「へー、じゃあ青はあれからずっと旅を続けていたんだ」
ずずりとお茶を飲みしな諏訪子が言葉を落とした。
そんな諏訪子と同じように俺もお茶をひと口。あの時は変質者のせいで味わいながら飲むことができなかったから、ちゃんと飲み物をいただくのは久しぶりだ。ああ、お茶が美味しい。
「そうだな。諏訪にも帰ってこようとは思っていたし、一度は帰ってきたんだけど、色々あって結局諏訪子たちとは会えなかったんだよ」
アレは1000年ほど前のことだろうか。ようやっと諏訪へ来ることができたというのに、月へ行くことになってしまった。まぁ、どの道課題をクリアする必要があったのだし、月へは行かなきゃいけなかったんだが。
月といえば、そろそろ霊夢たちもロケットを作って月へ向かう頃か? ん~……いや、アレは風神録の後だったかなぁ。どうにもそこら辺の記憶が曖昧だ。どうせなら俺もまた月へ行ってみたいんだが。
「あ、あの……」
昔のことを思い出しながら、諏訪子と雑談をしていたら早苗が声をかけてきた。ほったらかしにしておいて申し訳ない。ただ、諏訪子は課題のことだったり色々と知っているから、俺も話やすいんだ。
「どうしたの?」
「青さんって神様……なんですか?」
えと、いや、神ではないんだけど……神力とかありません。どうしてそんな結論になった。
「一応、人間だよ。ただ、ほぼ不老不死だから寿命はないようなものだし、死なないかな」
死ねない。といった方が正しい表現かもしれない。
とはいえ、この体質のおかげで俺は此処まで来ることができたんだ。もし不死じゃなかったら、熊に殺されたところで俺の物語は終わっている。
「ええ……なんですか、その無茶苦茶な体質……」
そんなこと言われたってそういうものだから仕方無いね。
うーむ、早苗にも是非青さんハーレムのメンバーに加わってほしいのだが、これからどうやって距離を縮めていこうか。諏訪子や神奈子は俺にもうベタ惚れだから良いとして、早苗の攻略はなかなかに苦労しそうだ。
「青はそんな奴だから、早苗もセクハラでもされたら遠慮せず全力で殴って良いんだよ」
いや待て、諏訪子。その理論はおかしいだろ。
それに俺としてはただ殴られるより、ネチネチと苛められながらの方が嬉しい。早苗の蔑んだ目とか考えるだけで興奮する。
「あっ、はい。分かりました諏訪子様」
やだ、早苗ちゃんったらすごく素直なのね。もう常識にとらわれなくなり始めているじゃないか。いつだってそうだ。俺の周りには敵しかいない。
この早苗には常識を忘れないまま俺のお嫁さんになってもらいたいけれど、この様子じゃそれも難しいかもしれない。
「話は変わるが、この外套ありがとな、諏訪子」
どうにも話の流れがよろしくなかったので話題を変えることに。それにこの外套のお礼もしたかった。まぁ、もらってからもう1500年も経っちゃったんだけどさ。
「うん? ああ、そういえばソレ、私たちが送ったやつだったっけ。すっかり忘れてたや。いくら私たちが作ったとはいえ、よくまだ残ってるね」
大丈夫、作者もよく忘れるから。
神力が込められているってのもあるけれど、多分もうただの外套ではなくなっているんだろう。だってこの外套、俺の身体と一緒に復活するし。殺されて再生する度に真っ裸とならないのもこの外套のおかげだったりする。
「寒い日とかは本当に助かった」
「ん、別にいいよ。青にはお世話になったし」
俺がお礼の言葉を口にすると、諏訪子は少々恥ずかしそうにしながら、お茶へ口を付けた。諏訪子さんマジ可愛い。
とはいえ、この外套に助けられたのは本当のこと。もしこの外套がなく、殺される度に真っ裸になっていたらきっと周りから……ああ、うん。あまり変わらないかもしれないな。世間はいつだって俺に冷たい。
「なんだか騒がしいけど、誰か来て……お?」
恥ずかしそうにしている諏訪子を抱きしめようか真剣に考えているとそんな新しい声。
どうやらこれで、この世界へ来て会いたい人物とは全員会うことができたみたいだ。
「おおー、もしかして青かい? 本当に久しぶりじゃないか。いったい何処まで出かけていたのよ」
「や、久しぶり神奈子。かなり遠くまで旅をしていたから遅くなったんだ」
変わりなく元気なようで俺も嬉しいよ。そして、当たり前のように神奈子も俺のことを覚えているんだな。これもまた嬉しい誤算。
「ふふ、おかえり青」
