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―え?仕事に協力してほしい?―
―ああ、お前も知っているだろ、俺やなのは達の仕事…人出が足りなくてな―
―なんで僕なのさ―
―日々の授業態度も真面目で、結構他のボランティア活動もしてきただろ、福祉精神もある。上司にそのことを言ったらダメ元で誘ってみろって言われたんだ。それに―
アレから数分もしないうちに、入り組んだ路地裏を抜けて陽のあたる、そして人が点在する大通りへと這い出ることが出来た。
いや、正直に言うと一分もかからない内に出口を見つけたものの、流石にこのダボダボ姿で出るのは憚られたので残りの時間で少し服を改造して丈を合わせていたのだ。
と言っても余る布部分をざっくり切っただけなので未だ着せられてる感が半端ない。
あの不良たちが何分も路地裏を失踪していたのは何だったのかって?狐に、いや鳥にでもつままれたんじゃないかな。
第一村人から拝借した財布に期待を寄せるしかないね。
「さて、一体どこにワープしたの…か…な…」
意気揚々と、そのうららかな景色を眺めると思わず絶句してしまった。
なんでって、目に写った景色が、僕が切に夢見た。
地球の日本の町並みだからだ。
「いや待て待て待て、まだ早急だろう僕。単によく似た文明の別世界かも知れないじゃないか…!そうだ、お金は…」
手に持つ3つの財布のうち一つを選んでやや強引に開ける、そこには細々とした小銭しか入ってなかったけど、そんなの関係なしにその内の一つ、銅で出来ていると思われる銭を取り出してマジマジと眺めてみる。
それは確かに―
「十円玉だ…、てことは帰ってこれたの?ぃやったァァァァ!」
まさか現代日本の地を踏みしめることができるなんて夢にも思わなかった。
あの、溶液に満たされたカプセルと実験台との往復地獄から抜け出して挙句の果てに帰郷できるなんて、今回は割と真面目に感謝しますイエス様ブッダ様天照大御神様!え、姉妹神?聖王様?だれそれ?
一通り地球の神様に感謝しきったあとようやく周りの様子がおかしいことに気づく、というより奇行に走っている僕のことを避けながら遠巻きに眺めてるだけですねうっわ恥ずかしい。
道行く人々に
そして、入り組んだ路地裏を進みながら、これからの予定について算段を立てる、いくつかのステップが前倒しになったおかげて嬉しい悲鳴を上げることになった。
「最終目標の帰国?帰界?…帰国でいいか言いやすいし、まあともかくそれも成せたことだし、あとはどうやって父さんと母さんに言い訳するかだな…何年以上音信不通になっていたのかもわからないし…」
それに、見た目もなぁ。
近くにあった水溜りをのぞき込んで見る、するとそこには健康そうな優良男児、ではなく中二病真っ盛りの
と言ってもこれが僕自身なんだから一体どうしてこうなったと言いたい。
けど心当たりはあった、此処に来る前の一番最後の実験、何かを身体に入れられたまでは覚えている、その後すぐに意識を失って…気がついた時には裸に布をまとっているだけの姿で路地裏に投げ出されたのだ。
全く意味がわからない、その時からこんな姿形だしやけに気持ちがハイになってるし、あ、でも驚かすのは割と楽しかったです。
それまでの実験ではこんなことが起こらなかった、または起こってもすぐに元に戻ったのにそんな前兆はいつまでたっても来ない。
つまりはイレラレタナニカが原因なんだろう。
まるで宇宙人にアブダクトされた気分だ、てアレ?そのまんまじゃん。グレイタイプじゃなくてなんか損した気分。
それよりも今は怪しまれずに家に帰る方法を探らないと、髪は…黒に染めればいいとして、目もカラコンつければいいか。
何だすぐ終わるじゃないか、お金さえあれば。…あの不良たち、夜遊びしまくってるのかまるで貯めていないみたいだ。
もしかしたら銀行に預けて…なさそうだな、そもそも財布に入ってるのカラオケとかゲーセンのカードばかりで銀行カードなんて入る余地所か作る余地も残ってなさそう。
さて、それじゃどうしよう…ここで不良狩りでも…!
そこまでいって思考が中断される、第六感でも働いたのか頭上にその場にいたくなくなるほどの違和感を感じたからだ。
とっさに違和感の元へ視線を移せば、普段の戦闘着とは違うものに身をつつむ湊の姿が、そこにはあった。
「ミナt」
「魔力反応があるから来てみれば、なんだただの子供か」
彼を呼ぶ声は、彼自身の手によって阻まれる。
それ自体はどうでもいい、ただ、彼の言動がなぜか鼻につく。
まるで、こちらの事を何とも思ってないような、そしてこちらのことをまるで覚えてないような、そんな風にも聞こえた。
そこで今の自分の風貌に気が付く、そういえば今はもとの姿とまるで違っているのだった。
これではわからなくても当然だろう。
まずは誤解を解かないといけないようだ。
「ミナト、僕だよ。香取だ…」
けれど、そんな自己紹介も最後まで紡がれることはなかった。
-なぜなら
「お前の魔力量でもそこそこの足しになるだろう。遠慮なくもらっていくぞ」
彼の腕が正面から自分の胸を深々と、突き刺さして突き出てナニカを鷲掴みにしたからだ。
「が、ああ」
「なんだ?思ったより魔力量が多いなCかDくらいだと思ったんだが」
何を、言っている?そもそも僕に魔力なんて無いし、それに検査した時君も一緒にいたじゃないか。
それよりも、この状況を何とかするべきか
僕の身体から突き出ている手をしっかりとつかみ、引き抜くようにスライドさせていく。
その奇怪な行為に、湊は目を見開き呆然としてこちらを見ている。
「な、お前。どうしてこの状況でそこまで動ける。」
「どうしてって、特殊な状況の中にいたから、痛いのには慣れているんだよ、ね!」
そして最後に勢いをつけるように彼を蹴飛ばしてやった。
あいにくダメージは通らなかったみたいだけど、その反動で自らの拘束をほどいて距離をとることに成功した。
「ゲホッ、ていっても痛くないわけじゃないからつらいところなんだけどね」
要は非想非非想天の少女の同じスーパーアーマー状態と同じことができるけどこれまたその少女と同じで痛覚が無いわけではなくただのやせ我慢なわけだ。微妙にうれしくない。
ともかくこれで一先ずの窮地は脱したはずだ。これからどうするべきか