東方想拾記   作:puc119

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またまた閑話です
本編とは関係ありませんので飛ばしてもらっても問題ありません

また、メタい発言が非常に多いです
クマさんと主人公がおしゃべりしているだけのお話となります
それでもよろしければどうぞ




第閑話~再クマさんとおしゃべり~

 

 

 

 世界に彩を加えていた木々の葉は落ち始め、なんとも肌寒い日々が続く。つまるところ、それはまたあの冷たい季節がやってくるということ。

 夜を照らしてくるはずの月のない朔月の今宵、木々の隙間からちらと見えた空は吸い込まれそうな黒がある。

 

 そんな今のこの季節、俺の周りにはむせ返るほどの

 

 ――死の香りが広がっていた。

 

 

「……これで53回目。本当に弱いね、青は」

 

 

 広がった香りの中心にいた奴の口から言葉が落ちる。

 何が気に入ったのか知らんが、ここ最近、俺が大切に使っていた唐傘は奪い取られ、『クマさんソード』とかいう巫山戯た名前まで付けられてしまった。奪い返そうにも無理です。クマ強いよ、クマ。

 

 手に持った唐傘を開きクルクルと回して遊ぶ目の前のバケモノは笑った。くるくる……くるくる、と。

 

「お前が強すぎるだけだろうが……」

 

 傘は閉じられた。

 霊力を最大限まで強化。

 霊力を込めた氷壁を展開。

 

 もう直ぐにでも訪れやがる理不尽なまでの暴力に備え――

 

 

「……これで54回目」

 

 

 何かが俺を貫いた。

 

 

 

 真っ暗な視界から戻った先。目の前のバケモノは傘についた赤を指で掬い、どこまでも美味しそうにソレを舐めた。

 そんな姿は恐怖でしかなく――反吐が出るほどに美しく思えてしまう。

 

 それにしてもアレだ。なんというか……

 

「なんで今日のお前、そんなに機嫌がいいの?」

 

 やっていることはいつも通りの虐殺でしかなく、傍から見れば機嫌が良いとか、そういう問題じゃないだろう。しかしながら、毎晩毎晩コイツの遊びに付き合わされているおかげか、この畜生がどんな気持ちなのかは分かるようになってしまった。

 どうしてなのかは分からんが、今日のコイツはやたらと機嫌が良い。普段だともうそろそろ冬眠をする季節だし、そんな季節のコイツはちょっとやめてほしいくらい気が立っているのだが……

 

「……支援絵をもらったから嬉しい」

「だから、そういう発言はやめなさいって」

 

 ダメか? 一年ぶりの更新なのにやっぱりダメなのか? また本編の更新はできないのか?

 せっかく更新するのにまたこの畜生と雑談するだけで終わるのか? 支援絵本当にありがとうございました。

 

「大丈夫、本編がどこまで進んでいるのかなんて読者は覚えていない。作者も覚えていない」

 

 ごめんって! まさか一年丸々更新しないなんて思わなかったんだって! 大丈夫、大丈夫だから、ちゃんとこの作品も完結までもっていくから!

 

「もういっそのこと『年一更新』とかのタグをつけた方がいいと思う」

 

 流石にもっと更新するわ! と大きな声で言えないのが辛いところだ。

 前作が始まってからもう5年目なんだけどなぁ……良い加減終わらせてあげないと、とは思っているんだけどなぁ……

 

「じゃあ、これからは私がいっぱい登場するの?」

「いや、お前どうせ直ぐに冬眠するから、出番はほとんどないな」

「……はい、55回目ー」

 

 ツッコミが理不尽すぎる……俺の命を何だと思っているのだろうか。何とも思っていないんだろうなぁ。

 

 

 

 

「今年は私が青と一緒に年越しすると思ってた」

「いや、お前その時期は寝てるだろ」

 

 ちょっとだけそんな話も考えたが、おとなしく寝ていてもらうことにした。

 

「むぅ、私もコタツに入りながら、青と一緒に年越ししたい」

「頼むから寝ていてください」

 

 そもそもコイツが起きている状態で、のんびり年越しとかできる気がしない。新年の挨拶とともに食べられるオチが容易に想像できる。『新年明けましたのでいただきます』とか言って絶対にむしゃむしゃされる。年越しくらい平和に過ごしたいじゃないか。血みどろちんがいなニューイヤーとか何ひとつハッピーじゃない。

 あと、冬の間くらいはルーミアとふたりきりで過ごさせてください。お願いします。外の世界へ行っていたこともあり、もうホント長い間ルーミア成分を補充できていないんだ。

 

「てか、いい加減その傘を返しなさいよ。なんでお前が当たり前のように持っている」

 

 その傘は神奈子からもらった大切な傘なんだ。幽香から新しい傘をもらえることにはなっているが、まだもらえていない。まぁ、そちらは春になったらもらいに行くとしよう。せっかく幽香と会うのなら花咲く季節に会いたいのだし。

 

「このクマさんソードは私の物になったからダメ」

 

 ソードじゃなく傘なんだけどなぁ、それ。だいたいなんだ、その巫山戯たネーミングは。

 

