神様のギフト(仮)    作:砂糖露草

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今回は試験的に三人称での話になります



グロ注意


歪な少年と奇抜な青年の過去話

 今回は、ある家庭の少し変わった子供の話をしよう。その家庭は両親が共働きではあるものの、金銭的に問題があるわけではなく、単純に根っから今の仕事に没頭しているだけの二人組だった。同じ職場に配属され仕事上のパートナーとして過ごしていくうちに惹かれあい結婚したという何とも甘いラブストーリーがあるのだが今は割愛する。

 その二人にもめでたく第一子であり、唯一の子供が生まれるのだが、その子供は他と比べてみると知恵が回りそして体も丈夫でとても活発だった。しかしその子供は公園で遊ぶことはついぞなく、少し遠いところにある河原まで通い、わざわざ別のグループにまざって野球やサッカーを楽しんでいたという。両親もそんな賢い子供を可愛がり子供もそんな両親の愛情を一身に受け成長していった。わざわざ公園を使わず、河原まで通うことには疑問を持っていたものの、それでも快く見守っていたそうだ。

 

 

 

 

 その日はちょうど両親ともども仕事が重なり、子供は遊びの約束のためひとりで河原へ向かうことになった。少し遠い河原まで一人で行くことに両親は最初渋ったが、今年に入って小学校に進学したことやその子供の知能が他より異常に発達していたこと、そして今住む町の風土が比較的良かったことから最後には彼らも首を縦に振った。

 …夕刻を過ぎ朝日が昇っても、子供は帰らなかったという。

 

 

 

 

 その日、少年は野球の試合があり戦況は白熱、延長戦にもつれ込み13回めでようやく決着がついた。少年のチームは惜しくも敗れたが、相手チームと意気投合し追加の合同練習をした後監督二人に連れられて最寄りの喫茶店で豪遊、日暮れまで続いたという。

 少年もこれにはさすがに焦り、朝通った道を大急ぎでたどっていく。この時ばかりは彼も注意力が散漫になっていたのだが、もし周りをよく見ていたとしても今回の事件は防ぎようがなかっただろう。青になった信号を渡ろうした時のことだった。

「―え」

 横断歩道をちょうど中央へ入ったところで、車にはねられる。その後運転手が状況を確認したあと、少年を車内へと連れ込み、何事もなかったようにそのまま車を発進させた。

 

 

 

 

 

 

 ―後にこれが計画的犯罪であったこと、そして運転手の彼が少年の両親の取り上げた記事によって破滅させられたための、逆恨みによる犯行であったこと等が、少年は犯人の口から直接聞くことになる。もっとも報道内容に偽りはなく悪事に手を染めていたことは事実なため、完全な犯人の自業自得ではあるのだが。

 

 

 犯人は少年を座席にではなく、トランクに入れたため異常に気付くのは、潜伏先に選んだ山奥の廃墟についた頃、トランクに入っている少年の死体もしくは行き絶え絶えになっているだろうそれを運び出そうした時だ。

 少年の体には傷一つなく多少息苦しくもがいているものの、どこから見ても健康体の体で寝入っている姿を彼は目にした。

 本来ならここで不気味になり、恐怖を感じてそのままどことも知れない山奥に置き去りにしたりするところを、彼は好都合と考え廃墟に運び込む。頭の中はこの後どうやってあの二人を絶望に陥れようかそのことだけを考えていた―この時から、いや犯行に及んだときすでに彼の精神はどうしようもなく狂っていたのだろう。これがその後の彼をさらに狂わせ、最下層に堕とす最大の愚行であることが、彼には理解できるはずもなかった。

 

 

「―んん?ここどこ?」

 少年が目を覚ましたのは、運び終わって数分も経った後のことだった。周囲を見渡しても見覚えのあるものはなく、荒廃とした小部屋であることしかわからない。そして自らは縄か何かで拘束されており、身動きが取れない状況であることに気づく。さすがにここまでくればどんなものでも、いま異常で危険な事態に巻き込まれていることにたどり着くだろう。少年も一見平静を保っているように見えなくもないが、その心中は不安と混乱、そして恐怖が綯い交ぜになって満たされている。

