神様のギフト(仮)    作:砂糖露草

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カオス「香取遅いなー」




シリアス「またせたな!」


×healing△Immortality

「次は○○~、お出口は―」

 車内アナウンスが流れる。周りはくたびれたサラリーマンや遊び帰りだろう学生であふれかえっていた。どうやら僕は眠ってしまったようだ。六年前なら吊革につかまってうたた寝をするサラリーマンの気持ちを理解できなっかたけど、今ではもう慣れたものだ。どんなものにも慣れてしまうものだな、と独り言ちていると、聞かれていたようで隣の見知らぬ隣人に笑われてしまった。いけないいけない。どうも疲れで気が散漫しているようだ。気恥ずかしくなり、一度咳払いして気を紛らわす。

 早く着かないものだろうか、仕事疲れの残るぼんやりとした頭でそれだけを考えていた。早く帰ってやらないとずっと待ち続けるからなぁ、アイツ。腹もいつなってもおかしくないし、そろそろ―

「間もなく××~、お出口は―」

 ―自宅最寄りの駅にようやくついたようだ。なぜかさっきよりも靄のかかった頭の中を振り払うように、頬を叩く。それでも醒めるようなことはなかったけど、自動ドアの前に立つ。今日は帰ったらすぐ寝かせてもらおう。もしかしたら風邪かもしれない。場合によっては明日は病院に。

 ―いつの間にかドアが開いていたようだ、早くしなければ閉まってしまうかもしれない。急いで外へと一歩を―

 

 

 

 

 

 

 

「-え。」

 しかして目の前に広がるのは、まばらに人がいる広めの駅のホームではなく、どこか近未来的な内装の閉じられた空間だった。まるで意味が分からない。僕は確か…

 突然機械的な音が鳴り、ドアと思わしきものがあく。そこからこれまた奇怪な服装をした団体がはいってきた。

「あら、ようやく目を覚ましたわね。おはよう、それとはじめましてね。香取君」

 SFチックな軍服のようなものを着こんだ緑髪の女性が話しかけえてくる。緑髪、珍しいなんてものじゃないそもそもどうなったらそんな色になるのか。それに香取ってだ…あ。

「誘拐犯だ――!?」

「人聞き悪いこと言うんじゃありません!」

 そうだ、思い出した。僕は、なんやかんやでフラグてんこ盛りのリリカルで本気狩るな世界に転生して、必死に死亡フラグをバッキバキに折りながら二度目の生を謳歌しようとしてたんだった。最後の記憶は、たしか校門前まで言ったとこまでだったはず、それから不自然に途切れて気が付いたら…おそらくそのあとこの部屋に連れ込まれたのだろう。

「すまない、少し事故があってな。気を失って倒れた君をここで介抱することにしたんだ。」

 今度は肩当に痛々しい棘が装飾されている、黒髪の青年が応対する。もしかしなくても彼らはハラウオン親子なのだろう特徴がありすぎて間違えるはずもない。決して口には出さないけど。これは、認めたくないけど、かなり絶体絶命な状況であることは確定的に明らかだろう。…どこで選択間違えた。

「…それは、ありがとうございます。もう見ての通り、特に問題はないみたいんなんで、帰ってもいいですか…?」

「まぁまぁ、少し休んでいきなさい。ついでにお話ししましょうか、時間もたっぷりあるから。」

 軽く自己紹介をしながら椅子に腰掛けてほほ笑む。-先程の見解も当たっていたようだった。-気のせいか目の下に隈ができている気がしなくもないが、自分には関係のないことだろうと気にするのをやめた。

「…実は家に一人で待ってる女の子がいるんで、今すぐ帰りたいなぁ…なんて。」

「ならその子も一緒にどうかしら。そうだわ、時間もちょうどいいしお夕飯も食べていかない?迷惑かけたお詫びとして、ね。」

 目の前の女性から獰猛な肉食獣のオーラが漂っている気がしなくもない、錯覚だろうきっと。

 閑話休題、取り合えず落ち着いて状況を整理しよう。周りには推定ランクA以上、いわゆる凄腕の魔導士が五人。そのうちの一人、黒峰さんは扉を背にもたれかかっている。逃がさないという意思表示か。

 ―強引に突破するのは不可能、そうなると何とか言いくるめて脱出するしかない。…自信、ないなぁ。

「いえ、その女の子とてもシャイであがり症なんで、あまり大人数で来られるのは。」

「それは残念。仕方ないからあなただけでもどう?」

「早く帰らないと心配されるんで、下手したら通報されかねませんし。」

 頑なに家に帰ろうとする僕に、しびれを切らしたのか周りから不穏な空気がただよってくる。このままでは平行線だとおもったのか、リンディさんは口火を切る。

「そう、それじゃあ手短に話すわね。何度も聞いたでしょうけど、あなたには私たちの組織に所属してほしいの。」

「あなたの能力はとても希少なもの、それがあればたくさんの人が救われるかもしれない。」

「だから、協力してくれるかしら?」

 逃げられないように僕の目をまっすぐみていた。その双眸から彼らがどれだけ真摯に嘆願しているのかがわかる。確かに治癒能力というのは極めて希少で、汎用の効くものである。…それが自分限定の忌まわしいものでなければ。

