東方想拾記   作:puc119

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第43話~心を込められない~

 

 

 ……身体中が痛い。

 昨晩にやったレミリアとの余興。そこで少しばかり力を使いすぎたせいか、俺の身体はボロボロだ。

 

 レミリアとの余興を終え、俺は気絶してしまったわけだが……直ぐ咲夜に叩き起こされた。鬼のようだ。そんな咲夜からの素敵な愛情を受けたのでどうにか起きることに。

 そして、それからはもう……なんだろうか、なかなかに悲惨だった。霊夢からは神社が危なかったとボコボコにされ、魔理沙やアリスからは相変わらず冷たい視線を向けられ、癒しを求めてルーミアに抱きついたらぶん殴られた。

 

 ただ、今回の目的であるフランドールはそれなりに楽しめていたんじゃないかな。レミリアや美鈴にくっついていたため、多くの者と話をすることはできなかったと思う。それでも幽々子だったり、輝夜などとは何かしらの話をしていたし、その時のフランドールは笑っていたように見えた。

 そんな笑顔を見ることができただけでも、十分だろう。あの笑顔だけで俺は満足だ。

 

 その宴会の帰り道、あの熊畜生にむしゃむしゃされた。アイツには血も涙もない。

 

 そんなことがあった次の日。俺の身体はボロボロだ。大きな原因はレミリアとの余興だが、熊畜生にむしゃむしゃされたのもなかなかに大きい。ホント、アイツは空気を読んでくれない。流石に自由過ぎるだろ。

 

 ボロボロの身体を引きずるように動き、どうにか居間へ。

 そして、居間へ到着すると、いつものようにルーミアがお茶を啜っていた。ああ、今日も俺のお嫁さんは可愛らしいな。見ているだけで癒される。

 

「おはよう」

「よ、おはよう」

 

 此方をチラッと一度だけ見てから、ルーミアはそんな言葉を落とした。昨晩は容赦なくぶん殴られたが、普段からそうやってルーミアにぶん殴られているわけではない。ただ、少しばかりルーミアがツンデレで恥ずかしがりやなせいで他の奴らがいると、ついつい俺をぶん殴ってしまうだけだ。大丈夫、そんなルーミアも可愛いよ。

 

「からだは?」

 

 ほら、こうやって俺のお嫁さんはちゃんと心配してくれるのだ。その優しさだけでも俺は生きていくことができる。

 

「いや、ちょっと厳しいから、これはルーミアに舐めて治してもらわないと――」

 

 ぶん殴られた。

 

 

 

 

「死ね」

 

 頬の傷がひとつほど増えてしまったが、これは名誉の傷である。恥ずかしがる必要などどこにもない。そして、ルーミアから向けられる冷めた視線。ゾクゾクする。

 

 さて、そんなルーミアが可愛いことなど分かっている。だから、今日はこうやってルーミアとの愛を育むのも良いかもしれないな。どうせこの身体じゃ外を出歩くのも難しい。あの畜生が寝ている間くらい、ルーミアときゃっきゃうふふしたい。

 

「……っと、誰か来た」

 

 じゃあ、今日は何をしようかと考えていると、ルーミアがそんな言葉を落とした。ルーミアとの素敵な時間を邪魔されてしまい、少しばかりいらっとしたが……さて、この家に訪れる奴とは珍しい。紫なんかはたまに訪れるが、紫ならスキマを使って来るため、多分違う。そうだとしたら誰が来たと言うのやら……

 

「じゃ、ちょっと様子見てくるわ」

「ん」

 

 ルーミアに行かせるわけにもいかないため、なんとか身体を動かす。今はこんな身体だし、面倒なことでないと嬉しいが……

 

 そして、玄関の方へ歩き出した時だった。

 

「た、助けて……」

 

 獣耳の可愛らしい女の子が、そんな言葉を落としながら俺の腕の中へ。

 何があったのかは分からんが、その目からは涙が今にも零れ落ちそうだ。あとすごく良い匂いがする。これは興奮するのも仕方無い。

 

「……落ち着いて。何があったの?」

 

 冷め切った目で俺を睨みつけたあと、ルーミアが優しく獣耳の女の子へ声をかけた。

 

「ば、化物に襲われて……」

 

 化物? この辺でか?

