デート・ア・ライブ  the blue fate   作:小坂井

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40話

暗い空間だった…。

 

まるで無限に続くと思ってしまうほどに底が見えない暗い空間を、ゆっくりと引きずり込まれるかのように落ちていた。そんな空間を虚ろな目で見つめていた蓮は直感的に感じた。これが"死"というものなのだと。

先の見えない闇に無限に沈んでいく、そこには言葉に出来ない冷たさがある。

 

自分はこのまま無限に落ちていくとまるで他人事のように考えた時、一面が闇なのにも関わらずあるものが目に入った。それは自分の方に漂ってくる"日本刀"だった。

鍔の色は金色で、白色の柄と見た感じでは特に目立つような印象はないが、その刀に魂を引かれるような感覚を感じ、力なく右腕を刀に向けて伸ばす。

 

すると、刀はまるで磁石のように右腕に引かれて手の中に収まる。その瞬間、闇すらも塗り潰すほどの青白い光が空間を支配した。

 

 

「司令!観測器が新たな霊力反応を捉えました!!」

 

霊結昌(セフィラ)の反転の事で手一杯だというのに…今度は何よ!?」

 

「それが…データにない新たなパターンです!出処は…っ!士道君達がいる建物の屋上から…!」

 

「何ですって…!まさか、これがウッドマン卿が言っていた…」

 

琴里はある確信を得て、拳を強く握りしめた。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「これで終わりだ…人間!」

 

空に浮かぶ十香は士道を見下ろしながら冷たい声でそう言う。その手には〈暴虐公(ナヘマー)〉が変貌し、さらに禍々しい姿となった【終焉の剣(ペイヴァーシュヘレヴ)】が握られ、振り上げられている。

 

「美九!俺から離れろ!逃げるんだ!」

 

士道がそう言っても美九は十香に背を向け、士道を守るように抱きしめて離れない。美九には霊装があるが、そんなものはあの剣の前にはなんの役にも立たないだろう。それでも美九は十香を救ってほしいと心から願った。

 

その時、美九は視界の端に青い光が見えた。こんな状況だ、自分は幻覚を見ているのかと思ったがその光はどんどん強さを増していく。光の光源は倒れた蓮の身体(・・・・・・・)だった。

倒れた身体から青い光が放たれて、この場を照らしている。

 

「蓮の身体が…何が起こってるんだ…?」

 

士道もそれに気がつき、疑問の声を出す。すると、倒れていた蓮がゆっくりと動きその場に立ち上がった。

 

士道は蓮が目覚めた事を喜びたかったが、その様子が明らかにおかしい。立ち上がったものの、足取りはゾンビのようにフラフラとしており、顔は俯いていて見えないが腹部に穴が空いて、出血しているというのに苦痛の声も出さないのは普通ではない。

 

「貴様…まだ生きていたか…」

 

この闇夜の中だ、士道と美九が気づいたように十香も気がつく。それに士道はハッとなり、声を出す。

 

「蓮!早く逃げろ!」

 

「ーーーーー!」

 

声が出せない美九だったが、もし声が出てたなら士道と同じような事を叫んでいただろう。男に逃げろと言うなど、少し前の美九なら絶対にしなかった行動だ。

 

「・・・・・・」

 

士道がいくら叫ぼうとまるで聞こえてないかのように反応しない。そうしてる間にも、【終焉の剣(ペイヴァーシュヘレヴ)】から霊力が溢れ出す。もし振り下ろされれば蓮は蒸発して消え去るだろう。

 

「消えろ…人間!〈暴虐公(ナヘマー)〉ーー【終焉の剣(ペイヴァーシュヘレヴ)】!!」

 

十香が剣を振り下ろした瞬間、圧倒的な黒い霊力の奔流が放たれそれは蓮へと向かっていく。士道達を狙っての攻撃とはいえそれでも吹き飛ばされないようにするので精一杯で動けない。

闇の奔流は蓮を飲み込み消滅させる…そうなる瞬間。

 

 

顔を伏せていた蓮が、向かってくる攻撃に視線を向ける。すると、霊力の奔流があり得ないV字の角度を描き夜空へと飛んでいく。まるで夢の中にいるような現実味を感じさせない光景に士道と美九は目を見開く。