「…僕のこれは、、そんな大したものじゃないですよ。それに治癒能力って言っても、案外弱いものかもしれませんよ。さっきまで気絶して位だし。」

 何とかあきらめてもらおうと、口からあることないことをないまぜに言い混ぜる。今度は八神さんがなにか操作したかと思うとみんなの前に実体のない大きなスクリーンが現れた。怪訝に思っていると校舎裏が映し出される、さらにそこに僕とここにいる面子のいくらかも映っていた。記憶が途切れる直前の映像のようだ、てか盗撮…。画面の僕が必死に逃げる場面へ移る。校門まで間近といったところで―

「は?」

 画面上の僕の体が、見えない何かに吹っ飛ばされたかのように宙に舞いくるくると回転しながら柵にぶつかった、その時にトマトがつぶれたような音が聞こえた。そして映像が終わり、スクリーンが消える。

 

 

 

 

「このあと数秒足らずで君の怪我は完治した。私たちが何の処置もしていないのにだ。何人かはあまりのことに気分を悪くしてしまったようだがね。」

「まず先にあの怪現象の究明のほうが先だよね!?」

 黒峰さんが話に割って入るけど、違うそこじゃない先になんでゲッタンみたいな動きで宙を舞ったかのほうが重要だろう。新手のポルターガイストかそれとも、呪術師の新たな秘法か、考えをめぐらしても正解は出てこない。周りは苦い顔をしてるばかり。かと思ったらリンディさんが重い口を開いた。

「さきに謝っておかないといけないわね。ゴメンなさい」

 いきなり謝られて混乱したけど、彼女の話を聞いて理解はした。長かったのでをまとめると、ようは一人の局員の暴走らしい。いったい誰がやったのかはついぞ教えてくれなかったけど。

「でもこれで、あなたの能力についての立証は成された。異常なまでの治癒力、これなら十分に役立てるはずよ。あとは、あなたが了承すればね。」

「これは協力だけが目的じゃない、君のその体質を狙ってくる輩も出てくるだろう、いわば保護という意味合いもあるんだ。」

 阿吽の呼吸さながらに、話をつないでいくハラウオン親子。保護してくれるというなら確かにありがたい話だと思う。先程の話を聞かなければ。

「だからと言ってあなた方についても、余計危ない目に遭いますよね?」

 仮にも、一般人にあそこまで容赦なく攻撃してくる奴がいるところにいたくはない。言外にそういい含ませる。

「彼にもちゃんと言い聞かせるから、安心して。」

「安心できません。そこは普通解雇なり厳重処分を受けるはずですけど、その言い分だと注意だけでとどまってますよね。」

「…どうしても嫌だと?」

 先程より、さらに凄味を持たせた声で問いかけて来る。個室の気温が下がったような感じさえもする威圧感が僕を襲った。すぐにでもこの重圧から逃れたい。けれどそうするには彼の誘いを受けることしか方法はないだろう。でも、それでも

「-は、はい、僕は今を、親からもらったこの命を大事にしたいんです。だからその話は受けられません。」

 言い切る。正直な気持ちを、どうなるかもわからないこの状況で告げた。その後の展開を怯えながらも待った、まるで断頭台に立つ死刑囚の気分を味わう。

 ふとリンディさんが微笑んだ。わちき、赦された…?

「そう…ごめんなさいね。みんな、よろしく」

 一瞬だった。扉から大のおとなわんさかと入ってきたと思ったら瞬く間に取り押さえられる。

「な、え?」

「本当にごめんなさい。でもね、あなたのその体質はとても希少なの。その構造は究明できればそれだけで世界は変わる。」

「上のほうからも至急保護、ないし捕獲せよって言われていてね。大丈夫、悪いようにはしないから。-連れていきなさい」

 その声を皮切りに不思議な力―おそらく魔力と思われる―で拘束されたまま引きずられていく。今から行く先はどう考えても嫌な予感しかしない。

「待ってくれッ助け…」

 同行する局員の一人が煩わしく思ったのか、喚く僕の口に何かしらの魔法をかける。すると声が発せなくなる。口を閉口させながら抵抗するもむなしく強引に連行されていく。道行く人々や連行する人々が、無表情でこちらを見つめてくるのがとてつもなく恐怖をそそる。

―まるで養豚場のブタを見るような目だった。




トクイであるということは、それだけで差別の対象である。


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