美鈴と別れ、綺麗に手入れされた庭を抜け、紅魔館の中へ。
う~ん、紅魔館の中へ入ることができたのは良いが……美鈴は記憶が戻ってくれたってことで良いのか? 流石にそれは違うか。ルーミアの時は10年近くかかったのだし。
いや、でも“おかえり”って言ってくれたんだよなぁ。
美鈴とは仲は良い方であったけれど、話しをする機会はそれほどなかった。その辺りのことが関係しているのか? 関わる機会が多ければ多いほど、記憶が戻るのに時間がかかるとか……
まぁ、考えてもわからないか。それに、今日だけで戻ると思っていなかった物が戻ってきたのだ。それだけで充分だろう。
重苦しい扉を開けた先。紅魔館の中は相変わらず目に悪い色をしていた。
「変わってないなぁ」
そんな独り言とともに、小さく笑が溢れる。
さて、次はどうしようか。久しぶりに帰ってきたんだ。できれば全員と会っておきたいところではあるが……
ま、フラフラ歩いていれば咲夜くらいとなら会うことはできるだろう。咲夜には是非またあの蔑んだ目をしながら罵ってもらいたい。ナイフでチクチクしてもらえればなお良い。
そしてフランドールのいる地下室を目指しフラフラ歩いていると、大量の妖精メイドが現れた。
あら、随分と沢山いるじゃないか。きっと俺のいない間に雇ったんだな。何と言うか感慨深い物がある。まぁ、俺がいなくなったところで世界が止まるわけではないのだから、それもおかしなことではないが。
さて、この大量の妖精たちが何の目的もなく現れたとは思わない。
客観的に見て、明らかに俺は侵入者。
つまり――
「まぁ、こうなるわな」
妖精メイドたちが一斉に妖弾を放ってきた。それは数による暴力。たまったものじゃない。
正直、流石の俺でも妖精ごときに負けるほど弱くないが……いくら妖精と言っても相手は可愛い女の子だ。そんな可愛い女の子に暴力なんてできるはずもなく、逃げることに。
しかし、アレだな。
こう……可愛い女の子たちに追いかけられると言うのも、なかなか良いじゃないか。今まで可愛い女の子を追いかけ回すことはあったが、追いかけられることは初めて。
そんなんだから自然に顔がにやけてくる。
ヤバい、超楽しい。
そんなことを考えていたら、後頭部に妖弾が直撃した。
あっ、これヤベーわ。なんて思ったが、身体は言うことを聞かず、見事にその場へ倒れ込んだ。
そして放たれる大量の妖弾。マジ容赦ない。
暫くの間そうやって妖精たちの妖弾を喰らっていたが、それも直ぐに止まった。顔を上げると俺を取り囲むように立っている妖精メイドたち。
着ている服がロングスカートなせいでその中を見ることはできなかった。どうなってんだメイド長は、ミニスカートだったじゃねーか。見習えよ。
うむ。やはりアレだ。こう……可愛い女の子に囲まれると――興奮する。
流石は幻想郷だ。いくら妖精だろうがその容姿は抜群。超カワイイ。
少しばかり幼いところもあるが、安心してくれ。そんな君たちだろうと、俺は心から愛してあげることができる。
俺を囲むように立つ。沢山の妖精メイド。
……良い、よね。
これだけ沢山いるのだし、一匹くらいもらっても……良いよね?