士道達には蓮が何かしたようには見えなかった。そんな士道を尻目に床に広がっていた血だまりの淵部分が淡く発光すると、まるでビデオを巻き戻しするかのように血そのものが蓮の傷口へと戻り、治癒させた。傷が無くなった蓮の身体を青い光が包み込む。

 

その光が晴れた時、さっきまでとは違う深い青色の服装を身に纏い身体の関節部には金色のラインが刻まれ、服の表面はまるで生きてるかと思わせるように綺麗に煌めいていた。

背中には目を引き寄せるような美しい模様が十字架を中心に刻まれているが、それは虚空から出現した青色の外套が羽織られる事によって隠される。士道はそれが何なのか分かっていた。

 

「まさか…あれは霊装!?」

 

精霊が持つ絶対的な鎧、それが蓮を包んでいた。その事に驚きを隠せない士道だったが、すぐに別のものに注目が行った。

 

「なんだ…これ…?」

 

それはこの辺りを漂っている青い粒子らしき物体だった。周囲を見渡すといつの間にかそれに囲まれており、それは蓮の身体から出現している。

 

「ーーーー…?」

 

美九はそれにゆっくりと腕を伸ばして指先に触れさせる。すると、手が吹き飛ばされるような勢いで弾かれ、霊装が破られて指先から血が流れる。

 

「…!?なぁ…にぃ…」

 

「これは…蓮が生み出しているのか…?」

 

その粒子は一斉に蓮に向けて集まり、四〜五メートルほどの上半身を構築した。集まった粒子が人間で言う細胞の役割を果たしており、全身はその巨人と同じ青い光を放ち続け右手には刀のような剣と右腕に折りたたむように剣がマウンドされ、左手には巨大な弓と腕と十字になるように細長い盾が装備されている。

 

そして、その上には鬼神を思わせる禍々しい頭部が作られる。二つ空いた闇の中に浮かぶ青い双眸、口は大きく裂けそこから鋭い歯が並んでおり、その隙間からは青い息が機械の排熱のように溢れ出る。

 

「⬛️⬛️⬛️⬛️⬛️⬛️⬛️⬛️ーーーーーーッ!!!!!!!」

 

出現した魔人は剣を握った右腕で床を突いて、空に見える満月へと耳の奥まで響かせるような甲高い声を上げる。それは産声(・・)のようにも聞こえた。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「なんだ…それは…」

 

空に浮かぶ十香の顔に驚きと動揺が現れる。そんな十香を蓮の背後に存在する魔人はジッと見つめる。その瞬間、蓮の周りに青く光る剣が無数に出現し、十香に飛んでいく。その速度は士道がそれを視認した時、十香のいた場所に噴煙が舞っていたほどだ。

 

舞う煙の中から十香がぐったりとした様子で飛び出し、士道達のいるフロアに落ちてくる。避けられなくとも剣でとっさにガードしたらしく剣は〈暴虐公(ナヘマー)〉へと姿が戻っていた。

 

「貴様…私を引きずり下ろすとは…死して償え!」

 

十香は人を殺せると思うほど鋭い目で睨みつけると、蓮に〈暴虐公(ナヘマー)〉を振り下ろし、斬撃を飛ばす。しかし、それはいつも以上の輝きを放つ右腕に簡単に払われ消滅する。よく見ると右手には士道が見た事ない"日本刀"のような剣が握られ、そこから凄まじい霊力を放っている。

 

「ッ!貴様っ!!」

 

自分の一撃が軽くあしらわれた事が許せなかったのか、十香自らが接近して〈暴虐公(ナヘマー)〉で斬りかかるが右手に持った刀一つで受け止められる。

 

「その力…貴様は…一体!」

 

十香が信じられないとばかりに目を見開くがそれを気にした様子もなく、蓮は受け止めた〈暴虐公(ナヘマー)〉をそのまま力尽くで押して剣を下向きにさせると、十香の首元に左腕を伸ばして締め上げた。

 

「がぁっ!!ぐっ…」

 

