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-それに、お前と一緒に仕事してみたいってそう思ったんだ-
-…もしかしてホm―
-殴るぞ-
-ゴメンて、でもなんで―
-なんでってそれは、友達だから、かな―
でもどうしたものか、さすがに僕でもいきなり襲ってきた友人に思うところがあるわけで、それでも何か事情があるんじゃないかとも思ってしまうわけで。
それはともかくとして、先程の恨みは忘れざることよ。
ともかく一発ぶん殴ってやろう、というのが今の心境だ。
ただ、バリアジャケット着ている湊にただの拳が届くはずもないので八方手づまりというのが今の現状で
要は何が言いたいのかというと、本当にどうしようこれ、といったところだ。
ダメージだけでも通れば、どうとでもなる、と思いたい。
自分の体質上持久戦に無理やり持ち込んで相手がばてるまでくらいつけばいいことだし。
あ、そうか。いっそ魔力が尽きるまで抵抗し続ければいいのか、そうすればあとは『ずっと俺のターン!』し放題だし。
よし、それでいk
「うわぁ!何すんのさいきなり!」
まだ作戦タイムなのにいきなり砲撃してきたよ!しかも見た感じ非殺生じゃない!?
「戦場で何を言っているんだ、得体も素性もしれない相手に考える暇など与えるはずがないだろう」
そうだけど、そうだけども、いやその前に素性は知っているはずだろ、同じ学校に通った仲なんだから。
それともなんだ。級友の顔さえ忘れてしまったというのか目の前の男は。
「初めて会ったばかりで悪いが、その魔力、全て取り込ませてもらおう…!」
あっちはあっちで一人盛り上がっているけど、そんなことは関係ない。
一番許せないのは-
「僕のことを、覚えていないの?」
「覚えていないも何も、初対面だ。」
「…へぇ、そうかい。じゃあ、思い出すまでぶん殴ってヤラナクチャ…!」
-作戦変更、泣いて許しを乞うても思いだすまでガンガン逝こうぜ…!―
さて、そんな血みどろの
出会いは小学校のころ、草野球の試合でお互い敵同士となって会いまみえた。
当初は
後に意気投合して詳しく話を聞いてオリ主さんだと気づいたときの衝動は筆舌に尽くせないものがあったね。
あれだけ関わらないように必死に努力してきたものが一瞬で水泡に帰したんだから当たり前だよ。
結局のところお互いが転生者だと気づき、しばらくの間両方とも固まってしまったのはいい思い出だ。
ただ、彼は転生者だと気づいてもいつも変わらず接してきてくれた。無理に管理局に誘うこともしなかったし。
それ自体はそもそもの話、魔力を持たなかったり特典自体曖昧なものだったから、という配慮もあったみたいだ。
その時は今更ながら『天寿を全うしたい』ってなんだよって自分に言ってやりたかったね。
結局のところ後方支援、というよりはデスクワークくらいならやってもいいかなってことになったんだけど…
「ハ、ハァ。なんだ、なんなんだオマエ…」
「何って…今は化け物、かな」
件の、目の前の彼はこちらを血走った目で睨み付けている。
その瞳には明らかに恐怖の色が濃く出ていた。
ひどいなぁ、僕別にそんな怖いことはしてないのに、ただ、路地裏なんて避ける場所のない一本道だから彼が放った弾幕をすべて受け止めて進んでいっただけなのに、その時に腕がずり落ちたり骨がむき出しになったりしたけど些細なことだね!
問題は近づいても通じる攻撃手段がないことなんだけど、投げ技とか絞め技使えばさすがに喰らうかな?
でもとりあえず一発殴らせろ☆
え、腕がずり落ちたんじゃないんかって?時間をかけて生えてきているからモーマンタイだね。
「く、だが、近づいたところで何ができるわけでもないだろう!」
「関係ないね、鬱憤晴らしに付き合ってもらうだけだから」
八つ当たり、ともいう。
彼は獲物―日本刀型のデバイスの切っ先をこちらに向けて威嚇しているけど、正直怖くもなんともない。
実験の際に刃物で腐るほど切りつけたからかもしれない、でもそんなことはどうでもいい。
お互いの距離が2,3メートルまで来たとき、僕は勢いをつけるために一気に駆け抜けた。
すぐに彼の刀に切られる結果になったけど、それでも勢いを殺さず左に握り拳を携えて思いっきり振りかぶって-
殴った。顔面めがけて、自身の身体を顧みず。
その結果、危うく胴体が腰から落ちかけたけど、その勢いのおかげで彼も殴り飛ばされ地面に投げ出される。
ちなみに殴った拳もボロボロだ。
それでもスカッとしたから良しとしよう。
黄金の左が輝いた結果、彼はお星さまになって飛んで行ったりしなかったのは残念だ。
一人結果に納得していたところ、異変に気付いた。
こちらに振り向いた彼の横っ面が、確かに赤く腫れあがっているのだ。
すわもう
「な、なんで攻撃が通った!オマエ、何をした!?」
そんなこと、僕が聞きたい。でも好都合だ。
彼を
だから僕は自信満々に、それでいて滑稽に妖しくワラって言い聞かせる、見るものを不快にするような、聞いたものを恐れさせるようなそんなエみで。
「君は知らなくていいことだよ、知らないほうがいいんじゃないかな。知らなきゃよかったことなんてこの世にざらにあるからね。」
完全にハッタリであるそれに、彼は目に見えるように怯えが隠せないほどに動揺していた。
-ワカラナイことが怖いだろう、何をすればいいのかワカラナイのは死ぬほど怖いのだろう?―
原初の恐怖が彼の正常な思考をむしばんでいくのが手に取るようにわかる。
僕はさとりではないのだけど、なんとなく『恐怖』というこの一点に限って言えば心を読まなくても察しはついた。
いや、普通に怯えているのは表面に出ているんだけど、そうじゃなくて彼がこうなる以前からこちらに若干畏れを抱いているのが分かったんだ。
まるで、ホントに妖怪にでもなった気分だ、もしくはすでにこの身は妖怪にでもなっているのかもしれない。
すでに『転生』なんて最大級の
それにこの異常な回復能力についても自分でよくわかっていないのだ。
明らかに自分の転生特典なのはわかるけど、その詳細がワカラナイ。
不死だけなら、蓬莱の薬か、それに近い賢者の石でも取り込んだのかと思ったけど。
普通に成長していったから後者はまだしも前者は完全につぶれたし…ほかにも聞いた気はするけどさすがに何年も前の話だ。
覚えているわけがない。
そんな考えても答えが見つからない問いは後回しにして
「まずは君をどうしようかねぇ…?」
「ひ、ひぃ!」
ひときわ高い悲鳴を上げて彼は空高く飛翔した、そしてそのまま僕から逃げていこうとする。
「てこら、待て!僕は跳べないんだぞう!」
このままだと見失ってしまう、何がしたいのかなんて高尚な考えを持っているわけではないけど。
まるで獲物に逃げられた猛獣のように、僕は彼が飛んで行った方向へ走っていくのだった。
一旦これでストック切れです、次は少々お待ちください