デート・ア・ライブ  the blue fate   作:小坂井

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連続投稿の19話です!今回は戦闘描写が多くなってしまいました。自分の文章力を絞り尽くしたつもりなのですがどうでしょうか?


19話

仕方なしというような表情で両腕を構える蓮。しかし、先に動き出したのは琴里の方だった。

右腕の肘までを包み込む大砲のような砲口から熱炎の奔流が放たれて避ける暇すら与えずに蓮を呑み込んだ。

 

「蓮さんっ!!」

 

氷の壁に守られている狂三は凄まじい光に目を覆いながら悲痛の声を上げる。奔流が止んだ後、蓮がいた場所は煙に包まれていて無事かすら確認出来ない。

もしかして…そんな考えが狂三の脳裏に浮かんだ時、煙を裂くように何かがジャンプして飛び出してきた。

 

その正体は蓮であり、その手には身長よりも長い青色の槍が握られていた。この槍は〈ウィトリク〉の能力で空気中の水分を集め、槍の形に凝縮したものだ。その槍を空中でクルクルと回したあとそれを思いっきり琴里に向かって投擲した。

 

「ふんっ。なめられたものね!」

 

琴里は鼻で笑うと〈灼熱殲鬼(カマエル)〉を【(メギド)】から戦斧に変えて飛んでくる槍を叩き斬る。槍は当たった瞬間、バラバラに砕け散り空気に溶けるように消えていく。だが、蓮にとってそんなことはどうでもよく、むしろそうしてくれなければ困る(・・・・・・・・・・・・)

 

床に着地した蓮は一気に加速して琴里との距離を詰める。その途中、両腕の籠手が稼動し剣の柄のようなものが出てくる。それを左右の手で抜刀すると、長さ四十五センチほどの小さな刃が姿を現し、それで琴里に斬りつけようとするがその寸前で〈灼熱殲鬼(カマエル)〉とぶつかり刃は届かなかった。

だが、そんなことは構わない。この状況(・・)こそが目的だったからだ。

 

相手は遠距離の高火力の武器を持っているに対して自分は強力な遠距離の武器は持っていない。なので最初の目標は得意の近距離戦に持ち込むことが大切だった。そこで役に立ったのは先ほど投げた槍であり、それで琴里に近接武器を使用させる事が目的であった。

 

 

一応避けられる可能性もあったのだが、今の琴里の状態ではその確率は低いと考えていたし、相手は精霊なのでもしかしたらあれほどの破壊力の攻撃を連射してくることもありえたが幸いそんな事は無かった。

 

懐に潜り込む事に成功した蓮は二刀流の剣を駆使して琴里に連続で攻撃する。琴里も〈灼熱殲鬼(カマエル)〉でガードして、隙あらば反撃しようとするが短剣二本の攻撃の方が戦斧より速く、腕などに素早く切り傷を刻んでいく。蓮も攻撃を身体を駆使して避ける事により剣と戦斧の力比べになる事を避けている。

 

「くっ…切り裂けーー〈灼熱殲鬼(カマエル)!〉

 

自分が劣勢だと感じた琴里は戦斧を構えてそう吠える。その言葉に不吉な予感を感じ取り琴里の頭を踏み台に後方に大きくジャンプして身を引く。その直後、刃が何倍にも大きく膨れ上がった〈灼熱戦鬼(カマエル)〉が琴里の周囲を薙ぎ払う。もしあのままだったら真っ二つにされた挙句、焔で灰にされていたかもしれない。

 

(ふぅ…なんてギリギリな…。ん?あれは…)

 

小さく息を吐き出す蓮だったが、琴里の傷口から舐めるように噴き出す焔を見て目を細める。焔が通った所は完全に完治しており傷痕すら残っていない。

 

(小さな攻撃はいくら重ねても無意味ってことか…。なら…)

 

〈ウィトリク〉の近接武器はあくまでおまけのようなもので、本命は水を強化して攻撃できる力なのだがその能力もあの焔の前には有効とは思えない。他には〈トラウィス〉を使うという考えもあるのだが周りは住宅街が広がっているので誰かを巻き込んでしまう恐れがある。だとしたら残された武器は一つしかない。

 

〈ウィトリク〉を引っ込めて蓮は歩き出す。そして屋上の床に突き刺さった〈レッドクイーン〉の前で止まると剣の腹を凄まじい脚力で蹴飛ばして空中に弾き飛ばす。回転しながら落ちてくる剣を空中でキャッチして剣先を琴里に向けた。

 

(徹底的に叩くまでだ…)

 

「蓮、待ってくれ! 琴里は…」

 

それを見た士道が蓮に制止の声をかける。士道にとっては大切な妹が傷つく所をこれ以上見たくないし、この戦いも誰が勝利しても何もない無意味な戦いなのだ。だが、琴里はそう思ってないようで今も敵意を孕んだ瞳で睨みつけてくる。

 

