デート・ア・ライブ  the blue fate   作:小坂井

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前回の投稿から、また時間が空いてしまい申し訳ありません。
次はもっと早めに投稿したいと思います。

あと…ご注文はうさぎですか?面白いですよね。


12話

ホームルームが終わり、タマちゃんが教室を去ると同時に狂三の周りには人だかりが出来た。

さらに他のクラスからも狂三の姿を一目見ようと生徒が集まっている。

 

「ねえねえ、時崎さんって神代君の事を狙ってるの?」

 

「神代さん…もしかして彼の事ですか?」

 

狂三は席で本を読んでいる蓮を指した。狂三のホームルームでの行動は他の生徒、特に恋愛に興味がある女子からはまるで求愛行動のように見えるだろう。言い方を変えればそのような意味にしか聞こえなかったという事に繋がるのだが。

 

「そう、もしかして一目惚れしちゃった?」

 

「まあ、そんな所ですわ。 彼はとても素敵なものですから」

 

その言葉に周りにいた女子がキャーと大きな声を出す。

 

「でも、神代君はハードル高いよ? みんな告白してるけど全員断られちゃってるらしいから」

 

「なら、わたくしも頑張らないといけませんわね…フフ…」

 

そう言って席を立ち上がると蓮の席に向かった。近くに来ても蓮は顔を狂三に向ける事はせず、視線はずっと本にしか向けていない。

狂三の突然の行動に他の生徒の目は2人に集中する。

 

「少し、よろしいですか?」

 

「何か用か?」

 

「いえいえ、少し頼み事がありまして」

 

警戒した所為か冷たい態度で返したのにも関わらず狂三は微笑んだ。

 

「放課後、よかったら学校を案内していただきたいですが…」

 

「放課後は用事がある。他の奴に頼んでくれ」

 

「そうですか…残念ですわ。では、士道さんにしてもらいましょうか…彼にも用事(・・)がありますので…」

 

蓮に聞かせるように言った後、次は士道の席へ向かって行った。冷たく狂三を追い払った蓮には他の男子生徒の恨みの視線が向けられる。

まだここに来て一日すら経過していないのにこのような反応をされるという事は他の生徒に狂三の容姿やお淑やかな性格がそれほど高く評価されているということでもある。

 

(たった数分でこのような反応をされるとは、人間の相手に良く慣れているな。それに士道に用事とは一体何を…)

 

その疑問は授業開始のチャイムによって中断されるのだった。

 

 

時刻は午後三時、帰りのホームルームの時間だ。前ではタマちゃんが連絡事項を伝えている。

そんな中、士道はそんな事が気にならないほど考え込んでいた。

狂三の『自分は精霊だ』と言った事や放課後、校舎内をどのようにして案内しようかなど考える事は山ほどある。

だが、一番気になる事は今朝からの蓮の様子であった。

 

(一体、どうしたんだよ…)

 

蓮は今朝から…いや、狂三を見た時から様子がおかしい。

普段は寝ている授業も今日はずっと起きていたし、一日中狂三に鋭い視線を向けていた。

それが気になってどうかしたのか。と聞いて見ても、

 

『なんでもない…気にするなよ』

 

そう答えるだけで何も教えてくれなかった。

 

「なあ、シドー。なんだがレンの様子が妙ではないか?」

 

隣にいる十香がそう聞いてきた。どうやら十香も蓮の様子がおかしい事に気づいていたらしい。

 

「やっぱり十香もそう思うか? 」

 

「うむ、今日はレンが全然遊んでくれんのだ。狂三とかいう奴を見てから変だぞ」

 

十香がそう言った時、タマちゃんは出席簿をバタンと閉じた。

 

「連絡事項はこんなところですかね。あ、そうそう、最近この辺りで失踪事件が頻発してるらしいので気をつけて下さいね」

 

そう言った後、起立の号令が響き、タマちゃんは「はい、さよなら」と言って教室を出て行った。

これからは士道の仕事の時間だ。ポケットからインカムを取り出して右耳に装着する。

 

『士道、聞こえる? まさか狂三が本当に精霊とはね…正直、今でも信じられないけど』

 

インカムから琴里の声が聞こえてくる。朝に狂三の観測を依頼したがその結果は精霊だった事がまだ信じられないらしい。

 

「俺だって信じられないよ。まさか精霊が転校して来るなんて」

 

『まあ、またデレさせてキスして霊力を封印すればいいのよ。今回は相手からお誘いをかけてくれたんだしね』

 

「…ッ、ま、まだ抵抗がない訳じゃ無いんだが…」

 

『しっかりしなさいよ。あと、十香の感情値がまた不安定なんだけど、あんた、また何かしたの?』

 

「何もしてねえよ。…もしかしたら蓮が関係してるかも…」

 

『はあ!? 蓮が?」

 

士道と比べて蓮は女の心がよくわかっているから、何かやらかす事は絶対無いと琴里は思っていたのだが…。

 

「狂三を見た時から様子が変なんだよ。なんかやけに狂三を警戒してるっていうか…」

 

