神様のギフト(仮)    作:砂糖露草

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ドッペルゲンガー

 世界で一番強いんじゃないかって言われてる彼が、僕相手に無様に逃げ惑っていることに若干、いやかなりの愉悦が胸中にあった。

 

 男としてはやっぱり強いものに憧れるわけです、180度くらい方向性が逆な気がするけど。

 それに加えて、野生特有の狩猟本能のようなものもかきたてられていた。

 

 そんなことより、彼を逃がしてはならない。

 何がある、というわけではないけど僕の第六感が囁くのだ。

 彼を追っていけ、と。

 

「ワリィコハイネガー、とって喰っちまうぞぉ。てこれじゃなまはげじゃん」

 流石にそこまで人間辞めてはいないのでカニバリズム的思想にはなってないと思いたい。

 

 あちらは空を自由に飛び回ることができるのに、こっちは地を駆けずり回ることしかできないのがなんとも歯がゆい。

 なんとなくどこにいるかはわかるので見失うことはないけど…

 

 そんな愉快な追走劇も、どうやら長くは続かないみたいです。

 どこからとまなく第三者の気配が現れたから、念のために物陰に隠れて様子をうかがってみる。

 

 目の前にはなりふり構わずこの場をさろうとしている湊の姿と、そしてもう一人全く同じ姿形をした男の子が立っていた。

「ようやく見つけた、俺の分身体(マテリアル)悪いがここで終わらせてもら…?」

「た、助けてくれ!ば、化物が、不死身の化物が!」

「な、何だ。どうした?」

 瓜二つの容姿、対象的な様子の二人の姿が滑稽に見える。

 けど、同じ顔が並ぶなんて一体どういうことなんだろうか、ドッペルゲンガー、いやライナーかな?

 

「まさか、イレギュラーでも起きたのか…?だとしたら不味いな。先にそっちを確認するべきか…!待て!」

 もう一人の湊が悠長に考えにふけっている間に、先程まで追っていた方の湊がさっさとトンズラこいてしまった。

 

 追いたいのはやまやまだけど、そうするには姿を顕にしないといけないらしい。

 ここから出たらまたもう一人の方に敵対行動されそうでおっかないから僕もここから離れようかな。

 

「おい、そこにいるのはわかっているんだ。そろそろ出てこないか」

 どうやらすでに補足されているようだ。

 仕方ないか、このまま潔く―

 逃げよう。脱兎のごとく、ハヤテのごとく!

 

「あ、こらお前もか!逃さんぞ!」

 そんなこといったって僕戦闘苦手だもの、ここで姿を表したら絶対戦いになるってわかっててわざわざ大人しく言うことを聞く道理はないのさ!

 少なくとも、君がバトルジャンキーだってのも理解済みだからね。

 アバヨ、湊っつぁん!

 

 そして僕は銭形のとっつぁんもびっくりの逃走術でその場を後にするのだった―

 

 

 ―ら良かったのになぁ。

 なんか、未だに後をつけられている感が否めない。入り組んだ路地裏を縦横無尽に駆け回っているというのに、ピッタリと張り付いている気がするのだ。

 まるで、発信器でも付けられているような。

 

 おっと、また先回りされてるっぽい。

 前に気配を感じてとっさに身を隠すと案の定彼が現れた。

 そしてなにか紡ごうとしている。

「君には黙秘権がある、これから聴取する情報は法定で君に不利な証拠として用いられることがある!」

 なぜここでミランダ警告!?

 余計出たくなくなったよ、完全に容疑者のそれじゃないか!

 

「それに君の魔力波長はすでに把握しているんだ!観念さて出てきてくれ!」

 …え、本当に魔力があるの?今の僕。

 そうだとするなら垂れ流しになっている波長とやらをどうにかしないとこのままずっとイタチごっこを続けるはめになりそうだ。

 

 どうしよう、ぶっつけ本番で魔力の流れを止めるしか…!

