デート・ア・ライブ  the blue fate   作:小坂井

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連続投稿です。少しづつ溜まった原稿を消化していきたいと思っているので、応援をお願いしたします。


29話

「レンは一体どのような家に住んでいるのだ!?」

 

学校の終業式が終わり、明日から夏休みという浮かれた雰囲気の教室で十香に突然、そんな事を聞かれて思わず目を丸くした。

 

「いきなりどうしたんだ?十香に俺の家に興味を持たせるような事を言った記憶はないんだが…」

 

「あ、いや…その…もっとレンの事を知りたいと思ってな…。その…迷惑…だったか?」

 

恥ずかしそうにしながら上目遣いでこちらを見つめてくる十香。その破壊力は言葉に尽し難く、このような顔を向けられて『迷惑だ』と言える人間はそういないだろう。

 

だが、こんな時は士道が『あまり無理を言っちゃダメだ』などと保護者のような事を言ってくるかと思い、十香の後ろに立つ士道に視線を向けると頬をぽりぽりと掻きながら、頼むと言ってた視線を向けてくる。

本音を言うと、士道も蓮がどのような家に住んでいるのか興味があったのだ。

 

「どんな家に住んでいるんだって聞かれても、普通の家なんだが…。分かったよ、明日案内するから」

 

お許しが出て、十香は嬉しそうな表情を浮かべる。そこで蓮は何かを思いついたかのように『あっ!』と小さく声を出し、顔を士道へ向けた。

 

「そうだ。司令官殿、四糸乃、八舞達も誘っておいてくれ。明日、みんなでウチに泊まりに来いよ」

 

 

 

その日、士道は家に帰るとその事を四人に伝えたところ、全員即答で行くと答えた。蓮はあまり自分の事を話したりしないためこのような事ですらとても気になるらしい。それを考えると、彼が士道と十香に本名を教えたのはまさに信頼の証と言えるだろう。

全員が行くと決まると、それぞれ着替え等の準備をするように伝える。宿泊といっても泊まるのは一日だけなので荷物もそんなに重くならない。

 

明日の準備を整え、忘れ物がないのを確認した士道は自分の部屋のベッドに寝転んで天井を眺めていた。

脳裏に浮かぶのは修学旅行の時に遭遇したエレンという魔術師(ウィザード)とその息子である蓮の事だ。

 

「もしかして…あいつは分かっていたのか?自分がエレンに勝てない事を(・・・・・・)

 

圧倒的力を持つ精霊と対峙した時でさえ、余裕の表情をして冷静に相手の動きを読む蓮だが、あの時だけは明らかに動揺して様子が違った。

それにエレンの言動から、二人が戦ったのは初めてではなかったらしい。そして、蓮が負けるのも(・・・・・)

 

間違いない。蓮は自分の帰る場所を潰して士道と十香を守るってくれたのだ。

 

そこまでしてくれたというのに、士道はその恩をまともに返すことが出来ていなかった。だが、そんな事を一番辛いはずの蓮に言っても、ため息を一つして、『そんな事、お前が気にする事じゃない』と強がるかもしれない。

 

そんなのを想像して、士道は小さく笑うのだった。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

蓮の家は学校から士道の家の近くを通り少し歩いた場所にあった。下校中たまにそのまま士道の家に訪れる事があるのだが、学校からの距離として考えるとそこそこの距離だ。

 

士道の家を待ち合わせ場所として、荷物を持った六人(プラス一匹)は蓮に案内されて住宅街を進んでいく。

 

「琴里はどんな家に住んでいるのか知らないのか?」

 

談笑しながら進む中、士道は琴里にそんな質問をしてみた。琴里は〈フラクシナス〉の艦長、一応蓮の上司の関係のため、もしかしたら知っているのかと思ったのだが琴里は渋い顔をする。

 

「そりゃあ、調べようと思えば調べられたけど、私だって、無許可で他人のプライバシーに踏み込みたくないわよ。多分、知り合いの中であいつの家を知っているのは、四月に蓮を連れてきた神無月ぐらいじゃないかしら」

 

「じゃあ、どんな家だと思うんだ?」

 

「さあね。もしかしたら腰が抜けるぐらいの豪邸にでも住んでるんじゃない?」

 

考えずに明らかに適当といった様子で答える琴里を見て、士道は苦笑いを漏らす。学校から十五分ほど歩いただろうか、何回かの曲がり角を曲がった時、蓮は足を止めた。

 

「あれが俺の家。まあ普通の家だけどな」

 

そう指差す先には士道の家と比べて、二倍…いや三倍はあるであろう大きな家があった。その大きさゆえに周囲から浮き、異彩を放っている。『もしこれが普通なら、一般的な家はどうなるんだ』士道達は間違いなくそう思っただろう。

 

