはお話をしたかったから俺を連れてきたと言ったが、はてさてどうなんでしょうね?

 

「一度さ、自分の家に帰ろうと思うんだけど構わないか?」

「うん、いいよ」

 

 あっ、良いんだ。

 予想以上にあっさりしていたから逆に驚いた。いや、別にそのことへ文句があるってわけじゃないんだけどさ。

 

「……じゃあ、この傘は青に返した方がいい?」

 

 こてりと首を傾げながらフランドールが聞いてきた。超カワイイ。抱きしめちゃおうかな。

 

 う~ん、傘かぁ。最初は返してもらえれば良いかな。なんて思ってはいたが、今は別にそう思っていない。フランドールも大切にしてくれていたらしいし、このままで良いだろう。

 

「いや、そのままフランドールが持っていてくれ」

 

 それに傘だって幽香に頼めばもう一つくれるかもしれない。もしもらえることができたら、フランドールと一緒に外を歩いてみたいものだ。そんな未来が訪れれば良いのだけど。

 

「うん、じゃあ持ってる」

 

 別に記憶なんて戻らなくても良い。俺はただ可愛い女の子ときゃっきゃうふふしたいだけ。けれどもそれが上手くいかない。目標が高すぎる。ホント、難しい人生ですよ。

 

 これならいっそ、課題を用意してくれた方がよっぽど動きやすかった。自由なんて言う都合の良い言葉に縛られて、碌に身動きがとれない。

 それも俺の我が儘なんかねぇ。

 

「そんじゃ、そろそろ行くとするよ」

「また来てくれる?」

 

 もちろん。呼んでくれれば毎日だって来てやるよ。

 誓の証としてキスをしたって良いんだぞ? むしろしてほしい。もう千数百年も生きていると言うのに、未だキスの経験はルーミアとの一回しかない。

 

 ……あれ? それって結構ヤバくね?

 ま、まぁ、アレだ。キスの経験と人生の充実度は比例しないはずだ。……たぶん。帰ったらルーミアに土下座してキスを頼んでみよう。

 

「心配すんなって、別に消えるわけじゃないんだからさ」

 

 フランドールの頭の上に手を乗せ、そう言葉をかけた。

 悲観することなんて何もないはず。

 

「うん、待ってる」

 

 多少は懐いてくれたのかな? フランドールが何を考えているのかわかりはしないが、それは悪い感情でないはず。

 

 そんじゃま、帰るとするか。何をすれば良いのかなんてわかりやしないけど、まずは動き出そう。俺の頭じゃ考えたってわからない。その分、体を動かしゃ何かが見えてくるはずだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――――

 

 

 紅魔館を出たときはまだ夜だったが、何故か起きていた自称最強に絡まれたせいで、家に帰る頃にはもう東の空が明るくなり始めていた。

 相変わらずチルノは俺のことを思い出せないそうだが、思い出せないんじゃなくてただ忘れただけじゃないか? だってアイツ馬鹿だもん。

 とは言うものの、チルノの元気さには救われた。やはり可愛い女の子には笑顔が良く似合う。

 

 

 霧の湖と人里の間にある山の中。そこに俺の家がある。

 ちゃんと自分で建てました。萃香と一緒に家を建てた時の経験が漸く生かされた。まぁ、ルーミアが手伝ってくれたからそれほど大変なことではなかったけどさ。

 二人で暮らすには少々大きい平屋。俺とルーミアの愛の巣。たまにルーミアが怒って出ていくこともあるが、謝り倒せば帰って来てくれる。

 たぶん寝ていると思うが、ルーミアはちゃんと留守番をしてくれているだろうか?

 

 

「ただいまー」

 

 一日と少し振りの我が家。帰ってきたよー。

 帰宅を知らせる言葉を落としてみたが、返事が来ることはなかった。ちょっと寂しい。

 

 寂しかったためルーミアの私室へ向かう。『変態立ち入り禁止』なんて書かれた張り紙は見なかったことにして中へ。

 戸を開け中へ入ると、布団に包まりスピスピと寝息を立て寝ているルーミアを発見。ふむ、やはり寝ていたか。気持ち良さそうに寝ているところを起こしてしまうのは可哀想だから、できるだけ静かに戸を閉める。

 

 よしっ、これで二人きりの部屋になった。

 いや、まぁ、この家には俺とルーミアしかいないんだけどさ。ほら、やっぱり雰囲気は大切なんだ。そこまで広くない部屋の中、可愛い女の子と二人きり。そんな雰囲気は最高に素敵だ。

 

 さてさて、どうするか。やはり起こすのは可哀想だ。このままルーミアが起きるまでその寝顔を見ていても良いが……

 

 一日以上も開けてしまった。どうしても今の俺にはルーミア成分が不足している。うむうむ、それなら仕方無い。背に腹はかえられないのだから。

 

 だから添い寝することにしました。充電充電。

 

 ルーミアを起こさぬよう、静かにルーミアの隣に体を寝かせ……ヤバい、ルーミアさん超良い匂いがする!

