東方想拾記   作:puc119

5 / 71
第4話~遊ぶならSMプレイが良かった~

 

 

 まさか2回も殴られるとは思っていなかった。

 殴られた頬が痛む。俺はただ一途な愛を伝えただけなんだけどなぁ。愛することが罪だなんて残酷じゃないか。

 いや、まぁ、殴られることも嫌いじゃないが。

 

「……それで、あんたは何をしに来たのよ?」

 

 誰が見てもわかるほど不機嫌な霊夢。なんでそんなに怒っているのだろうか。

 

「以前、霊夢の所へ行った時と同じ理由だよ」

 

 まぁ、こっちの方は別に返してもらわなくても問題ないが。

 だから今回は何方かと言えば、紅魔館のメンバーと会いに来たと言うことの方がメイン。

 フランドールの奴、大丈夫だろうか。レミリアだってしっかりしている部分もあるが、やはり心配だった。

 

「また晒しを盗みに来たの?」

「いや違う。そうじゃない」

 

 あの時だって別に晒しを盗みに行ったわけじゃないのだ。ただ偶々干してあった晒しが目に付いたから、ついつい手が出てしまった。あんな物が干されていたらそりゃあ手ぐらい出る。むしろ手が出ない方が失礼だろう。

 一人の人間として、一人の漢として晒しが干してあったら、手に取り匂いを嗅ぐのが礼儀ってものだろう。まぁ、匂いを嗅ぐ前にぶっ飛ばされたが。

 

「なぁ、霊夢。博麗神社にこう……代々伝わるお酒みたいな奴ってないか? 瓢箪に入っていると思うんだが」

「ん~……ああ、なんかあった気がするわ。でも、ずっと昔のお酒だしたぶん酢にでもなっているわよ。それに全然美味しくないって聞いてる」

 

 おお、まだ残っていてくれたか。

 てか、日本酒は酢にはならんぞ。そりゃあ酸っぱくなることはあるが、そもそも菌が違った気がする。それに神からもらったお酒なんだ。そうそう悪くはならないだろう。

 

「そかそか、ちゃんと残っていてくれたか」

 

 もしかしたら、もうなくなっているかもと思っていたが、ちゃんと残っていてくれたらしい。流石は神の酒だ。いくら不味くともそれなりの扱いは受けられるんだな。

 

「アレってそんなに良い物なの?」

「まぁ、そりゃあ神の酒だからな。悪い物じゃない」

 

 俺がそう答えると、霊夢はふ~んと対して興味もなさそうな声を出した。

 でも、どうせ返してくれないんだろうな。まぁ、正直なところ俺も必要かと聞かれても、別にそうではないってのが本音だけどさ。

 だって、あの酒美味しくないし。美味しいお酒は好きだが、美味しくないお酒は好きじゃない。

 ただ、あのお酒便利なんだよな。簡単に霊力の底上げができるし。それに飲めないほどの味ではなかった。

 

「さて、そんじゃそろそろ行くとするか」

 

 いつまでも入口にいるわけにもいかない。

 そう言えば魔理沙はまだ来ていないのだろうか?

 

「……あんたも来るの?」

 

 なんですか? 俺と一緒にいるのがそんなに嫌なの? なるほどこれがツンデレか。まるでルーミアみたいじゃないか。ルーミアさんデレてくれたことないけど。

 

「途中までだけどな。どうせ霊夢は異変を解決するんだろ? 俺は異変解決に興味なんてないから、途中で別れることになると思うよ」

「そう、それは良かったわ」

 

 ……もう少しオブラートに包もうよ。そろそろ泣くぞ。

 はぁ、霊夢の攻略には時間がかかりそうだ。

 

 ま、攻略できたキャラなんて一人もいないんだけどさ。

 ホント上手くいかないことばかり。でも人生なんてそんなもんだ。

 

 

 

 

 

 

 俺が妖精メイドを捕まえようとしていたせいか、霊夢と一緒にいる間妖精メイドたちが襲ってくることはなかった。捕まえたかったんだけどなぁ……

 

「っと、んじゃあ霊夢。俺はちょいと寄り道していくよ」

 

 俺がいた時とは少しばかり紅魔館の中が変わってしまっていたが、なんとか見つけることができた。それは、どことなく重苦しい雰囲気を感じる階段。

 さてさて、あの引き籠もりはちゃんと元気でいてくれるだろうか?

