デート・ア・ライブ  the blue fate   作:小坂井

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長らくお待たせして申し訳ありません。長い期間、停止していたこの小説ですが、少しづつ活動を再開していきたいと思います。


28話

それは自分の始まりとも言える出来事。

 

何年前の何月何日だったのかはよく覚えてはいない。しかし、その時の事はまるで昨日のように覚えている。

あの時、ベッドに座った自分をあの人(・・・)は微笑みながら見下ろしていた。

 

『君がこちらに来ると決断してくれて、私はとても嬉しいよ。そうなると、君には戸籍上の親と名前が必要だね。親はこちらで何とかするが、名前となると何がいいか…」

 

あの人は腕を組み、考えるような仕草をして唸る。そして、一分ほど経過した頃だろうか。腕を解いて、自分の頭を優しく撫で始めた。

 

『今日から君の名前は・・・・・・・だ。そして、私も君の家族の一人になろう』

 

その言葉に、自分は小さく…だが、確かに頷いた。

 

 

 

「…一体なんのつもりですか?」

 

風が吹き荒れる中、エレンの怒気を含んだ声が聞こえてくる。それを聞いてもなお、蓮は表情は変えずに倒れた十香を守るように立っていた。

 

「私の命令を拒否しただけでなく、邪魔までしてくるとは、遊びのつもりでも笑えませんね」

 

「…俺はただ、自分が正しいと思った事をしているだけですよ」

 

こうは言うがその中に緊張と恐怖が混ざっていることが伝わってくる。エレンは〈バンダースナッチ〉の間を通って蓮の前に立つ。

 

「やはり、アイクがあなたを外に出したのは失敗だったようです。あなたは普通の兵士として扱ってはいませんでしたが、『精霊と出会った時は容赦せずに殺せ』と教え込んだ筈はず。それすら忘れるとは…懐柔させられましたね!」

 

エレンは蓮に人間離れした脚力で一瞬で目の前まで移動すると、手に持ったレイザーブレイドを振り下ろす。しかし、蓮もとても人間とは思えない反射神経で反応し、〈レッドクイーン〉でブレイドを受け止める。

 

(くっ…相変わらず剣が重い…)

 

「ほう…外に出ても鍛錬を怠っていたわけではなさそうですね。ですが、それだけです!」

 

力任せにブレイドで押し切られて、数歩後退する。だが、そうなってもエレンに対して怯む事無く、すぐに反撃に向かう。

後退したことにより、開いた距離を一瞬で縮めエレンに斬りかかる。

 

「押されても向かってくる威勢は見事…しかし、剣筋が単純ですよ」

 

エレンの言葉に耳を傾けず、凄まじい速度で剣を振る。彼女相手に守備に徹していて勝てるほど甘くないと知っているからだ。その攻撃も腕だけ動かしてエレンは淡々と防ぐ。

 

「あなたは昔から防御より攻撃の方が好きでしたね。それでは…」

 

エレンがブレイドを振り上げると、〈レッドクイーン〉が弾かれ、地面に突き刺さる。剣は地面に刺さると光となり消滅する。それを見た士道は信じられないとばかりに目を見開いた。

 

「私には勝てません」

 

冷静にそう言うと、エレンは左足で強烈な回し蹴りを繰り出し、それは蓮の右脇腹を直撃する。随意領域(テリトリー)によって強化された蹴りは蓮を吹き飛ばして地を這わせる。

 

「〈バンダースナッチ〉隊。二人を回収してください。これだけの事をしたのですから、帰ったらそれなりの罰を受けてもらいます」

 

〈ペンドラゴン〉を解除したエレンはそう指示した後、腕を組み、二人に〈バンダースナッチ〉が群がっていくのを傍観する。

士道はそんな光景を見ている事しか出来ない。

 

「くそっ!てめえらそこをどけ!」

 

しかし、目の前に立ち塞がる〈バンダースナッチ〉は全く動かない。そうしている間にも十香の苦しそうな声が聞こえてきた。

 

