神様のギフト(仮)    作:砂糖露草

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詰め込み過ぎたら結構多くなってしまった。orz
それではどうぞ


とってとられて

「これは…素晴らしい。きっとあの方々も喜びになるだろう。解剖し難いのが難点だな、いったいどんな原理なんだ。」

声が聞こえる。意識は朦朧として体も動かないけど、それでも僕の頭は今の惨状を記録し続けた。痛みがないということは麻酔でもかけてあるんだろうか、死後と同じで視点さえ動かせない。何人かが周りを囲んで手術器具を手にこちらにかざしてくるのが見える。

原理、と言ってもこの身は怪異のそれだ。正直何かわかるわけでもないだろう。妖怪とは、怪異とはただそうあるだけの現象なのだら、雲をつかむようなものだろう。ここまで来たらもう諦念のほうが勝って何をする気にもならない。終われば帰してくれる、なんてのはまずあり得ないだろうし。よくて管理世界での監視付での定住、最悪一生フラスコと実験台の往復もあり得るなぁ。

現実逃避も兼ねて、これからについて思いをはせる。できれば人権適用されることを祈りながら、なすがままにされるのみだった。まあ自分化け物なんですけどね。

「ふむ、今度は麻酔きって見てみようか、何か別の結果得られるかもしれん」

…今なんて言ったこの人。麻酔きるって言ってなかったか。瞬く間に器械を操作する音が聞こえたと思ったら、突然、激痛が全身を襲う。

「い!?アアア嗚呼!!」

「もう麻酔が切れたのか。毒の耐性も強いみたいだ、いやはや興味深い。」

担当医が何か言っているがそれどころじゃない。激痛に耐えることができず意識を手放しかける、けれどその都度に気付け薬のようなものを投薬される、気絶することも許されない、無間の苦痛を味わうことを強いられることになるのだった。

 

 

 

 

 

 

「むぅ、遅い。ご飯冷めちゃったよ。」

ところ変わって君原宅のダイニングに移る。そこにはいまだに香取の帰りを待つカオスと様子を見に来た駿河、そして何故かトキの3人がその場に介していた。駿河は書庫から漫画を持ち出しトキは左手にリモコン膝にゴローを乗せ右手でなでたりと、皆思い思いに過ごしている。

…家主がいないのにこのくつろぎ様、帰ってきた瞬間に雷が落ちることは間違いないだろう。ふと思い出したかのように漫画片手に少年が問いかける。

「ところでトキちゃん、ここにくるって珍しいよね。どうしたの?」

「今更、ほんとに今更なんだけどね、お告げ…じゃなくて勘でした助言が気になっちゃってね。」

「そっか。…それにしても遅いな香取の奴、自分で早めに切り上げるつったのに。校舎裏にもいなかったしよ」

どうやら彼らは、きっかけは別々でも件の少年を心配になって押しかけたようだった。どこか部屋の雰囲気も暗い影がさしているかのようだ。

「ゴメン、わたしちょっと探してくる。みんなは家で待ってて。」

「やめときなさい。むやみに探しても徒労に終わるだけよ。何かあったときの連絡手段がないんだから」

「いやー、こういう時にケータイがあったら便利なんだけどな。誰ひとり持ってないとか…」

カオスが部屋から出ようとするとほかの二人がとめる。内二人は家の事情で、一人は機械音痴とそれぞれ不運が重なった結果である。

「でも私のレーダーでも見つからないんだよ。もしかしなくても、絶対何かに巻き込まれてるよ。」

「でしょうねぇ。だけど、今はここに居なさい。果報は寝て待てってよく言うでしょ。」

それでもカオスは探しに行こうとするのをたしなめるトキだが、彼女もどこか落ち着かない様子で、何かを待っているかのようだった。

―得てして、転機というものは突然やってくるものだ。―

不意に、ガチャリと玄関の戸が開く音がする。カオスは反射的に立ち上がり急いで現場へと向かう。ほか二人も遅れて追随するのだが、そこにはこの家の主ではない、白髪の少年が立っていた。その少年は開口一番に不可解な言葉を吐く。