「安心しろよ。俺は司令官殿を殺すつもりはないさ。この後聞かなきゃならない事がごまんとあるんでなッ!」

 

言い終わると同時に一気に加速して琴里との距離を再び詰めて斬りかかる。それに反応した琴里も〈灼熱殲鬼(カマエル)〉で振る。二つの武器の軌道は互いにぶつかり合うコースであったが剣に限らず物がぶつかった場合、よりスピードがあり、重量がある方が押し勝つのが現実だ。速さはほぼ互角だが、この勝負は蓮の方が不利だろう。

 

〈レッドクイーン〉も重い剣なのだが、〈灼熱殲鬼(カマエル)〉の戦斧ほどの重さには敵わないしスピードが同じとなるとやはり負けてしまうだろう。だが、『女王』はそれを覆す。

 

剣と戦斧がぶつかる瞬間、〈レッドクイーン〉のグリップを素早く捻る。すると剣からエンジン音らしき音と炎のようなものが噴き出して〈灼熱殲鬼(カマエル)〉を弾き飛ばした。〈灼熱殲鬼(カマエル)〉に手を取られた琴里の身体は隙だらけだ。

 

その後、コマのように身体を一回転させ、剣で琴里の腹部を捉えるときもう一度グリップを捻ってパワーとスピードを底上げると、琴里は屋上の端まで一気に吹き飛ばされる。

 

「これで…って、まだやるのか?」

 

あれほどのダメージを受けても腹部の傷口に焔を纏わせながら琴里は立ち上がる。その根性は呆れるほどのものだ。

 

「生憎、俺はそろそろ飽きてきたんでな…悪いが終わらせてもらう」

 

蓮の右手が青く光ると〈バスター〉を纏う。そして、何を考えているのか左手に持った〈レッドクイーン〉を床に突き刺して前に出てきて手招きをし出した。琴里を挑発しているのだ。

 

それを見た琴里は歯を噛み締めると猛獣のような声を出しながら一直線に突っ込んでくる。その反応を見て蓮はほくそ笑む。

灼熱殲鬼(カマエル)〉を力の限り振り、蓮を焼き払おうとするが、身体を僅かに動かし紙一重の差で回避する。攻撃が空振り隙だけを晒す琴里の喉を右手で掴むと、床に叩きつける。

 

そのまま力の限り琴里をぶん投げた。なぜか士道の方向へ(・・・・・・)

 

「え?」

 

いきなりの事に士道は理解出来ず、そのままボウリングのように衝突した兄妹は仲良く気を失った。

 

「悪い、士道。手が滑った」

 

謝っているとは思えない口調でそう言うと、狂三に向かって歩いていく。狂三を守った氷壁の前まで来ると壁をトンッと軽く叩くと壁は空気に消えるように消滅して姿を消す。

 

壁が完全に消滅するのを確認したら、右手の〈バスター〉を狂三に向かって差し出すと青い光が溢れて狂三の身体に吸い込まれていく。その光に触れた狂三は自分の身体に力が戻ってくるのを感じる。

 

「蓮さん…なぜわたくしを…」

 

「大人しくしてろって。すぐ終わる」

 

十秒程経過して光が治まった頃には狂三は完全に回復していたが、次の瞬間は蓮がいきなり倒れてきてしまい、狂三は慌てて抱え込むようにして支える。

 

「おおっと…悪いな、狂三。これをした後はいつもこうなるんだよ」

 

「 なぜこんなことを…あなたは…」

 

「しばらくすれば立てるようになるさ。それよりお前はすぐにここを離れた方がいい。ASTが向かってくると思うからここは危険になる」

 

それを聞いて狂三は蓮を丁寧に床に降ろし、ペコリとお辞儀をした後影に呑まれて消えていった。狂三が逃げたのを確認して小さく安堵の息を吐いて、〈バスター〉と〈レッドクイーン〉を引っ込め士道達を見る。二人はまだ気を失って床に倒れている。

 

(これは…少しやり過ぎたかな…」

 

自分でもそう思うのだが、あの時はなんだか身体中に力が溢れて止めようと思ってもなかなか止める事が出来なかった。おそらく琴里が精霊だと知ってある事(・・・)を聞けると思い興奮していたがからだと思うが、それだけが理由だろうかは分からない。

 

だが、もう過ぎた事だと思い、蓮はその疑問を捨てゆっくりとぎこちなく立ち上がった。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

夜十時、蓮は自分の家の寝室のベッドの上で仔猫を優しく撫でていた。

 

あの後、琴里、士道、十香は〈フラクシナス〉折紙、真那はASTに回収されたのを確認して仔猫の日用品を買った後ここに帰ってきた。できればすぐにでも会いに行きたい気持ちがあるのだが、今日一日で多くの事が起こり過ぎた為、会いにいくのは明日以降にすべきだと判断した。

 

だが、蓮の一日はまだ終わらないようだ。

 

「居るんだろ?狂三」

 