苦しい表情を浮かべ力が抜けると〈暴虐公(ナヘマー)〉を持つ手にも抵抗が無くなる。そのまま左腕だけで十香を持ち上げた。

 

「…お前は敵だ…死ね」

 

感情を感じさせない冷たい声でそう言うと、右手の剣の先を十香に向ける。もしあの剣が十香を貫けば間違いなく死んでしまう。士道が我に返り、それを止めようと動き出そうとする直前、上空から突風が吹き荒れた。

 

「かか、我の従僕に手を出すとはいくらお主でも見逃せんな」

 

「制止。十香を殺してはダメです」

 

それは美九の洗脳が解けた耶具矢と夕弦のものだった。だが、上空にいる二人に反応したのは蓮では無く背後に立つ魔人だった。二人のいる位置を見るとまるで蚊でも払うかのように右手に持った剣を振る。すると、まるで〈鏖殺公(サンダルフォン)〉のように斬撃が出現して二人へと向かっていく。

 

「ちょ!何よそれ!?」

 

「回避。耶具矢、早く!」

 

二人は左右に分かれて斬撃を避けるが周囲に発生した衝撃波が二人を吹き飛ばす。邪魔者が消えたかと思った瞬間、冷気の奔流が襲いかかり左腕にある盾で防ぐ。それは〈氷結傀儡(ザドキエル)〉に張り付いた四糸乃の姿があった。

 

「それ以上は十香さんが死んでしまいます!蓮さん…一体どうしたんですか!?」

 

その言葉に蓮は反応すらしない。その代わりとばかりに攻撃する四糸乃に魔人が咆哮を飛ばす。右手に持った剣が形を崩し揺らめく光を放つ"矢"と変化し、それを左腕に持った弓へとかけ、弦を引いて狙いを四糸乃へ向ける。

 

「えっ…」

 

『四糸乃!危ない!!』

 

四糸乃が回避を開始したのと矢が放たれたのはまったく同時だった。四糸乃のすぐ横を矢が通り過ぎ、少し遅れてトルネードのような風が吹き荒れて四糸乃は吹き飛ばされる。外れた矢は暗い空へと消えていき、最後は核のような大爆発と光を生み出して消えた。もし直撃していたなら肉片すらも残らなかっただろう

 

精霊三人を簡単に撃退するその力はまさに、圧倒的(・・・)という言葉に尽きるだろう。

 

「蓮!それ以上は十香が死んじまうぞ!!」

 

士道が呼びかけても反応は無い。ならば力尽くででも止めようと一歩を踏み出すが、それを合図としたかのように蓮は士道に顔を動かして視線を向ける。

 

それを見た途端、士道の身体はかなしばりにあったかのように動かなくなった。いや、正確に言えば心は進もうとするが身体はそれを拒否(・・)しているのだ。

 

(なんで…身体が動かないんだ…)

 

何かをしたようには見えなかった。だが、士道の身体には理由が分かっていた、それは潜在意識にある"本能的な恐怖"を刺激されたからだ。

まるで巨大な恐竜に睨まれるような恐怖…それを『十香を救う』という使命で士道の意識は気づかなかったが、美九はそれを直接感じ、泣きそうな顔で士道の手を握る、握ったその手はガクガクと震えていた。

 

「・・・・・・・・・」

 

蓮は士道が動かないのを確認すると、視線を十香に戻す。士道を排除するほどの危険性はないと考えたらしい。邪魔者がいなくなり、右手に持った剣の狙いを十香に定める。そのまま突き立てれば彼女の身体を貫くだろう。

 

「っ!十香ぁぁぁ!!!」

 

貫く瞬間、そう叫ぶことが士道に出来たせめてもの抵抗だった。それもこんな状況では何の意味もない、そう思った。しかし、十香を貫く直前に剣は動きを止めていた。まるでその叫びが物理的な力となったかのように。

 

「と…お…か…」

 

憎悪の表情だった蓮の唇から小さく呟かれる。また、それに反応するかのように十香も苦しげな顔をしながら小さく言葉を漏らす。

 

「シドー…レン…」

 

その瞬間、蓮の頭に大きな痛みが走った。その痛みに顔を歪め、膝をつく。背後に存在する魔人も叫び声に似た声を出しながら苦しそうに身をよじる。

 