「アンタ、誰だ?」

初対面の相手に対し、名前を聞くのは決して可笑しいことではない。ないのだが無断で家へと上がり込んだあげくのその言葉、いささか常識が欠けていると言わざるを得ない。玄関先は困惑した雰囲気で満ち満ちていた。

 

 

 

 

 

 

少し広めに作られた手術室と思われる場所に、僕はまだ拘束されている。防衛本能なのか痛覚はすでに麻痺しているけど、医者たちは飽きもせず、体を弄繰り回している。半ば意地になっている人もいるけど、そのうち発狂しそうだ、医者が。

「クソ!いったいどういう原理なんだ。再生の仕方や耐性が分かるだけで、全く糸口がつかめない!」

解剖医の何人かは今も意欲的に傷をつけてくるけど、数人が耐えられなくなり離脱した。離脱した人を責める人はいないだろう。なんせ解剖中の被験体が言葉を発したり目をぎょろつかせたりしているのだから、普通は悲鳴を上げながら逃げてもおかしくない。今なおここに立つ人のほうが危険だろう。狂気に取りつかれたように目が血走っている。

正直な話、僕の体を調べるよりプラナリアの体を応用したほうが早いんじゃないかと思ってきた。回復能力も得られて、クローンみたいにAランク魔導士量産できるだろうに。

部屋の外がやけに騒がしくなる。以上を察知して部屋に残った解剖医たちは緊急無線で連絡をとったり扉のロックを確認したりと大慌てだ。無線のやり取りを盗み聞きしてみると、どうやら侵入者が現れたようだ。

突然通信にノイズが走り出し、通話が途切れる。彼らはすぐさま原因の追及と復旧を急いだけどなかなか目途がつかない。技師の頑張りもあってか通話が回復する。

 

 

 

 

 

 

「ミ ツ ケ タ」

 

 

 

 

 

その一言だけを残し、今度は通信どころか機内設備が照明もろとも機能不全に陥る。この場の監督者と思わしき人が騒ぎを収めようとする姿が目につくが、落ち着く気配はない。それにしても一瞬だけだったから確証はないけど、あの声はどこかで聞いたような…。

戦闘音がしばらく続いたかと思うと前触れもなく収まり、室内も先程までの騒ぎがまるで嘘のように静まり返った。

「誰か確認してきたほうがいいんじゃないか。」

「お前が行けよ」

このままでは外の状況を知ることが大事だとわかっていても、先程から続く異様な雰囲気に気圧されて誰も確認しようとはできなかった。それでも状況は刻々と変化していく。

今度はコツン、コツンとおそらく誰かが近づいてくる。足音はちょうどこの部屋の前で止まった。

コンコン、ドアがノックされる。

一瞬にしてこの部屋全体に緊張が走る。

ガンガン、ドゴォ

今度はドアをこじ開けようとしているのか、先程より強い衝撃音がドア越しに聞こえた。果たして外にいるのは

助けに来た局員かそれとも…ふと破壊音が聞こえなくなる、まだドア先輩が健在であるのにだ。諦めたのか、いくらか緊張が和らぐ。ちょうど機内設備も復旧したことも重なりこの場ににわかに平穏が訪れた。

 

 

 

ドアが開く。

そこには、修道女の恰好をした一人の少女が佇んでいた。驚きと戸惑いそして恐怖が綯い交ぜになり、この場で動けるのは件の彼女のみになる。

「見つけた。香取、心配したんだから。」

「…カオス?」

「帰ろう。みんな待ってるよ。」

拘束具が一瞬にしてほどかれる。差し出された手を自然につかんで起き上がると、ようやく動けるまで回復したのかこちらに銃のようなものを向けてくる。マズイこのままだとカオスにあたる。咄嗟に前に出て銃撃を代わりに受けた。

「香取!?」

「~ッ!大丈夫、だから、早くここを出よう!」

刹那、ためらいはしたけど切迫した状況のなかこの場に留まること自体危ないため僕を抱えて部屋からを離脱する。廊下は戦闘があったためかところどころ破損していて、その激しさを如実に表している。まばらに人が倒れていたりもするけど、どれも致命傷に至ってはいないようだ。