「……うん、ただいま」
別になんてことのない挨拶のはずが、どうにもこそばゆい。
神奈子は俺に名前をくれたし、その影響なのかもしれないけれど、何というか……俺の中での立ち位置がちょっと特殊なんだ。まさに名付け親といったところ。
転生する前の名前は思い出したが、やっぱり今の名前の方がしっくりくる。ただ、もう少しちゃんと考えてほしかったとも思っていたり。
「それで、青はどうして帰ってきたんだい?」
「神奈子たちと会うためだよ。それに此処は生まれ故郷みたいなものだしさ」
幻想郷から叩き出されたわけだが、神奈子たちと会いたいとは思っていた。
「へー。じゃあ、これからはまた一緒に暮らせるってことかしら」
「うん、お世話になろうと思っているけど……大丈夫か?」
諏訪子は大丈夫だろうと言っていたが、ちょっと心配。俺にとって諏訪子や神奈子は特別な存在だけど、この二柱にとって俺がそうなのかは分からないのだから。
そんな心配はあったけれど……
「そりゃあ、もちろん。私もまた青と一緒に生活できて嬉しいよ」
なんて笑いながら、神奈子は言ってくれた。
……別に自分を卑下するつもりはない。でも、ちょっと驚いている自分がいた。
紅魔館のメンバーと再会した時も思ったが、自分で感じていたよりも繋がりってのはしっかり残っているのかもしれない。そうだと嬉しいなって思う。それだけでも自分やってきたことに意味を見つけることができるのだから。
「ありがとう。それじゃあお世話になるよ」
さて、此処でまた暮らせるようになったのは良いけれど、俺が本当にやりたいのは神奈子たちを幻想郷へ連れて行くことだ。
幻想郷を捨てられないくらいには残してきたものもあるし、何よりこのままじゃ諏訪子たちが消えてしまう。それだけはなんとしても避けたい。
だから、どうにか上手く誘導したいところだけど……まぁ、今ばかりは久しぶりに帰ってきた故郷を楽しませてもらうとしよう。
俺の寿命があとどれくらい残っているのかは分からない。でも、何かを残したまま消えたくはないんだ。
ルーミアやフランドールに妹紅。地霊殿やこの諏訪子たちだってそうだ。まだ消えるわけにはいかない。
そして、あの熊畜生をこのまま……あっ、そういえば準備する暇なく飛ばされたせいで、何も言うことができなかったが、あの熊畜生は大丈夫だろうか?
突然俺がいなくなったせいで暴れていたりしたら……まぁ、うん。頼んだぞルーミア。
――――――――――
アイツが突然いなくなってからもう10日。
さて、そろそろ限界な気がするけど……どうしよう。
「……ねぇ、るーみあ。青は?」
だいたい、なんだってアイツは勝手にいなくなっているんだ。この子の面倒くらいちゃんと見てほしい。
「私もわかんない、かな」
今はまだなんとか大丈夫。大丈夫だけど、これがいつ爆発するのかが分からない。それにもし、爆発したら私なんかじゃ絶対に止められないし、この子を止められる奴なんていない。
マっズいなぁ。下手したら幻想郷が壊れる。それくらいの力をこの子は持っているのだから。
「……いつ帰ってきそう?」
「どうだろう。そのうち帰ってくるとは思うけど」
ああもう。ホント、アイツは何処に行ったんだ。何処に行くにしてもひと言くらい残しておいてほしい。
普段はいるだけで鬱陶しいくらいなんだから、こんな時くらいはいなさいよ。
ただ、アイツって直ぐに色々なことに巻き込まれるからなぁ。自分から巻き込まれに行くことがほとんどだけど。
「青がいないとつまんない」
……まぁ、アイツいないと静かなことは確か。そう思ってしまうくらいにはアイツとの生活に慣れてしまっている自分がいた。それくらいアイツとの生活が当たり前になってしまったってこと。
それは、なんだかムカつくことではあるけれど、本当のことだから仕方無い。最初はただの汚れみたいなものだったのに、今じゃすっかり身体にまで馴染んでしまっている。
「我慢できそう?」
「……うん、がんばる」
そうしてもらえると私も嬉しいかな。
全く、居ても居なくても迷惑をかけるとは……ホント、厄介な奴だ。
はぁ……何処で何をやっているのか知らないけど、早く帰ってきなさいよ。
ルーミアさんの正妻感がすごい……
なかなか物語は進みませんが、前作では諏訪のことをあまり書けなかったので、もう少しのんびりしたいなぁと思っているところです
では、次話でお会いしましょう