(俺は…こんなにも無力なのか…)

 

精霊を救ってきた事による自惚れが心のどこかにあったのかもしれない。だが、そんなのはただの思い込みだった。

狂三の時もそうだ、あの時、士道は見ている事しか出来なかった。蓮が来なければ取り返しのつかない事になっていただろう。

 

そして今も蓮と十香がこんな危機的状況になっても何も出来ずにただ見ている事しか出来ない。それが無力で…歯痒く…とても悔しかった。

今だけで構わない。二人を助けられる力があればと強く願う。

 

「くっそおおおおおおおお!!」

 

次の瞬間、士道が右手を振り上げると、目の前にいた〈バンダースナッチ〉と延長線上にいる十香を抑えていた〈バンダースナッチ〉が切り裂かれて地面に倒れる。

 

突然起きた現象に驚きながらも士道は振り上げた右手に視線を向けると、光り輝く剣…十香の〈鏖殺公(サンダルフィン)〉と同じものが握られていた。

 

「これは…〈鏖殺公(サンダルフィン)〉…?」

 

「シ、ドー…?な、なぜシドーが〈鏖殺公(サンダルフィン)〉を…?」

 

〈バンダースナッチ〉が倒れた事により、士道の姿を見れるようになった十香も驚きの声を漏らす。だが、この中で一番動揺していたのは士道ではなく、エレンだった。

 

「それは天使…?なぜそんなものを…あなたは何者です…?」

 

「五河 士道…一応、人間のつもりだ…」

 

「…気が変わりました。あなたにも来てもらいましょうか」

 

さっきまでとは打って変わり、エレンは好奇の目で士道を見て、〈バンダースナッチ〉に指示を出す。二機の〈バンダースナッチ〉を破壊したとはいえ、他にも数機残っているうえに十香を簡単に倒したエレンもいる。まだ、助かったとは言えない状況だ。

 

その時、蓮を囲んでいた〈バンダースナッチ〉の間から青い光が漏れたかと思うと、まるで爆発でも起きたかのように吹き飛ばされた。その中心には右手に〈バスター〉を顕現させた蓮がいた。

 

すぐに状況を確認すると、一直線に十香のところに向かう。

 

「十香、絶対に立ち上がるな!」

 

地面に倒れている十香にそうとだけ言い、〈バンダースナッチ〉に突っ込んでいく。その途中、左手に炎が噴き出し、柄が繋がっている薙刀を形作る。炎と熱を操る剣、〈トナティウ〉だ。

 

素早く十香の元までたどり着くと、蓮は自分の身体をコマのように回転させ、剣の刃を全方位に届ける。当然、周囲に立っていた〈バンダースナッチ〉はその刃を受けるのだが、切られた箇所がまるで焼き切られたかのようにぼんやりとオレンジ色の傷痕を残し、火花を散らす事無く地面に倒れる。

 

「その力は…」

 

エレンが驚き、動きが止まっている隙に蓮は十香を立たせ手を掴むと士道の元へ走っていく。

 

「士道!今のうちにここを離れるぞ!」

 

「あ、ああ!」

 

この状況でエレンと戦うメリットは皆無だ。なら、急いでここを離れるのは当然の選択とも言える。三人は森の中へと走っていく。

不思議なことにエレンが追いかけてくることは無かった。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

森の中をしばらく走り、三人は足を止めた。後ろを確認するがやはりエレンが追いかけてはいなかった。ひとまず逃げ切れたと判断し、大きく息を吐いて気を緩める。

 

「くそっ…まさかあの人とこんな所で再会するとは…」

 

そんな中、蓮だけは今だに難しい顔をしていた。そんな蓮を見て、気になっていた事を聞いてみる。

 

「なあ、蓮はあのエレンさんと顔見知りらしい様子だが、どんな関係なんだ?」

 

それを聞いて蓮は悩むように三秒ほど天を仰ぐ。そして顔を士道に向けた時、その顔は見た事ないほど真剣な様子だった。

 