「どうして、ここに?」

「どうしてって、心配だったからに決まってるでしょ。」

「そもそもどうやってここまで?」

「香取がここにいるから助けてやってくれって、ここまで連れてきてくれた人がいるんだ。」

「その人はどこに?」

「転移装置の場所と使い方を説明した後、どこかに行っちゃった。若白髪の子なんだけど知り合い?」

「…いや」

もちろん、そんな特徴的な容姿を持つ知り合いはいなかった。

「それと、『すまない』だって。」

「え?」

「その人からの伝言。わたしも何のことかわからないんだけど。」

ますます意味がわからなかった。いや、謝罪はこの一件を指しているのはわかる。だけどその人物がどう関係して、なぜ今更助けたのか、何か重要なピースを見逃してるようなもどかしさを感じるばかりで、答えは一向に出ることはなかった。

 

 

 

 

 

こちらに向かう際にあらかた制圧したのか、何事もなく転移装置の設置してある部屋へとたどり着くことができた。けがの治療のためいったん僕をおろし服をめくる。

「あれ?」

当たり前のことではあるけど、服に血が付着しているだけで怪我なんてどこにもないのだ。これにはさすがのカオスも訝しがり、疑問符を浮かべていた。

「いや、えっと、マジックだよ。イッツアイリュージョン!」

勢いでごまかそうとするも、ジト目の視線がよく刺さる。自分で言っといてなんだけど、これはないわ。

「まあいいよ。でもよかった…怪我がなくて。」

心底安心したように深く息を吐いている。若干涙目にも見えた。そこまで心配してもらえたことに嬉しさとともに、だまし続けていることに胸が痛んだ。

「今準備するからちょっと待ってて。…それにしてもエネルギーは電気といったい何で動いているのかな」

装置のパネルを弄りながら未知の技術に思いをはせていた。彼女が扱うものとはまた別らしい、それでも慣れた手つきで操作している。この様子なら無事に脱出はでき―

「待て!」

そうは問屋が卸してくれないらしい。声の先にはもはや因縁の相手ともいえる。黒峰含む転生者3人とこの艦の最高戦力の面々が集っていた。

「今なら手荒な真似はしない。おとなしく投降するんだ。」

「へ!まさかここまでやるとは思わなかったけどな、これで仕舞いだ。」

「…」

六人が一斉にこちらへ得物を向けて威嚇する。それを見たカオスは操作を中断して僕をかばうように前へと立った。彼らに聞こえないように小声で彼女に話しかける。

「カオス、装置のほうは大丈夫なのか?」

「うん。まだ時間はかかるけど後は自動で起動してくれるから。」

「そう、ちなみに聞くけど、彼らどうにかできる?」

「一人ならまだしも、六人同時は…それに時間もかかるよ。」

一人なら倒せるのか…、でも目の前にいる彼らは連携して襲い掛かってくるだろう、その間に自分が人質に取られたら元も子もない。

 

 

 

「一つだけ、被害が確実に、かつ最小限に収まる方法はある」

「置いて逃げろ、なんて言ったら怒るからね、無理やりにでも連れて帰る。」

「…いやまあうん、個人的にやりたくなかった策だしいいんだけど、何とか時間稼ぎしよっか。」

彼女の性格からすればあり得る回答だし、僕だってできれば脱出したい。その申し出は本当にありがたかった。けれどこれでできる対策は一つしかなくなった。隙なく身構える彼らを見据えて時間稼ぎをする(問いかける)

「ねぇ、なんで君たちは僕をそんなに狙うわけ?非協力的な一人を説得するより、協力的な人を探したほうが効率がいいよ。」

「そんなの決まってる。君の体はそれだけ可能性を秘めているからだ。」

「たぶん、僕の体を調べても何も出てこない。分かるのは、何もわからなかったってことだけ。君たちならなんとなくわかってるんでしょう?」

その言葉を最後に彼らは押し黙る、フェイトさんたちクルーはまだしも転生者には覚えのある話だから当然だ。人の身に幻想(ユメ)を押し付けられたのが僕たち転生者で。そして転生自体が持ち合わせる最大の幻想そのものなのだから。