ベッドから降り、自分以外人影がない部屋にそう呼びかけた。すると電気も点けず月明かりだけが照らす部屋の中に真っ黒な影が現れて中から黒と赤の霊装を身につけた狂三が姿を現す。

 

「あらあら、なぜわたくしが居ると分かったのですの?」

 

「お前の性格から考えると、このまま放置ってのはないと思ってな。今日の夜にでもまた来ると思ったんだよ」

 

家の場所も知っているしな。と付け加えて説明する。狂三はそれを微笑みながら聞いている。この状況は前に狂三が夜に来たのとまったく同じだが蓮の心境はまったく違うというのが不思議な所だ。

蓮が説明を終えるとベッドの上に居た仔猫が狂三に気づいて鳴きながら足元へ擦り寄って来た。狂三が抱え上げるとペロペロと顔を舐め始める。

 

「ふふっ、くすぐったいですわ。この子は?」

 

「うちの飼い猫。捨て猫だったんだけどお前のおかげで出会えた。名前は『クルミ』からとって『ミルク』って名前だよ」

 

「わたくしのお名前とは、それはとっても嬉しいですわね」

 

狂三舐め続ける仔猫改めミルクを狂三から受け取った蓮は、寝室のドアを開けて外にミルクを外に出す。あとは勝手に自分の寝床があるリビングに行って眠るだろう。仔猫なのにとても賢いのだ。

 

「で? 何かあるからここに来たんだろ? 何をしに来たんだ?」

 

さっきまでの雰囲気から変わり、真剣な表情で言うと、狂三は歩き出して蓮のすぐ前で停止する。室内が月明かりだけなので表情がよく見えないがなんだか顔が赤い気がするのは気のせいだろうか。

 

「…実は昼間のお礼をしたくて参りましたの。この件で蓮さんに渡したいものがあるのですが…どうか受け取ってもらえますか?」

 

「え?まあ、もらえるものはもらう主義だが…」

 

「そうですか…ではわたくしが良いと言うまで目を瞑っていて欲しいですわ」

 

やや緊張気味に狂三は言うと、目を瞑っていて欲しいと頼んで来た。いきなりの頼みに疑問を持ったが、少なくとも至近距離で顔に銃弾を撃ち込まれることはなさそうなので言われた通りに目を瞑る。

 

それから三十秒ほどの時間が経ち、ただ渡すだけなのになぜこんなに時間が必要なのかが気になり始めた頃。

 

「…め、目を開いても構いませんよ…」

 

そう聞こえ、目を開いて狂三を見るがすぐに顔を別の方向に向けて目を逸らしてしまう結果になった。

 

その理由は目を開いた時、狂三は霊装を解いて一糸纏わない姿で目の前に居たからである。つい反射的に顔を逸らしたが一瞬だけ見た狂三の姿は網膜に完全に焼きついていて頭から離れない。

 

真っ白な肌が月明かりに照らされて幻想的な美しさを放ち、綺麗な曲線美のくびれ、そして恥ずかしい表情をしている狂三の人外とも言える容姿。このような状況は初めてというわけではないが相手といい、この見せ方といい不意打ちもいいところで、ついこんな反応をしてしまった。

 

「ど、どうしたんだ…いきなり…」

 

できる限り動揺を出さないように話すがそんな考えが無意味と言わんばかりに落ち着いて言葉が出てこない。当の狂三はその問いには答えず蓮の顔の両頬を両手で添えるように掴み、無理矢理正面に向かせると…

 

 

その唇にキスをしてきた(・・・・・・・)

 

「ーーーーーーーーッ!!」

 

突然の狂三の行動に目を見開いて驚くが、唇が塞がれている事と頭の中が混乱している事が重なり言葉がまったく出てこない。不思議なことに身体には力が入らず狂三のされるがままになりベッドに押し倒される。だが、数秒もすると蓮は目を閉じて狂三に身を委ねた。

 

それから一分以上の長いキスを終えて、唇を離れる頃には二人とも息が乱れていた。

 

「ハア…ハア…これがわたくしの渡したいもの…ですわ」

 

うっとりとした表情で言う狂三。その狂三を見て蓮は気になったことを問いた。

 

「狂三…なんでそんなに…俺にこだわるんだ…?いつから…こんなに思いを抱いたんだ?」

 

「それは…一目惚れ…だったと思いますわ…」

 

「一目惚れ?」

 

一目惚れ…特定の異性を見た時、夢中になる事だがそんな意味は蓮も知っている。分からない所はいつ(・・)一目惚れしたかだが、あの時の公園での出会いでは狂三は知っている口調だった。

 

「わたくしも女ですもの…一目惚れぐらいしてしまいますわよ」

 

狂三はベッドに倒れた蓮に抱きついて来る。狂三の柔らかい感触を感じながら静かに目を閉じる。初めての出会いは異常だったがたった今、それを覆して蓮も狂三を抱きしめる。

 

そして、この部屋に嬌声が響き渡ったのはこれから数分後であった。

 

 

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