デート・ア・ライブ  the blue fate   作:小坂井

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今は連続で投稿出来てますが、最新話の本編は作成が難航しております。内容が湧いてこないんですよねぇ、他の作者様はこんな時どうされてるんでしょう?


番外編 6話

「ええっと…名前は『ミネルヴァ・リデル』元SSSのナンバーニの魔術師(ウィザード)で少し前にDEMに引き抜かれて、現在は第一執行部所属と…タイミング的に考えて、エドガーの使いパシリってところかな」

 

美紀恵達から少し離れたビルの上で蓮は手元に持つ携帯端末の画面を見ながら襲撃者の正体を確認していた。

元SSSであることから、セシル達の知り合いである可能性が高い。

 

(まったく…あの人は…『隙を見て、私の首を狩ろうとする部下であった方が好意を持てる』なんて言ってたけど、処理するこっちも身にもなってほしいよ…まあ、そのお陰で退屈はしないが)

 

イギリスでこの件が片付けば苦労はしなかったのだが、日本まで追手がきた以上は自分も少なからず動かなければならないだろう。それがDEM関連となれば尚更だ。

 

(これ以上、事を大きくするわけにはいかない…)

 

この事が他の国にバレたらDEMの立場が危うくなる。DEMは自分の家だ、自分の力で守る。

 

視線を美紀恵達に向けると、ミネルヴァが拘束したセシルの『ジャバウォック』にメモリーカードのようなものを差し込むのが見えた。

本来アシュクロフトは一度認証すると、認証した人間以外は動かせないのだが、ミネルヴァの背後にはアシュクロフトを作った人間がいるのだ、その認証を解除させる解除キーのような物でも渡されていたのだろう。

 

(やっぱり、相手もそれなりの準備をしているか…)

 

ミネルヴァは認証を解除し、フリーとなった『ジャバウォック』の認証箇所に自分を認証させて装備する。

このまま美紀恵達を皆殺しにするのかと思ったが、急に座り込み、身体を痙攣させて始めた。

 

これには蓮も頭の上に?を浮かべる。結局、ミネルヴァはそのままどこかに逃げていった。

 

(最後の状況がよく分からなかったが…解除キーを持っていたという事は他のアシュクロフトも狙っているだろうな。相手の狙いは分かってるいるんだ、焦る必要は無い…)

 

最後を見届けた蓮はビルの屋上から身を投げ出す。普通の人間から見たらこれは自殺とも言える行動だ。だが、次見た時、蓮の姿は地上にも屋上にも無かった。

 

 

その後、美紀恵は周囲を捜索していた折紙と燎子によって発見され、基地に連れ戻された。彼女には捕まえたセシルの脱走を手引きした。これは処罰されるべき罪だ。

 

取り調べで美紀恵はアシュクロフトの真実と本当の敵がDEMである事を燎子に伝えるが、それが真実である証拠はゼロだ。

その発言も虚しく、美紀恵には無期限の懲罰入りが下された。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「どうだミリィ、しっかり見えたか?」

 

「もうちょっとだけ…あ、そのままで動かないでください」

 

現在、蓮はミリィに肩車をしていた。その理由はミリィが美紀恵の様子が気になると言うが、懲罰室の覗き口は、扉の高い位置にあるため、ミリィの身長では届かない。そのため、肩車をしているのだ。

 

「美紀恵の様子はどうだ?」

 

「うむぅ…結構落ち込んでますよ。まあ、こんな所に入れられたらそれも無理はありませんけど…」

 

落ち込んでいるという事は、美紀恵の思った通りに事が進まなかったのだろう。それもそうだ、DEMが事の元凶なんて話を証拠もなく話されても信じる人間はほとんどいないだろう。

 

「そこで何をしているのかしら?整備士さん」

 

突然の声に上にいたミリィは身体を震わせるが、蓮は冷静に顔を動かす。そこには燎子が腰に手を当てて立っていた。

 