 ん~……多分、あの畜生の影響だろうが、俺たちの家に近づいてくる妖怪は少ない。だから、俺の家の近くは幻想郷の中でも人里の次に安全な場所だろうと思っていたんだが……

 まぁ、どうせ幻想郷のことを知らない新参の妖怪とかだろう。

 

 さて、とは言え、俺はこんな身体なためまともに動くことができない。かと言ってルーミアを危険な目に合わせるわけにもいかないしなぁ。

 はてさて、どうしたものか……と考えたところで、玄関がある場所の方から轟音が響いた。容赦ないな、おい。

 

「ルーミア。その子を畜生の部屋へ。あと、あの寝坊助を起こしてくれると助かる」

「ん、わかった」

 

 頼んだ、あとできるだけ急いでもらえると嬉しい。

 全く……昨日のことがあったばかりだと言うのに、面倒な。とは言え、今はあの畜生が起きてくれるのを待つしかない。どうにか足止めできれば嬉しいが。

 

 

 なかなか動こうとしない身体へムチを振り無理やり動かし、音のした方へ。

 

「あー……これはまた、でっかいなおい」

 

 そして、そこにいたのは、大木のような太さに長さ10mを超すであろう双頭の黒蛇。……いや、これは無理だって。今の俺じゃ勝てる気がしない。

 双頭の大蛇が暴れたせいで、家の玄関は随分と風通しが良くなってしまっている。これから寒い季節へなると言うのにたまったものじゃない。

 

 とりあえず、大蛇から注目してもらうため、霊弾を一発。俺の後ろには大切なルーミアがいるのだ、これ以上先へは絶対に進ませない。

 

 目を閉じ、少しばかり集中してから霊弾……が出てこないぞ、おい。どうやら霊力が空っぽらしいです。これじゃあ、能力だって使えないだろうし……ああ、うん。

 

「いやぁ、困ったね」

 

 そして、大蛇の尻尾が直撃して吹き飛ばされた。

 

 

 

 

 

 

 それからはもう酷いものだった。

 いっそのことサクッと殺してもらえれば良いのだが、この大蛇はそんなことをしてくれない。まるで容赦ないが、俺のことを殺さぬよう大事に大事にいたぶってくれやがる。

 ただでさえボロボロだったこの身体。そこに、大蛇の締め付けやら噛み付きやら尻尾叩きつけやらを喰らい続けたせいで、もう身体が全く動かない。コイツにそんな頭があるとは思えんし、たまたまだろうが俺の倒し方を良く分かっている。せめて殺してくれれば多少の霊力が回復し、コイツの中にある水分を消し飛ばして終わりなんだがなぁ。

 

 今はこうやって俺に夢中なため問題ない。しかし、この状態の俺を放置したままルーミアの元へ向かわれたら本当にマズいんだ。せめてもう少しだけ霊力が残っていれば……

 

 

「……まった?」

 

 ああ、良かった。どうやら間に合ってくれたらしい。

 化物中の化物。暴力の権化。つまり――真打登場。

 

「いんや、俺も丁度今来たところだよ」

 

 畜生の身体からはいつかのようにドス黒い妖気が溢れ出し、その威圧だけで今にも倒れそうだ。大蛇もその異様さに気づいたのか、俺の身体を締め付けたまま動こうとしない。

 

「サクッとやってくれ。頼んだぞ」

「……うん、わかってる」

 

 なんとも情けない限りだが、一応俺にできることは全てやったと思う。それに俺がこんな状態なのは、少なからずこの畜生のせいだ。そうだと言うのなら、多少の力になってくれても良いだろう。

 

「言い訳は聞かない。お前のことなんて知らない。ただ……ソレだけは渡さない」

 

 畜生がそう言ってから――理不尽なほどの暴力が大蛇を襲った。

 悪いな、助かったよ。

 

 

 

 畜生の攻撃を喰らった大蛇は何もできないまま貫かれた。圧倒的な暴力によって。

 そりゃあ、普通の妖怪がこの場所へ来ないはずだ。こんな化物がいる場所へなど、誰が来ようと思うと言うのだ。

 

