神様のギフト(仮)    作:砂糖露草

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香取ミックス

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少しずつ夜が早くなる晩夏、もしくは初秋ともいうべきか、その夜の帳が下りようとしている中を僕は自転車で疾走している。言わずもがな帰り道の途中だった。遅くなってしまったため急いで帰路をたどる。

「すいません!道を尋ね―」

何か聞こえた気もしたけどきっと幻聴だろう、あたりには人っ子一人いなかったはずだ。

急にペダルが動かなくなり前につんのめる錯覚を覚え

「って、うおわぁぁぁ!?」

否、慣性の法則に従って前へとダイブしていた。

このままではぶつかる。そう思い目を閉じる。

しかしいつになっても衝撃は来なかった。恐る恐る目を開けると、目の前からあと数センチというところでものの見事に静止しているのが分かった。

「ゴメンナサイ!でもどうしても急ぎの話があるの。」

声がしたほうに顔を向けると、変哲な翼をはやした、シスターな少女がそこにはいた。

―後に、あれが初の怪異体験だった気がしなくもないと、彼は語る。

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「待って!」

透き通った聞きなれた声があたり一面に響く。突然の静止の声に詠唱が中断された。

身を包む不快感や生理的嫌悪が途端に雲散霧消するのを感じた。

一斉に声がしたほうへと向き直る。ただそれが誰なのかは僕にはすぐに見当がついた。

「なんで来れちゃうかなぁ…行先は書いてないはずなのに。」

最近であって間もない、けれど濃い日々を過ごしてきた彼女が、カオスがそこにはいた。

「おやおやぁ?こんなところにシスターが来るとは思わなんだ。…なかなかやるじゃないか君原君?」

「ただの居候だから」

下世話な目でこちらを見てくる彼にげんなりした態度で返す。そもそも出会って間もなくお互い何も知らないのに、なんでそんな話になるのか。

「それでお嬢さん、今回はどういったご用件で?見ての通りいま立て込んでいてね。」

忍野が怪しく妖しくカオスに問いかける。それでも彼女は意にも介さず告げる

「私は、そのひとに、香取に用があります。彼を助けにきました。」

はっきりとそう告げたのだ。本当に僕の周りにはお人よしが多すぎる。自分でも顔がゆるんでいるのを感じた。

心のどこかで、誰か止めに来てくれるかもしれない、そう思っていたのか、僕は。

なんて、無様

「だってさ、君原君。愛されてるじゃないか。」

「忍野、一寸黙ってくれないか…」

そう言って黙らせることには成功したけど、忍野は面白そうな顔をして成り行きを見守ることにしたようだ。

 

 

 

呼吸を落ち着かせる。

「この際、誰から聞いたのかなんて別にいいよ。とりあえず帰ってくれないか」

「いや」

お互い譲歩という言葉も知らないかのようににらみ合う。このままでは平行線であることは明確だった。

真実を話したほうが早いかもしれない。意味ない真実を

「僕はさ、化け物なんだ。どうしようもない人外、」

「なんとなく分かってた。でも、私だって」

彼女が言う言葉にかぶせて、さらに続ける

「そんな自分がとてつもなく嫌だったんだ。ほかの人とは圧倒的に違うそんな何かがたまらなく許せなかったんだ」

「だから、終わらせることにした。ただそれだけのことなんだ。」

そこまで言ってまた一呼吸置く。ただの独白は思ったよりも長くなったようで息を切らしてしまったようだ。

「いわゆる自己満足ってやつなんだ。正直邪魔だから帰ってくれないか」

もう、生きることに意味がないと、絶望しかないと訴えるように言い放つ。

 

 

「それでも、香取に生きていてほしいと思う、私だけじゃない駿河も、トキもそう思ってるから、ここまで来たの」

「あの二人はともかく、なんでお前まで、あって間もないだろうに」

「貴方にはそうかもしれない、でも私にとっては違うから、それに」

「香取が好きだから」

…なんていった、こいつ。忍野がやけににやついた表情をしているけど前々気にならない

「あなたが好きだから、死んで欲しくないの、これは私のわがままだよ。」

「んな!ななななななな」

突然の告白に頭が沸騰する、今絶対に顔が赤くなってる。慌てふためく僕を見て大爆笑している忍野は後でぶん殴ろうと思う。

何とか気持ちを落ち着かせ、心拍数を正常に戻す努力をする。

それでも一向に遅くなる気配はしなかった。

「おま、お前、いきなり何言ってんの!?」

「正直な気持ちを伝えただけだよ、あなたが死んだら私も含めたみんなが悲しむ。」

僕の目を真正面から臆面もなく言い切る彼女が、とても眩しく見えた。

「その気持ちは、嬉しいけど、でももうどうしようもないじゃないか。」

「まだ、間に合うよ。わたしだけじゃ無理でも、みんな協力してくれる。」

「世界中が敵にまわっても、私たちはあなたの味方だから」

「だから、そんな顔で悲しいことを言わないで。」

彼女の言葉で、今、自分が涙を流していることに気が付く。

「一緒に、帰ろう。」

 