「なんだ…これは…この痛みは…!」

 

とおかとおかとおかとおかとおかとおかとおかとおかとおかとおかトオカトオカトオカトオカトオカトオカトオカトオカトオカトオカ十香十香十香十香十香十香十香十香十香十香

 

その言葉…いや、名前が頭の中を駆け回る。それが一番強く響いた瞬間、背後の魔人と身に纏っていた霊装は霧散して消える。右手に持っていた剣も右腕と同化するように消えていった。

 

「とお…か…お前は…」

 

十香の頬に右手を添えると、そのまま唇にキスをする。その瞬間、十香の服装はもとのメイド服へと戻る。それを見て小さく笑うと蓮は十香に寄りかかるように気を失う。結果、十香と蓮はお互いがお互いを支え合うように膝をついて気を失った。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「うぅ…どこだここ…」

 

次に蓮が目覚めたのはベッドの上だった。視界には様々な大きさの配管がのたくった天井が広がっており、周りは白いカーテンで取り囲まれている。

 

「…ここは〈フラクシナス〉の医務室だ」

 

そう答えたのは椅子に座っている令音だった。蓮は痛む頭を押さえながらゆっくりと起き上がる。

 

「確か…DEMに士道と共に十香を救いに行って…ッ!十香は!?士道はどうなって!?」

 

珍しく慌てた様子の蓮に令音はまったく慌てずいつも通りの調子で返答する。

 

「…順番に説明しよう。士道と誘宵 美九にも大きな傷はない。十香も今はもう元に戻っている。問題は君のほうだよ」

 

「そういえば、十香に腹を貫かれて…あれ?」

 

今は病衣姿に着替えさせられ、点滴をうたれている状態なのだが服を脱いで腹部を見てみても傷跡が無く、何もなかったかのような状態だった。

 

「医療用顕現装置(リアライザ)でも跡ぐらい残ると思うんだが、技術は進歩してるんだな」

 

「…君は何も覚えてないのかい?」

 

令音がそう聞いても頭上に『?』を浮かべる。それは惚けているようには見えなかった。

 

「…そうか。調子はいいようだが、検査をしなくてはならない。かなり大掛かりになるが我慢してほしい」

 

「検査?別に悪いところは何もないんだが…時間はどれぐらいかかる?」

 

「…今日一日は潰れると思ってほしい。準備に時間がかかるからもう少し休んでいてくれ」

 

そうとだけ言って、令音は医務室を出て行ってしまう。普段から不思議な雰囲気を放つ彼女だったが、いつも以上に読めない様子だった。その事を気になりながらもベッドに再び寝転がった。

 

 

 

 

 

天央祭三日目。二日目の日を〈フラクシナス〉での検査で終えた蓮は現在、セントラルステージ…美九達精霊陣営と狂三と士道と共に戦った場所で美九のステージを聞いていた。

別に特別な意味があったわけではない。ただ美九のその後の様子が気になっただけなのだが見た感じ特に変わった様子はなく、今も霊装を身に纏い、霊力の籠った声で観客を熱狂させている。

 

(やっぱり、そのまんまだな)

 

いや、本音を言えばもしかしたら霊力の籠ってない声で歌っているのではないかと期待していたが、やはり人は変わるのは簡単ではないということだろう。美九の歌は霊力の効かない蓮が聞いても素晴らしいと感じるのだが、彼女はそれを信じられないのだろうか。

 

演奏は終わったのにも関わらず、会場は大盛り上がりだ。美九は感謝の言葉を述べてからステージを去る。ステージも終わったことだし、もうここにいる理由はない思い、会場を出て行こうとした時。

 

「あっ!やっと見つけたぞ!ここにいたのか」

 

肩を上下させた士道がこちらによってきた。別に何かを約束したつもりはないのだが、何やら自分を探していたらしい。

 

「どうしたんだ士道、女をナンパするのを手伝ってほしいのか?」

 

「ち、違うに決まってるだろ!美九からステージが終わった後、俺と蓮に控え室に来てほしいって手紙が届いたんだよ」

 

「俺とお前が?」

 

