東方想拾記   作:puc119

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第1話~その満月の綺麗な赤霧の夜に~

 

 

 空にまん丸の月が赤く怪しく輝いている夜のこと。

 幻想郷を真っ赤な霧が覆った。つまり、これが異変って奴なのだろう。

 

「そんじゃ俺は行くけど、ルーミアも頑張れよ」

「あんたはどうするの?」

「俺はあの真っ赤な館へ行くとするかな」

 

 あの赤い館――紅魔館には会わなきゃいけない奴らがいる。どうせアイツらは俺のことを覚えてはいないだろうけれど、俺は覚えているから。

 別れてからどれくらいの時間が経ったのかわからないけれど、今でもしっかりと思い出すことができる。懐かしいな。今でも皆は元気にしているだろうか。

 まぁ、元気じゃないところは想像できないけれど。

 なんて思って一人で笑った。

 

「あそこって危ないんじゃないの?」

「大丈夫。慣れてるから。なんだ? 心配してくれるのか?」

「ううん、全く」

 

 色々とあったが、紅魔館の奴らとはそれなりの時間一緒に過ごした。そのほとんどのがあの暗い暗い地下室ではあったけれど、アイツらとだって悪い仲ではなかったのだ。

 

 それにしても、ルーミアさんなかなかデレてくれないね。今でも、少し変なこと言うと容赦なくぶん殴られるし。出会ってからもう1000年以上にもなるのに……

 おかしいな。そろそろ攻略できても良いはずなんだが。

 

「んで、ルーミアはどうする?」

「私はふよふよしてる」

 

 ああ、つまりいつも通りか。

 異変の空気に当てられ妖精は荒ぶり始めている。それに霊夢や魔理沙もそろそろ動き出すだろう。ルーミアは大丈夫だろうか。

 ルーミアだってそれなりの時間を生きてきているはずなのに、どうしてかその力は強くならない。不思議なものだ。

 

「了解。それじゃあ行ってくるよ」

 

 ルーミアのことが心配ではあるけれど、流石に弾幕ごっこ程度で危ないことにはならないだろう。過保護になりすぎるのは良くない。

 

 手を挙げてから紅魔館へ向けて飛び立とうとした時、くいっとルーミアに服を引っ張られた。

 

「お土産お願い」

 

 ふふっ、わかっているさ。

 

 そんじゃま、無くした記憶を拾い集めにでも行きましょうかね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――――

 

 

 幻想郷を真っ赤な霧が覆った。

 そのせいで太陽の光は地上まで届かない。そんなんだからお洗濯物は乾き辛いし、人里の人間たちだってこんな妖霧があったら外へ出ることができない。

 

 誰が何の目的でこんなことをしたのかわからない。

 でも、誰かが起こしたことは確か。

 

「面倒くさいわね」

 

 縁側に座りお茶を啜りながら、ぽそりと独り言を落とす。

 けれども困ったことに、この面倒臭いことは私が解決をしなければいけない。だってそれが私の役割なのだから。

 どうせ魔理沙あたりは勝手に動くだろうけれど、異変解決は私の仕事。それを横から取られるのは少々気に食わない。だからこんな異変はさっさと解決してしまいたいのだけど……

 

 はぁ、と息を吐きながら上を見上げると、赤い霧の先にまん丸の月が見えた。

 今日は満月。そして赤い霧。

 

『次は、そうだなぁ……真っ赤な霧の出る満月の綺麗な晩にまた会おうか』

 

 一月ほど前に会ったアイツの言葉を思い出す。

 私の晒しを盗もうとし、結局逃げられたアイツの言葉を。

 

 アイツが何者かなんて私にはわからない。それでもきっとこの異変に関係はしているはず。う~ん、まぁ、考えてもわからないか。

 

 残り僅かになっていたお茶を飲み干し、湯呑を縁側へ置く。

 さて、行くとしましょうか。

 

 どうやら今日は永い夜になりそうだし。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 何処へ向かえば良いのかなんてわからなかったけれど、とりあえず自分の勘を信じて適当に飛び立った。

 いくら夏とは言え、夜だからちょうど良い気温で、夜の境内裏と言うのもなかなかにロマンティック。うん、今度から異変解決は夜にやることにしよう。

 

 異変のせいで興奮しているのか、多くの妖精が誰彼なしに攻撃をしてきたけれど、とりあえず蹴散らしておいた。攻撃してきた自分を恨みなさいな。

 そんな妖精たちを蹴散らしながら、境内裏の森の中を飛んでいた時だった。

 

 

「うっわ、ホントに会っちゃった」

 

 そんななんとも失礼な声が聞こえてきた。

 その声の方を見ると、何故か両手を横に広げた妖怪が一人。

 

「誰? あんた」

「私はルーミアよ。はぁ、まさか本当にアイツの言った通りになるなんて……」

 

 アイツが誰なのかはわからないし、戦う気はないようにも見える。

 それなら、こんな奴は無視してさっさと進みたいところであるけれど――

 

「はぁ、しかたないか。えと、なんだったかな……ああ、そうだ。――あんたは取って食べれる人類?」

 

 ま、そんな上手くいくはずないか。

 こうして出会ってしまったんだもの。やることなんてもう一つしかない。

 

 

 ――月符。

 

 ルーミアと名乗った妖怪の声が真っ赤な夜に響いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 なんだか良くわからない妖怪を倒し、森の中を進む。それにしてもあの妖怪はなんだったんだろう。別に強いとも思えなかったけれど、なんとなく引っかかるものがあった。

 

 そしてさらに森の中を進んでいると、急に肌寒くなってきた。

 いや、てかかなり寒い。急にどうしたんだろう? えと、この先は……湖だったかしら? 行ったことがないからどんな場所かは良くわからないけれど。

 吐き出す息が白くなるほどの寒さ。暑い夏にはうんざりとしていたけれど、流石にこれじゃあ寒すぎる。なんだって言うのだ。

 

 

 そんな寒さの中森を抜け、その湖に着くと――

 

 

「なに……これ……」

 

 

 真っ白に凍りついた湖があった。

 

 

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