 ……とはいえ、あの傘がこの畜生の物となってしまったのは事実なのだろう。妖力と神力のどちらを込めたのか知らんが、唐傘の色は俺がもらった時と比べ随分と変わってしまっている。元は朱色の綺麗な傘だったというのに今じゃ、黄色の奇抜な傘となってしまった。流石にそんな傘を俺が持っていたら変だろう。

 いやまぁ、幽香の傘はピンクだし、それよりは良いのかもしれんが。

 

「安心して、大事に使うから」

 

 大事に使ってくれるのは良いが、さっきからその傘で貫かれているのだから、気分は複雑だ。

 

「……そもそも、この傘はクリスマスプレゼントで私がもらう予定だった」

 

 だからごめんって! 更新しようと思ってはいたけど、できなかったんだって。そもそもそんな余裕があったら本編を進めています。

 

「まったく……これじゃあいつ完結できるのやら」

 

 肩をすくめ、ため息を落としながら畜生が言った。なんだコイツ、やたらと腹が立つな。てか、そんな表情もできたのか。もっと無表情な感じのキャラだと思っていたんだけどなぁ。

 

「それは俺もわからんが……進み始めてしまえば一気に終わってくれるさ」

 

 物語なんてそんなものなのだから。

 坂道を転がり始めた石は加速する。角は取れ、丸みを帯び、転がり落ちるだけだ。坂道の終わりだってもう見えているのだから。昔から……ずっとずっと昔から。

 それでもこうして止まってしまっているのは……まぁ、いるはずのないイレギュラーな存在が原因なのだろう。そんな存在が誰なのかくらいは流石の俺だってわかっているさ。

 

「青はどうしたいの?」

「永遠に続けば良いと思っているのは本当だよ」

 

 そんなことが許されるはずはないのだけど。

 大好きなキャラたちのいるこの世界。ずっとずっとこの世界を見守っていたいさ。遠くから、静かに、そっと。

 

 ……そう思っていたはずだったんだけどなぁ。

 

 関わってしまった。もう元に戻ることができないほどに踏み込んでしまっている。重い想いを抱え、転がり始めた意志が坂を登ることはないというのに。

 

「まだ怖がっているの? もう戻ることのないほどに壊してしまっているのに」

「まぁ、な」

 

 今更気にしたって仕様の無いことではあるけれど、どうしたって気にしてしまう。相手のことを考えず踏み込んでいく癖に、終わりが見えてくると逃げようとする。臆病な人間なんです。昔から、ずっとずっと。

 

「……でも、安心して」

「何をだよ」

「私は何があっても青の傍にいるから。青が何を思おうと。どうあろうと」

 

 重い想いを乗せた転がる石の意志。

 

「じゃあ、とりあえず俺を食べるのをやめてくれって」

「……腹が減っては戦ができぬ」

 

 何と戦っているんだ、お前は……

 まぁ、コイツにむしゃむしゃされるのは諦めているが。だってクマさん強いし。それに、悔しいことではあるがコイツに食べられるのもすっかり日常のひとつとなっている。

 ……自分で言っておいてアレだが、酷い日常だ。

 

「今更だがだいたい、どうしてお前という存在がいるんだよ。ダメだろうが勝手に復活してきちゃ」

「それはえっとぉ。ノリと……いきおい?」

 

 お前の存在理由はそれで良いのか……

 コイツが登場してからというもの、何かにつけてコイツの存在が引っかかるせいでなかなか物語が進まない。せっかくこの世界に帰ってきたのに、東方キャラと全然きゃっきゃうふふができていないんだ。

 それでいて、見た目がやたらと可愛いだけに扱いに困る。ホント、ずるいよなぁ、可愛いって。

 

「元々そんな気なんて青にはない」

「いや、そんなことはないぞ。俺だって可能なら、あわよくば……くらいは思っている」

 

 じゃあ、それを実行できているかというと何とも難しいところだが。

 

「はぁ……これだから」

 

 本日二度目のため息。やはり腹立つな、コイツ。

 

 

「別に私は青がどんな結末を求めようと気にしない。けれど、そこに私と青がいないことだけはダメ。それだけは認めない」

 

 それはいつかの昔に言われたセリフと同じものだった。

 結局のところ、コイツという存在は変わっていないのだろう。きっと最初から最後まで、ずっと。直ぐに軸がブレてしまう誰かとは大違いだ。

 

 

「……じゃあさ」

 

 

 東方という世界へひとり投げ出され、まるで真っ暗な闇の中を進んできた。

 出会いと別れを繰り返し、傷つきながら、誰かに手を引かれながらも此処まで進んできた。もっと上手い方法なんていくらでもあったはずだった。

 ホント、不器用なんです。俺って。

 

 

「もしも、もしもの時だけど……」

 

 

 冷たく暗い闇の中をひとりで進めるほどの勇気は持っていない。

 そんな俺ではあるけれど……少しは成長できているだろうか。そうだと嬉しいな。

 

 

 

「俺と一緒に消えてくれるか?」

 

 

 

 暗い暗い闇の中で見える、ひとつの光。

 

 

「……はい、喜んで」

 

 

 交わした言葉と、結んだ約束。

 そんな誓いが実をつけるはもう少しだけ未来のお話。

 

 

 







久しぶりの更新となるのでリハビリがてらの閑話をひとつ
本編、進めないとですね

では、次話でお会いしましょう


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