「…そうだな。こんな事に巻き込んでしまったんだ、二人には知る権利があるな…」

 

おそらく、エレンを呼び込んだのは自分が原因だろう。なら、事情も分からない二人はしっかり説明しなければならないだろう。エレンと自分の関係。そして、自分の本名を(・・・・・・)

 

「士道。前に今名乗っているこの名前が本名じゃないって話をしたのを覚えているか?」

 

「あ、ああ、確か、結構前にそんな事言っていたよな…」

 

「それを覚えているなら話は早い。十香もちゃんと聞いていてくれ。俺の本名は…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ジェイク・L(ロウ)・メイザース。あの人…エレン・メイザースは俺の義理の母親だ(・・・・・・・・)

 

 

 

 

 

 

 

「はああああああ!?」

 

開いた口が塞がらないとはまさにこの事だろう。その言葉の意味が分かるほど士道は驚愕していた。

 

「俺の本名は誰にも言うなよ。今まで通りに蓮って呼んでくれればいいから」

 

「は、母親って明らかに歳は俺たちと同じぐらいだったぞ!なのに母親って…」

 

「だから、戸籍上の関係だって言っているだろうが」

 

軽くパニック状態の士道にちゃんと分かりやすく説明する。一方、十香はというと…

 

「ジェ、ロウ、メザス?レンは随分と変わった名前なのだな」

 

頭の上に?マークを浮かべてた様子だ。そんな十香の頭を苦笑いしながら優しく撫でる。正直な話、別に名前は覚えてくれなくても構わないと思っている。大切なのは本名を話したという事実だけなのだ(・・・・・・・)

 

「でも…その、もし母親だったら気まずい関係にしちまったな…」

 

士道は申し訳なさそうな様子で言うが、蓮は特に気にしてないと言った様子だ。

 

「あの人とは親子の情なんてものは無いよ。だから、十香を守るため、あの人に剣を…殺意を向ける事が出来たんだ」

 

情なんてない。そう言えてしまう以上、義理という関係だけでない。蓮とエレンは普通の親子という関係とは何かが違うのだ(・・・・・・)。その言葉の重みに士道は息をのむ。

 

だが、凄まじい突風により、視線を空に向けられる。エレンの出現で忘れていたが、まだ耶具矢と夕弦の二人が空で相手を生かすための戦いを繰り広げている。

 

「どうする士道。二人は空にいる。これじゃ初めて会った時にみたいに勝負に割り込むことは不可能だ。何かが他の手を考える必要がある」

 

「他の手って言われても…そうだ!ここから二人の注意を向けることが出来れば、まだなんとかなるんじゃないか!?」

 

「なるほど、荒っぽいが、やる価値はあるか…」

 

そう言うと蓮の右手に光が集まり、〈鏖殺公(サンダルフィン)〉に似た剣。〈トラウィス〉が形成される。これならこの嵐の中、二人の注意を向けさせることが出来るだろう。

剣を構えて意識を集中させる。〈トラウィス〉が光り輝き、それを振ろうとしたその瞬間。

 

「ぐっ!」

 

「ど、どうしたのだレン!」

 

突如蓮の顔が苦痛に染まり、地面に膝をついてしまう。いきなりの出来事に十香が駆け寄ってくる。そして、右脇腹(・・・)を抑えているのを見てその理由を察した。

 

「はあ…本当に容赦ないなあの人は…。普通随意領域(テリトリー)で強化した蹴りを出してくるか…」

 

蓮は苦しげな表情の中、自虐気味にぎこちない笑みを浮かべる。エレンの蹴りにより、一番下の肋骨にヒビを入れ、身体に少なくないダメージを与えたようだ。これくらいには慣れているので重傷ではないが、〈トラウィス〉ほどの剣を振るうのは無理だろう。

 

「悪い、士道。バトンタッチだ。お前がその〈鏖殺公(サンダルフィン)〉で二人を止めるんだ」

 

「止めろって…さっきのは…」

 

