デート・ア・ライブ  the blue fate   作:小坂井

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あっという間に11月ですね。
時の流れが早くて、気がついたら老人になってそうな気がします。自分、学生ですけど


13話

「〈ナイトメア〉を討伐したってどういう事だよ!?」

 

さっきの報告の電話を受けた蓮はすぐに駐屯基地に向かった。この事の詳しい事情が気になったからだ。

隊長である燎子の部屋のドアを凄まじい勢いで開けたので中にいた燎子がとても驚いていた。

 

「そんなに力強く開けなくても大丈夫よ。どういう事って聞かれても…そのまんまの意味なんだけど…」

 

とても慌てている蓮を燎子はとても不思議そうに見ている。

 

「ちょっと前に部隊を編成して、街中にいた〈ナイトメア〉を討伐したの。あんたのクラスに転校して来たって聞いた時は驚いたけどこれでよかったじゃない」

 

「いや、それは……そうだよな…これでよかったんだよな…悪い、隊長さん急に押しかけて…」

 

「どうかしたの?あんたらしくないじゃない」

 

「いや、なんでも無いんだ…じゃあな」

 

そう言って蓮は部屋を出て行った。

 

 

(よく考えたら、隊長さんは正しい事をしただけなんだよな…)

 

蓮は自宅への帰り道を歩きながら思っていた。

狂三は…〈ナイトメア〉はどれほど危険な精霊なのかは蓮はよく分かっている。それをどうこう言うのは完全に蓮の私情だ。

燎子のしたことは間違っていない…むしろ正しい行いだというのに。

 

(しかし…これでまた最初からか…)

 

狂三は蓮の記憶の事を知っている様子だった、その狂三が死んでしまってはもう何も聞く事は出来ない。

『死人に口無し』とはよく言ったものだ。

 

(自分自身の事を知ることが出来るチャンスだと思ったんだが…)

 

人間、少しでも可能性が出てくると、たとえ一%でもその可能性に縋ってしまうものだ。

今の蓮にもやはり諦めきれない気持ちがあった。

 

(しっかりしろ。もう終わったことを悔やんでなんの意味があるんだ!)

 

自分にそう言い聞かせて蓮は歩いて行った…

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

次の日の学校。

時刻は八時三十分、教室内には聞き慣れたチャイムが鳴り響いている。朝のホームルームの時間だ。

蓮はチラリと狂三の席を見てみる。当たり前だが狂三は来ていない。死んだのだから(・・・・・・・)

 

「はい、皆さんおはよぉございます。じゃあ出席を取りますね」

 

出席簿を持ったタマちゃんが教壇に立って、出席を取り始める。

 

「時崎さーん」

 

狂三の名前を呼ぶが返事はない。

 

「あれ、時崎さんはお休みですか?もうっ、欠席する時はちゃんと連絡をくださいって言っておいたのに」

 

プンプンと怒って、狂三の所にペンを走らせようとした時、

 

「はい」

 

教室の後方のドアから返事が帰ってきた。

 

(なっ…!)

 

蓮は驚き、声が聞こえてきた方向に目を向けるとそこには狂三(・・)がいた。

 

「遅刻ですよ。時崎さん」

 

「申し訳ありません。少し用事があったので遅れてしまいましたの」

 

「遅れるなら連絡を下さいね」

 

「はい、覚えておきますわ」

 

そう言って狂三は自分の席に座る。

 

(な、なんで…あいつが…)

 

一瞬、戦闘隊員が狂三を殺した時、死んだか確認しなかったのではないかと思ったがその考えはすぐに捨てた。

戦いにおいて、殺した相手の死亡を確認するなんて基本中の基本だ。それを忘れるような奴が戦闘隊員になれるはずがない。

だとしたら、狂三は死亡した状態から蘇生したくらい考えしか今の蓮には浮かばなかった…

 

 

午後十二時二十分、四時間目の授業終了のチャイムが鳴り響き昼食の時間が始まる。

普段、士道は普段は昼食を食べるメンバーは十香、折紙、時々蓮というようになっているが朝のホームルームが終わった直後、昼休みになったら物理準備室に来るように言われているのでそこに向かわなければならない。

 

「ぬ? どこに行くのだ?シドー」

 

「悪い、今日はちょっと行く所があるんだ。先に食べててくれ」

 

十香にそう言って士道は廊下を走って物理準備室に向かって行った。

士道が教室を出て行ったのを確認し、折紙も死んだはずの狂三に話しかけてどこかに向かって行く。

そして、折紙が狂三を連れて教室を出て行った瞬間、席で寝ていた蓮がパチリと両目を開いた。

 

狂三を誰もいない屋上前の扉まで連れてきた折紙は相手の目を見て問い詰めた。

 

