更新も遅いし、文章も短い。こんな駄文しか書くことができなくて読んでくださっている方々にはもうしわけない気持ちで一杯です。
アドバイス、改善点などがありましたら言っていただけると嬉しいです。
ブラザーバンドの授業があってからツカサは黙りこんでしまっていた。
ツカサが何を思っているのか、俺には分らない。
同じ身体を共有し、長い間ツカサと共に生きてきたとはいえ俺とツカサの精神は完全に独立した別物だ。
断片的記憶や感情が流れ込んでくることはあるが、それがどんなものなのかはっきりとは分らない。
自分を捨てた親を今でも憎み続けているのか、それ故に絆という物を嫌悪しているのか。
結局のところ、俺とツカサは兄弟みたいなものではあるが決して同一の存在ではないのだ。力になりたいとは思ってもどうすればいいのか見当もつかない。
俺は溜息を一つ吐くと、頭を振って鬱屈とした思考を振り払う。
一つの物事を深く考え込むのは柄じゃない。
答えのない思考ほど無駄な物はない。深く考えれば考えるほど良くない方向に向かっていってしまうこともある。
さて、取り合えず今の俺にできることはこの退屈な授業をどう乗り越えるかだ。
いつものようにツカサと駄弁って時間を潰そうにも、ツカサはだんまりだ。
仕方なく俺は、机の上に突っ伏し目を閉じる。
今更、掛け算なんてやっていられない。
昨日の晩、遅くまでアニメを見ていたので正直眠いのだ。
教師の解説の声がまるで子守唄のように頭の中に響き、次第に俺は眠りに落ちていった。
目が覚めると、教室の窓から見える太陽はすっかり傾き、奇麗な茜色の光が差し込んでいた。
眠っている間に放課後になっていたようだ。
というかこの場合、よく寝れたと喜べばいいのか、それとも給食の時間にすら起こしてもらえない影の薄さを嘆けばいいのか……
『いや、委員長とかは散々起こそうとしてくれていたよ』
唐突にツカサが言った。
どうやら大分気分は持ち直したらしい。
というかその場合、俺の代りにツカサが表に出るという選択肢はなかったのだろうか。
学校でくらい表に出てもいいと思うんだ。戸籍上の名前はツカサだし先生に名を呼ばれる度に違和感があって仕方がない。
ちなみにクラスの連中には俺のことはツバサと呼ぶようにと言ってある。
このときもかなり苦しい言い訳無理矢理通した。ツカサが表に出れば全て解決だろうに。
『それは……』
ツカサが黙る。
微かに感情が俺の方にも流れこんでくる。
「まあ、いいさ。そのために俺がいるのだから」
ツカサはほっと息を吐いた。
それからツカサはしばらく沈黙して意を決したように口を開いた。
『今日、帰りにあの場所に行かないか』
真剣な、思いつめたような口調だった。
何処に、とは言わなくてもわかる。
そこはツカサにとって原点とも言える場所であり、俺にとっても始まりの場所だからだ。
ツカサはそこで親に捨てられ、俺はそこでツカサと出会った。
俺はすぐに荷物を鞄に押し込んで、席を立った。
早く行かないと暗くなってしまう。
あそこはバスを使ってもそこそこ時間がかかる。
「ちょっと、ツバサくん!?」
ちょうど教室の扉に手をかけたところで委員長に呼び止められた。
ちらりと後を振り向くと、白金ルナが眉を吊り上げ近付いてくるところだった。
あれは間違いなく怒っている。それはそうだろう。善意で起こそうとした彼女の言葉を不可抗力とはいえ完全に無視したようなものなのだから。
そして委員長白金ルナはそれを許しはしない。
「俺、用があるからさよなら!」
そう叫ぶと俺は扉を開けはなし逃げ出すように教室を飛び出した。
後も振り向かずに一目散に校舎からでる。
つかまったら最後お説教コース確定だ。
走りながらも後ろを振り向くと、委員長の子分、牛島ゴン太を先頭に猛烈な勢いで追いかけてきていた。
だが足の速さなら俺の方が断然早い。
廊下に散らばる生徒を身軽に避け、校門へと全力疾走。
途中で立ちふさがる教師を無視し、ちょうど校門の近くにあるバス停にバスが到着しているのを見つけた。
「よし、ナイスタイミング」
委員長が追い付く前、バスのドアが閉まるギリギリのタイミングでバスに飛び乗る。
音を立ててドアは閉まり、バスは発進する。
俺は適当な席に座ると窓を開け、身を乗り出す。
「さらばだ。ツインドリル!」
「誰がドリルですってー!?」
ついでに委員長をからかっておくのも忘れない。
『……ツバサってなんかやたら委員長のこと、からかうよね』
いやぁ、何だかあの子からかい甲斐があるっていうかなんというか。
それにあの髪形がドリルに見えるのは俺だけではないはずだ。
ツカサは気まずそうに沈黙した。
きっとツカサも委員長の髪型のことをドリルだと思っていたに違いない。