デート・ア・ライブ  the blue fate   作:小坂井

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4話

「精霊を救う…か」

 

〈フラクシナス〉から帰って夕飯を食べ終わり、ベッドに寝っ転がった蓮は静かに呟いた。

別に〈フラクシナス〉に入った事を後悔しているわけでは無い。

しかし蓮はASTに行く事がもう決まっている。 ASTと〈フラクシナス〉… 精霊を殺す組織と救う組織…

この真逆の目的を持つ二つの組織に蓮は身を置いた。普段の自分ならこんな状況には絶対にしないはずなのに…

 

「でもまあ、やることは決まっている…」

 

蓮は精霊を恨んでいるわけでは無い、救える可能性があるなら救ってやりたい程度の気持ちは持っている。

だからと言ってASTの仕事を放り出すつもりもない。 ASTだって精霊に殺される覚悟があって戦っているし、戦う理由もあるのだろう。

だが〈フラクシナス〉に入ったのは精霊を救う事だけが目的では無い。

 

「あの時の"感覚"が何か、分かるかも知れないな…」

 

精霊から感じた自分を呼ぶような感覚…蓮はあの感じが気になっていた。

ASTでは自分は戦闘部隊に加えられることは無いだろう。そもそも実戦部隊に入れられるなら"あの人"は裏に手を回して自分の存在を隠したりなどしない。

だから精霊と直接接触できる〈フラクシナス〉は蓮にとって都合が良かった。

 

(ゆっくり…ゆっくりと知って行けばいい…自分の事も"この感覚の正体"も…」

 

そう思いながら、蓮は目を閉じて睡魔に身を委ねた…

 

 

 

次の日、蓮は少し早めに学校に来ていた。 理由は特にない、だだ少し早めに目が覚めてしまい二度寝する気にもならなかったからだ。

 

(こんな早くじゃ誰もいないか…)

 

そう思いながら教室のドアを開けると教室内には一つだけ人影があった…鳶一 折紙だ。

折紙は厚い技術書から顔を上げて蓮を見ると、目を細めた。

蓮は折紙を気にした様子もなく自分の席に着く。しばらくすると技術書を置き、蓮の席に近づいてきた。

 

「何か用か?」

 

蓮は少し喧嘩腰で話しかける。 しかし折紙は無表情で落ち着いた声で話し出す。

 

「あなたは昨日精霊と戦っていた」

 

「精霊ってなんだ?」

 

「誤魔化しはしなくていい…あなたが昨日戦っていた所を見た」

 

「見た、と言うことはお前、ASTか?」

 

折紙はコクン、と頷く。

 

「あなたはあの精霊と互角に戦っていた…あなたは何者なの?」

 

「ここで言う必要はねえよ。 まあ、すぐに分かるさ…」

 

そう言うともう何も言う気はない、とばかりに本を読み出した。

折紙はその姿を睨みつけた後、自分の席に帰る。

 

「私の目的は精霊を殺すこと…もしあなたも精霊なら容赦はしない…」

 

蓮に背を向けた状態で話す。

 

「いい目標じゃないか。 応援してるよ」

 

皮肉のような言い方で蓮は言った。折紙はその言葉を背中で聞きながら席に帰っていく。

 

(精霊を殺す…か)

 

街を守るのではなく彼女は殺すと言った。 おそらく彼女は過去に精霊によって何かを奪われたのだろう。

しかし蓮にとってはその恨みさえも羨ましかった。

 

(過去にこだわる事が出来るお前が羨ましいよ…)

 

この気持ちは過去の記憶がない、蓮だけにしか分からないが気持ちであった…

 

 

学校の授業を寝て過ごして、放課後、蓮は先生に呼び出されていた。

 

(その呼び出し場所がなんで物理準備室なんだ?)

