鎮守府Aの物語 - 短編集   作:lumis

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金剛のトラウマ

 別の日、羽黒と隼鷹も交えて提督と教育秘書艦の二人、合計5人で打ち合わせすることになった。なお、総秘書艦の五月雨は学校に行っている時間のため妙高が代理だ。

 

 

 羽黒と隼鷹も事の仔細は事前に伝え聞いており把握している。

「教育者の立場からみて、どうだろうか?金剛は成人した女性だし、中学生を指導してる二人からすれば勝手が違うとは思うけど・・・」と提督がまず口を開いた。

 

 

 羽黒は隼鷹の顔を見、隼鷹は目を閉じて少し考えている。そしてまずは隼鷹が提督に対して口を開いて質問した。

「まず聞きたいのはさ提督。初日以来金剛と会話したことある?」

「え?まぁ・・・たまになら。簡単な挨拶程度には。」

「じゃあ金剛が普通に長々と話すのは見聞きしてないんだね?」

「あぁ。」

 

 

 それを聞いて隼鷹は羽黒と何か言葉をかわし、相槌を打ったあと、再び提督に向かって言った。

「あのね。会話不足。コミュニケーション不足だよ。あとそれだけじゃないよ。ちーっとデリケートな問題かも。金剛は確かハーフの人だったよね?」

「あぁ。そうだ。」

 

 

 隼鷹も金剛について知ってはいたが、一応提督に確認したのちに続ける。

「うちの学校にもハーフの子がいるんだけどさ、家庭の事情で日本語がうまく話せずにそれを引け目に感じて、周りと打ち解けられなかったらしいんだよ。そういう出自とか言語の問題さ。」

 

 

 一旦隼鷹はお茶を口にした。

「口に出して笑われたらどうしよう、とか、怖くなってしまうんだろうね。」

「あぁ、なんとなくわかる。それが金剛にもってことか?」

 と提督は尋ねた。

「うん。学校ならさ、解決の糸口はなんとかして見いだせるんだよ。同じ集団で3年も集団生活が続くんだもの。どんなにボッチだって多少なりとも他の生徒や先生と関わらないといけないし。なんだかんだで周りが上手く守ってあげられるんだよ。」

 隼鷹が熱く語る。

 

 

「でも社会に出たら違う。すべての行動が自己責任だろ?まあ同じ会社や団体でずっと長くってなら同じかもしれんけど、艦娘制度は最長で5年任期だけどプライベートもあるからそこまで長くやる人はほとんどいない。人の流れも割りと流動的さ。

 きっと彼女はさ、うちのハーフの生徒と同じなんだろうさ。いい歳した自分の話す言葉が笑われたらどうしようって。でも艦娘やってる以上は周りとのコミュニケーションが大事だから会話しないといけない。だから自分が傷つかない程度の会話しかしようとしない。おそらくそういう状況が続いてきたんだろうね。その結果が今の彼女ってわけさ。」

 

 

 腕を頭の後ろで組んで背もたれに身体を寄せ、隼鷹が更に続ける。

「艦娘になる前の彼女がどう生きてきたかは知らんけどさ、少なくとも艦娘になって今までと違う現実を見せられて縮こまっていった可能性は捨てきれないよね。」

 

 

 バトンタッチというかのように隼鷹は隣に座っていた羽黒の肩を叩いた。それにすこし戸惑ったが隼鷹の意を汲むように羽黒が口を開いた。

「彼女の心を開くには、やっぱり会話をするしか無いと思います。私達も出来る限り彼女と接触しますけど、ここは鎮守府のトップである司令官さんが金剛さんに話しかけるべきだと思います。そのほうが周りに示しもつくと思います。」

 

 

 羽黒に言われて、提督は少し考えこむ。少し照れを含んだ表情で返事をする。

「俺が話しかけるのかー・・・。正直女性に話しかけるの苦手なんだよなぁ」

 といったあと、少しの間がありその場にいる全員に突っ込まれた。

 

 

 

 

「またまたご冗談を」と高雄。

「じゃあ私達はなんなのでしょう・・・?」にこやかだが言葉の最後が怖くて目が笑ってない妙高。

「ここにいるのあんた以外全員女だよ・・・」呆れるような笑いを口に表して隼鷹が言う。

(小声で「女として見てもらえてない・・・!?」と眉をひそめて羽黒。

 

 

 

 

 慌てて提督は弁解する。

「いやいや!仕事で話しかけるのとプライベート含んで話しかけるのは違うだろ。すでに共通の話題があればいいがまずはそこから聞き出さないといけないし。こんなことならもっと早くこういうアプローチ進めておきゃよかったよ・・・」

 

 

「いい歳した男だろ!ブーたれるなって。デートに誘うようにガツンガツンといきゃいいんだよ」

 そう言った隼鷹に高雄や妙高は乗る。

「そうですね。まずは食事に誘ってみるのが掴みとしてはよいかもしれませんね。」

と高雄。

「もし練習台が欲しかったらうちの羽黒を使ってもいいですよ?この子もそろそろ男性恐怖症を直さないといけないですし。」

 温和な妙高が羽黒を指さし珍しく煽った。そんな従姉の妙高に羽黒は驚きつつ反論した。

「んもう、お姉ちゃん!私は男の人と話すのが少し苦手ってだけよ・・・!」

 

 

 妙高と羽黒のやりとりに反応に困った提督だが、あえて触れないようにした。

 

 

「それで、俺がするのはいいとして、せめて高雄さんと妙高さんにはサポートしてほしいよ。」

 という提督のもくろみはこうだ。

 高雄と妙高は結婚している女性のため、男の立て方など旦那さんでわかっているだろうし、女性視点でどう振る舞えばいいかを教えてくれると踏んでいるためだ。そんな考えに気づいたのか、高雄と妙高は快く承諾する。

 

 

 その後、提督と金剛のデート作戦?を隼鷹が他の艦娘にバラしてしまったため、執務室や食堂で提督を見かけるたびに面白がって協力しようとする艦娘が後を絶たなかった。

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