「ようやく気付いたか。まぁまたすぐに眠ることになるがな、永遠に。」

 静寂が支配していた小部屋に低い声が響く。その声の主は少年にいまの状況を克明に告げた後、どこから取り出したのかナイフを逆手に持ち、少年に向かって勢いよく少年の胸―ちょうど肺ににあたるところに振り下ろす。

「カヒュッ。痛いたいたいタイタイ!」

「うるせぇなぁ。まぁ聞き納めだと思えばいいか、さて、どんな風に加工しようか、どう加工すればアイツらは一番よろこんで(絶望して)くれるかねぇ…!?おいおい、さすがに可笑しいだろ。傷がふさがってきやがる。」

 彼らの目の前で先程傷つけられた箇所が治っていくのが見える。明らかに異常な光景に少年のほうは痛みに耐えつつも驚きを露わにし、青年のほうも思わず息を呑んだ。しかし青年はすぐに気を取り直したかと思うと、先程より凶悪な笑みを残し小部屋から去って行った。少年はひとまずの危機を脱したかと思うと急激に眠気が襲いそのまま気を失う。

 次に目覚めると、青年が目の前に様々な道具を運び出す姿を目にする。その中にのこぎりや大槌といった凶器が見ることができた。賢こい少年はこの後何をされるかを悟り、必死に脱出を試みるも徒労に終わる。青年がこちらに気づき様々な凶器を装備してこちらへ近づいてくるのをただ震えて待つのみだった。

「やぁ。おはよう。なんでか知らないけど、君死なないからさ、サンドバック代わりにいろいろと試すことにしたんだ。君が死ななきゃアイツらの絶望した顔見れないからね!」

 ―それから丸一日をかけて様々な方法が試された。しかしそのどれをもってしても少年を殺すことは叶わず、次第に青年は壊れ始め、夕方になるころには狂ったように叫びながらただ手に持つ凶器を少年に叩きつけるのみとなる、それに対して少年は声ををだすことはなくなっても、その精神は狂うことはなかった。正確には狂うことができなかったのだが。

 

 

 

 

 

「こいつはぁ、まずいときに来ちゃったかな。」

 小部屋に青年とは別の声が響く。異変に気付いた青年は声のした方向へと目を向けると、アロハシャツを着て右耳に十字架のピアスといった奇天烈な恰好をした青年が立っていた。先程まで少年を切りつけていた青年は反射的に彼にむかって走り出し凶器を振りかざすのだが、彼は危なげない動きでいなし青年を静止させるためボディーブローをかまし物理的に止めたあと追撃して無慈悲に意識を刈り取る。

 最後に脈をとり生きていることを確認した後、明らかに致命傷を受けて虫の息である少年を見て、せめて拘束くらいは外してあげようと近づいたところで彼も異変に気付いた。

「傷が治っていく…なるほどね。今ここで楽にしてあげたほうが、この子のためか」

 彼は懐から形容しがたい何かを取り出し、少年に向けながら何事かをつぶやいている。その姿は服装をただせば、神主のそれか、もしくは呪術師のそれか。この時少年は自らの体に今までは感じられなかった違和感を感じ取る。それは時が経つごとに、嫌悪へと変わり、麻痺しかけていた危機感が警鐘を鳴らすまでに至った、若干回復のスピードも遅くなり、いままで遠いものであった死がだんだんと近づいているのだと体で理解する。声を出すことさえ痛みを感じるからだのはずなのに、少年はゆっくりと口を開いた。

「…ぃゃだ、死にたくない」

 ずいぶんとか細い声だったがしっかりと聞こえていたようで詠唱が中断される。

「…今ここで楽になったほうがいい、それが君のためだ。自分でもわかっているんだろう?」

「死にたくない、死にたくない。まだ生きていたい。…助けて」

 それだけ言うとさすがに気力を使いはたしたのか少年、意識を投げ出したのだった。

 

 

 

 

 

 

 

「やぁっと起きたか。結構お寝坊さんだね、君は。」

 以前目覚めた時と似たように声をかけられたためか少年は咄嗟に体を起こし身構える。そこでようやく拘束がほどかれていることに気づき、逆に少年を殺し続けた青年がむき出しになった柱にぐるぐる巻きに縛られている姿が見えた。少年の目の前には気を失う前にみた奇抜な青年がこちらを見据えながらも、のんきにあくびをしていた。