〈バンダースナッチ〉を倒した時は無我夢中だったため、もう一度やれと言われても出来る自信など無かった。

 

「士道、お前がしたい事を強く願ってみろ。それは偽善だなんて誰にも言わせない絶対の思いだ」

 

「強く…願う…」

 

自身の手に握られている〈鏖殺公(サンダルフィン)〉を見つめてそう呟く。

蓮は今は振る事の出来ない自分の剣を〈鏖殺公(サンダルフィン)〉に向かって投げる。〈トラウィス〉はまるで磁石のように〈鏖殺公(サンダルフィン)〉に引かれ、一体化するように消滅する。

 

すると、〈鏖殺公(サンダルフィン)〉は〈トラウィス〉の力を取り込んだかのように大きく光り輝く。

 

「お、おい…一体何を…」

 

「十香、俺の事はいいから、士道を助けてやってくれ」

 

驚く士道を放置し、十香にそう頼み、蓮は近くの木の根元に座り込んで楽な姿勢をとる。今、大きな脱力感が身体を襲ってくるが、目を閉じず、士道と十香をジッと見つめる。

 

士道は十香に助けてもらうように〈殺公鏖(サンダルフィン)〉を二人で握り、雄叫びのような声とともに空へ振り下ろす。

その斬撃をなぞるように光が飛んでいき、風を裂き、耶具矢と夕弦を遮るように空へ向かい、雲を吹き飛ばし、隠れていた月を出現させる。

 

月の顔を出すと、光は役目を終えたとばかりに破裂し、小さな粒子へとなり雪のように周囲へと降り注ぐ。月が出ているのもあり、それはとても幻想的な光景だった。

 

あの二人もさすがにこれを無視する事は出来ないだろう。そう確信し、安心したような笑みを浮かべて蓮は目を閉じた。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「うっ…うう…」

 

苦しげな声を出して蓮は目を開ける。出来る限り身体を休ませるために目を瞑ったのだが、いつの間にか気を失っていたらしい。

目が覚め顔を上げると、十香の顔がアップで映っていた。

 

「おお!目が覚めたか。いつの間にか気を失っていたからビックリしてしまったぞ」

 

ホッとした顔の十香に支えられてゆっくりと立ち上がる。まだ身体は気だるいが動くのに支障はなさそうだ。まだボンヤリする頭を振って意識をしっかりさせる。

 

「すまないな十香。…士道と八舞姉妹はどこに行ったんだ」

 

周囲を見渡しても三人の姿が確認できない。それを疑問に思い、十香にそう聞くと、十香を待たせて士道は耶具矢と夕弦と共にどこかに行ってしまったという。

 

蓮は三人がどの方向に歩いて行ったか聞き、その向きに進んでみる。すると…

 

「う、うきゃぁぁ!」

 

耶具矢の悲鳴らしき声が聞こえ、その声がした場所に行ってみると、全裸の耶具矢と夕弦が手で胸元を隠し、その場にうずくまっており、士道は何やら慌てた様子だ。こんな森の中だから良かったものの、街中では間違いなく警察へGOとなっていただろう。

 

「これからお楽しみか?士道」

 

「蓮!?目が覚めたのかって…いや!違うんだこれは!」

 

事情は知っている相手に言い訳するのはおかしいだろというつっこみを心の中に止め、蓮は全裸となった耶具矢と夕弦の元へと歩いていく。二人も蓮の存在に気がついた様子だ。

 

「蓮、あんた気を失ってたから心配してたのよ」

 

「羞恥。恥ずかしいのであまり見ないでください」

 

蓮が二人に近づいたのは、この光景を脳に焼き付けるためではない。自分の両手が勝手に動き、二人の両肩に触れる。すると、今までと同じ、両腕を何かが登ってくる感覚を感じる。

 

「な、なによ…あん!この感覚…」

 

「恍…惚。んっ…あっ…」

 

勝手に動き、二人の肩に触れた手を無理やり引き離す。すると、その右手と左手に光が集まり、何かを形作る。

光が収まった時、その両手に手のひらに収まりきらない三つの刃を持った手裏剣らしき武器があった。

 