『そりゃあ、蓮はASTにいるんだから「私は精霊です」なんて言った奴を警戒するでしょうね』

 

「まあ、そりゃそうだけど…」

 

『で? その蓮本人はどこにいるの?』

 

「放課後に予定があるって言ってすぐに帰ったけど…」

 

『まあ、詳しい事情は後で聞く事にするわ。そろそろ雑談している暇もなさそうよ』

 

琴里が言った直後、士道の肩がちょんちょんと、つつかれた。

 

「ん?誰が…って時崎…」

 

驚いて振り返るとそこには狂三がいた。

 

「学校を案内してくださるのでしょう? あと、わたくしのことは狂三で構いませんわ」

 

「え? じ、じゃあ狂三…」

 

そう呼ぶと狂三は嬉しそうに微笑んだ。

しかし、隣を見ると十香が腕組みをしながら睨んでいた。

 

(こういう時に蓮がいてくれれば…)

 

士道は心の中で願うように言った。

もし、蓮がいてくれたら十香を優しく宥めてくれるだろう。だが、無いものをねだっても仕方がなかった。

 

「あ、いや、これは…」

 

「さ! 早く参りましょう。ふふ、楽しみですわ」

 

十香に何か言おうとしたが、狂三が軽い足取りで廊下へ歩いていく。

 

『士道、今は狂三よ。十香は帰りに好きな物を買ってあげれば大丈夫だから』

 

「く…スマン!」

 

十香にそう言い残して、狂三を追って廊下へ出た。

 

「それで、最初はどこに連れて行ってくれますの?」

 

教室を出てすぐの場所にいた狂三がそう聞いてきた。

 

「あ、ああ…そうだな。じゃあ最初は…」

 

こうして、士道のデート(戦争)が始まった。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

狂三を校舎案内をして、隙があればデレさせようと頑張る士道であったがそれは全くうまくいってなかった。

なぜなら狂三がデレるのではなく、士道が逆にデレさせられているからである。

今も狂三の手を握るはずが、逆に狂三に手を握られて士道はとても狼狽していた。

 

それもそうだろう。士道は今まで自分からアプローチをかける事はあったが、相手からかけられる経験は全くなかった。

しかも、狂三には見る人間全てを引き込むようなそんな魅力があり、それが士道をさらに混乱させる。

 

「ねぇ…士道さん」

 

手を握った狂三は小さな唇を動かしてそういった。

 

「な、なん…だ?」

 

「わたくし、士道さんにお願いがありますの。聞いてくださいまして?」

 

士道は頼みの内容を聞く前からつい、首を縦に振ってしまいそうになる。

だが、その瞬間、近くにあった掃除用具入れから二人の生徒が飛び出してきた。…折紙と十香だ。

 

「え? なんで二人共…」

 

「狂三! なんで士道と手を繋いでおるのだ!」

 

「時崎 狂三。学校案内で手を握る必要は無いはず。今すぐ離すべき」

 

二人は狂三と士道が手を繋いでいる事が不満のようだ。それを聞いて狂三は微笑んだ。

 

「あらあら、ずっと隠れていたんですか? そろそろ、あなたも出てきても良いんじゃないですか? 蓮さん(・・・)

 

「え…?」

 

士道が驚いた声を出すと同時に後ろの曲がり角から蓮が姿を現した。

 

「お前…用事があるって言って帰ったんじゃ…」

 

「その用事がこれなんだよ」

 

士道の質問に答えると、蓮は十香の所に向かい頭を優しく撫でる。すると、十香は気持ちいいのかとても愛らしい仕草をした。

 

「十香、ごめんな。今日は構ってやれなくて」

 

「にゅう…今日はどうしたのだ? 体調でも崩してたのか?」

 

「んー。まあ、そんな所か」

 

適当に答えて、十香の頭を撫でていると…

 

「わたくしにもしてくださいまし」

 

十香を押し退けて、狂三が割り込んできた。

 

「何! 貴様、何をするのだ!」

 

「いいではありませんの。とても気持ち良さそうでしたので気になって…」

 

狂三が割り込んできて、蓮は驚いたが手は止める事はしなかった。

 

「あぁ…これは…いいですわね…」

 

恍惚とした表情で撫でられる狂三。しかし、それで面白くないのは十香だ。

 

「ええぃ!狂三、それは私の席だぞ!」

 

狂三を撫でている手をとると、十香は自分の胸元に抱え込んだ。それはまるで子供がオモチャを取られないようにしているかのようにも見えてしまう。

ちなみに手が胸元にあるため、とても柔らかい感触を感じるがそれは黙っておく。

 

すると、突然折紙の携帯のバイブ音が鳴り響く。電話に出た折紙は淡々と相槌を打ったのち、

 

「急用が出来た」

 

そう言って、走り去って行った。去り際に士道の耳元で何か言ったらしいが蓮には聞こえなかった。

 

「な、なんだぁ…」

 

「士道さん?参りませんの? お二人もよかったらご一緒にどうですか?」

 

「じゃあ、同行させてもらうよ」

 