「あなたはなぜ生きているの。昨日、あなたは確かに死んだはず」

 

昨日、狂三を殺したのは真那だが折紙は狂三が逃げた時の為に周囲を固めていた。

あの時、狂三は真那によって確かに殺されたはずだった。

 

「ああ…ああ、あなたは昨日真那さんと一緒にいらっしゃった方ですの」

 

そう答えた狂三の顔は笑っていた(・・・・・)

 

「なっ…」

 

それを見た折紙は反射的に後ろに飛び退く。

だが、折紙の足元にまで伸びた狂三の影から白い手が生えてきて折紙を拘束する。

 

「これは…!」

 

「ふふふ…お一人で…しかもこんな人目のつかない場所まで、わたくしを連れてくるなんて少々迂闊過ぎるのでは?」

 

狂三から伸びた影は折紙の足元から壁に這い上がって行き、そこからまた白い手が生えてきて折紙を壁に磔にしてきた。

 

「ぐっ…あ、あなたは何が…目的」

 

喉を押さえ付けられながらも声を出す。この質問に狂三は唇の端を上げる

 

「学校というものに通ってみたかった…というのもありますが一番の目的は…」

 

「士道さんと()…ですわね」

 

士道の名前が出てきた事に折紙は驚いたが、狂三が言ったもう1人の存在にも驚愕した。

 

「わたくしは士道さんを手に入れるため…士道さんの力を手に入れるためわたくしはここまで来たんですわぁ」

 

狂三はとても興奮した様子で折紙に語りかけてくる。

 

「彼を…士道を…どうするつもり…」

 

「簡単ですのよ…士道さんはわたくしと一つに…わたくしが食べて差し上げるのですわ…彼は一体どんな味がするか…ああ、とても楽しみですわぁ…」

 

「じゃあ、あなたは士道以外の…もう一人もあなたの言う『食べる』つもり…なの」

 

狂三にそう聞いた途端、狂三の様子が急に変わった。

 

「いえいえ…彼は…蓮さんはそんな事したりしませんわよ…彼は特別(・・)ですから…」

 

急にウットリとした表情に変わり、頬が赤くなったのだ。

だが、今の折紙はそんな事より、狂三が出した名前の方に驚いた。

 

「なっ…なぜ神代 蓮が出てくるの」

 

「あら、あなたは蓮さんとお知り合いですの?…ああ、そういえば、彼、今はASTにいるのでしたわね。だったら折紙さんが知っていてもおかしくないですわね」

 

狂三は笑いながら折紙に近づいて身体に指を這わせてくる。

 

「蓮さんはわたくしにとって、とても特別な方ですの…それこそ、彼が今のわたくしの全て(・・・・・・・)…と言ってもいいほどに…」

 

この時の狂三は笑っていたがこの笑いはさっきまでとは違う… これだけが折紙には理解できる。

 

「折紙さん…あなた、すごくいいですわ…ああ、士道さんの前に折紙さんを先に頂くというのも…」

 

その言葉に折紙の背筋にゾッとしたものが走った。おそらく蛇に生きたまま呑み込まれるカエルも同じような気持ちなのだろう。

だが、その瞬間、折紙と狂三の間に割り込むように青い半透明な巨大な手(・・・・・・・・・・)が現れた。

 

手は狂三を掴み、そのまま後ろの壁に狂三に覆いかぶさるような形で拘束した。その結果、折紙とちょうど向かい合うようになる。

 

「っ!…これは…」

 

「 あらあら…か弱いわたくしに対して、少し乱暴過ぎるのではありませんか?蓮さん」

 

狂三は視線を階段下に向けた。折紙もそれにつられて下を見てみると、青い手…『バスター』を狂三に向けている蓮がいた。

 

「か弱い奴は少なくとも、影から手を出現させて相手を拘束したりは出来ないと思うぞ。…鳶一、大丈夫か?」

 

「神代 蓮…なぜここに」

 

この時、視線を狂三から折紙に変えた、この瞬間。

 

「フフフ…でも、このままではわたくしの体が…」

 

「壊れてしまいますわよぉ」

 

耳元(・・)からそう聞こえると同時に、首筋に生暖かい感覚が走った。

 

「なにっ!」

 

ほぼ反射的に後ろを振り向くと、そこには舌を少し出した狂三(・・)がいた。

この時、あの生暖かい感覚は首筋を舐められたのだと理解した。

 

「バカな! さっき拘束したはず…」

 

狂三を拘束した場所に目を向ける、しかしそこに狂三の姿はなく、ただ『バスター』が壁を押さえているだけだった。

 

「わたくしはここで失礼しますわ。まだお昼も食べておりませんので…折紙さんは次に会う時にはもっと美味しくなっててくださいまし…」

 