「ミリィが美紀恵の様子が気になるって言ったんでその手伝いを…」

 

「あはは…いや、ミリィがしっかりデバイスを管理していたら、こんな事にならなかったと思いまして…」

 

ミリィも彼女なりに罪悪感…、罪の意識を感じている様子だ。そんなミリィを下ろして三人は廊下を歩き始める。

 

「まったく…そこのお馬鹿はいいとして」

 

「だだだだ、誰がお馬鹿ですかっ!!」

 

「蓮、あんたがミスするなんて珍しいじゃない」

 

お馬鹿という言葉に過剰に反応するミリィを無視して、燎子は蓮にそう聞く。蓮は整備場の責任者ではないが、その役職にしても問題無いような能力があり、ミスなど今まで無かったのが理由だ。

 

「確認するのを忘れてましてね。ミリィの許可はもらっていたので『部下の責任は上司の責任』というわけで罰は全部ミリィにどうぞ」

 

「ええっ!?蓮はミリィを見捨てるんですか!?ミリィのような天才はほとんどいませんよ!?それに蓮は恋人がどうなってもいいんですか!?」

 

「誰が恋人だ。それでこの件について、DEMなどから嫌味の一つや二つを言われたんでしょうね」

 

「いえ…DEMどころか上からも何も言ってこないの。不気味なほどにね。これは…何か臭うわ…」

 

何か腑に落ちないという様子で燎子は顔を顰める。それもそうだ、ASTのミスでセシルを逃したと言うのにそれに対する苦情も無いというのはどう考えても普通では無い。

 

(本社の方はこれにダンマリが。これは厄介ごとに突っ込みたくないという意思表示か…)

 

DEMがこの事について何も言ってこないという事は、アシュクロフトの真実を知っていながら黙認しているか、本当に一部の人間だけで行われていて、会社側はこの事を本当に知らない可能性があるが、上も何も言わないとなると前者の可能性が高い。

 

「それは…美紀恵の言っていた事を信じている…という認識でいいですか?」

 

「私も証拠も無しに全て鵜呑みにするほど馬鹿じゃないわ。けど、本人には明日にはもう出てもらう事になるかもね。あの子は迷っている…なら、その憂いを晴らして上げるのが隊長()の役目。この件はしっかり調べてみるわ」

 

「お、おお…カッコいいです!見直しましたよ!リョウコ!ちょっと頼りない隊長だと思ってましたが!」

 

せっかく良いシーンだったというのに、ミリィの余計な一言が全てを台無しにしていった。これを聞くと普段、ミリィの中で燎子の株が低いか良く分かってくる。

 

「あんた殴られたいの?ていうか、あんたもDEMの社員でしょうが。何か知っている事ないの?」

 

「いやぁー、ミリィは整備士ですし、蓮と一緒にいながらCRーユニット弄れれば満足なので、会社のこととかはどうでもよくて…」

 

社員が会社の事に無関心なのは如何なものか。だが、それを咎める事なく、蓮はこれから自分がどうするべきか思考する。

 

(何も言ってこないって事はDEMは介入しないという考えか…)

 

DEMからの増援が事態を解決、という展開はなくなった。言い方を変えればそれだけ自分が自由に動けるということだ。

それを考えて蓮は歩き出す。これからする事は、これから相手より一歩先の手を打ちにいくのだ。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「ふぁ…朝か…」

 

翌日、窓の外から雀の鳴き声が聞こえてくる頃に目が覚めた。自分はぐっすり眠る事が出来たが、美紀恵はしっかり眠れただろうか。これからの事を考えて一睡も出来なかったかもしれない。

 

蓮が今、自分の家のベッドで寝る事が出来ているのは、美紀恵が取り調べの時、一緒に話を聞いていたはずの蓮の名前を出さなかったお陰とも言える。もし、名前を出していたら、無期限とはいかなくても数日の懲罰入りが決まっていたかもしれない。