うん……よし、決めた。一匹いただこう。
霊力を強化。
もう手加減はしない。
そう俺が決めた瞬間、何かを感じ取ってしまったのか、妖精メイドたちは一斉に逃げ出した。まぁ、絶対に逃がさないが。
さて……どの子を連れて帰ろうか。
――――――――
今回の異変は――何かおかしい。
いや、おかしいから異変なのだけどそうではなくて、こう……おかしいことが一つじゃないと言うか……
真夏なのに凍りついてしまった湖も、結局その原因はわからなかった。
『あたいがやったんだよ!』
とか言ってる奴がいたけれど、アイツではない。だって滅茶苦茶弱かったし。
突然赤い霧が発生したからこの異変は起きた。でも、それだけじゃない。何かがある。たぶんその何かがあの湖を凍らせたんだと思うけど……う~ん、考えてもわからない。
「それで? この霧を出してる奴はあんた?」
「だから、私じゃないって言ってるじゃないですかぁ……」
今し方倒した奴に聞いてみたが、まぁ、そうでしょうね。
と、なると犯人はやっぱりこの赤い建物の中にいそうだ。
全く、何を思ってこんなことをしているのか……
ま、いっか。そんな理由もわからないけれど、やることは決まっている。いつものようにただ倒すだけだ。色々と引っかかることはあるけれど、うだうだ考えるのは性に合わない。私はいつも通りやらせてもらおう。
門番らしき奴を倒してその赤い建物の中へ。
そしてその建物へ入ると――
涙目で逃げ回る妖精を追いかけ回す“アイツ”がいた。
「ふふっ、待て待てー」
…………なんだろう。
こんなこと初めてだからどうして良いのか全くわからない。異変が起きると、妖精たちはその空気に当てられて凶暴になる。だから妖精に襲われるのだけど……
その妖精を襲っている奴は初めて見た。
できれば何も見なかったことにして、この場から立ち去りたい。さっさと異変を解決して帰りたい。
けれども、これはそうもいかなそうだ。博麗の巫女である前に、異変を解決する前に、やらなければいけないことが一つできてしまったから。
人として外せないこともある。
「……霊符『夢想封印』」
だから私は、全力でアイツへ打ち込んだ。
霊弾が直撃、炸裂して倒れこんだアイツ。
さて、コレはどうしようか。コレと妖精の間に何があったのかはわからないけれど、たぶんコイツがいけない。初めて会った時からおかしな奴だと思っていた。でも流石にコレはヤバい。
こんなことならあの時、退治しておけば良かった。そっちの方が絶対に幻想郷のためになる。
「な、なにがあったんだよ……」
むくりとアイツが起き上がった。全力で打ち込んだはずなのに何故動ける。
コイツって人間じゃ、ないの?
「うん? ああ、なんだ霊夢だったのか。最初に言っておくけど、この霧を出しているのは俺じゃないぞ」
うっわ、話しかけてきたよ。勘弁して欲しい。
どうしようか……もう一度、夢想封印をぶち込んで倒しておいた方が良いのかしら?
「ああ、そうだ。なぁ霊夢」
「……なによ?」
まぁ、流石にそれはやめておこう。ちょっと怪しいけどコイツは人間かもしれない。そんなやつ相手にポンポン放つことはできないのだから。いくら私でも抑えることくらいはできる。
「ちょっとさ、両手を上へ挙げてみてくれないか? こう、万歳するみたいに」
「?」
何がしたいのか全くわからなかったけれど、とりあえずソイツに言われた通り、両腕を上へ挙げてみる。
「うむ! 良い脇だ!!」
全力でぶん殴った。
いや、流石にこれは許して欲しい。
――――――――
ちょっとお願いをしたらぶん殴られた。
でも良いさ。殴られた以上に価値のあるものを見ることができたのだから。それに霊夢みたく可愛い女の子に殴られるのはご褒美でしかない。其処に愛があれば嬉しいし、なくとも興奮する。
それにしても随分とせっかちさんじゃないか。ほとんど初対面と言って良いのに、夢想封印され、ぶん殴られるとは……てか、見られるの嫌なら脇、隠せば良いじゃん。
はぁ、好感度下がってなきゃ良いけど。霊夢に嫌われてしまったとなると泣ける。
殴られた頬を抑えながら霊夢に尋ねる。
「霊夢はやっぱり異変を解決しに来たってことで良いのか?」
「うっさい、死ね」
ああ、ダメだ。
このパターン知ってるわ。話聞いてくれないやつだ。どうしてこうなってしまったのか、全く想像がつかない。
明らかに霊夢の目の色がおかしい。これが噂のヤンデレってやつだろう。
ヤンデレ、ねぇ……ま、俺にはそんなこと関係ないが。
「大丈夫、安心して欲しい。そんな霊夢でも心から愛してあげ――」
ぶん殴られました。
俺の周りには暴力系ヒロインが多すぎると思うんだ。