蓮は自分の用事(・・)の為、そう答えた。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

午後六時、校舎内の案内を終えて、四人は校門をくぐり夕日の照らす道を歩いていた。

 

「まあ、大体あんなところだ。わかったか?」

 

「ええ、感謝しますわ。蓮さんもありがとうございます」

 

「どういたしまして」

 

投げやりに答える蓮を見て、士道はついつい苦笑いをしてしまう。

蓮と十香がいてくれたらお陰でロマンチックな雰囲気にならないで済んだので、そこを考えると二人の存在はとてもありがたかった。

 

「それでは、士道さん、十香さん、蓮さん、わたくしはここで失礼いたしますわ」

 

十字路に差し掛かった所で狂三は礼をしてそう言った。

 

「え? お、おう…」

 

「うむ、また明日だ」

 

「………」

 

士道と十香が声を掛ける中、蓮だけが無愛想に何も言わなかった。そんな蓮を見て、狂三は嬉しそうに微笑んだ後、夕日の中に消えて行った。

 

 

 

「ふふ…優しい方でしたわ。士道さんは…そして蓮さん…ですか…」

 

士道たちと別れた狂三はとても興奮していた。

 

今は(・・)そういう名前なんですわね。変わらず(・・・・)とても素敵でしたわぁ…」

 

狂三の心は蓮を求めてとても疼いていた。

蓮と一緒にいたい。蓮に愛されたい。蓮の力を見てみたい。蓮の力になりたい…

そんな気持ちが狂三を完全に支配している。

 

「やっと…やっと見つけましたわぁ…もう絶対に逃がしませんわ…絶対に…」

 

狂三の中にある何かが蓮を求めているような錯覚に陥る。だが、それがとても心地よい。

 

「ああ…ダメですわ…こんな顔を見られたら蓮さんに嫌われてしまいますわ…」

 

緩みきって恍惚とした顔を変えようとしても頭に蓮の顔が浮かんできてしまいどうしても上手くいかない。

 

「いけませんわぁ…あくまで目的は士道さんなのですから…でも、蓮さんと少しくらいなら…」

 

考え事をしながら歩いていると不意にドンと何かにぶつかってしまった。それは男の背中でガラの悪い男達…いわゆる『不良』が道端にたむろっていた。

 

「あらあら、申し訳ありませんわ」

 

狂三はペコリと頭を下げて立ち去ろうとしたが、

 

「待てよお嬢ちゃん。そっちの不注意なのにそれで終わりはねえだろ」

 

相手は狂三を逃がすつもりは無いようでニヤニヤしながら言うと、狂三の周り男の仲間が囲ってくる。

その時、狂三は相手が何をしたいのかが分かった。

 

「お兄さん方…もしかして、わたくしと交わりたいんですの?」

 

妖しい笑みを浮かべながら言う狂三に男たちは笑い始めた。

 

「きゃー、露ッ骨ー。いいね、気が合うね俺たち」

 

「話が早くっていいね。そういうの君も好きなの?」

 

「ええ、人並みには。するなら場所を移しませんこと? ここでは人目についてしまうので」

 

その言葉に男たちは色めき立ち、狂三を囲う状態のまま、暗い路地裏に入っていく。

そして狂三を追い詰めるような格好になり、男が手を伸ばすが、手は段々と下に下がっていく。

 

「おい、どうしたん…」

仲間の一人がその事に気づき、男の方を見て始めて気づいた。

男の体が狂三の足元から広がり、伸びた影から白い手が男の体を影に引きずり込んでいる事に…

 

「ひっ…! な、なんなんだよっ! これは!」

 

「うわあああっ!!」

 

叫び声を上げるが全員の足元に白い手が伸びて、足元の影に引きずり込んでいった。

 

「近いうちにメインディシュが控えていますし、これぐらいにしておきますわ…それにわたくしの初めては彼に捧げる予定ですし…」

 

笑いながらお腹をさすっている狂三だったが、その狂三に近寄る人影があった…

 

 

「ふぅぅぅ…」

 

家に帰った蓮は深く息を吐いた。やはり、学校より家の方が落ち着けるのだ。

夕飯を何にしようか考えながら携帯の電源を入れると…

 

(あれ? 着信が一件?)

 

そう携帯の画面に映っていた。蓮は学校では携帯の電源は切っているので気が付かなかったようだ。

おそらく、折紙に電話が来た時と同じようなタイミングで着信が来たのだろう。

蓮は着信相手に電話をかけてみると…

 

『あっ、蓮。あんた、やっと出たわね』

 

「あれ?隊長さんじゃん。なんか用があったのか?」

 

なんと出てきたのは駐屯基地の隊長である燎子だった。

 

『こっちが電話したんなら早く出なさいよね。用事っていうか、今となっては報告ってところかしら。ついさっき終わったからね』

 

「で? その報告とは?」

 

『街に出現していた。〈ナイトメア〉の討伐が終了した。これが報告よ』

 

「はあ!?」

 

蓮のそんな声が家に響き渡った。

 

 

 

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