人間はどうしても理解されない事があると、理解者を探すものだ。だが、美紀恵は理解者よりも、迷惑を考えて罪を認めた…これはなかなか出来る事ではない。

 

ぐぐっと身体を伸ばしリラックスする。その時、机の上に置いてあった端末が、ピピピッと音を立て始める。

それを聞いて蓮は悪魔のような笑みを浮かべる。この音は鼠が罠に掛かったサインだ。そして、捕まった鼠の運命など想像難くない。

 

 

天宮市の外れにある遊園地跡、そこにはアシュクロフト『ジャバウォック』を装備したミネルヴァがいた。

当然、彼女も理由もなくここにいるわけではない。そこに三人の人影が歩いてくる。

 

「来たか…歓迎するぞ。わざわざアシュクロフトを奪われに来てくれたのだからな…」

 

「ここに私たちを呼び出すなんて、随分自信があるじゃない…もしかしたら、奪われるのはあなたの方かもね…!」

 

セシルは軽口を叩くが、その表情は緊張している。それは後ろにいるレオノーラとアシュリーも同じだ。

 

「来たのはお前たちだけか?てっきりあのチビ(美紀恵)も来ると思ったのだが…」

 

「ASTの人間なら来ないわよ…彼女にいたっては今頃監禁されてるでしょうしね…」

 

「なるほど…それと、お前たちのほかに男がいたはずだ、あの時はドサクサに紛れて逃げたようだが…」

 

三人の顔が僅かに強張る。ミネルヴァの言っているあの男とは蓮の事だろう。

 

「蓮は関係ないわ!それに、彼はあなたと同じDEMの人間なのよ!」

 

必死に訴えかけるセシル。自分たちを狙ってくるのは構わない、だが、非戦闘員である蓮までも巻き添えにさせるのは彼女のプライドが許さなかった。だが、ミネルヴァはそんな事知ったことかとばかりの様子だ。

 

「だからこそだ。私もそれだけなら放っておいた。だが、そいつはアシュクロフトの正体を知ってしまった。だから口封じしなければならない。私の目的のためにあんな石ころ一つに躓くわけにはいかないんでな」

 

セシル達は反逆者だ。そんな人間のいう事は誰も信じない。美紀恵と折紙はASTだが、物的証拠がないので心配の必要がない。だが、蓮はDEMの人間だ。同じ会社の人間となっては万が一という可能性がある、それがミネルヴァが蓮を殺害する理由だ。

 

「ミネルヴァ…あなた、性根まで人間じゃないわ…」

 

拳を握り、歯を噛みしめるセシルが漏らした一言。ミネルヴァはそれを鼻で笑い飛ばす。

 

「ふん、恨むのなら、そいつを巻き込んだ自分自身を恨むのだな。お前が余計な事をしなければそいつは死なずに済んだのだから」

 

「…どうやらあなたを倒さなくてはならない理由が一つ増えたみたいね…」

 

覚悟を決めた顔の三人に向かって、ミネルヴァは猛スピードで襲いかかった。

 

 

 

 

 

 

『…はい!ミリィですけど、こんな朝からどうしたんですかー?』

 

『朝早くから悪いな。今、基地にいるよな?折紙と美紀恵がどこにいるか知っている?」

 

『いいえ、オリガミもミキエも、少し前に任務もないのにデバイスを持ってどこかに行っちゃったんですよ。しかし、なんでそんな事を聞くんですか?』

 

『いや、そんな大した理由はないさ。でもあえて言うなら…ちょっとした駆除作業(・・・・)かな』

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「全滅!!ゲームオーバーだ!!ハハハハッ!!」

 

廃園となった遊園地にミネルヴァの声が響き渡る。その周囲にはセシル、アシュリー、レオノーラ…そして、美紀恵と折紙が地面に倒れこんでいる。その状況は誰が見ても彼女の勝利、そう思うだろう。

 

「さて…ではアシュクロフトを頂いていくとするか…」

 

ミネルヴァは倒れている仲間の所へ歩み寄っていく。セシルはそれを虚ろな意識の中、ただ見ている事しか出来ない。

 

