この作品は長くなりそうだ
くたりとしてしまい、もう動くこともなさそうな様子。
死んではいないと思う。それにたぶん死んでもまた直る。
アイツが倒れた瞬間、湖にあった氷が突然水へ変わった。だから、その氷の上で倒れていたアイツは本当なら湖の中へ落ちるはず。けれども、私はアイツの腕を掴んで落ちないよう拾い上げた。
――青。
コイツはそう名乗った。やっぱり聞き覚えはない。聞き覚えはないけど――
「……青」
その名前を口にすると、心の痛みが少しだけ和らぐ。
う~ん掴んだのは良いけれど、コイツはどうしよう。どうしてなのかわからないけど、もう少しコイツとお話をしてみたい。だって何かがわかる気がするから。
「フランっ! 何があったのよ?」
慌てたようなお姉様の声が聞こえた。
ああ、そう言えば私は今、外にいる。ほとんどの時間をあの部屋の中で過ごし、紅魔館なんて絶対に出なかっ……あれ? そうだっけ?
……いや、違う。外へ出るのは初めてじゃないんだ。だって私はこの景色を知っているから。外の景色がどんなものだったのか覚えているから。でも、なんだろう。何か忘れてる……
何か忘れている?
何を?
「ねぇ、お姉様。この傘って誰の物だったの?」
この傘はずっと大切にしてきた。
でも、それがいつからで誰からもらった物か思い出せない。いつの間にか持っていたんじゃないかって思えるくらい。
「そう言えばそれ誰の傘だったかしら? 少なくとも私の物じゃないけど……ってダメじゃないフラン。勝手に外へ出てきちゃ。それに……その手に持っている人間は?」
そっか、お姉様も知らないのか。
どうして私が持っていて、誰の物かわからない。そう考えると少し不気味。けれども、捨ててしまおうとは思わなかった。
「さっき拾ったの」
「……どうするつもり?」
掴んでいるアイツを見てみる。
やっぱり見覚えはない。
「……一つ、お願いを聞いてもらっても良い?」
ねぇ、青。
この傘は貴方の物ですか?
――――――――
目が覚めると目の前にフランドールの顔があった。
何があったんでしょうね?
顔を動かし辺りを見回すことで、此処があのフランドールの部屋と言うことはわかる。けれども、どうして俺が此処にいるのかはわからない。
てか、なんで俺は縛られているんですか?
両腕を後ろに組まされ、頑丈そうな何かで結ばれている。そのせいで、腕を自由に動かすことなんてできやしない。
「おはよう」
「ああ、おはよう」
起きた俺に気づいたのか、フランドールはそんな声をかけてきた。相変わらず俺が渡したあの傘を握り締めながら。
お前が俺を助けてくれたのか?
「貴方は……誰なの?」
誰って聞かれても困るんだよなぁ。俺はフランドールを覚えているけれど、フランドールは俺を覚えていない。だからフランドールとどんな関係だったのか話をしても、信じてもらうことはできないだろう。
悲しいことだけど現実なんてそんなものだ。
「……青。それが貴方の名前なの?」
本当はその名前だって神奈子に付けてもらったやつだけど、初めてフランドールと出会った時はそう名乗った。それにその名前も気に入っている。
「ああ、そうだけど……覚えてはないか?」
「うん、知らない」
だよなぁ。美鈴は直ぐに思い出してくれたが、そんなに上手くいくはずがないのだ。
かと言って、どうすれば良いのかなんて俺にはわからない。
「じゃあ、アレだ。お兄ちゃんと呼んでくれても構わんぞ」
「青は私を知っていたの?」
無視か。無視が一番傷つく。
一度で良いからお兄ちゃんって呼んでくれないかなぁ。咲夜に頼んだらナイフで刺されそうだし、レミリアに頼んでみようかな。ああ、パチュリーに頼むのも悪くないかもしれない。
「うん、知っていたよ。ずっと前から」
「……そっか」
200年以上一緒にこの部屋の中で過ごしたんだ。知らないはずがない。お前の泣き顔も笑い顔も寝顔も見てきた。それらは今でもはっきりと思い出すことができる。
色々な話をして、何度も何度も殺された。別にそのことを恨んでなんかいないが、あの時のことを覚えていないってのはやっぱり寂しい。
「この傘は?」
「今はフランドールの物だよ」
それに元々は幽香の物。それを俺がもらってフランドールに渡した。ただそれだけのこと。
今でも大事に持っていてくれただけで俺は充分だ。俺が持っていても、野郎の股間を潰すことぐらいにしか使わないし、その傘だってフランドールみたいな可愛い女の子に使ってもらった方が幸せだろう。
さて、その話はとりあえず良いのだ。その前に聞いておきたいことがある。
「んでさ、ちょっと質問があるんだけど」
「なに?」
「どうして俺は捕まってるの?」
いや、縛られるのは嫌いじゃないが、今は別にそう言うプレイとかではないはず。
俺はいつでもウェルカムだが。
「だって青は私の物だから」
……うん?