「ふ、ふん。我ら八舞を迎え入れるのに、は、恥じぬ大きさではないか」

 

「指摘。耶具矢、声が震えていますよ」

 

「ふぁ…とても大きいです…」

 

各面々が驚く中、蓮はそれを気にせず家の門を開けて士道達に入るように促す。別に悪い事をしているわけではないはずなのに、コソコソといった様子で門を通る六人を見て思わず苦笑いを浮かべる。

 

やはり、家の大きさに比例して庭もかなりの大きさだ。ここに住んでいる人間が一人だけと言うのだから驚きだ。

 

「別に泥棒じゃないんだからそんなにコソコソしなくてもいいぞ」

 

アドバイスらしき一言を言い、蓮は鍵を取り出し玄関のドアを開ける。開けた瞬間、士道達は木造の独特の香りを感じた。

イギリス出身と聞いていたので、洋風かと予想していたのだが日本独特の木造の作りらしい。

 

家の玄関からは木造りの長い廊下があり、その脇には複数のドアが見える。この見た目通り、部屋の数も普通の民家の何倍もあるだろう。

そして、ここにやってきた士道達を『ニャー』と声を出して出迎える、小さな同居者が姿を見せた。

 

「おお!猫ではないか!」

 

『あらら、ミルクちゃんじゃなーい。元気だったかなー?」

 

「知らない奴が多いと思うから紹介するよ。うちのペットのミルクだ。ちなみに女の子」

 

それを見た途端、十香が興奮したような声を出す。蓮は廊下をチョコチョコと歩いてきたミルクを抱えてまるで招き猫のように、右前脚をクイクイと動かす。その姿はとても愛くるしい。

 

「せっかくだから抱っこしてみるか?そんなに人見知りしないと思うから」

 

抱えたミルクを十香に優しく渡す。最初は緊張したような様子だったが、すぐに十香に慣れて顔をペロペロと舐め始めるとくすぐったそうにしながらも嬉しそうな顔をする。

 

「あら、素直で可愛いじゃない。飼い主とは大違いね」

 

「…まさか、司令官殿に言い返せない皮肉を言われる日が来るとは思わなかったな」

 

「人懐っこいんだな。俺にも抱っこさせてくれよ」

 

そんなに十香を見て、士道も撫でてみたくなりミルクを受け取る。士道の腕の中に収まった瞬間、ミルクはピクリと反応して士道の顔をジッと見つめる。何かと思い見つめ返すといきなりスッと腕の上で立ち上がると、士道の顔に猫パンチを叩き込んだ。

 

「うわっ!ちょっ!いきなりどうしたんだ!?」

 

強烈なパンチに目を瞑り、顔を背ける士道。両手で持っているため手でガードする事も出来ない、まさに一方的に殴られるサンドバッグ状態となっている。六発目のパンチが入ったと同時に蓮がミルクを士道の腕の中から抱き上げて救出する。

 

「いきなり嫌われたな。顔が気に入らなかったんじゃないか」

 

笑いをこらえながら言う蓮。顔を肉球マークだらけにした士道は、家に入ってすらいないというのにドッと疲労がのし掛かってくるのを感じた。

 

 

家に入った六人は、廊下を通り家のリビングまで案内された。リビングには人が五人は座れるであろうサイズのソファーが鎮座しており、その少し前には大きな存在感を放つ大型液晶テレビがあった。

部屋には別室に通じる入り口があり、暖簾(のれん)がかけられているのを見ると、恐らくキッチンに通じていると予想できた。

 

そして現在、士道、琴里、蓮は部屋にある六人まで座れる机に座ってコーヒーを飲み、四糸乃とよしのんはミルクと一緒にソファーに座りながら遊んでいた。そして、十香、耶具矢、夕弦はというと…。

 

「ぐぬぬ…、我を翻弄するとは、さすが夕弦と言っておくぞ…」

 

「嘲笑、このゲームの王はこの夕弦です。とう!特殊射撃でフィニッシュです」

 

「のわああああ!!」

 

耶具矢の変な声を上げると同時に、テレビの画面に『FINISH』と表示されて耶具矢の操っていたキャラが大爆発して消滅する。それを見て十香は次は自分の番だとせがんでいた。

そんな光景を眺めていると、向かいに座った士道が気になった疑問を聞いてきた。

 

「ええっと…記憶が曖昧なんだが、蓮は普段はゲームはしないって言ってたよな、なんでこんなにゲーム機があるんだ?」

 

四月、精霊攻略のために恋愛ゲームで訓練した時、『普段はゲームはしない』と言っていたのを思い出す。だというのに十香達がしているゲームを含めて四機ほど、テレビがある台に置いてあるのが見える。しかも全て最新型だ。

 

「これ全部送られてきたものだから買ったわけじゃないから」

 

「送られてきた?一体誰から?」

 

