東方想拾記   作:puc119

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第27話~お酒の時間~

 

 

 梅雨の時期になった幻想郷の東の端にある博麗神社では、今宵もお酒の香りが満ちていた。これまでもこの場所に酒の香りの広がることはあったが、その時はお酒の香りに混じってまた違う香りが漂っていた。

 しかし、今回は違う。

 正体のわからない妖霧はなくなり、純粋なお酒の香りのみが広がっている。

 

 楽し気な声とお酒の香り。それはきっと良いことなんだろう。

 

「また一人で飲んでるんだ」

 

 手に持っていたお酒へ口をつけるとそんな声をかけられた。

 悲しいことだが、俺と一緒にお酒を飲んでくれる奴は少ない。霊夢や魔理沙なんかはもちろんのこと、アリスや妖夢なんかもさっぱりだ。一応、レミリアを始め紅魔館組は一緒に飲んでくれるが、咲夜なんて滅茶苦茶嫌そうな顔をする。そこまで嫌われるようなことをした覚えはないんだがなぁ。

 

「萃香こそ俺のところなんかへ来ていて良いのか?」

「せっかくの宴会なのに、一人の奴がいたら可哀想でしょ? だから私が一緒に飲んであげるよ」

 

 どうやら気を遣わせてしまったらしい。別に俺は一人でも気にしないが、まぁ、此処は素直に感謝するとしよう。うん、ありがとう。

 とは言うものの、今この博麗神社にいる面子の中では萃香が一番仲の良い関係だ。ルーミアと熊畜生は家でお留守番していて今はいない。紅魔館組も親しい方ではあるが、俺が紅魔館で過ごしたほとんどの時間はフランドールの部屋の中だった。

 一応、紫もいるが……アイツ何を考えているのかわからんしなぁ。そもそも記憶が戻っているのかもわからん。

 

「そっか、そりゃあ嬉しいよ」

 

 随分と昔のこととなったが、萃香とは100年以上の時間一緒に生活していた。これで実は俺のことが嫌いとかだったら流石に泣く。もう何も信じられない。

 

 

 

 

 萃香と霊夢の弾幕ごっこは霊夢に軍配が上がり、この異変も終わりを迎えた。

 弾幕ごっこで霊夢に勝てる奴なんていないだろうが、それでも彼処まで強いとはねぇ。俺だってそれなりの実力を持っているつもりだが、例え全力を出せたとしても霊夢に勝つことはできないだろう。それほどに霊夢の弾幕ごっこは圧倒的だった。

 人間頑張れば強くなれるものだな。まぁ、霊夢が特殊なだけな気もするが。

 

「そう言えば萃香ってこれからは何処で生活するんだ?」

「ん~? 特に考えていなかったけどそうだねぇ……」

 

 美味しそうにお酒を煽りながら考え事をする萃香。俺にもそのお酒ください。

 

「とりあえずは、この神社でのんびりしていようかな」

 

 なんだ、俺の家には来ないのか。ちょっとだけ期待していたのに。

 まぁ、原作的にも萃香には博麗神社の方が似合っているとは思うけどさ。それにこれで博麗神社へ行く理由も増えた。霊夢のことだからどうせ嫌な顔をするだろうが、お茶の一杯くらいはもらえるはず。

 

 理由があるってのは大切だ。

 桜なんてとっくに散ってしまったが、此処にいる連中はお酒を飲むことができれば理由なんてなんだって良いんだろう。それでも、なんの理由もなしに集まるほど素直じゃない奴らばかり。だから萃香が起こしたこの異変に感謝してる奴だっているのかもしれない。

 そんなことをちろって考えるとクスリと俺の口から何かが溢れた。

 

 

「また二人して一緒にいるけど、次の異変でも考えているのかしら?」

 

 他愛の無い話を萃香と続けているとき、お酒のせいかその頬を僅かに赤くした博麗の巫女がそんな言葉とともに近づいて来た。

 それにしても霊夢から近づいて来るとは珍しい。明日の天気は雨だろう。そろそろ梅雨の時期だし。

 

「別にそんなこと考えていないよ。んで、霊夢はどうしたの?」

 

 霊夢の手には見覚えのある瓢箪が握られていた。

 萃香の方へ視線を向けると、随分と苦い顔。まぁ、萃香にとってアレは良い思い出の品物でないのだし、それも仕方無い。

 

「せっかくの宴会だからこのお酒を飲んでみようと思ったのよ。でもこのお酒って本当に美味しくないのね。せっかくの無くなることないお酒だと言うのに、これじゃあ意味がないわ」

 

 神様のお酒だと言うのに酷い言われようだった。ただ、美味しくないと言うのは同意見。あれじゃあ嗜好品と呼ぶことはできないだろう。

 

「じゃあ、返してくるのか?」

「返すってソレ、青の物でもないじゃん……」

 

 ぽそりと萃香が言葉を落した。

 正確に言えば俺の物ではないけど、アイツらは皆死んでしまったのだし、俺がもらっても良いはずだ。

 

「だからあんたには渡さないわよ。博麗神社に代々伝わるたぶん大切な物なんだから」

 

 大切にしてくれていたのは嬉しいけど、俺が渡した物なんだよなぁ。

 そう言えば、霊夢は神便鬼毒酒を飲んだんだよな? それならやはり霊力が上昇したりしたのだろうか?