 

別に何かをやらかした記憶はない。 しかし呼び出しとなれば無視は出来ない。

物理準備室のドアを開けると、そこには士道、琴里、令音がいた。

 

「あれ? 司令官殿じゃん なんでうちの高校にいるんだ?」

 

「士道の訓練のため来たのよ。 ほら、あんたも早く座りなさい」

 

そう言うので蓮は傍にあった椅子に腰を落とす。そして一緒にいた令音に話しかける。

 

「てゆうか、なんであんたまでいるの?」

 

「そういえば言ってなかったね…ここに先生として来たんだ。 教科は物理で二年四組の副担任の兼任する…」

 

「前にいた先生はどうなったの?」

 

「彼は遠い所に行ってしまったよ…とても遠い所へ…」

 

「ふーん」

 

蓮は去年、テスト以外学校に来ていない。 なので前にいた物理の先生の名前どころか顔すら知らないのでどうなろうと興味はない。

 

「で? さっきから気になってたんだけど、このモニターはなんなの?」

 

「士道の訓練に必要なのよ。あんたも精霊と会う可能性があるから訓練を受けろとまでは言わないけど見学ぐらいしておきなさい。」

 

「まあ、少しだけなら」

 

時計を見ながら蓮は言う。

 

「…ちなみに君は女性と交際したことはあるかい? …シンはないらしいが…」

 

「シンって士道の事か? てゆうかお前、付き合ったことないのかよ」

 

「べ、別にいいだろ」

 

士道は悔しそうにしながら言った。

 

「じゃあお前はどうなんだよ? 付き合ったことあるのか?」

 

「俺も交際したことはない」

 

「なんだ…お前もかよ…」

 

その言葉を聞いた途端、安心したような顔をした。人間は自分と同じ状態の人間を見ると安心する心理が働いたのだろう。

 

「でも、体だけの関係を求められた事なら何度かある」

 

「は…」

 

安心した顔が急にポカンとした顔に変わった。

 

「抱いてくれって何回か言われたんだよ」

 

「え…それって何回ぐらい…?」

 

「何回ぐらいだったっけ? 五回から先は数えてないからな」

 

「ご、五回…」

 

蓮は少なくとも片手の指の本数以上は言われていたのだ。

 

「それで…誘いに乗ったのか?」

 

「これから先は言えないな。 俺のプライベートの関わる話だからな」

 

さっきまで安心していた自分が恥ずかしくなる。 蓮は自分のレベルのはるか高みにいたのだ。

 

「ほら、士道、しっかりしなさい 訓練を始めるわよ」

 

琴里は喝を入れるため、士道の座っているイスを蹴る。

 

「あ、ああ… そうだな…」

 

まだショックが抜け切らないが心を立ち直す。

冷音は机の上にあるモニターの電源を押す。すると可愛らしい美少女達が次々映され、『恋してマイ・リトル・シドー』と表示された。

 

「ギャルゲーかよっ!」

 

「こんなのが訓練になるのか?」

 

「そう言わないでくれ。 これはあくまで訓練の第一段階さ…それに〈フラクシナス〉総監修のもので現実に起こりうるシチュエーションをリアルに再現している。 心構えぐらいにはなるだろう。 ちなみに君はゲームは好きか?」

 

「別に嫌いって訳じゃないけど、普段はやらないかな」

 

こんな会話をしている間にも士道は画面を進めていた。

 

『おはよう、お兄ちゃん! 今日もいい天気だね』

 

そんな台詞と同時に画面にCG シーンが表示され、妹キャラらしき人物がパンツ丸見えの状態で寝ている主人公を踏んでいた。

 

「ねーーーーーよ!!」

 

士道が絶叫のような声をあげた。

 

「そうかね? 結構ありそうなんだが…」

 

「こんな事が現実である…わ…け…」

 

士道の声がだんだん小さくなっていき、ゲームに顔を戻した。

 

「もしかして本当にあったのか?」

 

質問するが士道は答えない。そして画面の真ん中に文字が現れる。

 

「これ、なに?」

 

「選択肢よ、そこから1つ選んでいくの、それによって好感度が上下するの」

 

そういい画面の右下を指すと、そこにはゼロの位置にカーソルがついたメーターらしきものがあった。

 

そしてその選択肢が…

 

一、『おはよう。愛してるよリリコ』愛を込めて妹を抱きしめる。

 

二、『起きたよ。ていうか思わずおっきしちゃったよ」妹をベットに引きずり込む

 

三、『かかったな、アホが!』踏んでいる妹の足を取り、アキレス腱固めにする

 

どれも正気とは思えない。

 

「って、なんだよこの選択肢は!!」

 

士道が大きくツッコミをいれる。

 

「これ、三番選んだら首から上以外の全身凍らされて、バラバラになるとかないの?」

 

「ないわよ、ていうかどこの吸血鬼よ、それ」

 

隣で蓮と琴里がなにか話しているが、士道の耳には入って来ない。

 

「そうそう、制限時間があるから早くした方がいいわよ」

 

「くそ、仕方ねえ」

 

