東方想拾記   作:puc119

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第39話~ありがとう~

 

 

「こんばんは、なよ竹のかぐや姫。1000年前から貴方が好きでした。結婚してください」

 

 輝夜の顔を真っ直ぐ見ながら、自分の素直な気持ちを言葉にして落とした。

 それは1000年も昔に止まっていた物語を、もう一度始めるための愛言葉。きっと君は俺のことを覚えていないだろう。きっと君の中であの物語は消えてしまっただろう。

 

「……ねぇ、青」

 

 それでも、俺は声に出すのだ。消えたように見える種火は俺の中にずっとずっと残っていたのだから。精一杯の想いと、嘘偽りない気持ちを乗せて貴方へ届けよう。

 例え君が忘れてしまったとしても、可愛女の子とした約束。ソイツを破ることなんて俺にはできないのだから。

 

「ねぇ、ねぇ、青」

 

 ああもう、鬱陶しいな、この熊畜生は。俺の服、引っ張るのやめなさいよ。さっきから何なんだお前は。今、青さんが良いこと言ってるでしょうが。カッコイイセリフを並べてるでしょうが。ちょっとはおとなしくしていてくれ。

 

「はいはい、わかったわかったよ。どうしたんだお前は」

「コイツ、知り合い?」

「知り合いも何も俺の婚約者だ」

 

 1000年間想ってくれれば、結婚してくれるって言っていたような気がしないでもないと思うから、婚約者と言っても間違いではないはず。

 考えてあげるとしか言われなかった気もするが、もう良いじゃん。結婚しよう。

 

「え、えと、何が起きているのかよくわからないけど……誰? 貴方たちは。まぁ、どうせ招かれざる客人でしょうけど」

 

 そんな言葉を落とした輝夜は随分と混乱している様子だった。どうにかこの勢いを活かして結婚の承諾を得ることはできないだろうか。このチャンスは逃したくない。

 最近、なんだか畜生と仲良くなっているような気がして漸く危機感を覚え始めた。このままじゃ畜生ルート一直線だ。それだけは回避せねば。

 

 だから、どうにか輝夜と会話をしたいところなんだが……

 

 

「やっと見つけた! んもう、紫は何勝手にひとりで……って、うっわ、どうしてあんたもいるのよ」

 

 

 霊弾をぶちまけつつそんな声と共に博麗の巫女が現れた。そして霊夢さんったら相変わらず辛辣なのね。

 ……ふむ、霊夢が来たと言うことは、どうせ他の自機組も直ぐに此処へ来るだろう。熊畜生が当たりの扉を吹き飛ばしたこともあって、此処への道はかなりわかりやすいだろうし。

 

「んで、よくわからないけど……この異変の原因はそこにいる奴ってことで良いのかしら?」

 

 輝夜のことを指差しながら霊夢はそんな言葉を落とした。

 むぅ、マズイな。どうにか自機組が到着する前に輝夜と色々な会話だったり、将来について語り合っておきたかったのだが、これじゃあそんなことをしている余裕はなさそうだ。

 

「ええ、どうやらそうらしいわよ。今回のことはちょっと冗談では済ませられないこと。頼んだわよ、霊夢」

「言われなくとも」

 

 臨戦態勢へと移行したふたり。弾幕ごっこができない俺は完全に蚊帳の外だ。

 

「はぁ、最近の人間ってどうしてもっとゆっくりできないの? ……さて、貴方たちに私の難題はいくつ解けるかしら?」

 

 輝夜も輝夜でやる気は満々。

 ああー、始まってしまったか。しまったなぁ、もう少し早く来ることができればもっと会話できたのに。こんなことになるのなら、ひとりでさっさと来ていれば良かった。ああでも、それじゃあ輝夜と会うことはできなかったか。

 ホント、上手くいかないものだねぇ。

 