正直に言って怪しさ満点だ。もし行ってみたら大量のマスコミが待ってて『この男共は私の控え室に忍び込んで私物を盗もうとしたんですぅ』とかいう展開があるかもしれない。考えすぎかと思うかもしれないが、相手は大の男嫌いの美九なのだ。

 

「そうか、じゃあ先に行っててくれ。俺はトイレに寄ってから行くから」

 

そう言って士道()を先に行かせる。もちろん、想像した事が起きたなら助けてやるつもりだが一緒に行って罠に嵌ったら意味がない。少し時間を潰してから関係者用の入り口を使って裏手に入ったのだが、そこで重要な事に気がつく。

 

「あれ?控え室ってどこだ?」

 

別にこの建物に詳しいわけではないため、どこが控え室かが分からない。迷いながら適当に目に入った扉を開けてみる。すると…

 

そこには一糸纏わない美九が士道に抱きついていた。

 

「…マジかよ」

 

いろいろな可能性を考えていたがこれだけは予想してなかった。とりあえず、こんな状況を他の誰かに見られるとマズイのでドアを閉める。

 

「何がどうなってんだ?どっちが被害者で…」

 

「あ、いや…これは美九の霊力を封印したからで…」

 

士道の言葉に思わず小さく驚きの声を上げてしまう。すると、美九は士道を離して蓮の前まで来ると左手を両手で握る。その顔は満面の笑みだった。

 

「私!心を入れ替えますぅ!言われた通りに人を信じてみたいと思ってそのけじめのためにダーリンにキスしたんです!」

 

前までのツンツンモードが終わり、今度は驚くほどのデレデレモードだった。美九の言う『ダーリン』が誰なのかと思い、予想の人物に顔を向けると士道は力なく笑う。

 

「人間にも誰かを心から思える人がいるって分かりましたから!それこそダーリンやえっと…」

 

「別に男って呼んでもいいんだぞ?」

 

「もうっ!意地悪な事言わないでくださいー」

 

美九は不満そうに頬を膨らませる。なんというか、人間はこんなにも短時間で変われるのかと逆に驚かされてしまった。

 

「蓮…神代 蓮だよ。誘宵 美九」

 

「蓮さんですか!じゃあ私の事も美九って呼んでください!じゃないと怒っちゃいますから!」

 

グイグイと来る美九に翻弄されっぱなしの状態だ。あと、美九は今全裸の状態のため目のやり場には困る。別に狼狽えるわけではないが、蓮が今見てる目線はテレビだと間違いなく修正されてるような光景だ。

 

その時、右腕が勝手に〈バスター〉へと変化し蓮の意思とは関係なしに美九の肩に触れた。

 

「あっ…なんだか変な気分ですう…」

 

肩に触れた瞬間、腕から何かが登ってくる感覚がする。しばらくすると手は自然と離れ。すると、光の粒子が集まり白銀の盾と剣が出現する。蓮の腕が余裕で隠れるほどの大きさの盾は表面には金色の綺麗な模様が刻まれ、剣もそれに負けないほどの装飾がされており、芸術品として通用すると思ってしまうほどだ。

 

その二つは勝手に宙に浮くと剣の刃の側面が盾の表面を擦る。すると、不思議な事にそこから音が出て室内に響き渡る。そのままバイオリンのような動きで曲を奏でる。

 

〈マクイル〉

 

片手で扱え、様々な効果のある音を出す事ができる盾と剣。

敵を切り裂く事のできる武器でありながら楽器(・・)でもある。

 

「なんだかリラックスする音楽ですぅ…」

 

「そうだな、不思議な曲だ…」

 

美九と士道はこの曲ですっかりリラックスしてるらしい。演奏が終わると剣と盾は粒子となって消える。音楽の専門的な知識は無いがこの武器は手足のように扱えるのがなんとなく理解出来た。その時、

 

「美九さん!アンコールが凄くて次に進めません!もう一曲…」

 

控え室のドアを美九と同じ学校の制服を着た生徒が開けた。そして、そこには全裸の美九と見知らぬ男が二人…。

その瞬間、絶叫が響き渡る。結局、いくら考えても偶然を予想するのは不可能なのだと学んだ瞬間だった。

 

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