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――

「その後はまあ、何事もなく無事解決、というわけさ、いやまさか魔法のカード(直喩)で記憶を消すとかそんなぶっ飛んだ真似ができるなんて思いもしなかったよ。」

この場には二人の男がいた。一人は件の話し手忍野メメ、そしてもう一人は阿良々木暦という高校三年生だった。あれからまたいくらか時が過ぎ、桜が咲く季節となる。青年もまた、狂おしくも甘い青春活劇のまっただ中にあった。

「なるほどな、いきなり羽を生やした少女に出会うものだから天使が何かだと思ったけど、正しくそのとおりだったわけか。…怪異に好かれてるのかな僕って。」

「君の場合は自ら飛び込むパターンのほうが多いけど、あの時は完全にとばっちりだろうねぇ、ご愁傷様。」

「別に、自転車も僕も無事だったからいいんだけど、取り敢えずハッピーエンドってことか。」

「それはどうだろうね」

そう言って僕はは一拍置いた。

「少なくとも、化物の恋は大体悲恋で終わるものだ。片方が人間であるのが常だけど。」

言外に、君にも関係のある話だと自分の目の前の青年にも言い含める。

それを本来の意味で捉えるのはいつになるのか、おそらく自分が去ってからだろう

「それにね、別に彼ら、好き合ってる訳じゃないんだよ」

「どういうことだ?」

「日本語は難しいってことさ阿良々木くん。」

そこまで話すと彼にも検討がついたのか憐れむような目を見せている。この場にいない誰かさんのことを思っているのだろう。

「ま、良くも悪くもこれからなのさ。あの子も、君も。」

そう言って話を締めくくる。

君原君も、阿良々木くんもまだ青春は始まったばかりなのだから。

------------―――――――――――――――

 

 

 

 

「おはよう、香取。いい朝だね。」

「…ああ、オハヨウ」

作戦というか、事後処理も無事に終わり、いつもと変わらない朝を迎える。朝食を作る彼女の態度もやはり平時と変わりはなかった。

そう、あれから元の日常に戻ったのだ。廃墟でのやり取りもまるでなかったように。

…そう、完全に誤解のオンパレードでした…

loveではなくlikeのほうでしたよ、その可能性も考えていなかったわけではないけど。

穴があったら入りたいというかむしろ、もういっそ殺して欲しい気分になる。いや死にたくはないけど。

それでも悪くはないか、そう考えている自分がいるのも、また事実だった。

結局のところカオスは家に帰らず。今なお居候兼家政婦として居座っている。

本人に聞いて、はぐらかすばかりで話してもらえなかったけど、聞かれたくないこともあるだろうと思いそれ以上は詮索しなかった。

「おまたせ、今日は時間がなかったから簡単なものしか作れなかったけど…。」

目の前に出されたのは綺麗な形をした目玉焼きだった。

今更彼女の調理技術を疑うわけではないけど、これなら確かめるまでもないだろう。

「いや大丈夫だよ。早速食べよう。」

箸を持ち卵をつかんで咀嚼する。

瞬間、頭が爆ぜた。物理的にではなく精神的に、

もしかしたら見えないだけでしっちゃかめっちゃかになっている可能性もある。

それぐらい強烈で脅威的な味だった。

「こ、今回の件から得るべき教訓は、

      二度あることでも三度目はわからない、石橋は叩いて渡れ、だ。」

最後にネタに走った後、僕の意識はブレーカーが落ちるように急激に沈んでいく。

この日、学校は自主休校したのはもちろん、それから数日、精神的(トラウマ)な腹痛に悩まされる日々が続く。

こうして、僕の奇天烈な青春時代の、最初の一頁は幕を閉じたのだった。

 

 

To be continued…




ここまで読んでいただきありがとうございます。
これにて一章完結になります
話を終わらせるというのはなかなか難しいというのを実感した今日この頃です。才能が欲しい…
今後については後ほど活動報告に乗せようと思いますが、この物語も、ちまちまと書いていこうかなと思います。まずは閑話をはさんで…
ちょっとした次回予告をして終わりたいと思います
駿河「さあて、次話の香取さんは」
「・カオス、香取と出会う
 ・ネコ、命名
 ・家出の真相
  の三本をお届けします」
「それではまたの機会に、じゃんけ」
香取「ヤメロォ!」
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