 色とり取りの弾幕をぶちまける少女たちを見ながら、そんなことを考えていた。う~ん、こうなってしまったのなら仕方無い。どうせこの異変が終わったら宴会が開かれるだろうし、輝夜とはその時にまた話をするとしよう。お酒が入れば落ちる話のひとつや二つあるはずなのだから。

 

「ねぇ、青」

「ああ、もう。今度はなんだよ」

 

 さて、どんな会話をしようかと考えていたら、またあの畜生に服を引っ張られた。

 お前だって黙っていればただの可愛い女の子なんだから、もう少しおとなしくしていてくれ。

 

「私も弾幕ごっこした方がいい?」

「いや、別にお前はやらなくても良いだろ。それにお前、色々危ないし。なんだよ、クマスタースパークって」

 

 ちゃんと技名を考えたのは偉いと思うけど、もう少しどうにかならなかったのか。魔理沙にアレを見られたら何も言われるのか分かったものじゃない。

 

「……でも、感想やTwitterではすごく受けがよかった」

「おいこら、そう言うのホントやめなさい」

 

 ただでさえ進行が遅いのに、また無駄に文字数増えちゃうでしょうが。もう40話以上も書いてるのに、全体の3分の1に進んでないせいで俺だって焦ってるんだ。どうすんだよ、このままじゃ地霊殿に入る頃には100話とか超えちまうじゃねーか。前作よりも長くなるとかホント勘弁してくれ。

 

「……わかった。じゃあ、次は『博愛のクマさん人形』にする」

 

 だから、パクリはダメだって。可愛くしてもダメ。それに、そんな技をアリスが見たら絶対怒るぞ。そして、どうせ俺が迸りを喰らうんだ。

 

「私は私の好きにやりたい」

 

 限度があるわ、限度が。基本的にお前を止められる奴なんていないんだから、おとなしくしていてくれ。

 

 畜生のセリフがあまりにもアレだったため、パシリと畜生の頭を叩いた。あまり強く叩くと怒り出すから怒られない程度の優しさで。

 そんなことをすると、畜生は最初、むぅっと俺を睨んできたが、直ぐに――えへへと笑った。

 

 ……叩いたのにそんな反応をされると俺もどうして良いのかわからん。なんなんだコイツは。ホント、お前は何を考えているのかわからん奴だな。いや、昔っからそうだけど。

 

 いつまでも畜生と喋っているのもアレだったため、霊夢たちの様子を確認。

 そこには更に色とり取りとなった景色が広がっていた。先ほどまでは、結界組と輝夜が戦っているだけだったが、いつの間にやら詠唱組だったり紅魔組も到着したらしく随分と賑やかな様子。

 この様子なら異変の解決はもう目の前だろう。

 

 鮮やかな弾幕を放ちながら宙を舞う幻想郷の少女たち。

 そこに俺が混ざることができないのは残念であるけれど……まぁ、この景色を見られるだけでも俺は充分幸せなのかもしれない。

 そりゃあできれば俺だって、幻想郷の少女たちときゃっきゃうふふといきたいところだ。けれども千数百年ほどこの世界で生きてきて、それがどれほど難しいことかはよくわかっている。ホント色々な意味でどれほどそれが難しいか理解できた。所詮、俺なんてこの世界じゃただのモブキャラであの幻想郷の少女たちと深く関わって良いはずがない。俺なんかがあの彼女たちを汚すわけにはいかない。だから、こうやって少し遠くから彼女たちを眺めているくらいが丁度良いのかもしれない。

 

 なんて負け惜しみのようなことを考えながら、目の前で繰り広げられる幻想的な景色を眺めていた。

 考えと行動の矛盾。真っ直ぐに通らない筋。言い訳ばかりを重ね続ける人生。すべてが全て中途半端。

 

 そんなことを俺はいつまで続けるつもりなんだろうな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 輝夜もかなりの実力者だとは思うが、流石にあれだけの相手を同時に戦うのは無理があったらしく、霊夢の放った霊弾が直撃したところでその弾幕ごっこに決着がついた。

 