「君の再生能力は全て遠き理想郷(アヴァロン)の力だろう?なら君から一時的に借り受ければなのはが目を覚ますかもしれないんだ。」

その言葉を聞いて、立ちくらみを覚える。これはもしかして彼らにちゃんと説明すればここまでならなかったのだろうか。

「残念なことにそんなたいそうなものじゃないよ。前にも言ったけどそんな都合のいいものじゃないんだ。」

「それでも今の技術はとても進歩している。もしかしたらがあり得るんだ。」

「そのためなら、僕一人地獄を見て最悪死んでもいいと?」

「?なんのことだ。ともかく早く投投降しろ。」

…この様子だと、あの惨状のことはまるで聞かされてないみたいだ。上が情報規制したのかそれとも、でもそんなことはどうでもいい。まだか、まだなのか。

 

 

 

 

ふと、一つだけ聞いてみたいことができた。

「最後に一つだけ、聞いてもいい?」

「…ああ」

「君は、君たちは何を指標に生きているのかな?」

その問いに彼らは一斉に首を傾げる。

「いやさ、単純にいえばモットーてやつかな。聞かせてほしいんだ。正義って置き換えてもいいや。」

「正義とモットーは別物じゃないか?」

「じゃぁ正義だけでいい、正義って何さ?」

脈絡のない質問に黒峰さんは答えあぐねる。意図が理解できないんだろう、くしくも時間稼ぎになったことに内心ほくそ笑んだ。とそこで天城さんが話に割り込む。

「ハン、そんなもん一つしかないだろうよ。」

「へぇ、じゃあ教えてくれないかな」

「困ってる人を片っ端から助ける、それが唯一無二の正義だろうが!それ以外にあるか!?」

なかなかの模範解答をありがとう天城さん。たしかにこれ以上ないほどわかりやすい『正義』だ。

「ほかのみんなも、それでいいかな?」

「…ああ、多少の差異はあるけど、それで相違ない。」

「それがいけないことだとでも言うんかい?」

どうやら八神さんやフェイトさんは聞き返してきたことに不快感を感じたようだ。こちらを鋭い目つきで見てくる。内心臆病風になっていても、それをおくびに出さず無邪気に笑って見せた。

「いやさ、もしもの話だけど何かに犠牲を強要されたときとかどうするのかなって」

「そんなことにはならないよ。私たちならどんなことでも乗り越えられる。なのはだって」

フェイトさんが憮然とした態度で答える。その言葉は希望に満ちておいて、その目は絶対的な自信を光を帯びていた。悲壮なものなど感じさせない声色で言い切った。事実今まで乗り越えられて来たのだから。

「それでも聞きたいんだ。君たちはそのとき、大事な個をとるのかそれとも大多数をとるのか。」

その問いに一斉に押し黙る。その意味を正しく理解している者もいれば今はじめて考えた人もいるだろう。これはすべてを救った弊害だろう。そもそも、子供にこんな謎解きを強いること自体異常なのだから。できればこのまま悩んでいてくれると楽で助かるなぁ。まぁそんなことはないわけで、間もなく黒峰さんが

「俺は大切なものをとったうえですべてを救って見せる」

それはなんて甘美な響きだろうか、誰もが持ちえた夢物語、本来ありえないはずの幻想そのもの。それでも彼らは実現せしめた。それゆえの答えなのだろう。…なんて正直どうでもいいんだ。だって、彼らには彼らの正義があって、それ以外にも無数に存在するものなのだから。

「さぁ、質問には答えた。次は君の番だ。」

そういってこちらに投降を促してくる。

「さっきの答えだと僕やカオスのことも見逃してくれるよね、全てを救うんでしょ?」

「君には力がある。その力は、正しく使われないというのは許せない。」

「あーもうシャラくせぇ!、大体テメェさえいなければこんなことにはならなかったんだ!」

ここからはもう水掛け論になると察したのか言葉は不要と、天城さんがこちらに迫ってくる!

ビー

「ッ香取!」

「ああ!」

すんでのところで装置が完全起動する。カオスが瞬時に翼を展開して攻撃を受け止めた後、呆気にとられた隙を突いて一気に装置の中へと飛び込む。そして―

 




追記
改めて見てみたら誤字の山ができていた、申し訳ない…。
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