ちょっ、ちょっと待ってね。どう言うことですか?
俺はフランドールの物になった覚えはないぞ。そりゃあ嬉しいけど、ちょっと今の状況が理解できない。
「咲夜はね、お姉様の物なの。だから青は私の物になったの」
ああ、なるほど。意味わからんわ。
それに咲夜だってレミリアの物ではないだろ。確かに忠誠を誓ってはいるが、ちょこちょこレミリアにいたずらしてたし。
「あ~……それで俺はどうなるんだ?」
「わかんない」
そっかぁ。わかんないかぁ。
いやどうすんだよ、これ……あと、この縛ってあるの解いてくれませんか? ダメ? もう少し我慢した方が良い?
それに俺だって一度帰らないとルーミアが心配……はしてくれないだろうけど、お腹を空かせているかもしれない。だからお土産も持って帰らないとだ。
お土産ないと滅茶苦茶不機嫌になるし。
「失礼します。お食事をお持ちいたしました」
これからどうすれば良いのか考えていると、あの重苦しい扉が開き、美鈴が入ってきた。
「おや、青様も目が覚めたのですね。えと、すみませんが青様の分の食事は用意してなくて……直ぐに持ってきます」
「ああ、俺は別に良いよ。食べなくても問題ないし。それにしても、食事運ぶのってまだ美鈴の仕事だったのか」
てっきり妖精メイドがやっているのかと思った。美鈴には門番の仕事があり、妖精メイドも沢山いるのだし。
「いえ、今日は偶々私が運んだだけですよ。何故か妖精たちが運んでくれなくて……」
……そ、そっか。なんでだろうね? 不思議だね。
そんなに俺のことが怖かったのか……
しっかし、美鈴とは話しやすくて助かる。俺のことを知っているってだけでこうも違うのか。フランドールも早く思い出してくれれば助かるが、いつになることやら……
「美鈴は青のこと知ってるの?」
何処か不安そうな顔をしてフランドールが美鈴に聞いた。
別に不安になるようなことじゃないんだけどな。忘れてしまったのはフランドールのせいではないのだし。
「知っていると言うか……青様と会った時、思い出したんです。それまではすっかり忘れていましたよ」
う~ん、それにしてもどうして美鈴はそんなに早く思い出してくれたのかね? 言葉だってそんなに交わしたわけじゃないんだが。
まぁ、何かきっかけがあったのだろう。そればっかりはわからない。
「私は思い出せない……」
「大丈夫ですよ。妹様と青様はすごく仲が良かったですし」
不安そうに顔を落とすフランドールとそれを勇気づけようと笑う美鈴。
うんうん、見ていて暖かくなる光景だ。あと、そろそろこの縛ってあるの解いてくれませんか?
「そうなの?」
仲が良かったかと言われると……どうだろうか? そもそもフランドールはずっとあの部屋に居たわけだから、知り合いなんていなかったはず。其処へ俺が偶々入っていっただけ。
まぁ、俺は今すぐ結婚して欲しいくらいフランドールのことが好きだが。
「はい」
やはり笑顔で答える美鈴。
「そっか」
そんな美鈴のおかげか、フランドールの顔も少しだけ明るくなったように見える。
「ふふっ、それでは私は仕事に戻りますね。では、また」
そう言って美鈴は帰って行った。
聞いている此方の心が温まるような会話だった。
うん、それは良いんだ。それは良いんだけど、あの……俺はいつまで縛られていれば良いんですか?
あと俺の扱いってどうなるの?
すまんなルーミア。
こりゃあ帰りは遅くなりそうです。
せっかくのチラシの裏だし好き勝手書いちゃっても良いよねっ!
少しずつ読んでくれる人も増え私は幸せです
このままのんびりひっそり頑張ります
と、言うことで第6話でした
記憶を取り戻すのどんな場面にしようかなぁって考えていたら、何も進まず終わりました
何やってんでしょうか
でもきっと記憶よりも大切なことがあるはずなのです
次話はレミリアさんやパチュリーさん、咲夜さんなんかも書きたいものです
書くのかはわかりません
では、次話でお会いしましょう