 さて、この大蛇の死体はどうしようか。このまま放っておいたらどうなるかわからないし、供養するのも面倒くさい。

 ああ、そうか。畜生に食べてもらえば良いんだ。俺は遠慮したいがこの畜生なら食べてくれるだろう。

 

「……おなかすいた」

 

 そうか、それなら丁度良い。

 なにせこのデカさだ。いくらこの畜生でもこれだけ食べれば満足してくれるはず。

 

 よし、それじゃあ――

 

「……いただきます」

 

 あっ、おいこら。ちょ、まて。食べるのなら、俺じゃなくて……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……私、ヘビはあまり好きじゃない」

「好き嫌い言わずにちゃんと食べなさい」

「むぅ……」

 

 畜生にむしゃむしゃされたことで、俺の身体も回復した。相変わらず霊力はあまり戻ってきていないが、それでも、先程と比べて調子はかなり良い。改めて、自分の身体がおかしくなっていることを感じさせられる。まぁ、もう流石に慣れたが。

 

「ほら、ちゃんと残さず食べるんだぞ。そうしないと遊んでやらないからな」

「……別に無理やり遊ぶからいい」

 

 それはやめてください。抵抗できません。

 お願いですから、食べてください。

 

「……じゃあ、私のことほめて」

 

 この畜生、何か言い出したぞ。

 いや、この畜生がそれでこの大蛇を食べてくれるのなら何の文句もないが……ほら、何と言うか、負けた気がするんだ。

 

「くまかわいいよ、くま」

「……ダメ、気持ちがこもってない」

「理不尽すぎるだろ……」

 

 いや、無理だって。ルーミアが相手ならこの気持ちをいくらでも込められるが、お前が相手じゃ無理だ。そりゃあ、お前は可愛いよ? 文句なしで可愛いさ。しかしだな、俺がそれを言ってしまったら色々と戻れなくなる。それはよろしくない。

 

「……うん、でも今日はそれで満足する」

 

 そしてその畜生だが、まるで我が儘を言う子供をなだめる親のような顔をしながら言葉を落とした。

 どうしてお前に子供扱いされなきゃいけないのだ。なんて思いもしたが、それ以上にこの畜生がそんな表情ができたことに驚いた。これも成長してるってことなのかね?

 

 それから畜生が大蛇をむしゃむしゃしているところ眺め、それが終わったところで、先程の獣耳の少女とルーミアが出てきた。

 

「倒したの?」

「ああ、アイツがサクッとやってくれた。死体もアイツが食べたよ」

 

 ホント、熊畜生様々だ。畜生が冬眠していなくて本当に良かったと思う。

 

「あ、あの! あり、ありがとうっ!」

「ふふっ、これくらい気にするなって。また困った時はいつでも俺の家へ来ると良いさ。あと一目見た時から好……」

 

 ルーミアにぶん殴られた。

 最近は、決めゼリフすら言わせてもらえないことが本当に多くなったと思う。

 

 それから獣耳の少女は俺たちに何度も何度もお礼を言って帰っていった。うむうむ、可愛らしい少女を守ることができ俺は満足だ。

 

「ねぇ、あれってさ」

「……さぁな。そればっかりはわからないよ」

 

 そんな少女を見送って直ぐ、ルーミアが俺の服を掴んでそんな言葉を落とした。ルーミアの聞きたいことはなんとなくわかっている。

 しかし、やはり俺には分からない。特にその目的が。

 

 たまたま俺の霊力が空っぽの時に、たまたま幻想郷へ来たばかりの大蛇が、たまたま畜生の寝ている時間に訪れた。その程度の偶然、いくらでも起こり得るだろう。そう言ってしまえばそれまでだ。

 

 しっかしねぇ……な~んか怪しいよな。

 

 なんてことをその時は考えたが、それからいくつかの季節が過ぎたところで、そんなことすっかり忘れてしまった。

 だから、このお話の続きはずっとずっと先のこと。

 

 

 






とりあえず一段落したのでワンクッション挟むことに

と、言うことで第43話でした
私は見たことありませんが、双頭のヘビさんって現実でも存在するらしいですね

次話からは日常のお話……でしょうか
では、次話でお会いしましょう
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