「いろいろな奴から」

 

答えになっていない回答に士道の頭上に?が浮かぶ。すると、さっきから腕を組んで考えるような仕草をしていた琴里から質問が飛んでくる。

 

「この家、随分立派じゃない。この家を建設する時のローンとかは今も払ってるのかしら?」

 

「いんや、ローンは一括払いで全部払った。借金があるっていうのはあまり気分がいいもんじゃないから」

 

士道は驚きのあまり『一括払い!?』と思わずオウム返しをしてしまったが、琴里は驚きの声を出さず、次の質問をしてくる。

 

「これは失礼を承知で聞くんだけど…あんた個人の総資産額ってどのくらいか教えてくれないかしら」

 

「お、おい…琴里、さっきはプライバシーとか言ってなかったか…」

 

大きく踏み込んだ質問に士道は戸惑いの声を出すが、蓮はこの質問で琴里が何を狙っているのかがなんとなく分かった。『家に来た』というイベントを機に出来る限り自分の事を聞き出そうという考えなのだろう。

この質問にはどうとでも答える事は可能だが、嘘をつく理由がない。

 

「総資産…つまりこの家にどれくらいのお金があるかっていう意味か。どのくらいあったかな…」

 

そう言いながら、そばにあった家具の引き出しから貯金通帳を取り出して琴里達に渡す。通帳のページを開けた瞬間、士道の顔が驚愕に染まり、琴里が目を見開いた。

 

「まさかと思うんだけど…これ、作り物じゃないわよね」

 

「そんなわけないだろ。それでどれくらいあったんだ?」

 

蓮自身も普段から通帳の残高など把握してないので琴里達が見ているのを覗き見る。そこには数えているとつい数え間違ってしまうほどのゼロが並んでおり、これが二人のリアクションの理由なのだろう。

 

「ふーん。まあ、そこらにしまってあったものだとこれぐらいの金額か」

 

「いやいやいや!こんな大切なものそんな不用心な場所に置いてあったらダメだろ!」

 

「DEMって、こんなに給料が貰える会社だったかしら…」

 

これほどのものを泥棒に警戒することなく、無防備な場所にしまってあった蓮に士道から説教が飛んでくる。そんな時…

 

「決闘、蓮このゲームで夕弦と勝負です。夕弦が勝ったら蓮には眷属となってもらいます」

 

「へえ、俺に勝負を挑むとはいい度胸だ」

 

夕弦とのゲーム対決という建前でそれから逃げ出す。士道はやはり蓮は自分たちとは価値観などが大きくズレているのを再確認させられるのであった。

 

 

 

「極限の希望をくれてやるッ!」

 

「悲鳴、きゃあああ」

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

ゲームで一通り遊んだ後、六人を寝室まで案内した。この家には一人しか住んでいないため当然ながら部屋は空きまくっている。

この家にはベッドが複数ある寝室があるため、十香、四糸乃、琴里。耶具矢、夕弦という部屋割りとなった。

 

 

そして午後六時半、良い子も悪い子も空腹で腹の虫が暴動を起こす時間だ。当然だが、料理を作るのは蓮だ。

その際、この人数のため夕飯を作るのを手伝うと言ったのだが、『客人に料理を作らせるのは失礼だ。テレビでも見ててくれ』とい言われて断られた。

そして、リビングにあったの暖簾(のれん)の掛けてあった部屋に蓮が消えて十五分後…。あたりに食欲をそそる香りが漂い始めた。

 

「よーし、出来たぞ。この人数だから少し時間がかかったが」

 

そう言って机に置いた皿には薄黄色に染まり、卵、肉などが混ざったチャーハンが盛り付けてあった。香りの正体はこれだったらしい。

 

『い、いただきます…』

 

そのチャーハンから感じる不思議なオーラに戸惑いながら、レンゲを取り口に運ぶ。その瞬間、一同は『美味しい』という感想を言う前に二口目を口に運んでいた(・・・・・・・・・・・)

 

「う、うまい…なんだこのチャーハン…」

 

「お、美味しいです…」

 

「美味、手が止まりません」

 

一心不乱に食べる六人を見て、満足そうな顔をする蓮。先に言っておくが料理に高級食材を使用したとか、とても高い器具を使用したなどというわけではない。どこにでもある食材と器具を使って良い料理を作るのが立派なのだ。

 

ほはわひぃだぁ(おかわりだぁ)!」

 

一番最初にお代わりを要求したのは十香だった。ただ、まるでハムスターのように口の中いっぱいにチャーハンを詰め込んだため顔が面白いことになってしまっている。

 

「はいはい、まだまだたくさんあるから、落ち着いて食べて大丈夫だぞ」

 

笑いながらそう言って、蓮は十香の皿を持ってキッチンに消えていった。

 

 

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