「まだ頭が追いついてないようだけど、手短に話すよ。こっちも予定が立て込んでいてね。」

「まず、君も気づいている通り、君は人間じゃない、化け物だ。」

「正確に言うと怪異、というものだね、固体名は『死出の鳥』と呼ばれるものだ。」

「ああ、心配しなくてもいい、この怪異は人に害をなすものではないよ。ただ吸血鬼以上の不死性を誇りながらも、不老ではないそんなちぐはぐな怪異さ。」

「まぁ幼い君には理解できないだろうね。ただ自分が人とは違う何かだということは納得してくれ。本題に入るけど、君の身の振り方についてだ、僕から提示するのは二つ、この身を嘆いて来世に期待するか。それともすべてを忘れて元の生活に戻るか」

 青年が大事なことを話している最中、少年は目を見開きただ茫然と彼の顔を見つめる。自然と口が開きありえない一言が少年の口から洩れてしまった。

「忍野メメ…なんであなたがここにいる。」

 ―後に少年、君原香取が一生の不覚であると同時に最高のファインプレーだったと語っていたとかいないとか。

 青年、忍野メメは途端に目つきを鋭くし香取に問いただす。まだ頭が混乱の最中であった香取は原作知識やらなにやらを洗いざらい話すことになり、終わった後は両者気まずい雰囲気を醸し出す結果となった。

 

「なるほどね、合点はいったよ、『事実は小説より奇なり』とはよく言ったものだ。いやこの世界自体がフィクションなんだっけか。ややこしい。」

 頭を掻きながらそうぼやく。理解はしたがまだ納得はしきれないような顔をしている。

「まあ疑問は綺麗さっぱり解消したってことで本題に入ろうか。君はどうしたい?」

「僕は…死にたくはありません。せっかくつないだ命なんです。まだ生きていたい。」

「これからの人生、とても生きづらいものになるよ。親にも、これからできるであろう友人や恋人にもだまし続けて生きることになる。それでもかい?」

「それでも、です。僕は今回は絶対に長生きするって、そう決めたんです。」

 少年は誠意をこめて決意を表すように言い切る。青年はそんな彼をみて一つため息をこぼした。

「やれやれ、ここまで自分が甘い人間だったとは思わなかったよ。分かった。君を殺すのはやめにしよう。もちろん対価はもらうよ。普通の子ならまだしも君は逸脱しすぎている。」

「ありがとうございます。それと奇抜な恰好をしているあなたもあなただと思いますけど。」

「違いない。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 事件発生から二日後の朝、少年は親元へと無事送り届けられ、表面上事なきを得る。その際に青年はその奇抜な恰好から両親に不審がられ危うく警察沙汰になったのは完全な蛇足だろう。

 犯行に及んだ青年は何者かの通報により間もなくとある山奥の廃墟内で発見される。しかしその時にはだいぶ衰弱しており精神が完全に崩壊、一命は取り留めたものの一生を完全に隔離された精神病棟内で過ごすことになる。警察のお世話になるのとどちらがまましかは、今となっては本人にもわからない。

 

 

 

 

 その後の彼らについては、少年の体は異常をきたし、不可解な力を使えるようになってしまい、青年に抑えるためのお守りをもらう羽目になったり、それらの対価として刺激が強すぎる冒険活劇や大立回りを約半年ほどするはめになったのだが、それはまた別の機会に…




補足説明として香取の特典は
・『死出の鳥』との完全同化
・その体に見合った能力の保持
・丈夫な心身
の三つです。
 死出の鳥とは完全に人に擬態し一生を終えるとまた別の人間に移る怪異のため気づかない限りは、変哲のない人間として一生を終えますが、この物語では独自の設定、解釈として自らを怪異として認識した場合神通力(もしくは妖力)といったものを開眼するのではないか。最後の部分はそういった意味合いも持ってます。
 …害がない、吸血鬼並みの不死性ぐらいしかないので強さは障り猫よりもさらに下位の者として扱うことにします。具体的には見えちゃいけないものが見えたりするレベルだと考えてください。

大体的なクロス先に関しては、化物語が最後になります。特典の都合上、話が勧めやすいので…。まあネタやちょろっとしたものは出しますけど()
以上、忍野メメさん2〇歳の活躍譚でした
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