 

「なぁ、霊夢。そのお酒を飲んだとき、こう……力が湧き上がってくるような感じはしなかったか?」

 

 少なくとも地獄で飲んだ500年ほど前はまだ効果があった。お酒の効果を得なくとも霊夢は充分強いだろうが、そこに神のお酒の力が加わればちょっと手がつけられなくなりそうだ。

 

「力? 別にそんな感じはしなかったけど」

 

 うん? なんだじゃあ、効果はなくなってしまったってことか? そうなってしまうと、もうそのお酒に用はなくなる。美味しくないお酒なんて飲みたくないし。

 ただ、まぁ、飲んでみなければわからないか。

 

「確認したいからちょいとそのお酒をもらえないか?」

「良いけど、渡しはしないわよ」

 

 むぅ、返してくれないのか。霊夢だってこのお酒に用は無いと思うんだが……

 まぁ、代々伝わっているそうだし、そんな簡単に渡せる物ではないってことだろう。

 

 霊夢から瓢箪を受け取る。

 うん? もしかしてアレか? このまま飲めば霊夢との間接キスに……

 

「直接口つけたらその顔吹き飛ばすから」

「そんなはしたない事するわけないだろうが」

 

 いや、ちょっと待て。その程度で済むのなら此処は口をつけても……

 だって、きっとこんな機会はなかなかないぞ。霊夢とは結婚する予定ではあるけれど、それもいつになるのかはまだ決まっていない。それならばリスクも承知の上で突き進むべきじゃないだろうか。

 

「はい、盃」

「あっ、うん、ありがとう」

 

 そんなことを悩んでいると、萃香から盃を渡された。余計なことをっ!

 はぁ、仕方無い今回はやめておくか。まだ焦るような時間ではないはずだ。

 

 手酌で申し訳ないと思いつつも、萃香から渡された盃へ神便鬼毒酒を注いでみる。相変わらずお酒の良い香りなんてしないが、なんだか懐かしい気分だ。

 盃を傾け、一気に喉へ流し込む。日本酒の飲み方としてどうかと思うが、このお酒はちびちび飲めるほど美味しくない。

 

 瞬間――力が湧いてきた。

 

 それは数百年前に感じたものと変わらない。むしろ昔よりも効果は大きくなったようにも感じる。それは俺の霊力そのものが増えたからってことかねぇ。

 

 ……ふむ。どうやらまだちゃんと効果は残っていてくれたらしい。しかし、どうして霊夢には効果がなかったんだ? 霊夢の能力的な問題かもしれないが、何か違う気がする。

 

「どうだったの?」

 

 そう萃香が俺に聞いた。

 

「具体的にどれほどの効果なのかはわからんが、確かに霊力は増えたと思うよ」

 

 そう言えば、妹紅がこのお酒を飲んだ時も、力が湧いてきた的なことは言っていなかったか。つまり、このお酒はあの時、鬼退治へ出かけた者にしか効果がないってことだろう。……たぶん。

 

 そうなると、俺は美味しくもないお酒を博麗の巫女へ渡してしまったと言うことになる。しかもソレが数百年にも渡って伝わっている、と。いや、なんだか申し訳なくなるな。

 

「そのお酒ってそんな効果があったの?」

「どうやら俺限定らしいけどな」

 

 じゃあ、妖怪に対してはどうなのだろうか? そちらの方もまだ効果は残っていそうだが。

 むぅ、あの熊畜生でもいれば飲ませるのだが、残念ながら今アイツはいない。ああ、でもアイツ一応神だし効果は薄いか。

 

 そうなると――

 

「よしっ萃香も飲んでみるか。大丈夫、もしお前が倒れても俺が看病してあげるから」

 

 二人にぶん殴られた。

 

 

 

 

 

 

 結局、お酒は霊夢に返すことに。

 あのお酒があれば色々と助かったかもしれないが、別に弾幕ごっこをする予定などもないし、それほど問題はない。今の力だけでも充分だ。

 その後は、霊夢も一緒になって萃香のお酒を飲んでいた。霊夢にはちょいとキツいだろうが、萃香のお酒はやはり美味い。そして何より、お酒ってのはやはり大人数で飲んだ方が美味しく感じる。

 一人より二人。二人より三人。その相手が可愛い女の子ならなおのこと。

 

 どうして霊夢が俺と一緒にお酒を飲んでくれたのかはわからない。もしかしたら、俺への好感度が上がっているのかもしれない。そうだと嬉しいが、何かをした覚えもなくそれは考え難い。どうせ酔った勢い的な何かだろう。

 

 それでも、今ばかりはこの時間を楽しもうじゃないか。

 

 






ようやっと萃夢想が終わりました
これで次へ進めますね

と、言うことで第27話でした
霊夢さんの好感度がちょっとだけ上がった……のかなぁ

次話は紫さんとのお話なんかも書きたいところです
書くかはわかりません
では、次話でお会いしましょう
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