狂三はお辞儀をして折紙を拘束していた白い手を消した後、階段を降りて行った。そして狂三の姿が見えなくなると同時に蓮はその場に膝をついた。

 

(俺は…夢でも見ているのか…確かに拘束したはず…)

 

いっそのこと夢であった方がまだ納得出来る。それほど信じられない事であった。

だが、首筋に手に触れてみると手には狂三の唾液がついていた。これが夢ではないと語っている。

 

そして、何よりもゾッとした事は狂三が自分を殺す事が出来た状況(・・)だった。

あの時、蓮は完全に不意をつかれた。もし狂三に殺意があったら絶対に殺されていただろう。

今、蓮が生きているのは狂三の気まぐれのおかげだ。

 

「あなたと時崎 狂三はどのような関係なの」

 

声がした方に顔を向けるとそこには狂三から解放された折紙がいた。

 

「どんな関係ってどういう意味だ?」

 

「…質問を変える。あなたと時崎 狂三は仲間?」

 

「生憎、俺の友達に影から手を出せる奴はいないよ」

 

蓮の事をよく知らないが、この言葉に嘘をついている様には折紙には見えなかった。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「なんなんだよ…これは…」

 

昼休み、物理準備室に呼び出されてそこに向かうとそこには令音と琴里がいてある映像を見せてきた。

それは狭い路地裏での映像でそこには黒と血のように赤い色をした膜で出来たドレスのような霊装を身に纏った狂三と士道の妹を自称した少女…真那が映っていたのだ。

 

だが、真那の身体には白い機械の鎧…CRーユニットを装備していた。これは真那がASTに関わっている事を示している。

 

そして、真那の両肩から光の線が放たれたかと思うと狂三の腹を撃ち抜いた。

だが、狂三も反撃しようと何かしらの行動をしようとするが…それより先に真那は狂三に光の剣で攻撃してダウンさせた。

 

そして、真那は倒れている狂三の元に近寄ると、刃を狂三の首に突き立てて息の根を止めた。

しかし、真那はこの事に対して無関心…まるで道を歩いていて虫を踏み潰したかのように何も思っていなかったのだ。

 

「で、でも…狂三は今日、学校に…」

 

「それが分からないんだ。映像を見る限り、あれで生きている可能性は限りなく0%だ。考えられる事といったら…あの状態から蘇生した事はぐらいだろう」

 

令音が難しい顔をしながら士道に解説してきた。確かに、士道の目から見てもあれで生きているとは到底思えない。

 

「まあ、なんであろうと作戦は続行よ。相手からもグイグイ来てるし、明日、狂三をデートに誘ってキスして霊力を封印しちゃいなさい」

 

琴里が言ったこの言葉を一瞬士道は理解できなかった。

 

「え? でもこんな事が起こったのに…」

 

「こんな事態だからよ。狂三が生きている事は鳶一 折紙や真那にも知られているわ。もし、もう一度狂三が殺されたらもう生き返れない可能性を考えると、出来るだけ早い方がいいわ」

 

「うっ…確かに…それじゃあこの事を蓮に…」

 

伝えようと、物理準備室を出ようとした瞬間、

 

「待ちなさい。士道」

 

琴里が士道を引き止めてきた。

 

「なんだよ、琴里。何か問題でも…」

 

「今回の作戦は蓮に伝えないで。いや、狂三をデレさせるのに蓮は参加させないわ」」

 

「はぁっ!? なんでだよ!」

 

つまり、琴里は今回は蓮に作戦はもちろん、狂三に関する事を何も教えるな。と言い出したのだ。

 

「十香の時も四糸乃の時も、蓮がいてくれたから上手くいったようなもんなのに、なんで…」

 

「落ち着きなさい。これには理由があるの」

 

琴里は言い難そうな顔をしたの士道には分かった。どうやら琴里もこの決断をするのにだいぶ悩んだようだ。

 

「…ほんの僅かな可能性なんだけど…蓮が私たちより先に時崎 狂三と会っている(・・・・・)可能性があるわ…」

 

「なっ! それって…」

 

「そう…蓮は狂三と繋がっているかもしれないってこと」

 

その言葉に士道はまるで脳を揺さぶられたような感覚を感じた。確かに、狂三が来てから蓮の様子はおかしかったが。

琴里はそれからわずかでも裏切り(・・・)の可能性を感じたらしい。悲しいが僅かでも可能性があったら、疑わなければいけないのが琴里の立場だ。

 

「…あんまり彼女を責めないでやってほしい。琴里もとても悩んでいたんだ…そして、最終的には司令官としても判断を出したんだ」

 

令音が琴里をフォローする発言をする。だが、士道には琴里を見ればその事が十分理解出来た。

そして士道は悔しかった。違うと言い返せない事…そして、蓮を信じ切れない自分自身が…

 

 

 

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