流星のロックマン 雷の双子   作:青天

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 暇つぶしに書き始めた駄文です。
 流星ファンの方々には不快な思いをさせてしまうかもしれません。
 それでもいいという方はどうぞ、お読みになってください。


第一話 ツカサとツバサ

 

 

 安らかなまどろみから俺は目覚めた。

 いや正確には俺達は目覚めた。俺が目覚めると同時に彼も眼が覚めたのだ。

 

『おはよう。ツカサ』

 

 俺は自分の心に向かって言った。

 

『うん、おはよう。ツバサ』

 

 返事はしっかりと返ってきた。

 俺の中にいるもう一人の俺。双葉ツカサ。それが彼の名前で、俺はツバサ。所謂二重人格という奴だ。いやそれさえもおそらくは違う。俺には双葉ツカサではない■■■としての記憶がある。ツカサとは何のつながりもない完全に別人の記憶。

 きっとこれは憑依というのだろう。

 ツカサから分たれた人格に俺が憑依した。きっとそう言う事だろう。

 だがハッキリしたことは誰にも、何も分からない。

 だから俺とツカサはとりあえず二人で一つだと認識している。

 俺がツカサに憑いた時、彼は崖っぷちにいた。身体的にではなく精神的に。幼いころゴミ捨て場に捨てられたツカサは両親に対する憎悪や、親のいる友人にたいする嫉妬や憧れそんな膨大な量の感情に翻弄され潰されそうになっていた。

 本質的に優しく穏やかで少し気の弱いツカサ。

 たった一人の寂しい世界で彼は泣いていた。

 俺はその姿に悲しみを覚えた。だから彼を助けると決めたのだ。

 

 とまあ、昔語りはこのへんにしておこう。

 人は過去に生きるものではない。

 

『ツバサ、急がないと学校に遅刻するよ?』

 

 俺の中でツカサが言った。

 そう学校だ。学生の本業とはすなわち学ぶこと。しかし俺には既に高校3年生くらいの学力はある。まあ、憑依前とは少し文明レベルが違うようだがそこは何とかなる。

 つまり、俺は学校になど行く必要はない。家でこの時代におけるサブカルチャーについての研究をする方が有意義ではないだろうか。

 

『……ツバサ』

 

 顔は見えなくてもツカサがこちらを責めるような目で見ているのが何となく伝わる。

 ツカサはどうにも俺と違って真面目だから困る。

 

「……分ったよ。行くよ」

 

 そう言って俺は鞄を片手に家を出る。

 ちなみに今身体の主導権は基本的に俺が握っている。

 どうも過保護にし過ぎたせいかツカサは人間不信気味で滅多に表に出たがらなくなってしまったのだ。

 ふむどこで教育を間違ってしまったのか……

 

『ツバサ、僕はキミに育てられた覚えはないよ』

 

「はいはい。分ってるって」

 

 俺は肩をすくめて答えると学校へ向かって家を出た。

 

「……今日の空も賑やかなことだなあ」

 

 俺は空を見て呟いた。目に映っているのは無数の光の帯だ。オレンジ、水色、黄色、色とりどりの光が空を覆っている。

 これが見えるようになったのはこの身体に憑依してからだ。どうやらこれが見えるのは俺だけらしくツカサが表に出ているときはまるで見えやしない。最初のころは毎日こんなでは目がちかちかするし、気でも狂ったのかと焦ったものだ。

 だが今ではすっかり慣れた。最近ようやくこれがいわゆる電波というものかもしれないと分かってきた。

 今日も電波環境は良好だ。

 

『ツバサ、こんなところでぼうっとしていると遅刻するよ』

 

 そうだった。ただでさえ俺達のうちは小学校に遠いのだ。遅れでもしたらあの委員長に何を言われるやら。

 

 俺は溜息を吐くと学校へ向けて歩きはじめた。

 

 

 

 俺達が通っているのはコダマ小学校。コダマタウンにある極々一般的な小学校だ。

 俺は教師たちの無駄に元気な朝のあいさつに適当に返しながらエレベーターに乗り自分の教室に向かう。

 それにしても学校にエレベーターとか無駄じゃないだろうか。小学校なんて精々3階までしかないのだからそれくらい生徒に歩かせた方が健康的だろう。まあ、喜んで使用している俺が言えることではないが。

 超高層ビルというわけでもないので、エレベーターはすぐに目的の階に到着した。そこから一番手前の教室が我らが5年B組の教室だ。

 教室に入り軽くクラスメイト諸君に挨拶をして席に着いた。

 一息ついて、教室を見渡してみる。

 このクラスはコダマ小学校で一番アクが強い、もとい個性豊かなクラスだ。

 まず委員長の白銀ルナ、白銀財閥のご令嬢で言葉使いから仕草まで、完全にお嬢様というか貴族の姫君。その独創的な髪型、二つのドリルは一度見たら忘れられない。

 育ちの所為か、少々自己中心的でお節介なところがあるが、何だかんだでリーダーシップを発揮し面倒見も良いので皆から慕われている。

 次に牛島ゴンタ。本当に小学生なのか疑わしい体格の持ち主であり、食いしん坊。昔からクラスに一人はいるガキ大将的人物だ。だがその実態は完全に委員長の配下だ。やはり女というのはたとえ子供でも恐ろしいものだ。

 続いてキザマロ。背丈が小さく、本人もそれを非常に気にしているのでその話題はタブー。割と幅広い知識を持っていて雑学的なことにも詳しい。

 他のクラスの連中なんかどいつも同じような凡人だというのにこのクラスだけ少し変わっている。

 

『……まあ、二重人格の僕等が言えることじゃないけどね』

 

 心の中でツカサが呆れたように呟く。

 

 そうこうしていると始業の鐘が鳴り、担任の生田教諭がはいってくる。

 彼も対外アクの強い人物ではあるが、ここではその点について考察するのは止めておこう。もう授業が始まる。

 今日の一時間目は確か、情報なんたらとかトランサーについてだとかそんなものだ。

 トランサーというのは腕に装着するタイプの携帯端末、まあ多機能携帯電話のようなものだ。カラーリングは三色あり、それはそれぞれの所属する通信管理衛星によって異なる。

 ドラゴン、ペガサス、レオの三つだ。

 そしてトランサーにはブラザーバンドシステムというものがあり、割と未知数な部分の多いシステムだが用は仲の良い友人を登録しておくことができる。

 

 今日はそのブラザーバンドについての解説だ。

 一応授業なので俺も聞いてはいる。するとツカサの機嫌が次第に悪くなっていくのを感じる。

 大分マシになったとはいえ、ツカサの根底には人間に対する不信感がある。

 幼い頃に親に捨てられたツカサは親の無償の愛というものを知らない。本来、この世で最も信頼できるはずの親に裏切られたのだから無理もない。

 だからこそ、ツカサにとって〝絆〟という言葉ほど信じられないものはないのだろう。

 ツカサには身体を共有し長い間、兄弟みたいに生きてきた俺しか信用できる人間はいないのかもしれない。

 俺は生田教諭の授業を半分聞き流しながら物思いにふけるのであった。

 

 

 

 

 

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