〈エカトル〉

 

風を操り、目標に自動で向かう投擲武器。風は刃だけでなく、別の目標に纏わせることも可能。

風を纏い、飛翔するその姿はまさに二つの小さな台風。

 

 

試しに両手の〈エカトル〉を投擲してみる。すると、四人を中心にまるで綺麗な円を描くように、木を切り倒しながら周りを一周する。

 

蓮の手に再び収まったと同時に切り倒した木が音を立てながら地面に倒れる。士道と耶具矢、夕弦はそれを目を丸くしながら見ていた。

 

「悪くない武器だな」

 

そう評価し、〈エカトル〉を光の粒子にして分解させる。その直後、ここに近づいてくる足音が聞こえた。誰かがここに歩いてきているのだ。

 

「むう…この辺りからなにやら大きな音が聞こえてきた気がするのだが…」

 

そう呟いて顔を見せたのは待っているはずの十香だ。そして、全裸の耶具矢と夕弦を見た途端、顔を真っ赤に染めた。

 

 

 

嵐の修学旅行の最終日。帰りの飛行機に乗るため生徒達はは空港に来ていた。お土産を買う生徒が見える中、蓮は頭を悩ませながら、空港内の椅子に座っていた。

 

「…DEMに十香の正体がばれたか。さて、どうしたもんか…」

 

正体を知ったのが普通の魔術師(ウィザード)だったらどうにかなったかもしれないが、相手がエレンというのが非常に都合が悪い。

もし、運命が実在するとしたら、ここが大きな分岐点となったのが想像出来る。

 

「レン!見てくれ!こんなものを買えたぞ!」

 

そんな思考は、十香の元気いっぱいの声で中断させられた。声のした方向を見るとそこにはたくさんの土産店の袋を持った十香がいた。

あれほどの体験をしたというのに全く気にしてないと言った様子だ。

 

「そうか…それは良かったな」

 

「レンは何を買っていくのだ?」

 

「そうだな…司令官殿にイナゴのつくだ煮でも買っていこうかな」

 

渡した途端、間違いなく絶叫が飛び出す土産を考えて十香と共に歩き出す。とりあえず、エレンの事は後で考えればいい。そう自分に言い聞かせて。

 

買い物を終え、クラスの集合場所に向かう途中、思わず二度見してしまった人物達と出会った。

 

「耶具矢と…夕弦?」

 

「発見。蓮を見つけました」

 

夕弦がそう言うと、耶具矢もそれに反応し蓮の前に立つ。二人は〈フラクシナス〉に収容されたはずなのだが、なぜここにいるのだろうか。

 

「この旅に最後まで付き合わなければ我らの面子も立たぬではないか」

 

笑いながら、まるで心を読んだかのように疑問に答える耶具矢。本人がそう言うのなら止める理由はないだろう。

 

「それに、我らがお主に聞きたい事があるのだ」

 

「聞きたいこと?」

 

「勧誘。蓮は夕弦達の共有財産になりませんか?」

 

夕弦の発言に思わず、はあ?と変な声を出してしまう。その言葉の意味を耶具矢は笑みを浮かべながら説明した。

 

「士道は我らにあれだけの事をした故にこの契約は拒む事は出来ぬ。だが、お主には尊敬から選択の権利を授ける。さあ、これを受け入れれば我ら二人が貴様を満たしてくれようぞ」

 

ここまでくると、怪しい宗教の勧誘に聞こえるのが不思議だ。その勧誘に蓮は首を横に振り、拒絶の意思を示す。

 

「残念ながら、オセロで自分に勝てない相手の下につくつもりはないな」

 

皮肉であり、高いハードルでもあるその条件に八舞姉妹の顔がギクッといった様子に歪む。そんな二人を微笑しながら横を通り過ぎていく。

その後、打倒蓮のため、二人がオセロの特訓に明け暮れたのは別の話である。

 

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