 ん~っと、これでこの異変も終わり、か。俺は何もしなかった気もするけれど、異変解決は可愛い女の子たちの仕事。だからそのことに文句はない。

 

「さて、それじゃあ此処で一番偉い奴を出してもらえるかしら? 少しばかり話したいことがあるの」

 

 弾幕ごっこが終わり、紫が少し厳しめの口調で輝夜へそんな言葉を落とした。

 本物の月だとか、偽物の月だとか正直、俺にはよくわからんが、確か永夜抄の異変は幻想郷にとってかなり危ないものだったはず。だから色々と話し合わなきゃいけないことがあるのだろう。

 まぁ、俺にとっては永遠亭組が増えてくれたってことが何よりも嬉しい。

 

「咲夜、私たちは帰るわよ。私ももう眠いし」

「そうですね。帰りましょうか」

 

 異変が解決したと言うことで自機組たちも解散。次に会うのは宴会の時となりそうだ。

 

 そのまま黙って別れるのも寂しかったため、魔理沙やアリスに手を振ってみたが見事に無視された。無視されるのが一番心にくる。

 幽々子や妖夢の姿は見えないが、先の弾幕ごっこで妖夢は落ちてしまったし、多分もう帰ってしまったんだろう。

 

「それじゃあね、青。フランが会いたがっているのだし、ちゃんと紅魔館へ来なさいよ?」

「お先に失礼します青様」

 

 手を挙げながらレミリアと咲夜が俺にそんな言葉を落とした。記憶が戻ってないはずなのにレミリアはいつだって俺に優しい。これだけでも今日来た意味はあったのかもしれない。

 ちょっとアレなところもあるが、咲夜も咲夜でなんだかんだ良くしてくれているのはわかる。他の奴らもこれくらい優しければなぁ……

 

「ああ、近いうちに行かせてもらうよ。それじゃあな、レミリアに咲夜」

 

 霊夢もいつの間にか帰ったらしく、紅魔館組と別れ、残っているのは俺と畜生だけに。どうせ紫は難しい話をしているだろうし、隣にいる畜生をみると大きな欠伸をしている。いつもならこの畜生はもう寝ている時間。それに今日は燥いでいたこともあり、もう眠いのだろう。

 

「んじゃ、俺たちも帰るか」

「……うん」

 

 俺が声をかけると、ぐしぐしと目をこすりながら畜生が言った。

 そろそろルーミアも起きる時間だ。俺の大切なお嫁さんが帰りを待っていてくれているはず。

 やり残していることは沢山あるけれど、帰るとしよう。この続きはお酒でも飲みながらのんびりやるとしましょうか。

 

「……青」

「うん? どうした?」

 

 手を取り、飛び立とうとしたら畜生から声をかけられた。その表情はやはり眠そうに見える。眠いから背負っていけとか言われるのだろうか? 別にそれくらいなら良いが、面倒だなぁ……

 

 

「ありがとう。今日は面白かった」

 

 

 

 そう言って畜生は憎たらしく――本当に可愛らしく笑ってくれた。

 

「ん、そりゃあ良かったよ」

 

 少しばかり顔が熱い。畜生の顔だってちゃんと見ることができない。

 

「帰ろ」

「ああ、わかってるよ」

 

 全く……ホント好き勝手やってくれる奴だ。こっちはお前ばかり構っている余裕なんてないってのにさ。

 輝夜のことだったり、妹紅のことだったりとまだまだやらなきゃいけないことは沢山ある。

 

 ただ、まぁ……コイツを連れてきて良かったって思ってしまう。

 我ながら単純な人間ですよ。

 

 

 






第39話ですのでサブタイトルは“ありがとう”です
アレ? なんか前にもこんなようなことを……

と、言うことで第39話でした
なんだかんだでクマさんメインの異変となってしまいましたね
次話からはクマさんにちょっとお休みしてもらい、輝夜さんや妹紅さんのお話を書きたいものです

では、次話でお会いしましょう
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