東方想拾記   作:puc119

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妖々夢プロローグ的な感じのつもりです




第17話~また暖かくなるまで~

 

 

「ごちそうさまでした」

 

 両手を合わせて感謝の言葉を口に出す。

 そんな言葉と一緒に出てきた吐息は、外の空気に触れて白く染まった。

 

 秋ももう終わり、これからは寒い季節になる。寒いのは苦手だ。暑いのも好きではないけれど、寒いのはすごく苦手。

 昔は私の体も今よりもモフモフしていた。けれども今はモフモフしていない。服を着なければ寒い。服を着るのはちょっと面倒臭いけれど、服を着ないとるーみあが怒る。

 今までは服を着ればどうにかなった。でもこれからはちょっと厳しいかもしれない。それに何故かすごく眠い。

 

「……あ~……あっ、おし。なぁ、最近のお前食べ過ぎじゃないか?」

「……いっぱい食べなきゃダメなの」

 

 青が目を覚ました。嬉しい。

 どうしてなのかは私にも良くわかならいけれど、今は沢山食べておかなければいけない気がした。だから今日は沢山食べた。満足。

 

「なんだよソレ。本当に冬眠でもするのか?」

 

 ――冬眠。

 

 うん、もしかしたらそうかもしれない。今だってすごく眠い。今すぐにでも寝られそうだ。

 

「冬眠……そうかも」

「えっ、マジで?」

 

 マジで。

 うん、そうだ。きっと私は冬眠する。冬眠してしまえば暖かくなるまでは起きない。つまりその間、青とは会えない。それは寂しいなぁ。

 

 青のことは好き。私にだけいじわるするし、るーみあには好きだって言うのに、私には言ってくれない。それでも青のことは好き。だって私が今生きているのは青のおかげだから。

 そんな青と会えなくなるのは寂しい。

 

「そっかそっか。んで、いつ寝るの?」

 

 なんでそんな嬉しそうな顔をして聞くんだろう……。ショックだ。

 私だって青の好きな女の子なはずなのに、どうしてこんな扱いばかりなんだろう。私に名前をつけてって言った時も……

 

 ――名前? あー、じゃあ“畜生”って呼んでやるよ。

 

 とか言うし。そのあと、むしゃむしゃ食べた。

 畜生は嫌だって言ったのに……

 

 それほど嫌われてはいないと思う。それに例え嫌われていても、私は構わない。でも私のことも好きになってくれた方がやっぱり嬉しい。

 

「……今日には寝ちゃうかも」

「随分と急だな。ルーミアには言ってあるのか?」

 

 首を横に振る。

 るーみあには言ってない。だって、冬眠するかもしれないって気づいたのは今だから。

 

 るーみあは良い奴だ。私とは起きている時間が違うから、一緒にいる時間はそんなに長くないけれどいつも一緒に遊んでくれる。

 るーみあは私より長く生きている。だから色々なことを知っていて、それを私に教えてくれる。でも強い妖怪じゃない。るーみあは私がちゃんと守ってあげないといけない。頑張る。

 

「ううん、言って……ない」

「了解。俺が伝えておくよ。眠いならもう寝ろ。ちゃんと部屋まで運んでやるから」

 

 ふらっと傾く私の体。倒れないよう、どうにか持ち直す。突然だった。一瞬意識が途切れた。

 どうやら、そろそろ限界らしい。

 

「……ねぇ、青」

「どうした?」

「浮気しちゃダメだよ」

「そればっかりは約束できないな」

 

 だよねー。わかってた。青って直ぐ可愛い女の子を追いかけるもの。

 

 ああ……もう限界だ。

 

 少し寝かせてもらおう。

 

 おやすみ。私の大好きな人。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――――

 

 

 ふらっとしたかと思ったら、俺の方へ倒れ込んできた熊畜生。

 その身体をできるだけ優しく支えてやる。そうやって支えた畜生の身体はやっぱり軽かった。ホント、身体はこんなに軽いのにねぇ……

 

 これが本当に冬眠なのかはわからない。もしこれが冬眠だとしたら、多分暖かくなるまでは起きないだろう。つまりこれから春になるまでは起きない。

 

 そして畜生にとっては運が悪いことに――今年の冬は長い。

 

 つまり春雪異変。明けない冬が訪れる。

 

 畜生が寝ている間、俺は解放される。これで毎晩毎晩殺されることもなくなることだろう。それは良いこと……なんだよな?