(私たちが負けたら次は彼が…誰でもいい…その際、悪魔でも構わないわ…誰か…ミネルヴァを…止めて…)

 

今まで神という存在を信じていなかったセシルだが、この時は心の底から祈った。しかし、現実はそんなに甘くないというのは今までの人生の中で十分に理解していた。その時…

 

「まったく…朝っぱらから騒がしいな」

 

小さな呟き…誰に向けての言葉でもない独り言…だがそれは静寂の中に響いた音のようにしっかりと聞こえてくる。

ミネルヴァはすぐにその声の聞こえてきた方向に顔を向ける。セシルもそれにつられて顔を向けると、近くのジェットコースターレールに誰かが腰掛けている。

その顔は太陽を背にしているせいで影に隠れてよく見えない。だが、その声は聞いた事があった。

 

「good morning 、DEM第一執行部所属、ミネルヴァ・リデル」

 

流暢な英語で、その場に似合わないほど陽気にそう言った蓮は、レールから飛び降りて地面に着地する。

 

「貴様…いつからそこにいた…?」

 

「つい三秒ほど前から(・・・・・・・)、それにしても随分と楽しそうな様子だったな?」

 

ミネルヴァから飛んでくる殺気など物ともせずに煽るように話しかける。精霊と正面からぶつかった経験があるのだ、いまさらこの程度で緊張を感じるほど蓮は可愛くない。

 

「まさか、貴様の方から来るとはな…なぜここが分かった?」

 

「セシルがアシュクロフトに関する資料を見せてくれた時、そこに通信性能に関する事に目を通していた。戦闘性能は高かったが、アシュクロフト同士の通信に対しては特別な技術やパーツを使っていない。だったら、盗み聞きするくらいは簡単さ。お前は思った以上に単純に動いてくれたからな」

 

「ほう…だが、丁度いい。アシュクロフトを奪った後は貴様を始末する予定だったんだ。自分から来てくれるとは楽になったよ…」

 

目を見開き、獲物を見るような視線を蓮に向ける。そんな目を向けられても、本人は怯むどころか面白い冗談とばかりにミネルヴァを小馬鹿にするような笑みを浮かべた。

 

「お前が奪おうとしているアシュクロフト(それ)はDEMから正規の手続きが行われて搬入されたものだ。その事に関しては執行部の下っ端のお前が口を出す事じゃない。分かったら汚い尻を向けながらイギリスに帰りな。そんでエドガーにこう伝えろ『お前じゃ千年かけてもあの人の首は取れない』ってな」

 

「黙って言わせておけばペラペラと…アシュクロフトを手に入れてからにする予定だったが…今始末してその減らず口を叩けなくしてやる!!」

 

ついに堪忍袋の緒が切れたのだろう。ミネルヴァの顔に屈辱の表情が浮かぶとまっすぐ蓮に向かって飛び出してくる。セシルは彼を助けようとするが、ミネルヴァに与えられたダメージのせいで身体が思うように動かない。

 

「死ねェェ!!!」

 

狂気といった様子のミネルヴァが狙うのは首の頚動脈。躊躇などまったくない。ミネルヴァの右手が迷いなく首に向かって近づいていく。このまま皮膚を突き破り、鮮血が溢れ出す…はずだったが…

 

「まさに獣だな。特にそうやって何も考えずに向かってくるところは」

 

ミネルヴァの右手は蓮の青い手…〈バスター〉によってピタリと止められていた。どんなに右手を動かそうとしても少しも動かない。とてつもない握力と力で押さえつけられている。

 

「このまま帰れば、太陽を拝めなくなる生活で済んだっていうのに…これを見られたんじゃあ、このまま帰らせるわけにはいかなくなったな」

 

警告はした。それでも向かってくるというならそれは誰であろうと自分の"敵"だ。その敵にこの腕を見られたというなら、相手をまともな状態で帰すわけにはいかない。

 

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