士道は一番まともそうな一を選択する。

 

『おはよう。愛してるよリリコ』

 

俺はリリコを、愛を込めて抱きしめた。

すると、リリコは途端に顔を侮蔑の色に染め、俺を突き飛ばしてきた。

 

『え…ちょっと、何、やめてくれない? キモいんだけど』

 

好感度メーターが一気にマイナス五十まで下がる。

 

「リアルだったーー!」

 

「あらあら…」

 

「馬鹿ね。いくら妹でも、いきなり抱きつかれたらそうなるに決まっているじゃない。 もし本番だったら士道のお腹には綺麗な風穴が空いてるわよ」

 

そう言いながら、琴里は自分の目の前に置かれた液晶ディスプレイを点滅させる。

 

「なにしてんの? 司令官」

 

「訓練とはいえ、少しは緊張感を持ってもらわないとね」

 

その画面には来禅高校の昇降口が映され、さらに制服を着たおっさんがカメラ目線で立っている。

 

「あれ? そこってうちの高校の昇降口? ていうか、そのおっさんだれ?」

 

「うちのクルーよ」

 

琴里はどこからかマイクのようなものを出して話しかける。

 

『私よ。 士道が選択に失敗したわ。やってちょうだい」

 

画面の中の男は敬礼すると、懐から一枚の紙を取り出しそれをカメラに見せてくる。

 

「こ、これは…」

 

「なにこれ? 『腐食した世界に捧ぐエチュード』… なにこの、だせぇタイトル…」

 

「ぎゃあああああ!!」

 

「お前のかよ…で? こんなのどうすんの?」

 

「まあ、見てなさい」

 

なんとその紙を折りたたみ、適当な下駄箱に放り込んだ。 つまり、明日来た生徒が見てしまう事になる。

 

「うわ…これはエグいな…」

 

「なにすんだよ! 琴里!」

 

「うるさいわよ士道。 精霊に対して対応を間違えたらこんなもんじゃ済まないのよ。 私たちにだって被害が来るんだから、なのでペナルティを設定させてもらったわよ」

 

「おい士道、司令官は本当にお前の妹か? こんなこと兄にすることとは思えないぞ」

 

「それでも…俺の妹…なんだよ…」

 

士道は泣きそうな顔になりながら答える。

 

「その選択肢って他を選ぶとどうなってたんだ?」

 

「気になるならやってみればいいじゃない。 じゃあ一回セーブして…」

 

セーブした後、ゲームをリセットしてさっきのシーンに戻る。

士道は悩んでいた様子だったが3番は論外として仕方なしに二番を選んだ。

 

すると主人公は嫌がる妹に襲いかかり、泣き崩れる妹と父親に殴られる主人公が映され、そしてカチャリと手錠の音の次に暗い部屋で一人笑う主人公のCGシーンが表示され、悲しげな音楽とスタッフロールが流れ始める。

 

「なんじゃこりゃぁぁぁッ!」

 

「いきなりそんなことしたらそうなるに決まってるじゃないこの性犯罪者」

 

「ま、まあ ある意味正しい結果なのかもしれないな…」

 

蓮は苦笑いしながら言ってくる。

 

「じゃあ、三番が正解だってのかよ!!」

 

またリセットして三番を選んでみる。

するとアキレス腱固めをしようとしたが、妹に逆にサソリ固めをかけられその怪我が原因で一生車椅子での生活を余儀なくされてエンディングを迎えた。

 

「明らかにおかしいだろこれ! 蓮もそう思うよな!?」

 

「そうだな、サソリ固めされて半身不随は大げさだろ」

 

「ふむ…そうかね? じゃあ骨折ぐらいに修正しておくか…」

 

「そこじゃねえよ!!」

 

この空間で士道の味方は一人もいなかった…

 

「じゃあこれ、結局どうすれば正解だったんだよ」

 

「まったく、最後は出題者に答えるを聞くの? 情けないわね」

 

士道からコントローラーを奪うと、リセットしてさっきの所まで進める。

しかし琴里はなにもせずに見ているだけだ。

 

「…? なにしてんだ? 早く選ばないと…」

 

そう言った瞬間、制限時間が0になる。

 

『ん…あと十分…』

 

『だめー!ちゃんと起きるのー!』

 

 

なんと普通に会話が進んでいく。まさかの"なにもしない"が正解だったのだ。

 

「な…」

 

「なんという初見殺しのゲーム…」

 