 畜生の居なかった頃の生活に戻るだけ。たったそれだけのこと。

 

 ……畜生に情でも移ったのだろうか。あまり良い感じではない。

 

「はぁ、とりあえずコイツを運ぶか。」

 

 すやすやと俺の腕の中で眠る畜生を見ながら、そんな独り言を落とすと、白く染まった息が現れて直ぐに消えていった。

 

 

 

 

 

 

「そう……寝ちゃったんだ」

「まだわからんけど、もしかしたら春まで起きないかもしれん」

 

 次の日になりルーミアに畜生のことを教えた。

 ルーミアと畜生の仲はかなり良い。ちょっと羨ましくなるくらい仲が良い。俺も混ぜて欲しい。そんなルーミアにとって畜生が寝てしまうことは、面白いことではないだろう。

 

「寂しくなるね」

「どうだろうな」

 

 そう言ってルーミアは悲しそうな顔をした。冬の間だけとは言え、やはり畜生と別れなければいけないのは辛いらしい。

 もし俺が冬眠すると言ったら、ルーミアは今と同じような顔をしてくれるだろうか。

 

 ……まぁ、してくれないんだろうなぁ。

 

 そのまま永眠しろ。とか平気で言いそうだ。そんなことが容易に想像できる。

 はぁ、どうしてルーミアの俺に対する好感度はこんなにも低いのだろうか。何処の選択肢を間違えたのかわからない。セーブポイントくらい用意しておけってんだよ。

 ホント、難しいものだ。

 

「……どうしてあんたはあの子に対してそんなに冷たいの?」

「ああ、俺もルーミアのことを愛しているよ」

「話聞けよ。死ね」

 

 すみません。考え事をしていました。でも流石にちょっと言い過ぎじゃない? そろそろ青さん泣いちゃうよ?

 

「え、えと、それで何?」

「はぁ……もういい」

 

 むぅ、しまった。ルーミアが不機嫌になってしまった。

 でもちょっぴり不機嫌そうなルーミアも可愛いよ。そんなことを言ったら、今度こそぶん殴られるだろうから言わないが。命は大事に行こう。

 

「じゃあ私はお散歩してくる」

 

 すっと立ち上がり、ルーミアはそう言った。

 

「おう、行ってらっしゃい。ああ、そうだ。なぁ、ルーミア」

「なに?」

 

 またいつものようにふよふよと浮いているのだろう。

 危険な妖怪はいないだろうが、あんまり危ないことしちゃダメだぞ。

 

「帰ってきたら一緒にお風呂入ろうぜ」

「死ね」

 

 そんないつも通りの掛け合いをしてから手を挙げ、ルーミアを見送る。

 

 

 ……どうして俺が畜生に対して冷たいのか、ねぇ。

 

 そんなこと、俺だってわからない。

 

 どうするのが正解なのか誰か教えてくれないだろうか。

 

 

 季節は冬の始まり。寒く、静かで孤独な季節がやって来る。

 俺の記憶が正しければ、今年の冬は長いはず。別に冬は嫌いな季節じゃない。それにあの異変を止めようとも思わない。

 

 それでも春が待ち遠しい季節になりました。

 

 






漸く春雪異変に入ることができそうです

と、言うことで第17話でした
これまでクマさんは沢山書いたのでちょっと休んでいてもらいます
春になったらまた会いましょう

次話はきっと妖々夢に入っているはず
では、次話でお会いしましょう

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