 おちおち、落ち着け俺。もし此処でルーミアが起きたら絶対にまた出て行くとか言い出す。それはマズい。また俺が泣いてしまう。

 深呼吸だ。とりあえず深呼吸をして心を落ち着かせねば。

 

 息を軽く吐いてから、ゆっくりと大きく鼻で空気を吸い込む。ルーミアの香りを身体の中へ入れるように。

 

 鼻から吸い込んだルーミア成分を含む空気は、鼻腔に存在する4000万の嗅覚需要神経を通し脳へシグナルを伝達し、交感神経を一気に興奮させた。分泌されたエピネフリンが血中へ放出され、血圧と心拍数を高めるのがわかる。そして、残された空気は肺へと運ばれ、高まった心拍数によって一気に数十兆個の全身の細胞を活性化させた。

 もっと……もっとだ。全身がルーミア成分を欲しているのがわかる。鼻をルーミアの体へ近づけ、全力で息を吸い込む。

 

 力が身体の底から湧いてくる。

 

 まさに興奮状態。今の俺なら――なんだってできる。

 

 

「んっ……うぅん…………は?」

 

 ルーミアが起きた。

 

 ……あかん。

 

「…………」

 

 何も言わず、此方を睨みつけるルーミア。絶対零度の視線。興奮していた細胞は一気に沈静化。相変わらず、熱しやすく冷めやすい体質だ。

 

「…………た、ただいま」

 

 

 ぶん殴られた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……出てく」

「ごめんなさい。本当にすみませんでした。それだけは勘弁してください」

 

 手と膝と頭を地面へ突き全力の謝罪。所謂、土下座。

 反省はしているが、後悔などはしない。前を向いて生きるのだ。今はちょっと下を向いているが。

 

 

「ここは私の部屋。どうしてあんたがいるのよ」

 

 俺の頭を踏みつけながら、ルーミアが言葉を落とした。すごく興奮する。今上を見れば、きっとルーミアのスカートの中身を見ることだってできるだろう。

 

「部屋を間違えました」

「…………」

 

 頭にかかる力が強くなった。

 

「すみません。嘘です。ルーミアさんと添い寝をしたかっただけです」

 

 だってルーミアの寝顔、滅茶苦茶可愛いんだもん。そりゃあ匂いを嗅いで抱きしめたくもなる。

 それに起きている時頼んでも、ルーミアさんに絶対断られる。

 

「……はぁ」

 

 そんなルーミアのため息が聞こえ、頭にかかる力が弱くなった。

 おっ、許してくれたのか? 今回は出て行かないでくれるのか?

 

「次やったら出てく」

 

 それはもう何度目のセリフだろうか。そんないつもと同じセリフ。

 本当に出て行ったこともあったが、結局ルーミアは戻ってきてくれた。未だデレてくれることはないが、其処まで嫌われてはいないんじゃないのかなって思う。

 それが嬉しかった。

 

 ルーミアは今の世界で、一番一緒に居て安心できる存在。まぁ、ルーミアが俺のことをどう思っているのかはわからないんだけどさ。

 

 

「それで……お土産は?」

 

 

 お土産?

 

 ……これはヤバい。何も持ってきてない。色々あったせいですっかり忘れていた。

 

 前を向かなければいけないはずなのに、顔を上に向けることができない。本当は『帰ってきたことが一番のお土産だろ?』とか言いたいが、そんなことを言ったら絶対に出て行かれる。

 今の俺には謝ることしかできない。

 

「忘れたの?」

「はい」

 

 俺がそう応えると、頭にかかる力がまた強くなった。

 

「はぁ……もいっかい寝る。おやすみ」

 

 そう言って、ルーミアはこてりとまた横になった。

 

 起きるまで待ってくれるってことだろう。ゴメンな、ちょっと待っててね。

 顔を上げ、此方に背を向け寝ているルーミアを少しだけ眺めてから部屋を出る。そんじゃま、もう一度紅魔館に行ってくるか。咲夜に頼めば何かくれるだろうし。

 愛するルーミアのためだ、それくらいはなんてことない。

 

 恋愛って難しいね。

 

 

「…………おかえり」

 

 

 ルーミアの部屋を出ようとした時、そんな声が聞こえた気がしたけれど、それはきっとただの空耳だろう。

 お互いに不器用同士。

 近過ぎず遠過ぎない距離感。二人の関係はそんなものだ。

 

 






久しぶりにルーミアさんを書けて私は満足です
ルーミアさんは大変でしょうが……

と、言うことで第10話でした
とりあえず一区切り

次話はもう少しだけルーミアさんに頑張ってもらおうかな
なんて考えています

では、次話でお会いしましょう
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