 そういえばアニメで気配を消す技とか見た気がする、一か八かやってみよう。

 確か自然と一体になる様に、溶けていくように自分自身が自然になることを是として。

 

「魔力が、消えた?しかしまだ近くにいるはず、虱潰しに探していくしかない、か」

 彼の言葉から無事気配を消すことに成功したことが伺えた、あとはこのままやり過ごしてそれから離脱するだけ。

 必死に見つからないように祈っていると、目の前を行ったり来たりする湊がこちらを説得するように語りかけてくる。

 

「君は、マテリアルなのか?それとも突然飛ばされた次元放浪者か?もし、後者なら安心してくれ。事件が終わる頃に元いた場所へと送り届ける。」

 元いた場所に帰る?冗談じゃない!

 ようやくあの地獄から抜け出せたんだ、また出戻ることになるなんて論外。

 まして故郷に帰れたんだ、自分の意思以外でここから離れるつもりは毛頭ない。

 だから早くどっかいってくれ…、速く、疾く家に帰りたいんだ。ただいまって家族に言いたいんだ。

 そんな願いが通じたのか、彼はいったん諦めて封時結界を解きその場を去っていった。

 

 最後に「今はこれ以上は追わない、でもいつか、できれば君から姿を表してほしい。出来ることなら協力するから」とだけ言い残して。

 そして、彼がいなくなってしばらく待ち確実に危険がなくなったと確信してようやく物陰から躍り出た。

 

「ハァ、良かった。これで一安心かな。」

 まさか、狩るものと狩られるものの気持ちを同時に味わうことになるとは、もうこんな思いはしたくないなぁ。

 それにちょっと彼には悪いことをしたかもしれない、見た感じ僕が追っていたのが偽物で先程まで追われていたのが本物みたいだ。

 

 いつもより最初中ニ臭いと思ったらそういうことか、彼も分身体だとか言ってたし。

 今から会いに行くのもありかな…いや、やめておこう。

 なんかこう、嫌な予感というか形容し難い感情が渦巻いてるし。

 それに何かそっちも様子が可笑しかった、気がする。

 やけに初々しいというか…う~ん。

 

 ともかくこんな湿っているところにいても仕方ないか。もう少し情報も集めてみるのもいいし、どちらにせよなにか行動を起こせば状況も動くでしょう。

 

 あ、そういえば魔力があるんだっけ、それを試すのもいいかもね。

 確か山が近くにあったから先にこもって確認と練習することにしよう。

 そして、僕は朧げな記憶を頼りに小山へと向かうのだった。

 

 

 

 

 

 そしてやって来ました山岳地帯。

 たしかここで士郎さんたちが高町戦闘民族の方々が日夜修行に励んでいたんだっけ。

 今もやっているかは流石にわからないけど。

 

「と、そんな思い出に使ってる場合じゃないや。早速試してみないと」

 思いを振り切り、自らに眠っている?魔力を呼び起こそうと精神を統一させる。

 そして、ふとある考えに至った。

「魔力ってどうやって練るんだ?」

 一度興味本位でいろんな人からどんな感じが聞いたこともあった、けれどみんな言うことは大体同じで、何となく、だったり気づいた時にはすでにだったりと曖昧なものしか帰ってこなかった。

 よく、今やっているように精神統一して潜在しているものを見つける、なんて聞くのだけどその時のイメージが各々で違ったりするのだ。

 

 だからつまり、自分で答えを見つけなければ話が進まない。

 そこで僕はテンプレ通りにアニメや漫画の修行法で覚醒しないか試してみることにした。

 

 イメージは念能力の修行法だ。

 魔力じゃなくて気に芽生えそうな気もするけどそれはそれで結果オーライということで。

 兎にも角にも、何かしらの先頭手段は確保しておきたい。

 

 心を安らかにして、自分を見つめ直すように。そのうち身体の中に違和感を覚える、まるで自分のものじゃないような。

 そこから、何か垂れ流しているみたいに体の外へと出ていっているのがわかった。

 

 それを制御するようにそして見えない壁を体の周囲な作るように…できた。

 これで纒モドキはいいとして、『絶』はさっきぶっつけ本番で出来ていた。

 次は『練』もどきだ。

「確か、この氣の様な魔力のよう何かを爆発させるイメージ、だったかな。」

 

 せき止めて、勢い良く押し出す感じで…いい感じじゃないかな、このまま一気に―。

 

 次の瞬間、浮遊感を感じたと思った時には意識を失った。

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