「あんなおかしな選択肢選ぶなんて、おかしいんじゃないの?」

 

ここまでくると逆に感心してきてしまう。

 

「あ! そろそろ行かなきゃ…」

 

蓮は時計を見て言い出した。

 

「なにか予定でもあるの?」

 

「まあ、ちょいと"仕事"があってな…」

 

そう言い、物理準備室を出る。 するとまた士道の絶叫が聞こえてくる。

 

(また間違えたんだな…あいつ…)

 

そう確信しながら、蓮は学校を出て行った。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「今日は諸君に喜ばしい報告があるわ!!」

 

ASTの駐屯地で日下部 燎子は目の前にいる全ての隊員に大声で言った。

 

「最近、空間震が多いでしょ? だから上の連中にに増員の要請がしたっていう事は前に話したわね? それが了承されて今日、新しいメンバーが来たわよ!」

 

その言葉を聞いた途端、他の隊員はざわざわ、と騒ぎ出す。しかし折紙だけ無表情で浮かれている様子はない。

 

「隊長! どんな人ですか?」

 

「ふふふ… あんた達、期待していいわよ」

 

その質問に燎子は得意気に答える。

 

「じゃあ入ってきて」

 

燎子がそう言うとドアが開き、人が入ってきた。その姿を見た瞬間、折紙は驚いた。

入ってきたのは白い髪と蒼い目、そして綺麗な肌をして常装服である緑の服を着た。折紙と同じくらいの青年… 蓮であった。

蓮は燎子の隣に立つと、全員に自己紹介をした。

 

「増員として来た 神代 蓮だ! 整備類を担当させてもらうからよろしく!」

 

元気良く笑顔で話した。

 

「あれ、若くない?しかもカッコいい…」

 

「あんな歳で整備を担当するの? どう見たって折紙と同じぐらいじゃあ…」

 

「あんな若さで仕事が出来るの?」

 

やはり隊員は蓮の若さに驚いている。

 

「それじゃあ俺はこれで…まだやるべきこともあるのでね…」

 

そう言って、部屋の出口に歩いていく。

 

「あ、そうそう もし怪我をしたりCRーユニットが壊れたら、俺の所に来てくれ。 タイムマシンに入れたみたいに元に戻してやるよ」

 

途中でそう言い残して、部屋を出て行く。 それと同時に折紙がそれを追いかけるように出て行った。

 

「隊長! さっきの蓮…とか言う子の階級はなんなんですか?」

 

またまた質問が出てきた。

 

「それがね、私にも分かんないのよ」

 

この言葉に隊員は頭の上に?マークを浮かべた。

 

「上の連中はどうしても教えてくれないの。 ただ、『階級なんか気にせずに自由に使っていい』って言ってただけ」

 

「隊長! 本当に自由に使っていいんですか!?」

 

「あ、もちろん常識の範囲でって意味よ」

 

「…チィ」

 

隊員は悔しそうに舌打ちをした。

 

 

「まって。 あなたがなぜここにいるの?」

 

通路を歩いていた蓮は、後ろからの声に立ち止まる。 そこには折紙がいた。

 

「なぜって 増員の要請を受けて来たってさっきの言っただろ? これはしっかり正式の手続きを通してあるぞ」

 

「だったらなぜあなたは整備士なの? あれだけの力があったら精霊を殺せるはず」

 

「勘違いして欲しくないんだが、必ず精霊を殺せるとも限らないぞ。 殺した実績があるわけじゃない」

 

蓮はこの力で精霊を殺せると過信したこともないし、殺そうと思ったことも一度もなかった。

 

「それでも、私からみたらあなたは羨ましく見える…」

 

「"羨ましく見える"…か… 俺もだよ…」

 

最後は小さく呟くように言ったため、折紙には聞こえなかった。

 

「まあ、お前がどう言おうと俺は部隊には入らない。 その代わり整備をさせてもらうから、よろしく "鳶一折紙一曽"」

 

そう言って手を出して来た。 握手したいと言うことなんだろう。

 

「・・・・・」

 

しかし折紙はその手を握ろうとしない。

 

「別に、いきなり信用しろ…なんて言う気はないよ。ゆっくり信用してくれればいいさ」

 

その言葉を聞いて折紙は気が乗らないが手を握る。 それを蓮は微笑みながら見ていた。

 

 

 




ネタを入れてもなんだか空回りしてしまうような気がします・・

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