 

「そっちには何があるの?」

「俺のお嫁さん」

「…………」

 

 いや、黙るなよ。どうして良いかわからないじゃないか。

 でも、まぁ、もしかしたらそんな未来もあったのかもな。たらればを言い出せば切りがない。けれども、それほど悪い仲じゃなかったはず。

 

「ああ、そうだ。一応言っておくけど、此処の主は強いぜ。ま、頑張って解決してみなよ博麗の巫女さん」

「あんたに言われなくてもやるわよ」

 

 そりゃあそうか。

 霊夢の戦っている姿は見ていない。それにレミリアだってかなり強いはず。でも霊夢には勝てないんだろうなぁ。それだけははっきりとわかった。

 

 霊夢にまた会おうと声をかけたが見事に無視された。

 現実はいつだって厳しい。

 

 ま、しゃーないな。時間はあるんだ。焦る必要なんてない。

 

 そして俺は地下へと続く薄暗い階段を下りていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――――

 

 

 いつもの傘を手に持ち、ベッドに腰掛け足をプラプラさせてみる。

 今日はなんだか上の方が騒がしかった。私も行ってみようかな。なんて思ったけれど、何が起きているのかわからないし、もしかしたら迷惑になるかもしれないからやめておいた。

 

 でも、やっぱり気になる。

 

 う~ん、私も行こうかな。久しぶりにこの部屋から出るのも悪くないし。

 

 そう思ったとき、あの扉が開いた。

 

 私の部屋に訪れる奴はほとんどいない。食事の時間は別だけど、あとはお姉様がたまに訪れるくらい。

 でも、今は食事の時間ではないはず。

 

 誰だろう? そんな少しの期待と少しの不安。

 

 

「う~ん、相変わらずこの部屋は薄暗いんだな」

 

 

 扉を開け入ってきた奴は男の人間だった。その人間の見覚えはない。

 

「貴方はだあれ?」

 

 私がその人間に聞くと、ソイツは一つため息を落とした。

 

「……傘、まだ持っていてくれたんだな」

 

 私の質問には答えず、ソイツは言った。

 少しだけむぅっとしたけど、此処はぐっと我慢する。人間は直ぐに壊れてしまうから、私は我慢しないといけないのだ。壊れた玩具は直らないから。

 

「だってこれは大切な傘だもの」

 

 それに、この傘を持っていると安心できる。

 大切な人からもらった大切な……あれ? そう言えばこの傘って誰からもらったんだっけ。大切な、人? ……うん?

 

「そかそか、そりゃあ良かったよ」

 

 そう言ってアイツが笑った。

 心がチクリと痛んだ気がした。

 

 何か――おかしい。

 

「……貴方は何をしに此処へ来たの?」

 

 心がざわつく。これはあまり良い気分じゃない。

 

「フランドールに会いに来たんだよ。また戻って来るって約束したしな」

 

 カラカラとアイツは笑う。

 そんなアイツの顔を見ると、私の心はチクチクと痛む。

 

 やだなぁ、私はどうしちゃったんだろう。

 傘を強く握ってみた。余計に心が痛んだ。

 

「私はそんな約束してないわよ?」

「あ~……まぁ、そうなんだけどさ。俺はしたんだよ」

 

 笑っていたアイツが悲しそうな顔をした。

 それなのに心はさらに痛む。

 

 チクチクと心に何かが刺さって、頭の奥で何かが蠢く。

 

 まずいなぁ、そろそろ限界が近い。ヒクヒクと右手が何かを握ろうとし始めている。でも、それはいけないこと。だって私が握ってしまったら壊れてしまうから。壊れてしまったらもう直らないから。

 

 

「ねぇ、貴方は誰?」

 

 

 私の質問に答えてよ。

 

 

「……青だよ」

 

 

 右手を握った。

 ソイツは壊れた。

 

 息が荒い。

 心臓が暴れる。

 頭の中で何かがグルグル、グルグルと回る。

 必死になって傘を握ってみる。でも心は痛む。痛い……どうして? どうしてこんなに痛いの?

 

「……っつ。まさかいきなり来るとはねぇ」

 

 アイツが立ち上がった。

 壊したはずなのにアイツは直った。でもそれはおかしい。壊れた玩具は直らないから。

 

 息が苦しい。いくら空気を吸っても、苦しさが終わらない。

 心臓が暴れる。その音が、五月蝿い。

 

 

「……ねぇ、青」

「うん? どうした?」

 

 

 どうしてこんなに痛いのか貴方ならわかるかな?

 

「私と一緒に遊びましょ?」

「まぁ、構わんけど何して遊ぶ?」

 

 壊れても直る玩具。

 今度は大切にすることができるかな?

 

 

「殺し合い」

 

 

 貴方はそんな私を受け入れてくれますか?

 

「……そりゃあ楽しそうだな」

 

 そんなアイツの言葉に乾いた笑いが一つ落ちた。

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。